元勇者提督 作:無し
離島鎮守府 執務室
秘書艦 アケボノ
海斗「えっと…?」
アケボノ「つまり、私は深海棲艦の力を使い、アメリカ艦を助けて恩を売る状況をつくりました、要するにマッチポンプです」
海斗「それはわかったけど、何でそんな事…いや、そっか、アケボノはそれくらい重要だと思ってくれたんだね」
アケボノ「…まあ、はい、しかし勝手な行動を致しました、報告をさせていただきます」
海斗「…いや、みんなのためを思っての行動だ、結果として怪我人もいない、問題ないよ、ありがとう、アケボノ」
アケボノ「もったいないお言葉です」
海斗「…ところで、なんで僕をアメリカの艦娘と会わせないようにしてるの?」
アケボノ「お気づきでしたか…一応軽いボディチェックは行いましたが、その身一つあれば人を殺すなど容易なものです、ましてやそれが7人も居るとなると…暗殺を試みた際、私どもが守り切れる保証はありません」
海斗「…そっか、気を遣ってくれてるのはありがたいけど、君たちに任せきりにしたくはない、できれば一度直接会いたいんだけど…」
アケボノ「……少し、時間をいただければ」
海斗「…アケボノ、君のやり方を否定するつもりはないけど…そこまで過保護にならなくても…」
アケボノ「提督、私は提督の意思を何よりも尊重するつもりです…提督の目を、艦隊のみなに向けるために、最善を尽くします…ですので、今はやるべきことを…あなたのすべき事を」
海斗「…アケボノ、君はどこまで知って…」
アケボノ「提督の目に憂いが宿っておりました、となれば手を尽くすのが私の役目です、どうか雑事は私達に任せて、やるべき事を遂行してください」
海斗「……任せる事と投げ出す事は、違う」
海斗(ここで、ネットに専念する訳にもいかない、今はアメリカとの騒動における大事な時期だ、だから…だけど……)
アケボノ「納得するまで、貫き通すなら…覚悟が要ります、提督、無礼承知で伺います、覚悟は如何程でしょうか」
海斗「……なんだって、やるさ…待ってる人達がいるんだから」
アケボノ「…決して私が望む訳ではありません、しかし提督ならここで職務から離れて別の道に進めるかもしれない」
海斗「…確かに、それもアリかもね…でも、この理由は僕の勝手な理由だ…みんなを裏切ることはしたくない」
アケボノ「両方を熟すのは、簡単ではありませんよ」
海斗「わかってる、口だけじゃない」
食堂
アケボノ「…って仰ってたの、どうやればお力になれると思う?」
朧「…いや、知らないけど」
漣「なんでそれを丸々持ってくるの、考えた上で来るでしょ普通」
アケボノ「難解な問題だから、仕方ないでしょ」
朧「そんな事より、アケボノ?アタシは言いたい事が…」
アケボノ「それは別の場所、誰がどこで聞き耳立ててるかわからないんだから」
朧「……」
アケボノ「それに、やり合わなくて済んで良かったでしょ」
朧「結果的には、ね…!アケボノ、そのやり方は独りよがりだよ」
アケボノ「わかってる、だけどアンタ達が傷つくのは…提督もそうだろうけど、私にはとても耐えられない」
朧「……アケボノってホントずるいよね」
アケボノ「そりゃあ、アンタの妹だし?」
朧「…はぁ……」
演習場
教導担当 キタカミ
朝霜「なんであたいらは見てるだけなんだよ」
キタカミ「危ないから」
早霜「指導を受ければ危なくなくなるのではないですか?」
キタカミ「いんや?危ないもんは危ないよ、自分で危機管理できるくらいになるまでは触らせたくないなーって」
朝霜「…あたいらよりもっとガキなのもいるじゃねぇか」
キタカミ「暁達のこと?アレは…横須賀のエリート様だから、ほっときな」
清霜「私も強くなりたい!」
朝霜「深海棲艦と戦わなくて良いのか?」
キタカミ「あーはいはい、戦力ってのも大事だけどね、アンタらはまず学校並みの勉強もしなきゃならないでしょーが」
朝霜「なんでだよ、そんなもん要らねえだろ」
キタカミ「戦争終わったらどうすんのさ、犯罪やらかしたらまともに生きてけないよ?」
朝霜「はっ!そんなもん国が面倒見るだろうよ!」
自信満々に言い切る朝霜に杖をつきながら近寄る
キタカミ「……もしかして、そう言われて艦娘にでもなったの?ちゃんと裏取ってんの?それ有名な話?ちゃんと契約書書いた?」
朝霜「な、なんだよ…」
早霜「契約書は、書きました…まだそのシステムについては広まってはいないそうですが」
キタカミ「…どう言う内容」
早霜「…言うと規則に触れるそうですが…」
キタカミ「誰が把握できるのさ、そんな事」
清霜「10年ここで働いたらその後の生活は保証してくれるって!」
朝霜「あ、おい!」
キタカミ「……」
どう言う事か、そんな話私たちには来ていないのがおかしいのではないか、そもそもちゃんと履行されるのか
キタカミ(調べてもらうしかないか、でも…もし私の考えてる通りなら、この子達は…死ぬべくして、ここに来た…?)
