元勇者提督 作:無し
離島鎮守府 執務室
秘書艦 アケボノ
龍驤「ちょい!失礼すんで!」
海斗「龍驤…何があったの?」
アケボノ「保護した2人が何か?」
龍驤「ちゃう!もっと悪いわ…多分やけど、保護しとった奴ら取り返しに来た…5人くらいでこっち来とる、ウチの警戒用の艦載機が一瞬でおじゃんや…!」
アケボノ「戦闘配置は」
龍驤「まだや、許可取りに来た」
海斗「こっちから攻撃はしてないなら、できるだけ引きつけて包囲しよう、それで話を聞いてもらえそうにないなら一度制圧して」
龍驤「わかった、現場指揮は?」
アケボノ「提督、私に行かせてください」
海斗「わかった、任せたよ」
アケボノ「包囲をすることを考え、こちらの被害を抑える点も含めると…はぁ……また川内型に頼りたくなる」
曙「何が問題なのよ」
アケボノ「あれは便利すぎるのよ、対人なら一定以上の成果を確実に挙げられる上に…人数不利であろうが何であろうがお茶の子さいさい、空間把握能力、状況判断能力、そして自分たちの力量を完璧に把握し、可能な行動を分析する…これらは誰にでもできるわけじゃない」
曙「それができると何が困るのよ」
アケボノ「川内型の後がいないのよ、朧は多様性があるし、判断力もあるけど川内型のような潜入は大の苦手、戦闘だけなら個人では匹敵するかもしれないけど、それならアンタでも事足りる」
曙「……あのさ、その話長い?いやもうだいぶん長いけど人集めてからする話じゃないと思うのよ」
アケボノ「ああ、これは失礼、では、不知火さん、朧、曙、の3人で高速で引きつけてから球磨型で包囲する算段です」
朧「まあ、良いんだけど…」
不知火「失礼かもしれませんが、先程の話をしたうえで川内型を入れないと言うのは…意図的に前回メンバーを外しているのですか?」
アケボノ「ええ、阿武隈さんはまだ落ち着くのに時間がかかるでしょうし、誰かに挽回の機会を与えるなら全員に与えられるべきです、急ぐ必要はない」
不知火「そうですか、てっきり失敗したら次はないのかと」
アケボノ「そう思うべきでしょう、命をかけて戦うのなら」
朧「……アケボノは出ないの?」
アケボノ「私は、今の仕事に満足してるし…何より戦う気はない」
朧「あ、そう」
3人を見送る
アケボノ「さて、どれくらい上手くやれるか…」
今回の作戦の重要性はどれほどのものか、下手をすれば外交にまで影響が出る、それほどに重要なもので、戦闘は避けなくてはならない
アケボノ「後、任せましたよ」
球磨「何するつもりだクマ」
アケボノ「説明した通りにしてくれれば何一つ問題はないです」
綾波との戦争を終え、私の体には微細な変化があった
いや、正確には…喰らう量が減ったのか
アケボノ「……では、お互い仕事を全うしましょう?」
海のそばまで歩き、腰を下ろす
靴を脱ぎ、足先を海に浸す
球磨「……それ、球磨が見ても良いもんなのかクマ」
アケボノ「貴方は分別があるでしょう?」
海へと潜る
駆逐艦 朧
不知火「朧さん、どうですか?」
朧「……もうすぐ視認距離だと思う、警戒体制、を…?」
曙「どうしたのよ」
朧「…今、アケボノの匂いがしたような…気の所為かな……あれ、火薬…?」
戦闘音がここまで響いてくる
朧「…あ……い、急ごう…!」
曙「どうしたのよ」
不知火「何かあったんですか?」
朧「……アケボノに抜け駆けされた…」
曙「は!?」
不知火「それは、まさか…」
速力を上げて近づく
アトランタ「この!離れろ!」
アイオワ「た、対空!」
ワシントン「フレッチャー!ヘレナ!」
フレッチャー「わ、わかってます!」
ヘレナ「そ、それよりレーダー見て!新手も来てる!」
ワシントン「今は空を取り返して!ああもう!アトランタに張り付いてるレ級を仕留めるわ!」
レ級「…ハッ」
金属が裂ける音が響く
アトランタ「なッ…コ、コイツ!艤装を壊し…よ、よくも!」
レ級がアトランタを蹴り飛ばし、アイオワの背後へ回り込む
アイオワ「ッ!旋回が間に合わな…」
至近距離からアイオワの艤装を撃ち砕かれる
ワシントン「なんて火力…いや、それよりも…この、感じ…」
ヘレナ「ワシントン!ぼさっとしてたら…」
フレッチャー「きゃあっ!?」
機銃の銃撃を受けた
フレッチャーの艤装が崩れ落ちる
レ級「……この程度、か」
つまらなさそうにレ級が機銃を捨てる
アトランタ(あの機銃、あたしの…!)
