元勇者提督   作:無し

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黄昏の書

東京 東京駅

速水晶良

 

「……ん?」

 

たまたま駅に来ていた、それだけ

偶然見かけたから声をかけてみただけ

 

「よっ」

 

「…あ、貴女は…」

 

「朝潮ちゃん…知り合い?」

 

「この人は速水さんです、えっと…」

 

「速水晶良よ、ま、関係は友達よ友達、それでいいでしょ?」

 

「…そうですね、そういう事で」

 

「えぇ…そう」

 

「それより何か用ですか?」

 

「んや?見つけたから声かけただけだけど、ってか前会ったの広島だよね、よくここまで来たねぇ…こんな小さいのに」

 

「速水さんこそ広島に住んでたんじゃ無いんですか?」

 

「私は元々東京、いや、生まれは神奈川なんだけど…っていうか、なんでまたこんなとこに?」

 

「…人探しです」

 

「何何?誰探してんの?」

 

「ヘルバって人を」

 

「………あー、うん、ちょっとこっち来ようか、お姉さんいいところ知ってるから」

 

「…朝潮ちゃん、なんか怖いわぁ…」

 

「…気持ちはわかりますが、どうやら佐賀市人を知ってるようです、行きましょう」

 

 

 

 

 

「どう?ここ、私のお気に入りなのよ」

 

「そうですか、それで、こんなガラガラのお店に連れてきたのは何が目的ですか?」

 

「……帰りたい…」

 

「簡単よ、ここなら何があっても誰にも知られないじゃ無い」

 

「ひっ…朝潮ちゃんには手を出さないで…!」

 

「荒潮、そういう意味では無いですよ多分」

 

「そう、そういう意味じゃ無いから、ヘルバってのは簡単に言うと覗き趣味の変態でね………っとメールだ…誰が変態だ!?ここもアウト!?はー………嫌になるわ…」

 

「どうやらヘルバという人と繋がりがあるみたいですね」

 

「繋がりも何も、仲間よ、でも驚いたわ、なんで探してるの?」

 

「……待ってください………」

 

「……ん、なんか…」

 

「…あなたは、ブラックローズ…」

 

「…まさか」

 

「…そう、私はアウラを宿していました、そして今、セグメントを持っています…」

 

「何?アウラは分解されちゃった訳?」

 

「…復活したスケィスにやられたと、ネットの世界に入った途端感知され、追い回され、最後にはデータドレインでデータがボロボロになったところを追い討ちにあいセグメントに」

 

「難儀ねぇ、昔あったこと繰り返してるじゃない…で?なんでヘルバ?」

 

「荒潮」

 

「ん、この本をどうにかして欲しいのよぉ…」

 

「…黄昏の書…?」

 

「似て非なるものだと」

 

「…へぇ?それで?」

 

「………追い詰められたアウラが作り出した不完全なものですが、これを使えば有効打になると考えています」

 

「そうかもね…だってさヘルバ」

 

「え?いるの?」

 

「居ないわよ、でも聞かれてる」

 

すぐにメールが来た

 

「お断りだってさ、手に負えないって」

 

「……そうですか」

 

「悪く思わないで、それを解析できちゃダメなのよ、それを量産させる訳にもね」

 

「あなた方にとっては救いの手では無いのですか?」

 

「…核みたいなものよ」

 

「敵は核を持っています、そして容赦無くそれを打ち込んできます、なのに此方はそれを持たないと?」

 

「それは無理ね、どうしてもそれを扱う奴が必要」

 

「だったら…」

 

「だから、カイトがいた」

 

「今はいません」

 

「じゃあ私がいる」

 

「………まさかコレを?」

 

「私だって勇者カイトの相棒してたのよ?舐めんじゃ無いわよ」

 

「………良いのでしょうか」

 

「良いのよ、それの怖さは私はよく知ってるから」

 

「…………アウラもあなたになら任せられると」

 

「そりゃ何回も助けてやったんだから、助けられもしたけどね」

 

「わからない仲ですね」

 

「簡単にわかられたら困るわよ」

 

「………お願いします」

 

 

私は二人を見送り、パソコンに向かった

 

軽く事情は聞いてる、私の戦場はここだ

 

速水晶良は、ブラックローズとして

 

 

 

 

 

「久々の感覚ね」

 

本もいつの間にかこの世界にあった

 

「やってやろうじゃない!」

 

腕がなる、全員まとめてギッタンギッタンにしてやる

 

 

 

 

 

 

 

離島鎮守府

 

??? ???

