元勇者提督 作:無し
某所
綾波
綾波「どうも、お待ちしてましたよ」
五月雨「……」
綾波「まあ質問内容はただ一つ…私に買われませんか?」
五月雨「お断りします」
綾波「でしょうね、貴方ほどのスナイパーはそうは居ない…とは言え、貴方がどうしても必要かと言われれば…それも違う」
五月雨「…貴方は、私より強い」
綾波「確かにそうですね、狙撃手と観測手…基本的に観測手を務める方が優秀なスナイパーさんです、貴方なら任せられる水準の狙撃手だと思ったのに…」
五月雨「貴方の目的はなんなんですか…?」
綾波「……場所を変えましょう、なにぶん追われる身でして」
綾波「お茶会は好きですか?紅茶よりコーヒーが飲みたいなら用意しますが」
五月雨「結構です」
自分のカップに紅茶を注ぎ、クッキーの乗った皿を置く
綾波「アールグレイです、美味しいですよ」
五月雨「…あなたの出した物を食べるのは抵抗があるので」
仕方ないとクッキーを一つ手に取り、口に運ぶ
五月雨「食べてみせても…あなたなら私がどの位置にあるどれを手に取るか、容易にわかるでしょうから」
綾波「…貴方、私を心理学者か何かと勘違いしてますか…?確かにできますけど、それを今やるのは…あー、いいや、面倒です」
咳払いをして話を戻す
綾波「今、貴方たちが絡んでいる輸送船の護衛任務…あれ、元は私が企画した物です」
五月雨「え…?」
綾波「アメリカと大きな契約をしたので…あの物資を運び込む先はどこか知っていますか?ロシアですよ…本当ならベーリング海峡を通りたいんですけど、陸上部隊が深海棲艦の攻撃で痛手を受けたり…僅か85kmの距離の輸送を何度も失敗したり…」
五月雨「ま、待ってください…どういう…」
綾波「ああ、もちろん日本にも何%かは輸出されます…しかし、世界が求めてるのは経済の循環です、これは大きなビジネスの一歩に過ぎません…ゆくゆくは世界一周の船旅もまた、できるようになるでしょう」
五月雨「…艦娘の護衛が、あれば…」
綾波「その通り♪」
紅茶を口に含む
五月雨「そ、そんなの…!おかしいです!私たちだって人間なのに…」
綾波「いいえ、貴方たちは軍人です…軍人は民間人を護らなきゃならない、クソみたいな娯楽のためにでもね…それに、この国は非常に狭い、他の国のように陸続きの場所なら話は変わりましたが」
五月雨「…だからって…」
綾波「日本の艦娘は今とても評価が高い、私を撃破した事、そして度重なる攻略作戦の成功、この契約を成立させたのも貴方たちの頑張りあってのものですよ」
五月雨「貴方、何も思わないんですか…」
綾波「思いませんよ、何を思えばいいんですか」
五月雨「…貴方がやられたのも、いや…全部貴方1人のマッチポンプじゃないですか…?貴方は…」
綾波「はー……バカな人ですね、私は本気で世界を取るつもりでしたよ、その後1人でのびのびと宇宙開発でもしようと思ってましたけど?そんな本気の私を倒したんです、十分すごいんですよ」
五月雨「そう言う話じゃなくて…!」
綾波「わかってないなぁ…あるものは使いましょうよ、切り札っていうのは温存してるだけじゃ意味がありませんよ?ここぞという時は今、私がタイミングを間違えるとでも?」
五月雨「…あなたと契約した人たちは…あなたの事を…」
綾波「知るわけないでしょう、向こうは精々何ヵ国語も喋る通訳を必要としない変な女学生が、日本という国の代表として交渉に来た…それはなんでなんだろう、という謎を抱えてると思いますよ」
五月雨「…アメリカだけじゃない…?」
綾波「当たり前です、ヨーロッパの主要国、主に艦娘システムを採用してる国と接触を取るようにしました、その結果があの協力者達です」
五月雨「……」
綾波「さて、この辺りで話を変えましょう…倒せない敵について…知りたいでしょう?」
五月雨「…それは、はい…」
綾波「あれは今までの深海棲艦とは違います、ウイルスバグと呼ばれる物です、普通の手段では倒せない敵ですよ」
五月雨「ウイルスバグ…?」
綾波「深海棲艦の進化というべきか、それともCubiaの影響…いや、後者なのでしょうがね?まー、これがまためんどくさいんですよ」
五月雨「あの…普通の手段って…」
綾波「ああ、普通に撃ち続けても倒せるのは倒せるんですよ?バカスカ撃って、時間をかければ倒し切れると思います…200発くらい撃てばいいんじゃないですかね?…ただ、より簡単なのはあの敵の防護壁を破り…」
五月雨「データドレインする…」
綾波「ビンゴ、良いですねぇ、話が早い人は好きですよ、さてさて、ウイルスバグを撃破するにはデータドレインが必要、まではよろしいですね?」
五月雨「…はい」
綾波「しかし、データドレインは人には過ぎた力です、正しく扱えるような人が果たしてどれほどいるか…」
五月雨「…?」
