元勇者提督   作:無し

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畑仕事

離島鎮守府 

駆逐艦 朧

 

朧「って感じ…でした」

 

アケボノ「本当に大丈夫なんでしょうね?」

 

朧「…大丈夫…多分」

 

アケボノ「明日には新人来るのよ?というか、あんた何してたのよ、日帰りで帰れたはずなのに」

 

朧「…いや、その…お土産買ってた、気分転換に」

 

アケボノ「……元気になった?」

 

朧「うん…少し」

 

アケボノ「なら良いわ、提督には伝えておくから…それより、横須賀は?」

 

朧「まだ誰も帰ってなさそう…あ、そう言えば特務部にも新人が来るんだっけ?もう居たのかなぁ…」

 

アケボノ「アンタなら匂いでわかるでしょ」

 

朧「いや、そんなの誰かまではわからないし…と言うか知らない人の匂いなんてわからない上に向かう芳香剤キツかったし…」

 

アケボノ「芳香剤?」

 

朧「薬品の匂いがきついからって」

 

アケボノ「…随分気が効く人になったのね…」

 

アケボノが不思議そうに首を傾げる

 

朧「前行った時とはまるで違ったよ、凄く綺麗なオフィスになってた…あ、そうだ、アケボノかキタカミさんに見てもらうようにって手紙預かってるよ」

 

アケボノ「私かキタカミさん?」

 

朧「新人について…だってさ」

 

アケボノ「…何よ、それ……えーと…[急なお手紙…]この辺は良いか、[新人は私たちの把握している限りは3名です、歳も10に満たない少女ですが、会った者から聡明な子達であると聞きました]…10に満たないって…最年少記録更新じゃない…」

 

朧「暁型が居るよ」

 

アケボノ「ああ、そっか……ええと?[他に行く宛のない子達です、何卒よろしくお願いします]…か、まともな事言えるのね」

 

朧「…どう思う?」

 

アケボノ「私にできるのは、提督の秘書としての仕事の余り時間にちょっと現実教えるくらいよ、それ以上は無理」

 

朧「キタカミさんに任せて良いのかなぁ…」

 

アケボノ「面倒見はいいから、安心しなさい…ただ、深海棲艦相手の戦争にでも…出したくは無いわね」

 

朧「うん…」

 

 

 

 

 

キタカミ「うぇぇ?ま、マジ?」

 

朧「そういう事になってるので、キタカミさんにも宜しく伝えるようにと…」

 

キタカミ「……不知火じゃカタブツすぎて無理だし、阿武隈は舐められそうだし…あーやだやだ…ちぇっ、こういうのは専門外なんだって…」

 

朧「…専門の内側ならやるんですか?」

 

キタカミ「……戦列にさ、まともに戦えない奴を並べるような奴らは負けるよ、戦えないのにこんな所にいる…そんなガキ共に情が湧いたら、死ぬ…護る戦いは本当に難しい、みんなの命が賭かってんのに…ねぇ?」

 

朧「……」

 

キタカミ「そいつらが利口かどうかなんて関係ない、居ない方がいいんだよ、朧、朧はマトモには戦えるけど…動けない誰かを庇いながら、戦える?」

 

朧「…それは…」

 

適正の問題だ、私は護る戦いは向かない…

というのは、言い訳なのだろうか

 

キタカミ「阿武隈なら向かってくる砲弾に集中すれば全部撃ち落とせるかもしれない、でも空と海の中はカバーしきれない…不知火はそもそも味方のカバーができない、支持されて仕事を与えられてから輝くタイプだからね…」

 

朧「…キタカミさんが復帰するのは?」

 

キタカミ「……限界ってものが誰にでもあるように…いや、今の阿武隈なら私と十分互角にやりあえる、阿武隈に無理な事は私には無理かな」

 

朧「……本当に?」

 

キタカミ「嘘なんかつかないよ」

 

朧(キタカミさんならなんだってできる…と思ってたんだけど)

 

キタカミ「そもそも、教導担当なんてらしく無いこと押し付けられたけど、ほんとは整備士でもやってるつもりだったからねぇ…提督とアケボノに捕まんなきゃなぁ…」

 

朧「そうなんですか?」

 

キタカミ「今でこそ新人来るの決まってるけど、誰育てるんだよぉ…みんな強いじゃん…」

 

朧「…キタカミさんには劣りますよ…」

 

キタカミ「私はたまたま戦争が向いてただけ、そんなのクソ喰らえってね…」

 

 

翌日

 

 

執務室

教導担当 キタカミ

 

キタカミ「だーかーら!どうなってんのかって聞いてんのさ!!」

 

アケボノ「…うるさいですよ、私だって何も知らないんです、八つ当たりしないでください」

 

キタカミ「…正直さ?別にもう覚悟決めてここは小学校じゃ無いっつーのくらいの気持ちだったんだよ?なのにさぁ……ここは保育園か!?」

 

アケボノ「…私だって知りませんよ、新入りが追加されてるなんて…」

 

今日、輸送船に乗って来た新人は合計6人…

うち、3名は夕雲型駆逐艦、残りの3名は…

 