そんな最低な推測が頭をよぎる
キタカミ(…いや、まさか、そんな訳ない…少子高齢化してんだし、子どもが減るのを国が望む訳…でも、だとしたらシステムを使うのが女児ばかりなのも不合理、あーもう、どうなってんだか…)
早霜「考え込んでおられるようですけど」
キタカミ「気にしなくて良い…とは、とても言えないね……アンタら、もうちょっと身の振り方考えようか…ぁだっ?」
背中に何かがのしかかる
キタカミ「…んー、佐渡?」
佐渡「いひひっ!当たりー!」
キタカミ「今大事な話してるから、アンタはちょっと大人しててくれる?木曾〜?……居ないし、みんなはどこ行ったのさ」
佐渡「なんかー、熊観に行くんだって!いこーよ!」
清霜「クマ!観たい!」
キタカミ(あー…めんどくさい……)
キタカミ「アンタらはダメ、やる事教えるから、先にそっちで…佐渡は1人で追いかけられる?」
佐渡「えー、来ないの?」
キタカミ「仕事中なんだよ…」
佐渡「なんだよそれー、訳わかんないって…」
佐渡が背中を降り、駆けていく
朝霜「けっ、あたいらは学校みてーに勉強か?」
キタカミ「そうさね、社会に出ても勉強できなきゃ生きていけないから」
清霜「勉強きらーい!」
キタカミ「……ま、教科書だの何だの、仕入れからだねぇ……今日は訓練の見学にしとくけど…」
早霜「結局このままなんですね」
朝霜「体動かしてる方が健全じゃねーのか?」
キタカミ「…艤装触らなければ良いけどさぁ…ちゃんと言うこと聞ける?」
朝霜「チッ…その上からモノを言う態度、気に食わねー」
清霜「ねー!」
キタカミ(あー、もう、阿武隈とかしか教えた事なんて無いのに…いや、私達は元は…AI……うん、そうだ、だから意欲的に物事を学べた…人間だったらこれが普通なんだろうな……そっか、私は…身体だけ人間で…)
早霜「…どうかしましたか」
キタカミ「…あー、うん………疲れた、ゴメン、休むわ」
朝霜「は?何だそりゃ」
キタカミ「…代理は立てるから」
杖に体重をかけ、よろよろと歩く
まっすぐ歩きたいのに、それすらもできない…
執務室
キタカミ「よっと……提督、こっち来てくれる?」
執務室のソファに腰掛け、提督を横に座らせる
海斗「ここで良い?」
キタカミ「んー」
肘掛けに脚を置き、横向きにソファに座る
頭は提督の肩に投げ出し、目を瞑る
キタカミ「しばらく、寝かせて」
海斗「…聞いて欲しい事があるなら、聞くけど」
キタカミ「……んや?…起きてる私は、何にも言うことなんざ無いね」
要するに、これは寝言だ
キタカミ「…ねぇ、私って人間なのかな、それともAIなのかな…私は確かに人間の体をもらった、だけど…考え方も、行動も、意思も、全部…機械的すぎるのかな…」
海斗「人間だと思うよ、キタカミは…周りとは少し違う、みんなそうだけど、それぞれが少しずつ違って、それはAIも人間も同じで…」
キタカミ「……私、平和嫌いだわ」
海斗「え?」
キタカミ「退屈じゃん、私は…ロボットだから、敵が居ないと居る意味無くしちゃうんだよ、仕事を与えられて、初めて動けるロボットなんだ」
海斗「…キタカミはみんなの事を考えて、自分で動けるじゃないか」
キタカミ「それは役割があるから、役割を果たすしか脳のないロボットなんだよ」
海斗「……僕は、それが羨ましいな」
キタカミ「え?」
海斗「…目の前に見えてる役割を、全部こなせるなら…誰かが苦しむ事もないから」
キタカミ「……」
海斗「確かに、元々君たちはAIだったかもしれない、だけどみんなあまりにも個性的で、人間的で……それに、僕は人間もAIも区別する必要はないと思うんだ」
キタカミ「…差別じゃなくて?」
海斗「うん、僕からすれば…AIは外国人なのかもね…お互いを理解し合う事ができれば……あとは、相手が悪いことをするつもりさえなければ…きっと」
キタカミ「……ふーん…」
海斗「…区別は、必要かもしれない、だけど…あまり仕切りを大きくすると分かり合う事もできない…」
キタカミ「…私、どうしたら良いんだろうね…朝霜達のこと」
海斗「まずは、仲良くなってみたら?」
キタカミ「えー…駆逐艦はうざいよ…あ」
執務室の扉が開く
明石「失礼しま……あ、お邪魔でしたか…」
海斗「…いや、そんな事はないけど…静かにしてあげて、寝てるみたいだから」
どうやら、寝たフリに合わせてくれるらしい
キタカミ(じゃ、盗み聞きといきますか)
明石「…わかりました、あ、これ」
ソファの前にどかどかと機材が積み上げられる
明石「パソコン周辺機器をまとめて修理しておきました…その、型が古かったり、経年劣化してたモノを…」
海斗「ありがとう…でも、どうして…?」
明石「……その、記憶が戻る前とは言え…心無い発言の数々を…謝りたいなって…」
海斗「…別に良いのに、気にしてないよ」
明石「そうはいきません…その、ごめんなさい、提督」
海斗「こっちこそ、大変な時期にいなくてごめん」
明石「……提督、これ、アケボノさんに言われて用意したんですけど…最新のディスプレイだそうです」
海斗「VRスキャナ…」
明石「ご存知でしたか…その、良かったら使ってください」
海斗「ありがとう、使わせてもらうよ」
明石「そ、それじゃあ私は…ま、また…」
海斗「うん、いつもありがとうね」
キタカミ「んじゃね、明石」
明石「お、起きて…!?」
キタカミ「ん、全部聞いてたよ」
明石「性格悪いですよ!!」
キタカミ「かもねー」
さて、朝霜達とどう接するかな…
キタカミ(…寝てから考えるか…)
明石「ちょっと聞いてるんですか!?」
海斗「…あれ、今度はほんとに寝たのかな…」
キタカミ「……すぅ……」
明石「……あれ?そう言えば私、キタカミさんが寝てるの、初めてみたかも…」
海斗「…確かに、言われてみれば…」
今は、少し眠い…