元勇者提督   作:無し

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落とし所

真実の部屋

双剣士 ハル

 

ハル「……またここか、用事はないんですが」

 

真っ白な部屋

大量に積まれた本の中にあるロッキングチェアを手で押して揺らしながら、色眼鏡の男がこちらを向く

 

オーヴァン「コルベニクが君を呼んだんだ」

 

ハル「……何の用ですか」

 

オーヴァン「君は力の使い方を分かっている、だが…あまりに傲慢だ」

 

ハル「私は私の忠義と、望みのために生きている…それを傲慢と言われる筋合いはありませんよ、オーヴァン」

 

オーヴァン「そうか、君は傲慢だとは思わないか…だが、君の言葉は人を殺める力を持っている、コルベニクには人の深い部分に語りかける力がある、君の言葉は周りにはどう聞こえているか、考えたことは?」

 

ハル「私は殺すつもりでした、一切の躊躇なく」

 

オーヴァン「……優しい怪物になるつもりかな」

 

ハル「いいえ、非情な怪物です、敵を破壊する怪物になるつもりです」

 

オーヴァン「誰かを頼ることは、悪い事じゃない…ハッピーエンドのつもりが側から見ればバッドエンドという事もある」

 

ハル「ハッピーエンドはこれから起こる不幸の黙殺の上に成り立つ」

 

オーヴァン「そのエンドは、キミは幸せなのかな?」

 

ハル「……」

 

オーヴァン「君の手元にはコルベニクの因子と、ダミー因子がある……それを手放すつもりは?」

 

ハル「手放す?」

 

オーヴァン「ポーカーでは2より1が強い」

 

ハル「大富豪なら2の方が強いですよ」

 

オーヴァン「コルベニクさえいれば、因子は要らないはずだ…違うかな?」

 

ハル「…確かに、ダミー因子を使う動作は今まで無かった、それこそ艤装の性能を上げるには元来のモルガナ因子であるコルベニクさえあれば…」

 

オーヴァン「君はコルベニクを失っていない、他の碑文使いと違って」

 

ハル「……」

 

オーヴァン「その因子を俺に預けてほしい、届けたい相手が居るんだ」

 

ハル「犬童、愛菜…貴方の妹…」

 

オーヴァン「……」

 

ハル「沈黙は肯定と取りますが」

 

オーヴァン「沈黙は沈黙だ、否定も肯定もしないさ」

 

ハル「ダミー因子を貴方が求める理由がわからない…」

 

オーヴァン「かつて女神はこう言った…強い力、使う人の気持ち一つで救い、滅び、どちらにでもなる、と」

 

ハル「……」

 

オーヴァン「俺はそれとは違う別の強い力を宿した、1人を救うために、多数を滅ぼした…許されざる行為だ、だが、俺の心にあったのは救いだけだ」

 

ハル「…貴方にとっての、ハッピーエンドか」

 

オーヴァン「そうとも言える…だが誰かに話しても、非難されるだけだろう?1人のために大勢を犠牲にすることを世界は許しはしない」

 

ハル「そうでしょうね…貴方は私に何を伝えたいんですか」

 

オーヴァン「強いて言うなら、そう…幸せの青い鳥を探すのも悪くないんじゃないか、と思ってね」

 

ハル「…それなら心配不要、すでに見つけています、あとはその青い鳥を幸せにするだけです」

 

オーヴァン「君と俺は良く似ている」

 

ハル「かも、しれませんね…」

 

オーヴァン「青い鳥は捕まえる物じゃ無い、欲を出せば…全てが滅びる…青い鳥の為に、捧げるんだ」

 

ハル「…何を…?」

 

 

 

離島鎮守府 私室

秘書艦 アケボノ

 

アケボノ「…っ……寝ていた?…いや、ダミー因子が無くなっている…」

 

夢では無いことの証明

そして……

 

アケボノ「……」

 

手元にある、コレは…

 

アケボノ「オーヴァン、私に何をさせたい…」

 

 

 

 

 

執務室

 

アケボノ「時間をとっていただきありがとうございます」

 

火野「いや、それより本題を頼む」

 

アケボノ「アメリカ艦の処遇についてです、書類はもう目を通しましたが…アメリカ政府は彼女らについて感知していない、無関係である…そう言っているようですね」

 

海斗「そうだね、ハワイには連絡がつかないし、アメリカの方でも手がつけられないことになってる」

 

アケボノ「ええ、今彼女らは宙ぶらりんな状況です、そこで.」

 

海斗「賠償艦として、引き入れたい?」

 

