元勇者提督 作:無し
離島鎮守府
提督 倉持海斗
海斗「初めまして、ここの提督をしてます、倉持海斗です」
アトランタ「へぇ、アンタがそのサルの飼い主なんだ」
ワシントン「ちょっとアトランタ!殺されたいの!?」
すぐ横でアケボノがクツクツと笑う
アケボノ「適応力が高いことはいいことです、私に対する罵倒なら笑って受け流しましょう…」
海斗「あー…アケボノと何か…?」
アイオワ「…
海斗「今の段階では答えられません、向こうの回答も不明瞭なものでこちらも正確な意向は把握し切れてなくて」
アイオワ「…Okay」
アケボノ「輸送船に案内しますので順次乗り込んでください、船室は二つ、部屋割りはお好きにどうぞ、到着までは5時間です」
ワシントン「こんなに気が重い航海は初めてだわ」
東京 赤坂 大使館
海斗「…アケボノ、どう思う?」
アケボノ「すみません、私にはなんとも……常識ではあり得ないことが起きているとしか…本当に賠償艦としてあの7名をこちらに譲渡するなんて…意味がわからなくて…」
行って直ぐ、書類を渡された
サインさえすればアメリカ艦7名の所属をこちらに移す、そういう書類だ
あり得ないほどスムーズだった…そもそもの目的がすらすり替えられてたし
なんの賠償なのかも聞いても教えてくれなかった…
アメリカのメンバーは納得できないと一度大使館に残ることを選んだ
そして、その代わりに
徳岡「ま、スムーズに進んだんだ、良いじゃないの」
海斗「徳岡さんは、なんでここに?」
徳岡「北方海域の指揮をアメリカと共同で執る事になった、輸出品を通す航路を用意する為にな、それについての話し合いで呼び出された」
そんな重要な話し合いを二つ同時にするだろうか…
いや、これは…二つともが裏で繋がってるとしたら?
アメリカに有利な条件を提示し、その代わりとして戦力を補充した…
だとすれば、まだわからなくもないけど
そうなるとどうなるのか、何が変わるのか…
海斗(…綾波は、これに関わってアメリカを合意させた…?)
だとしたらなんのために?
綾波にメリットはないはず…いや、技術を流用する為…綾波がそんな必要あるのかな
思わず頭を抱えたくなる
どういう思惑があるのか、そもそもこの考えが正しいのか…
そもそも綾波に直接会っていない
生存しているという確証もない…
アケボノ「提督、この件は春日丸さんにも、朧にも…みんなに伏せ続けなくてはなりません…特に、綾波と親しかった者は……何をするかわからない」
海斗「……そうかもね…でも…」
どう、したら…いや
海斗「…特務部に行こう、綾波について聞かなきゃならないことがある」
綾波を最後に引き取ったあの場所なら
離島鎮守府
教導担当 キタカミ
キタカミ「もしもし?青葉、珍しいじゃん」
青葉『キタカミさん、そちらに居られる朝霜さん、早霜さん、清霜さんについてですが…その、大丈夫ですか?』
キタカミ「…どういう意味?」
青葉『その…簡単に言えば本部にスパイ契約をさせられてるようで…』
キタカミ「…スパイ…?」
青葉『…念のため、気をつけた方がいいと思います』
キタカミ「わかった、でもそんなに気にしなくていいんじゃないかな…あの子達にそんな大それたことできないだろうし」
青葉『…あの…』
キタカミ「ん?」
青葉『……私は、その…』
キタカミ「…気に病まなくていいよ、そっちで頑張ってるのはわかってるからさ、また何かわかったら教えてね」
青葉『…はい』
電話を切り、頭を悩ませる
スパイとなれば、話はかなり変わる
あの3人を縛り付けるつもりは毛頭ない、だけど…監視の目は必要になる
そうなると手っ取り早いのは…そう、私自身が見張ること…
キタカミ(…いや、そういうのはなんか違う……うん、違うはず…)
どうすれば納得できるかが重要…