キタカミ「第一、私海防艦なんて艦種に何教えればいいのかわかってないけど…?え、本当にアレを出すの?」

 

アケボノ「……私は会ってませんが、どういう具合ですか」

 

キタカミ「…暁より年下かな」

 

アケボノ「…クソどもが」

 

要するに、そう、ココはいきなり保育園と化したわけだ…

想定されている、人間との…艦娘同士の戦争を前にして

 

アケボノ「提督は今中央に話を聞きに行ってます、それが終わってから…しかし、火野司令官をハワイに送り出したと思ったらこの蛮行、滅ぶべきは身内かもしれませんね」

 

キタカミ「子供に戦争させる外道と身内になった覚えはないね…」

 

アケボノ「その"子供達"は今?」

 

キタカミ「…阿武隈に押し付けて来た、あとは球磨姉とか…あの辺は大丈夫でしょ…せめて駆逐の方は手がかからなければいいんだけど…」

 

アケボノに書類を押し付ける

 

アケボノ「……成る程、本来着任前に届くはずの資料ですね、朝霜、早霜、清霜…それと、択捉、松輪、佐渡…全員孤児か」

 

キタカミ「駆逐の方はめんどくさそう、特に朝霜と早霜は2人とも…戦争孤児って言い方は違うけど、深海棲艦によって身内やられて…終いには自分から志願…前に出て死にそうな感じするからねぇ…」

 

アケボノ「…どうするつもりですか」

 

キタカミ「……今、考えるべきことが多すぎるんだよ」

 

考えるべき事…例えばニオイもそうだ、あの駆逐3人に仄かに残った匂いが、あの焼かれた後のようなニオイは…

まるで死霊がまとわりついているような…

 

それだけじゃ無い、まだ自分の立場や生き方すら知らない、ただの子供をこんな所に送り込んできた中央にも頭を働かせなきゃいけないし、今後の戦いに備えた準備もいる

 

何から始めればいいのか…

 

アケボノ「…キタカミさん」

 

キタカミ「んあ?」

 

アケボノ「そう難しい顔をする必要はありません、貴方は護るだけです、頭は私も働かせますから」

 

キタカミ「……とりあえず、山雲の農場の手伝いでもさせようかな…」

 

 

 

 

 

中央広場

 

今思えば、この島はかなり広い

森はあるし、小さな山もある…故に、忍びこまれたら普通は気づけない、要害にするには…いや、相手が艦娘と考えると無理な上陸を仕掛ける事も容易か

 

キタカミ「…戦争のことは考えるなって……あー居た、おーい、阿武隈」

 

阿武隈「あ、キタカミさん…」

 

キタカミ「……今日…髪、解いてたっけ?」

 

阿武隈「いや、その……滅茶苦茶に…うー…」

 

思った以上に悪ガキ揃いらしい

 

キタカミ「で?どこ行ったのさ」

 

阿武隈「森に…」

 

キタカミ「本当に自由だなぁ……独房にぶち込もうか、あきつ丸みたいにさ」

 

阿武隈「えぇ?な、何も悪いことしてないのにそれは可哀想じゃ…」

 

キタカミ「そんなことより阿武隈はさっさと午後の訓練用に標的出しといて、遅れてた場合は艤装の整備もさせるから」

 

阿武隈「えっ!?い、いや…その、髪の毛を整えたいなー……なんて…?」

 

キタカミ「……ロングヘアー似合ってるんじゃない?」

 

阿武隈「え、そうですかねぇ!?…えへへー…じゃ、じゃあ準備して来まーす」

 

キタカミ「詐欺に遭わないようにね、さてと……あっちか」

 

匂いを辿る

 

 

 

キタカミ「…森じゃなかったじゃん」

 

山雲「あれー?キタカミさ〜ん、どうしました〜?」

 

キタカミ「……そこで穴に落ちてる3人に用があるんだけど、何したの?」

 

山雲「害獣対策の落とし穴に落ちちゃったみたいで…」

 

キタカミ「ふーん……まあ、いいや、えーと…アンタが朝霜だったね」

 

朝霜「…あ?なんだよ、出しててくれんのか?」

 

朝霜の背の高さでは到底この穴からは出られない、か…

山雲の言う害獣は敷波の熊ぐらいだろうけど…もし落ちたらどうなるのやら

 

キタカミ「何しに農場に入ったのさ」

 

朝霜「冒険だよ!ぼ、う、け、ん!面白そうだったからさぁ…って聞いてんのか?なぁ!」

 

キタカミ「聞いてるけど、それよりそっち…は、早霜ね、で、清霜か…」

 

早霜「…土塗れですみません、早霜です」

 

清霜「よろしくお願いしまーす!……で、出してもらえますか?」

 

キタカミ「…教導担当のキタカミ、なんだけど……阿武隈ってわかる?頭黄色い奴」

 

早霜「…ええ」

 

清霜「え?わかるの?私わからない!」

 

朝霜「頭乗っかろうとしたら髪の毛崩れたって叫んでた奴…だと思うけど」

 

清霜「あー!」

 