 

ようやく辿り着けた、このクリスタルに、いや、その中に眠る人に

 

「ヨォ、提督」

 

深夜遅く、この時間なら誰もここには来ない

何度何度も入念に確認し、そしてようやく辿り着いた

 

「ココジャ、ドウシテモダメナンダ、ダカラ…」

 

電子の海へと落ちる

沈む、再び、だが、今度は一人じゃない

 

「キット…助カルカラ…」

 

 

 

 

 

工作艦 明石

 

「…嘘…でしょ…」

 

「…まあ、現実だよ」

 

「………提督は?」

 

「目を覚ました訳ではないです、相変わらず、まだ死んではいません」

 

「…………」

 

茫然自失?なんというのだろうか

とにかく、まともに受け止められない

跡形もなく、クリスタルごと提督が消えた

 

「…そうですか…」

 

とても嫌な気分

孤独な焦燥感

 

「明石、大丈夫、私達がいる」

 

ダメだ、何にも響かないや

 

「……そうですね、でも、ごめんなさい…少し、時間が欲しいです」

 

補給物資を取りに行く作戦も、敵との戦いも、どうすれば良いのか

私一人じゃ…

 

誰も、もう手を引いてはくれないのか

 

 

 

 

 

 

呉鎮守府

 

駆逐艦 荒潮

 

「…申し訳ありません」

 

「いや、お前は…うん、まあお疲れ…」

 

なんで私は姉の代わりに怒られたのか…まあ、事後報告の無断外出、帰りもかなり遅い

怒られて当然ではあるのだが

 

「何してきたのかも言えないのか?」

 

「言えません、荒潮も答えないように」

 

「……えぇぇ………」

 

胃が痛い…

というか隠す必要ある事なのぉ…?

提督もストレスで白髪になってるし…

 

「それから、パソコンの初期設定を教えてください、業者呼ぶとなると軍施設なので時間もかかりますし」

 

「……俺暇じゃねぇんだわ」

 

「手の空いた時で構いません」

 

「朝潮ちゃぁん……」

 

「荒潮、気にすんな、もう休め」

 

自分より疲れた顔してる人に気を遣われるの気まずくって嫌ねぇ……

 

「その…ごめんなさいねぇ…提督……」

 

「…まあ、気にすんな、あとお前、言っとくけどこの髪は染めただけだからな?」

 

「あ、そうなのぉ?良かったわぁ…」

 

「……そういう事だから気にすんな」

 

絶対嘘ねぇ…

朝潮ちゃんのお見舞いのついでに寄ってたから白髪になる過程見ちゃったもの…

 

「……辛いわぁ………」

 

 

 

 

離島鎮守府

雷巡 北上

 

「ねぇ、本当に大丈夫?」

 

「……そんな訳ないですよ」

 

「…まあ、そりゃそうか」

 

「なんですか?何か用ですか?」

 

「………いや、なんでもないよ」

 

コレは流石に言えないね、お迎えが来てただけだって

見てはないけど聞こえてた、アレは…摩耶だと思う

 

さてどうしたものかな

 

「って訳さね」

 

「ほんっとうに適当な人ですね、アナタ」

 

「そんなに褒めないでよ」

 

本日の相談相手は曙ちゃんでございます、髪の色は藤色の方

 

「………褒めてない…って言っても文面上は褒めてるのか…これ…」

 