朝霜「はー、ようやく訓練受けられるとはどう言った風の吹き回しだよ」
キタカミ「……ただ、方針変えただけだよ」
早霜「それで、何をするんですか」
キタカミ「最初は体力つけるためにジョギング、とりあえず20分自分のペースで走り続けて、あとの事は後から言うから」
朝霜「チッ…ルートは?」
キタカミ「目が届く範囲ならどこでも良いよ」
早霜「監視されてるみたいですね」
キタカミ「そりゃ、教官な訳だしね」
清霜「早く行こうよ!」
朝霜「…あァ」
キタカミ(……わかんないなぁ…人間のやり方なんて、思えば…深海棲艦出てくるまでどうやって生きてたんだっけ…よくわかんないまま、探してたんだっけ…)
杖を強く握る
曙「おーい、キタカミ」
キタカミ「…あ?曙じゃん」
曙「何気の抜けた声出してんのよ、それより明日、七駆は休むから」
キタカミ「なんでまた」
曙「朧が精神的ショックから抜け出せないから気分転換に本土を観光してくるのよ」
キタカミ「……そういうことなら、いいか、わかったよ」
曙「まあ、もう許可は取ってるからアンタへの報告さえすれば良かったんだけど……って言うか、アンタThe・World知ってる?ログインした事ある?」
キタカミ「何さいきなり…」
曙「朧がThe・Worldで碑文使いの気配を感じてたらしいんだけど、それもかなり強くね…だからアンタなんじゃないかって」
キタカミ「ゲームはもうやってない、The・Worldはプレイした事ないよ」
曙「…そう」
キタカミ「…ま、楽しんできてよ」
曙「わかってる、ま、丸一日遊べば気も晴れる…と良いんだけど…アンタも新人教育頑張りなさいよ」
キタカミ「へいへい…あ、あれ?清霜居ないし…おーい!清霜は!?」
朝霜「ゲッ!居ねェ…早霜!探すぞ!」
キタカミ(……匂いは?…ちょっと離れてるけど、あるな…この距離なら迷子にはならないか、流石に…)
曙「んじゃ、あたしら行くから」
キタカミ「…いくって、今から!?」
曙「そうよ、朝の輸送船に乗せろって言ったけど横須賀の連中と一緒に行けってさ」
キタカミ「横須賀撤収するんだ…それも初耳だけど」
曙「そりゃ指揮系統が違うから連絡なんてないでしょうね、とりあえず明日はいないから覚えといて」
キタカミ「あ、うん…わかったけど」
本土
駆逐艦 曙
曙「いやー、いつぶりかしら、綾波とやりあってからまともな休暇なんて無かったんじゃない?」
潮「確かに…」
漣「代わりに全体的に緩くなってましたが、うーん……なんかソワソワする…」
潮「何もやることがないとね…」
曙「……朧?」
朧「ちょっと、行きたいところがあるんだけど」
曙「どこよ…って、ちょっと」
ふらふらと朧が進む
どんどん人の気配がなくなっていき、街中なのに、誰も通らないような道へと…
潮「お、朧ちゃん?」
曙「……待ちなさい」
潮と漣を止め、周囲を見渡す
曙「…何か、いる」
建物に囲まれた、20メートル四方程の空間、しかし人の目は、ない
曙「朧!アンタ何を感じ取ってここに…」
朧「……同じ、匂いがする…」
曙「何言っ……あ…?」
背中に何かを突き刺される感覚
力が抜け、膝をつき、倒れる
綾波「黄昏の書、炎…回収」
漣「ひっ…!」
潮「い、生きて…!?」
漣と潮の間から、綾波が顔を覗かせる
綾波「ご協力ありがとうございます、朧さん♪」
朧「…綾波、曙は大丈夫なんだよね…?」
綾波「ええ、もちろん……強すぎる力です、曙さんにはもう必要ない」
綾波が艤装用のカートリッジのような物をカバンに収容し、背をむける
綾波「そうだ、倉持司令官にお伝えください、近く顔を出しますと…」
綾波の足音が遠ざかる
漣「ぼ、ボーロ…?どう言う事…?」
朧「……ごめん、アタシ…帰らない」
漣「え?ま、待ってよボーロ!」
潮「朧ちゃん!」
朧は建物の影へと姿を消した