元勇者提督   作:無し

40 / 625
経過

駆逐艦 荒潮

 

「…朝潮ちゃん…」

 

もうどれだけになるかしら、一月経ってしまったのかしら…

朝潮ちゃんは未だに目を覚まさない

栄養点滴を受けても痩せている

 

「……」

 

有情なことに私は出撃を免除

病室と自室の往復の日々

しかし姉が目覚める気配はない

 

「……はぁ…」

 

ガバッと音がして、いまの今まで眠っていた姉の体が跳ね起きる

 

「うぇっ!?」

 

「………貴女は…確か…荒潮」

 

「朝潮ちゃん…?起きたの…?良かった…本当によかったわぁ!」

 

様子がおかしいのは理解してるが、それ以上に目を覚ましてくれたことが嬉しかった

 

「…ごめんなさい、貴女の求めてる朝潮ではありません」

 

「なんでそんなこと言うのよぉ…!ねぇ…朝潮ちゃんなんでしょう!?」

 

「私は、この子の体を借りているだけ…もちろん許可はもらって」

 

「じゃあ…朝潮ちゃんはいつ起きるの…」

 

「…コレを貴女に託す、もう、身体は目覚めているから…朝潮は、直ぐに目覚める」

 

「…なに?これ…本?」

 

「………」

 

パタリと姉はベッドに倒れる

どこから出てきたかもわからない本

 

「勝手よねぇ…」

 

「全くです」

 

「うわぁっ!?」

 

びっくりして後ろに転げ落ちてしまった

 

「いたた…朝潮ちゃん…なの?」

 

「ごめんなさい荒潮、驚かすつもりはなかったんです」

 

「……ふふっ…そう……いいのよぉ…私、ちゃんとずっと、良い子にしてたのよぉ?お、ね、え、ちゃ、ん?」

 

「…素敵な妹ですね、ご褒美をあげます」

 

「ふふっ…じゃあ、今度一緒に出かけましょう?」

 

「構いませんよ、今からいきましょう」

 

「えぇ…?今?」

 

「今からやることがたくさんあります」

 

「やる事?」

 

「……まあ、色々です」

 

「この本を使うの?」

 

「さあ、よくわかりません、さて、いきましょうか」

 

「…………わかったわぁ」

 

 

 

 

 

横須賀鎮守府

駆逐艦 電

 

「どういう事なのです!」

 

「…どういう事も何もないだろう」

 

「電の…電の…お給料が出てないのです!」

 

「むしろ君の無駄遣いはどこから出てたのだね、幾ら何でも経費で落とし続けるのには無理があるだろう」

 

「文句は認めないのです!」

 

「それは私の台詞だが」

 

「なによりそれよりも、出前を完全に禁止なんて許せないのです!寿司をどうやって補給すればいいのですか!」

 

「むしろこの横須賀で今までよくそれができていた、と思わないのかね、第一に、銀座との距離を考えたまえ、大将も喜んでいたよ、君の脅しを気にしなくて良いとね」

 

「…チッ…コレからは寿司を食べるためにわざわざ外に出なくてはならないのですか…」

 

「それが当たり前なんだがな」

 

「………まあ良いのです、仕方ないし諦めるのです」

 

「なぜ私が譲歩されているのか聞くのはやめておこうか」

 

「それより、状況はどうなのですか」

 

「喜ばしくない、海域の突破どころか良い報告の一つもないのだから当然だが」

 

「…またなんかあったのですか」

 

「有ったらしい、そろそろ限界だな」

 

「上へ隠すことがですか」

 

「違う、節穴の目などどうにでもなる、だが成果にうるさい連中だ、良い結果を出さないとうるさいのでね」

 

「…」

 

「提督不在が強く影響してるのではないかと言われたよ、復帰しなければ代役を立てると、そして向かわせたらしい」

 

「反乱起こしてもしらねーぞ、なのです」

 

「それはない、が、危惧してるのはかつての地獄へ戻る事だけだ」

 

「…9割の人類はまともな死生観を持っているのです」

 

「同じ人間に対してはな、君たちをそう見ない者も多い」

 

「………」

 

「私とて人のことを言えた立場ではないのだ、数年前まで君たちのことを知らず、遊び呆けていた」

 

「なかなかハードな遊びだったときいているのです」

 

「ああ、とびきりハードだった」

 

「もう一度味合わせて欲しいですか?」

 

「その程度では冷や汗ひとつかきはしない」

 

「つまらないのです…」

 

「言っておく、君たちに対してまともな感性で対応するのは1割にも満たない、だが、私は君達を軽んじる事はしない」

 

「じゃあ全員異常者なのです、司令官さんも含めて」

 

「そういう事だ、そしてそれが過半数を越えれば、それがまともと言われるのだ」

 

「………」

 

 

 

 

 

 

離島鎮守府

 

「そうですか、大丈夫です…はい…」

 

「どうしましたか?」

 

「此処に向かっていた代理の提督ですが、来る途中で船ごと沈んだとのことです」

 

「護衛はいなかったんでしょうか」

 

「おそらく、ここに来る時点で左遷ですから…」

 

「…成る程」

 

「それより、全員集めてください、交戦した敵は深海棲艦ではないです、例の敵が出ました」

 

