元勇者提督   作:無し

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別れ

海上

駆逐艦 朝潮

 

朝潮「深海棲艦はこれで全部でしょうか…」

 

イムヤ「たぶん、今見えてる範囲はもういないけど…」

 

阿武隈「水中はレーダーにも反応ありません」

 

龍驤「こっちも何もないわ、海はどこにもおらんって事かな…」

 

阿武隈「……あ、無線だ…提督ですか?…え?回収船が沈められ…っ…ご、ごめんなさい!誰も乗ってないけど備品と少量の燃料が……はい!はい!…え、あー……わかりました…」

 

龍驤「どないしたんや、船が沈んだのはわかったけど」

 

阿武隈「そのまま帰るのは危険だから特務部が二式大艇を出してくれるって言ってるらしいです…良いのかなぁ…」

 

龍驤「特務部ぅ…?なんでアレが出てくるねん…」

 

阿武隈「なんでも新しい装備を輸送してくれてるみたいで、ちょうど途中にいるからって…」

 

龍驤「そらツいとんなぁ…」

 

朝潮「あ…アレでしょうか」

 

遠くに二式大艇を二機見つける

 

朝霜「おー…」

 

清霜「おっきいねー」

 

朝潮「…あれ?二機?」

 

阿武隈「誰が操縦してるんだろ…」

 

近くに二式大艇が降りる

 

秋津洲「あー、居た、こちら秋津洲、ターゲット回収かも」

 

二式大艇の搭乗用の扉が開き、秋津洲さんが降りてくる

 

秋津洲「荷物大量に積んでるから別れて乗ってほしいかも、えーと、そこの4人、アンタらだけこっちに乗って残りはもう一台に乗って」

 

朝霜「なんだよ適当だな…」

 

秋津洲「良いから別れて乗る!置いて行かれたいの!?」

 

阿武隈「わ、わかりました!」

 

 

 

朝霜「おー、エアコンついてんぞ!」

 

早霜「意外と快適ですね…」

 

清霜「確かに!暮らせそう!」

 

朝潮(…なんで私だけこっちに…?)

 

秋津洲「勝手に動き回ったら叩き出すから、大人しくしてるかも」

 

朝潮「は、はい……ん…?」

 

きゅるきゅると何か、古い車輪のような音…

 

秋津洲「フライトは20分かも」

 

朝霜「20分?はえー…来る時どんだけかかったよ」

 

早霜「多分、40分くらい」

 

清霜「堕とされたりしないの?」

 

秋津洲「仕掛けてくるやつは逆にぶちのめすかも」

 

朝霜「そりゃあ、心強えな、けどさ、ほんとに大丈夫……おわっ!?」

 

足元から轟音が響く

 

秋津洲「今、まさに有言実行中」

 

朝霜「し、下に居んのか!?」

 

秋津洲「はー、ほんとうるさいかも…集中したいから黙ってて!!」

 

朝潮(怒鳴られた…)

 

朝潮「あ、あれ…?3人が、いない…」

 

奥の方の個室へと消えていく影…

 

朝潮「ど、どうしよう…見張らなきゃいけないかな…」

 

3人を追いかける

 

朝潮「っ…!…その、人は…?」

 

 

 

 

 

離島鎮守府

 

阿武隈「なんでっ!な、なんで私たちの乗ってる方は操縦席に誰もいなかったんですかぁぁっ!?」

 

秋津洲「ちゃんと操縦してたし、私が」

 

阿武隈「別のやつに乗ってましたよね!?」

 

秋津洲「オンラインで操作したの!そもそも大艇ちゃんはオートパイロットできるし、あーもううるさすぎるかも…」

 

朝潮「あ、あの…」

 

秋津洲「ん…何か用かも?」

 

朝潮「あのひ…むぐっ」

 

秋津洲さんに口を塞がれる

 

秋津洲「特務部のニュービーかも、手違いで乗り込んだだけだからあんまり騒がないで欲しいかも」

 

朝潮「……わかりました」

 

 

 

 

 

執務室

提督 倉持海斗

 

阿武隈「えぇぇっ…始末書ですか…」

 

海斗「うん…沈んだ移動用の船について…」

 

阿武隈「…わかりました…うー…」

 

頭を抱えて出ていく阿武隈を見送る

 

アケボノ「宜しいのですか?始末書では済まないでしょう」

 

海斗「そうだね、それ以外の後始末は僕がやるよ」

 

アケボノ「…それは、流石に負担が大きいのでは」

 

海斗「僕が二つの事に取り組むなら、誰よりも…頑張らなきゃいけないと思うんだ…だから、まだまだ全然足りない」

 

アケボノ「提督の決めた事に意見する訳ではありません、しかし阿武隈さんにはちゃんと自分でケリをつけさせるべきです、あの人は抜けているところがありますし、痛い目を見ておく方が本人の為かと…」

 

海斗「…まあ、今回だけだよ」

 

アケボノ「では、そのように」

 

ガツガツと扉を何かで叩く音がする

 

キタカミ「よっ」

 

アケボノ「…どうかしましたか?」

 

キタカミ「特務部の新人について、何か知ってる事は?」

 

海斗「特務部の新人…」

 

アケボノ「私は残念ながら何も」

 

キタカミ「提督は?」

 

海斗「いや、無いと思うけど…どうかしたの?」

 

キタカミ「紅茶の匂い、なんか酸味のキツイやつね…それと…消毒液やら医薬品の匂い…そんな匂いが朝潮や朝霜に染み付いてた」

 

アケボノ「紅茶ですか…柑橘系ならアールグレイが有名どころですね」

 