ワシントン「こ、コイツ…!ノーフォークの時のレ級…!ダメ!コイツは相手しちゃ…」
ヘレナ「も、もう遅いって!!…っぐ!」
ヘレナの艤装をレ級の腕が貫く
アトランタ「…こいつ!逃げられなくするつもりじゃ…全員戦えなくしてから殺そうと…!」
レ級の尻尾がワシントンの艤装を喰い千切る
ワシントン「ぶ、武器が…ないのに、どうすれば…」
レ級の尻尾に薙ぎ払われ、ワシントンが水面に倒れる
ワシントンの方へと尻尾が揺れながら近づく
レ級「…っと?」
朧「っりゃああぁぁぁぁぁ!!」
朧がレ級の目の前に降り、水面を殴りつける
朧「…これ以上は、許さないよ」
レ級「……なら、止めてみなさい」
朧「…!」
朧(全部、プラン通りってわけ…!?良い加減にしてよ…!)
レ級が尻尾を振るう動作を見せた瞬間、砲撃を受けてよろける
レ級(…前より精度が高くなってるか、不知火さんは流石に手を抜かないな…)
朧「ああもう、やるしか無いって事…!?」
朧が踏み込み、格闘戦を仕掛ける
レ級(…さて、どのくらいで逃げるか…ッ!?)
朧の艤装がバチバチと音を立てる
レ級(それは…やり過ぎ…!)
朧の回し蹴りを受け、レ級が海の中へと吹き飛ぶ
朧(絶対、浮かんでこないでよ…さっさと帰って、ほんとに)
朧「…はぁ……ぁ?」
レ級「……」
朧「浮かんできたし…!」
今度はレ級から格闘戦を仕掛ける
レ級(…少しはやり返す…)
朧(何で…あーもう!気を利かせて海の中に蹴飛ばしたのに!)
2人の蹴りがお互いを捉える
レ級「ッ」
朧「ぁが…!」
朧が蹴りを受けてよろけ、レ級に背を向ける
レ級(…隙だらけ…)
朧(もう気が済んだでしょ、アタシにもやり返させてよね…!)
朧が艤装のスイッチを入れ、カートリッジを挿入し、レ級を誘い込む
レ級が朧に迫り、殴りかかる
レ級「!」
朧「もう、浮かんでこないでよね…」
ムーンサルトキックがレ級の後頭部に炸裂し、レ級が沈む
朧「……はぁ…つ、疲れ、た…」
思わず膝をつく
朧(アケボノ…帰ったら、どうしてくれようか…あーもう、最悪…)
周りの視線に気づき、あたりを見渡す
警戒するような、敵意の籠った目…
朧(…助けたつもりなんだけどな……)
そのうちの1人が砲撃を受けて何かを落とす
アトランタ「っ…」
不知火「助けてもらった相手に武器を向けると言うのは、いただけませんね」
曙「朧、大丈夫?顔色悪いけど」
朧「…お腹痛い…」
不知火「胃潰瘍かもしれませんね」
朧「…笑えないって」
信号を送り、追加の人員を待つ
朧「…ええと、アメリカの方達ですよね、ここで何をしていたんですか?……あ、日本語通じるわけないか…できる?」
曙「無理」
不知火「中学生レベルなら」
朧「みんな同じか…」
追加で通訳を要請する
朧「……はー…どうする?」
曙「さあね、コイツらが友好的かどうかから調べなきゃいけないわけだし」
不知火「あの2人と同じなら助かるのですが、あの2人は本当に暴走していない艦娘だったとして…この5人もそうとは限りません」
朧「…今になってアケボノが言ってた事わかる気がする、川内型なら戦艦だろうが何だろうが簡単に制圧するし…うん、見張りには最適だよね…」
曙「あと川内が面倒見いいから新人を任せても問題ないってのがね」
不知火「そうなんですか?」
朧「夜以外は完璧だよ、川内さん……あ、来た、帰還用のボート」
5人をボートに乗るよう誘導し、自分たちも乗り込む
朧「一応武器は構えておいて、あ、球磨さん、通訳は…」
球磨「連絡が遅かったから無しだクマ…向こうで待機してるはずだクマ」
曙「球磨型勢揃いの必要あるの?」
大井「見張りは多い方がいいですから」
離島鎮守府
教導担当 キタカミ
キタカミ「お帰り」
球磨「そら、さっさと降りるクマ」
朧「…腰痛い…」
曙「年なんじゃ無いの?」
不知火「いえ、成長痛では?」
朧「や…そう言うのじゃなくて……あ、キタカミさん、アケボノは?」
キタカミ「執務室に足早に戻って行ったよ」
朧(証拠隠滅か…)
キタカミ「おーい、出といでよ、2人とも」
サミュエル「…酷いこと、してないよね」
キタカミ「大丈夫大丈夫、心配ないからさ」
ガンビアベイ「…あ、みんな居る…!」
アトランタ「ガンビアベイ、サム…?