「…新しい敵ですか」

 

 

 

 

 

 

「という事です、入ってきている情報などから、この二つの敵を、イニス、メイガスと呼称します」

 

「質問、対処法は?」

 

「現在ありません、アオボノさんを旗艦とした部隊以外の出撃は禁じます、アオボノさんが旗艦の場合は意識不明や最悪の事態だけは防げるとのことなので」

 

「質問です、前のように誘い寄せて決戦するんですか?」

 

「それも考えましたが…正直言って不可能です、前よりも備蓄などが厳しくなりました、ですが我々は無抵抗に死ぬわけにはいきません、なので皆さんには陸地からの哨戒をしばらく徹底していただきます」

 

「…資源はどうなるんですか?」

 

「アオボノさんを旗艦に我々が輸送船を迎えに行きます、なお、この作戦に失敗すると1ヶ月補給はできません……ですので、大変重要な任務となります」

 

 

 

緊張感が走る

不味いかな、事実とはいえ、状況は最悪に近い

 

 

「とりあえず、行くわ、高速艦のみで行くから、ただ、島風と北上は連れて行けないから」

 

「待って、まだあなたも怪我が完治もしてませんよね、ダメです」

 

「じゃあ補給はどうすんのよ」

 

「…ギリギリまで耐えます」

 

「………お断りよ、私は行くわ」

 

「…あなたはここの最後の砦です!あなたに何かあったら私たちは全滅するんですよ!?」

 

「……どうしたもんかしらね…」

 

「……」

 

 

 

 

呉鎮守府

提督 三崎亮

 

「成る程な、支援してやりてぇとこだが、最悪な事にそっちに送った報告の通りだ」

 

『…そうですか』

 

「こっちも手詰まりでな、悪い」

 

『いえ、いきなり失礼しました』

 

「ああ、ほかに力になれることならなんでもやる、すまねぇな」

 

 

 

「…スケィスなしじゃ戦うことすらままならねぇか…リアルに出ることさえできれば…雑魚だけでも相手はできるはずだが…」

 

結局ゲームの身体は外には出られなかった

おそらくAIDAの信号がスケィスを妨げ、邪魔しているんだろうという推測をしたが、何も意味をなさなかった

 

「トライエッジも姿を現さねぇ…朝潮って艦娘には興味なしってか」

 

AIに情を求めたのは間違いだったのだろうか

いや、違う、もしネットが今それどころではないとしたら?

 

「……不味いかもしれねぇな」

 

電話のベルが鳴る

 

「俺だ、なんだ?」

 

『提督宛に電話です、月の樹からだと』

 

「…わかった、繋いでくれ」

 

『お久しぶりです、ハセヲさん』

 

「…わざわざそっちで呼ぶことか?久しぶりだな、欅」

 

『今僕はネットにいますので、それより、日下千種、アトリさんなんですけど、既に意識不明でした、戸籍も改竄されていましたのでちょっと面倒な事になってましたよ』

 

「…………やっぱりか…」

 

『あれ?案外動揺しないんですね、念の為香澄さんも調べましたが、こちらは無事みたいですね』

 

「…そうか、悪いな」

 

『…やっぱりハセヲさんにはそこは厳しいんじゃないですか?』

 

「俺もそう思う、でも俺がやるしかねぇ」

 

『あははは、ハセヲさんらしいや』

 

「それよりAIDAの方は?」

 

『睨んだ通りオリジナルでは無いですね、例の事件のコピーが出てきたと見ていいです、所詮劣化データ、この調子で行けばすぐにでもワクチンはできます』

 

「頼んだ、明日の命も保証されてない奴も多い」

 

『ゲームでも国家でも、運営は優しく無いですからね』

 

「…まぁ、そんなもんだよ」

 

『何はともあれ、日下さんの身に危険が及ぶ前に完成させますからご安心ください』

 

「ああ、任せた」

 

『それから、もう一つだけ、此方側も厳しくなっています』

 

「…やっぱりか」

 

『かつてのように意識不明に陥る人が現れました、偽物でも八相やAIDAなんて脅威でしかありません』

 

「…八相に関しちゃ本物だ」

 

『ハセヲさんのスケィスは?』

 

「……俺もAIDAに感染してると思う、そしてスケィスは俺は今使えない」

 

『……思ってた以上に深刻ですね、完成を急がせます、と言っても僕ら医療団体でもなんでもないんですけどね』

 

「頼んだぜ、スーパーハッカー」

 

 

さて、いつまで持つかな

 

 

 

 

 

駆逐艦 荒潮

 

「これどこに向かってるのぉ?」

 

「…ちょっとだけ黙っててください、東京までのチケットお願いします」

 

「…これ今日中に帰れるのかしら」

 

「無理ですね、まあ、川内さんに伝言は頼みましたし…」

 

「…あれお願いというか、脅しよねぇ…」

 

「そう思いますか?」

 

「………なんでも無いわぁ…」

 

「今からやる事は簡単です、本を渡す、それだけです」

 

「誰に…?」

 

「東京にいる何処かの誰かです、顔も名前も知りません」

 

「………」

 

「コレを解析すれば、恐らくは…現状の有効打になります」

 

「…もういいわぁ…好きにして…」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。