キタカミ「うん、犯人みっけと…初対面の相手にオイタは良くないねぇ、山雲ー、とりあえず農場で預かってくれる?」

 

山雲「…良いです、けど…」

 

キタカミ「言うこと聞かないなら…神通か那珂使おう、川内は甘いからダメ…で、えーと…お、大和じゃん、おーい」

 

通りがかった大和を呼びつける

 

大和「な、なんでしょうか!?」

 

キタカミ「そこの3人引っ張り出して、山雲の言うこと聞かせといて、午後練休んで良いから」

 

大和「え、本当ですか!?」

 

キタカミ「出たいなら良いけど」

 

大和がさっさと3人を引っ張り上げる

 

朝霜「でっか……」

 

清霜「3人合わせたくらい大きいね…」

 

早霜「流石に、そこまでではないですけど…192くらいですか?」

 

大和「は、測ったことないのでわからないですけど…ええと…?」

 

山雲「はーい、これ持って下さ〜い」

 

山雲が有無を言わさず麦わら帽子と軍手を配る

 

朝霜「な、なんだこれ?」

 

山雲「雑草取り、手伝ってくださいね〜…終わったら、そうですね〜……この時期だし、さつまいもが美味しいですよ〜…カボチャも、甘いです〜」

 

清霜「お、おー…?」

 

早霜「……農作業に来たわけではないと思うんですが」

 

キタカミ「言うこと聞いて大人しくしてない罰さね、ちゃんとやらないと山雲は怖いよ〜?」

 

大和「キタカミさん程では…」

 

山雲「うんうん〜…私は怖くありません、よ〜?」

 

朝霜「けっ!あたいはこんな事しに来たんじゃないっての!」

 

清霜「そう!深海棲艦と戦いに…!」

 

キタカミ「ダメ、まだ早いね、死にたく無いなら大人しくしてな」

 

朝霜「……チッ…わかった」

 

キタカミ(…ヤケに聞き分けがいい…なんか妙な感じがするね、厳重警戒…しとこうかな)

 

 

 

 

朝霜「ふぃー…つ、疲れた…」

 

早霜「…随分、広い畑…」

 

清霜「ねぇねぇ!ちゃんと気づかれて無いかな!?」

 

朝霜「気づかれるも何もないだろ…別に何か悪いことしてるわけじゃないしさ」

 

早霜「朝霜、どう思いましたか」

 

朝霜「…キタカミってのは偉そーにしてんなとは思ったけど、なんで杖ついてるんだろうな、脚悪いのか?」

 

早霜「重心を杖にかける歩き方に慣れてました、多分」

 

清霜「タイエキグンジンって奴かな!?」

 

朝霜「なんでもいいよ、その辺は…あたいらは上手く死なないようにすれば良いだけだ…でも、本当なのかね、10年間勤めたらシャバで安全な生活が保証されるって…」

 

早霜「国のお偉方が言うんですから、多分…」

 

清霜「楽しみだねー!10年後!」

 

大和「あ、居た…終わりましたか?」

 

朝霜「あ、あー…終わった、けど…」

 

大和「山雲さんがお芋を焼いてくれたので、良かったら」

 

早霜「…御相伴に預かります」

 

清霜「焼き芋!美味しいんだよね!?」

 

大和「た、多分…」

 

朝霜「…焦がしたのか?」

 

大和「いえ、私は食べたことなくて…」

 

清霜「えー、同じだ!」

 

大和(まともな人の食事なんて前の世界では殆ど食べてこなかったし、この世界も人間になって浅いから、美味しいものわからないし…何て言えばいいのか…)

 

 

 

 

 

 

キタカミ「で、こっちは…寝てんのね」

 

大井「しーっ…今さっき寝た所ですから」

 

並べられた布団に4人、球磨姉が抱え込むように4人揃って昼寝…

 

木曾「どうにもな、その端っこの指しゃぶってる奴は人見知りが激しいみたいでな…泣き疲れて寝たと思ったら残りも一緒になって寝ちまった」

 

キタカミ「……戦わせる必要は、無さそうだね」

 

北上「戦わせようとしてた?まさかコレを?」

 

キタカミ「なわけ、こんな何もわかってないような子供なら…変に戦争しようなんて考えないだろうなって」

 

大井「……」

 

木曾「どうすんだ?北姉」

 

キタカミ「親は居ない、送り返す先は施設…か……仕方ない、みんなちゃんとお姉さんしてよ?特に木曾」

 

木曾「なっ…マジかよ、俺は…」

 

北上「俺、禁止」

 

木曾「えっ」

 

大井「言葉遣いは丁寧に…自分のことは私と呼んで、敬語を周りにしっかり使うこと」

 

木曾「待っ…」

 

キタカミ「それから3食野菜のみを食べること」

 

木曾「それは違うだろ!?」

 

多摩「うるさいニャ」

 

大井「子供が起きちゃうでしょう?」

 

木曾(は、反論させる気無ェ……)

 

キタカミ「ま、流石に冗談だけど…気は使ってやってよ、とりあえずウチで面倒見よう」

 

大井「そうですね…球磨型で預かりましょう」

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