元勇者提督 作:無し
離島鎮守府 工廠
工作艦 明石
明石「あ、島風ちゃん来てくれた!よかったー、ほら、見てこれ!」
島風「えっと…」
あの戦い以来、島風ちゃんの艤装は天津風ちゃんに譲渡されていた
だからもう一つ、艤装を1から作り直した…
明石「まあ、性能的にはあったのには届かないんだけど…でも、前の加速…多分これなら300は出るかな、だからきっと…」
島風「え、えっと、明石さん!」
明石「ん?あー…き、気に入らなかった…?」
島風「そうじゃなくて…あの、嬉しいんですけど、実は…特務部から私用の艤装を復元したからって…」
明石「…へ…?」
島風「そ、その…えっと…」
明石「……また特務部か!」
手に持っていたスパナを投げ捨てたい衝動を抑えて作業台に置く
明石「おかしいなぁ!特務部ってそういう機関じゃないのになぁ!一応軍内の正常な機能の為にある公安的立ち位置だったはずなのになぁ!!」
島風「あ、明石さん、落ち着いて…」
明石「う…うぅ…私この世界じゃあんな超射程の電子兵器とか作れないし、そもそもあの世界の物理法則とこの世界の物理法則は微妙な差異があるせいでそのままのシステムは流用できないしで……あれ、私何なら役に…およよよ」
…あれ、でも
明石「…島風ちゃんの艤装は復元なんてできるような代物じゃ…確かにベースは私の作った艤装だけど、綾波さんが魔改造してオーパーツじみた物になってるのに…」
島風「そ、それは聞いたんだけど…駆逐棲姫との戦いの前に、特務部を実質的に支配されてた期間がわずかにあったらしくて…」
明石「…どうなってるんですか?それ、日本の軍はめちゃくちゃだぁ……ははは」
もう、頭痛い…
島風「だから、その…復元できたらしいです…」
明石「…はー……はー、ふざけて…っ…あー…もうダメ、なんで特務部が艤装作ってるんだー!私の仕事を返せー!!」
島風「…あ、明石さん」
明石「いや!引かないで!わかってるんです!おかしいのはわかってるんです!」
島風「そ、そうじゃなくて…」
島風ちゃんが入り口に視線をやる
アケボノ「…お疲れの様です、提督、また後日にしますか?」
海斗「そ、そうだね…」
明石「……おぅ…ど、どうしました!?私は全然元気ですよ!?」
海斗「えーと…これ」
所狭しとリヤカーに積まれた艤装を見せられる
明石「見たことない、艤装……いや、これはあの夕雲型と設計を…あ、このロゴアメリカの……ふむふむ…組み方が違うんだ、それで…ああ…でも、すごく壊れてますね……」
海斗「明石、いいかな?」
明石「は、はい!なんでしょう!?」
海斗「この艤装の修理をお願いしたいんだけど…」
明石「分かりました!喜んで!……って言いたいんですけど、これ、まるで引き裂いたみたいに壊されてますし、こっちは大穴、こっちは接続部のパーツが壊されてるし……時間、かかりますよ?」
海斗「構わないよ、今居るアメリカの子達はどうやら引き取ってもらえなさそうなんだ、だからここで収容する事になって…もし帰る事になっても艤装がないと海上は渡れないからね」
明石「艤装使っても1週間近くかかりますけどね……と言うかよくここまで燃料が持ったなー…」
アケボノ「ガンビアベイさんの話だと回収船があった様ですし、補給しながら来たのかもしれません…しかし、南は深海棲艦が弱いのか少ないのか、ここよりはマシそうですね」
海斗「この辺りもみんなのおかげでかなり減ったと思うよ」
明石「…あ、このレーダーなら作れそう…真似すれば…」
アケボノ「…どうかしましたか?」
明石「いえ、実は阿武隈さんに頼まれてる事が……よし、わかりました、とりあえずこれらはこちらで預かりますね」
海斗「頼んだよ、明石」
駆逐艦 朧
敷波「………」
チキチキと金属が擦れる音、そしてキンッと接触する音が響く
敷波「……悪く、ないかな」
装備の手入れを終えた敷波がライフルを熊の背中に置く
敷波「お待たせ、朧」
朧「ううん、大丈夫…それより気になる事って?」
敷波「……いや、朧ってパソコン詳しい?」
朧「え…?」
敷波「The・World、やってみたいんだ」
朧「どうしたの、急に…」
敷波「……あれから、アタシの中にはポッカリとした穴が空いてる、でもそれは綾姉ぇ1人分の穴なのか…わからないんだよね、ゴレが寂しがってるのかも、ダミーなんて言われて、本来いるべき場所に居られないから……だから、もし可能ならThe・Worldにこの因子は還そうと思うんだけど」
朧「…そっか」
敷波は元々あまり元気がいい方ではない、だが…
あれ以来、ますます元気を無くしてる気がする
敷波「おーし、プチグソ、部屋に戻ろうなー」
…思えば、綾波を悼む事はあまりしていない
やったことを思えば当然なのかもしれないが、葬儀も無く、墓すら綾波には無い…
だけどそれは敷波の言い出した事でもある、綾波が永遠を求めたなら、形として残すのは…何かが違うのだろうと
でも、今の敷波を見ると……墓の一つは、在るべきなのではないかと思う
The・World R:1
Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域
グリーマ・レーヴ大聖堂
???