綾波「わかりませんか?あれは神が想像した宇宙とは違う、天才が生み出した世界によって創られた力…そして私も天才である以上、私にとってはデータドレインを作ることも、その制御装置を作る事も可能なんですよ」
カートリッジをテーブルに置く
五月雨「まさか、それが…?」
綾波「はい、私の作った黄昏の書の一つ、便宜上黄昏の書・炎と呼んでいます」
五月雨「…それで…?」
綾波「人とは間違える生き物です、力を与えるにしても、よく、考えなくては…ねぇ?」
話は簡単だ、これを利己的に使われてはたまらない
五月雨「…それで…?」
綾波「ああ、あなたには差し上げませんよ?だってダミー因子を持ってるでしょう?」
五月雨「だったら何のためにこの話を…」
綾波「間違えるな……と言ってるんですよ…あなたが道を誤り、過ぎた力を持つ化け物となったのなら…あなたは自身の愛する人の手で殺される事になる」
五月雨「回りくどいです、それで」
綾波「データドレインはアメリカの人たちやヨーロッパの人達にも提供していません、つまりあなた達が持つ力はかなり稀少なんですよ、馬鹿みたいに使うと攫われますよ」
五月雨「え?」
綾波「どこも海を欲しがってる、日本はある程度海域を解放しましたけど…世界中見て日本ほど回復してる国はどこにもないんですよ、目視できる距離の海を渡ることすら難しいんです…となれば、空ですが…艦載機に対空ミサイル、考えもせずに航空機を撃ち落とす深海棲艦…」
五月雨さんの表情がやや曇る
綾波「わかりましたか?強い力を持つという事は…その力を狙われるという事でもあります、核抑止と同じなんですよ」
五月雨「味方じゃないですか!」
綾波「そんな事、だーれも気にしない…あいつが羨ましいから、あいつだけズルいから…それで人は殺すし、国は戦争を引き起こす、歴史で習いませんでしたか?戦争なんて案外しょうもない理由でやる物なんですよ?」
五月雨「…あなたは、私にどうさせたいんですか」
綾波「これ、提供します…ウイルスバグ撃破用に改良したカートリッジです、まあこのカートリッジを使えば砲弾を20発くらいで戦艦級も倒せるでしょう」
五月雨「20…」
綾波「鬼神の如き活躍、ご期待しております」
五月雨「……結局、あなたの目的は不明瞭なままです」
綾波「目的を教えても良いですが、このカートリッジは差し上げわられなくなります…今後あなたが苦しむ…いや、あなたのお仲間が苦しむ事を考えれば…」
五月雨がカートリッジを手に取る
綾波「懸命な判断です、定期的に送ります、ちゃーんと使ってくださいよ?」
本土近海
駆逐艦 朝霜
朝霜「なぁ…もう2時間だぞ、敵は出てこないしいつまで突っ立ってるんだよ!」
阿武隈「そう言われても、出てこないものは出てこないし…」
朝霜「このロープは何だよ!何で離れられないようになってンだよ!」
阿武隈「深海棲艦は海の中に私達を引き摺り込んで溺死させようとする事もあるし…」
早霜「思ったより狡猾なのね」
龍驤「まあ、そう騒ぐなや……お出ましやで」
阿武隈「龍驤さん?」
龍驤「……なんか今までのとちゃう、退避の警告出し、ウチらでやれるとこまでやるけどな……雲龍!」
雲龍「はい」
艦載機が大量に飛び出す
あれではこちらの取り分は残らないのではないだろうか…
阿武隈「漁業組合の皆さーん!!深海棲艦がこっちに来てます!!退避を!!」
朝霜「……なァ、全然動く気配が…」
朝潮「なんで退避しないの…!?」
阿武隈「すみません、こちら阿武隈です、はい、動いてくれません…!…はい、早急にお願いします」
龍驤「阿武隈ぁ!こっちアカンで!なんか、おかしい奴おる!」
阿武隈「お、おかしいやつ…?」
一部の深海棲艦が目視できる距離まで近づいてくる
阿武隈「これで…!」
阿武隈の砲撃が深海棲艦に直撃する……が、効果が見えない
阿武隈「え…?…!」
阿武隈が漁船の方に振り返り、一発砲弾を放つ
朝霜「なッ…!オイ!」
阿武隈「大丈夫、当ててない…今のは退かせただけだから…!」
朝潮「ダメです!止まりません!」
阿武隈「駆逐艦はロープを切って退避!回収用の船を目指して!」
朝霜「な、何言って…」
阿武隈「死にたくないならいう事を聞いて!!」
阿武隈(これは明らかにイレギュラー…だけど対処法はわかってる、だから、ここに倒す手段を持った誰かさえ連れてくれば…!)
阿武隈「時間は稼ぐから!早く!」
朝霜「どう、なってやがんだよ…」
深海棲艦が真下から魚雷を受け、空中に打ち上げられる
阿武隈「!」
打ち上げられた深海棲艦を光線が貫き、真っ二つに切り裂かれる
春雨「援軍登場…と言ったところでしょうか、はい」
イムヤ「全員無事そう?」
阿武隈「援軍は要請してなかったんですけど…ありがとうございます」
春雨「まあ、人使いの荒い人に行くように言われたもので」
イムヤ「そんな事より、まだまだ来てるから戦う用意して!」