アイオワ「
キタカミ「……」
サミュエル「大丈夫、そっちも元気そうでよかった」
ヘレナ「…
ガンビアベイ「違うよ、その…こそこそ話して疑われたくないから…」
キタカミ「なるほどね、あんたらも日本語わかるんだ」
サミュエル「みんなわかる、安心して」
アトランタ「…随分仲良くやってるみたいだけど?助けに来なくてよかったワケ?」
サミュエル「助けにって…そっちが助けられたみたいだけど」
アトランタ「何だと…」
ガンビアベイ「えっと……と、とりあえず…喧嘩はやめて…」
キタカミ「ま、立ち話も何だしさ、お茶でもどう?」
サミュエル「あ、あそこに連れてくの…?」
ガンビアベイ「そ、それは…」
キタカミ「いや、自分たちのやったことちゃんと見てもらわないとね」
食堂
アイオワ「…この空気で、tea?…冗談でしょ…」
ワシントン「……あの人達、見覚えがあるわ」
キタカミ「そう、あんたらが撃った人達さね、ちゃーんと何したか目に焼きつけなよ」
アトランタ「何がしたいのか全くわかんないんだけど」
キタカミ「アンタらが撃ったのは人間、何も悪い事してない人間撃ってどう思った?」
アトランタ「はっ……別に?」
キタカミ「本心なら、あんた深海棲艦と何も変わらんから…ちゃんと理解しときなよ」
アトランタ「…んだと、クソジャパニーズ!」
詰め寄ってきたアトランタが椅子に無理やり座らせられる
アトランタ「何し…
大和「キタカミさんに手出しはさせません」
キタカミ「おー、良いとこに来たね、とりあえず他の4人も座ってくれる?ねぇ?」
全員を座らせる
キタカミ「ま、そう固くならないでよ、別に喧嘩するつもりじゃないしさ、でも自分が何やったかよーくわかってくれないと、話もできないでしょ?」
ワシントン「……」
キタカミ「あ、そうそう、アンタら自分が法律に触れる事してるのわかってるよね?法律ってのは土地のものだからさ、何人とか関係ないんだわ…日本の海域に不法に入り込んで救助されてるんだからさ」
ヘレナ「…わ、私達どうなっちゃうの?」
キタカミ「それを今アメリカ本国に確かめてる、ガンビーとサムの事も含めてね」
アトランタ「随分とお優しい事で」
キタカミ「まあ、脅すワケじゃないけど…正式に要請を受けて派遣した舞台を?騙し討ちで一方的に攻撃したアンタらは…どーんな処罰受けるのかな」
フレッチャー「うぅ…」
キタカミ「特に、ウチのモンに手出してタダで済むと思わないでよ?」
アトランタ「知るか…こっちだって仕事しただけだっての」
ヘレナ「アトランタ…!」
キタカミ「ほー、ふんふん、仕事ね…大和?」
大和「はい」
大和がビデオカメラをテーブルにセットする
キタカミ「さ、もう一回言ってよ、横須賀の部隊を襲撃したのは仕事だった…って」
アトランタ「…チッ」
キタカミ「私気は長いから、ゆっくり楽しもうか?」