「んー…!ふぅっ……良い気分ですねぇ…」
大きく伸びをする
常にここは夕陽が差す
影の中に、そして夕闇の中に、佇む事のできる…落ち着いた場所
「あなたもそう思いますか?……いや、あなたは私とは違うのかな…」
カツカツと後を立て、カラフルなバレエ衣装の様なコスチュームの女性が近づいてくる
クラリネッテ「……」
「初めまして、何か御用ですか?」
クラリネッテ「…不正ログイン…」
「ああ、そうですね…それは失礼?見逃してくださいよ、少しくらい」
女性が輪っかの様な武器を両手に持つ
「…融通の効かない人だ」
ため息を一つつき、直剣を逆手に持ち、切先を聖堂の床に当てる
空いた手で操作板を呼び出し、情報をインストール…
「…クラリネッテ…さんですか」
クラリネッテ「…!」
クラリネッテがこちらへと走り、詰め寄る
「速いですね、多分ゲームの中ではあり得ないほど速いのでは?…でも、リアルにはもっと速い人がたくさんいますよ」
クラリネッテの攻撃をかわし、カウンターの蹴りを腹部に突き刺す
「…なので、敢えて言いましょう…鈍いですね、貴女♪」
クラリネッテ「…っ…!」
クラリネッテがゴロゴロと聖堂を転がり、長椅子に衝突する
「シックザール、ふむふむ…舞姫…確かにバレエダンサーの様な装いは舞姫というに相応しい…でも、きっと貴女は…まだ弱い…」
クラリネッテが起き上がり、反撃してくる
「…それにしても、どこかで…そうか、貴女は、もしかして…私、貴女を知ってるかもしれません…この周波は恐らくVRスキャナ、VRスキャナというのは精神治療の医療器具で…」
クラリネッテの攻撃を軽く受け流しながら、思案する
「思い出せ〜…えーっと、そう、私昔雑誌で精神疾患により挫折した人を1人を見たんですよね…確か名前は…小春寧…」
金属がぶつかり合う音
眼前に迫った輪っかを直剣で防ぐ
「…ビンゴ、ですか…将来有望だったバレエダンサーさん」
クラリネッテ「貴女は、誰…!」
「さあ、誰でしょう…幽霊かもしれません」
クラリネッテ「…ッ……」
クラリネッテが力無く、輪っかを引く
「……成る程、馬鹿みたいに突っ込んでこないところを見るに…貴女は信頼できる人がそばにいるらしい…ちゃんと貴女を導いてくれる誰かがいる、それは幸せな事ですよ」
直剣を下ろし、一歩退がる
「私はやりあうつもりはありません、今日はお帰りになっては?」
クラリネッテ「……強くなる、貴女を倒せるくらいに」
「ええと、私は戦うつもりないんですけど」
クラリネッテの姿が赤いエフェクト共に消える
「…エラー転送のエフェクト…PCボディにダメージを与えすぎたかな…調節が難しいなぁ…」
頭の中が騒がしい
「あーもう、うるさいですよ!別に冷たくしてるわけじゃ……はいはい!次会った時に謝れば良いんでしょう!?わかりましたよ!」
長椅子に腰掛け、像が置かれるはずの台座に祈る
(…ま、願わくば……地獄の、最果てに落ちられます様に)
The・World R:X
Θサーバー 蒼穹都市 ドル・ドナ
拳闘士 ボーロ
ボーロ「うーん、思ったより変わってないなー」
としきっく「何か変わってるの?」
ボーロ「バージョンがね」
としきっく「へー…」
ボーロ「どう?何か…感じ……」
としきっく「朧?」
ボーロ「……因子…?この世界のどこかに、碑文使いがいる?」
としきっく「本当に?」
ボーロ「…正直、わからないけど…」