アケボノ「その通りです、当然罪状は足りません、それにアメリカにメリットが無いのが問題です」

 

火野「…難しい話だが、ここの戦力補強としては確かに悪い話ではない」

 

アケボノ「ここには隠さなければいけない事実はありません、少なくとも…生きているであろう綾波との繋がりを勘繰られなければそれでいい」

 

海斗「…アメリカもだけど、納得してくれるかなぁ…」

 

アケボノ「納得させる材料を作りましょう、それと…」

 

携帯がやかましく鳴る

 

アケボノ「し、失礼しました…おかしい、電源は切ったのに……え?」

 

海斗「アケボノ?」

 

携帯には1通のメール

送信者は…

 

アケボノ「綾波…!」

 

火野「…内容は」

 

アケボノ「…アメリカの艦娘を賠償艦として受け入れる用意をしてほしい、とだけ」

 

海斗「……どういう…まさか、盗聴されて…?」

 

アケボノ「…気味が悪いと言うレベルじゃ無い、このタイミングで、このメール、綾波はどうするつもりで…」

 

携帯の電源を改めて落とす

 

アケボノ(……ハッキングはもう、いい…防ぎようがない、それはいいとして…電源をどう入れた、物理的に干渉しないと不可能だ…)

 

額に手を当てる

 

アケボノ(仮に万に一つでも私が消し忘れたなら…いや、むしろそれしか考えられない…それより、綾波がなんで……ダメだ、頭痛がする)

 

昨夜の襲撃はなんだ?何故綾波が賠償艦の事に手を貸す?

 

考えても答えは出ない

 

海斗「…とりあえず、明日には一度大使館に行く必要がある…のは、変わらないのかな」

 

火野「賠償艦を受け入れる用意というのも…アメリカがこちらに戦力を引き渡す理由がわからないが」

 

アケボノ「……綾波はやると言った事はやるタイプです、それが私たちに不利益かどうかは関係なく」

 

虫唾が走る

あいつは私達をどうするつもりだ

 

私達に、何をするつもりだ

 

火野「全て明日わかる事…だと良いのだが」

 

 

 

 

 

本土 九州 某所

青葉

 

青葉「……ターゲット、発見」

 

この距離からでもわかる、綾波型の制服と車椅子、そしてあの髪色…

真後ろからなので両脚の有無は確認できてないが…

 

青葉(…人通りがない、今しか確かめるチャンスはない…)

 

艤装を持ち出すことはできなかった為、手元にあるのは小型の拳銃一つ…

もし綾波さんなのならここで撃つ覚悟が必要だ、だけど…

 

車椅子に近づき、追い越し、振り向いて確認する

 

青葉「っ!………あ、れ…?」

 

車椅子に乗っていたのは、一瞬確かに綾波さんだと認識したけど…違う

人形…

 

綾波『あ、どうも青葉さん』

 

青葉「えっ!?」

 

人形が、しゃべった…

 

綾波『驚かないで、首にスピーカー下げてるでしょう?』

 

青葉「……ホントだ…い、いや、そうじゃなくて!……なんで、生きて…」

 

綾波『それは言えません、それよりも貴方に渡したい物があったんです、背中の部分に挟んだ書類、貴方に預けます…好きに使ってください』

 

青葉「…書類…」

 

恐る恐る背中に手を伸ばす

クリアファイルに挟まれた何枚かの書類…の、コピー

 

契約書類と、3人分の…身辺情報…

 

青葉(…契約内容、情報提供……これ、スパイ契約…?)

 

綾波『確かに受け渡しましたよ?』

 

青葉「ま、待ってください!これだけじゃ意味がわからなくて…」

 

綾波『貴方は記者でしょう、自分で調べてください』

 

青葉「……それは、そうですけど…」

 

他にもたくさん仕事があるのに…

でも、これは見過ごせない

 

青葉「…離島鎮守府の、新人…夕雲型駆逐艦、朝霜、早霜、清霜…でも、この契約書…杜撰というか…抜け穴が多いように見えるし…」

 

この契約書には報酬の事まで書かれている、任務達成後の事までしっかりと書かれているが…

 

青葉「こ、これ…匙加減でどうとでも取れますよね…本部が満足する結果が出なかったら契約破棄されると取れるんですが、本当に大丈夫なんでしょうか…」

 

一度、離島に連絡を取らなくてはならない…かもしれない

 

青葉「っていうか……綾波さんは何故私にこれを…中央を破滅させたいんでしょうか…」

 

よく、わからない

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