アケボノが戸棚からアールグレイの缶を取り、蓋を開ける

 

キタカミ「…そう、それだ、その匂い……わっかんないんだよねぇ…秋津洲ってさ、ダミー因子の感覚増幅効果で二式大艇を操作してるらしいんだ、触覚を司る力でね」

 

アケボノ「触覚?」

 

キタカミ「二式大艇の動作、振動から異常を検知したり、気圧の変化を感じ取ったりできるらしいんだよ、だから乗ってるはずの無い人間がいたらわかると思うんだけど」

 

海斗「…荷物を積んでたからとか?」

 

キタカミ「……ま、いいか…うん、それで納得しとこう…敵が忍び込んだ訳じゃないんだ、うん…」

 

アケボノ「えらく気にかけてますね」

 

キタカミ「報告書は見た?ウイルスバグの話」

 

海斗「うん、聞いてる、だからイムヤと春雨を向かわせたんだけど…」

 

アケボノ「最良の判断だったと思います」

 

キタカミ「……提督、この世界、どうなってんのさ…分たれたはずの世界が戻り始めてる…」

 

海斗「……いや、そうじゃない…」

 

アケボノ「そうじゃない、とは…?」

 

海斗「根本が違うんだ、前の世界でネットとリアルが融合したのは今より後、ネットとリアルの境界が揺らぐような事件が起きた後だった」

 

アケボノ「今回はそれをCubiaや綾波がやってのけています」

 

海斗「…そうだね」

 

キタカミ「まさかまた再誕させるとか言い出す?」

 

海斗「いや、そのつもりはないよ、今回でダメなら何度やり直しても…いや、もう望む形にもならないかもしれない…いや、何よりこれ以上は無理なんだと思う」

 

キタカミ「どういう意味?ハッキリ言って欲しいんだけど…」

 

海斗「再誕の力は一種の適応の力だと思うんだ」

 

アケボノ「…なるほど、前の世界ではネットとリアルが融合することで世界が滅びそうになった…でも、それに適応すれば…世界は滅びはしない」

 

キタカミ「……融合しても、問題ないって事?」

 

海斗「わからない、正直に言えば規模が大きすぎて僕じゃ把握しきれないんだ…」

 

アケボノ「どの道そのルートを辿るのは最後です、今は今やるべき事を見つめれば良い」

 

キタカミ「今やるべきことって?」

 

アケボノ「…綾波を潰す」

 

海斗「……」

 

キタカミ「…なるほどね、確かにそれは最重要だ…あ、忘れてたけどこれ書類、秋津洲に渡すように言われたんだよね」

 

海斗「ありがとう…え?」

 

アケボノ「どうされまし…た……と、これは…」

 

キタカミ「どしたの、2人揃って固まって」

 

ペンと印、それだけでこの書類は終わる…

 

アケボノ「まさか、これにサインするつもりですか?…提督、この書類には重大な不備がありますよ」

 

海斗「いや、これが最善の手段だよ」

 

キタカミ「なんの書類なの?」

 

海斗「…朝潮を、戦没した事にする書類だよ」

 

キタカミ「…は?」

 

2人とも納得してない様子だが、これが最善なのは間違いない

良く考えればそうだ、アメリカの艦隊がここに着任する前に…誰かに嗅ぎつけられる前に…

 

アケボノ「……提督のお考えを理解できず申し訳ありません、説明していただけますか?」

 

海斗「今はできない、アケボノ、朝潮を連れて来てくれる?」

 

アケボノ「…はい」

 

アケボノが部屋を出る

 

キタカミ「いや、待ってよ……朝潮はどうなんのさ…!」

 

海斗「……ここじゃないどこかに行く、少なくとも戦争には巻き込まれないように…」

 

キタカミ「いや、待ってよ…意味わかんないって…!」

 

海斗「説明できる時になってから、説明させてほしい…今はただ、朝潮を見送る事しかできないよ」

 

キタカミ「じゃあ他の連中は!?大潮や荒潮、満潮達はどうすんのさ!」

 

海斗「変わらないよ、朝潮1人だけだ」

 

キタカミ「……そういう事…にしたって他にもやりようが…!」

 

海斗「今日、今この時しかないんだ…逃す手はない」

 

キタカミ「…賢い奴は気づくよ」

 

海斗「でも、口を塞ぐ選択をしてくれると思ってる」

 

キタカミ「……案外、ずるいもんだね」

 

海斗「…大人になっちゃったのかな、僕も…」

 

アウラの取り合い、アウラを宿した朝潮がその争いに巻き込まれないわけがない

それならいっそ、僕たちはアウラをロストした事にするしかない…朝潮と共に

 

キタカミ「……朝潮は…納得するだろうね」

 

朝潮は…確かに納得してくれるだろう

 

しかしそれは…

 

 

 

 

朝潮「わかりました、私の受け渡しはどのように行われるのですか」

 

海斗「二式大艇でそのまま本土に向かって、今の特務部なら問題ない」

 

朝潮「はい…しかし、私の死を誰も確認しないのは不味いのでは?」

 

海斗「それは…確かに、そうだけど」

 

朝潮「佐世保に遠征に行かせてくれませんか?その道中で私だけ離れます」

 

海斗「それは……確かにあの辺りならできなくもないけど、今全て決める必要はない、焦り過ぎだよ」

 

朝潮「……」

 

キタカミ「少数にだけ伝える手もある、引き渡すのは明日でしょ?よく考えてからにしよう」

 

海斗「そうだね、今日はよく休んで、必要なものだけ整えておいて」

 

朝潮「はい、その…お世話になりました」

 

海斗「戻って来られるようにしてみせるから」

 

朝潮「…はい」

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