「そう、適当は罵倒に使っちゃダメだよ」

 

まだ出撃停止命令が出てる私は駆逐艦に勉強を教えたり、まあ、退屈な時間を過ごしている

 

そんな私が動けるのは深夜だけ、深夜なら何があっても気付かれない、哨戒もみんな緩いからね〜、だからこんなことになった

恐らく、デジタライズ…

不安の種は明石、そしてその不安は蔓延してる

明石が当たり散らしたりしなければなんとかなるとは思うけど…

 

「要するに明石に内緒なことがあるんでしょう?なんで私に言うの」

 

「だってぇ…私一人で考えるの疲れるじゃん?」

 

「勝手に疲れててください」

 

「それに引き留めてないと…自分が補給船のお出迎えに行きそうな筆頭候補だしぃ?」

 

「よくわかってますね、と言いたい…けど、まあ、その……私は死ぬの怖いので」

 

「へぇ、意外」

 

「………曙はもっと臆病です、ただ、死ぬことを恐れてない風に振る舞わないと…壊れちゃうから」

 

「…ふーん、可愛いとこあるんだねぇ」

 

「可愛いんですよ、ただ、素直になれないだけで」

 

「よーし、お姉さんが七駆に間宮さんを奢っちゃうぞー」

 

「でも、私達哨戒任務があるので…もし待ってたら、夜になっちゃいますよ?」

 

「ん、待ってるから、それと、曙も仲のいい子には素直じゃないんじゃない?」

 

「…私が?」

 

「漣や朧、潮と話してる時の素っ気なさはそっくりだからさー」

 

「………もしかしたらそうかも、もう少し改めて見ないと…ありがとうございます」

 

「……やっぱ別人だね、そう言うとこ」

 

 

「ねぇ明石?」

 

「……」

 

「それはダメじゃないの?」

 

「………」

 

「………なんでその道を選んだのさ」

 

「………なんででシょうネ」

 

「AIDAに元から感染してた訳?違うよね、どこから感染したの」

 

「アナタからじゃないんですか?」

 

「違う、私は呑まれてない、私たちに敵意を持ったAIDAは私の中にはいない」

 

「ジャあ…裏切リ者カ」

 

「…明石、やめて」

 

「…殺ス」

 

「…止まれって言ってんのが聞こえない?」

 

「……っ…?動けナイ…何ヲした…?」

 

「…やめなよ、AIDAって2種類あるんだよ、私に憑いてるのは、母体、ウイルスの元とか、上司みたいな、簡単に言えば暴走させるだけじゃなくて、統率を取れる立場のAIDA、明石に憑いてるのは、私達艦娘みたいに誰かの指揮で動くようなAIDA、わかる?」

 

「………ナンデ…?」

 

「……なんか不味そうな…」

 

「ナンデ?何で私ハ恵まレナイの…?」

 

「明石、落ち着いて、今はアオボノも本調子じゃない、AIDAに呑まれたら面倒なことになるから」

 

「私だっテ…提督の役ニ立ちたカッタノニ…ナンデミンナ…」

 

「聞いてないね…明石のコンプレックスも…まあよくわかるけど…言っても逆効果かなぁ……」

 

「皆んな…ワタシなんか…ウゥッ…!」

 

「話も聞く気はない?無いよね、押さえつけるのも限界、やるしか無いね…でもここでやるのは不味いか…というか…」

 

明石は艤装を普段からつけてる、なら海にでも吹き飛ばせばいい

でも騒ぎは避けられない、そして明石はともかく、私は下手したらここらには居られなくなる

AIDAを飼い慣らした艦娘として…実験の良い材料だ

此処に心優しい子達しかいないのならそれは避けられるのだが

 

「…できれば、やめて欲しいんだけどなぁ……ダメかなぁ…?」

 

明石は、此方を見もしない、届かない

 

腕から泡が吹き出す、黒とは違う薄い紫の泡

確かにこの子達にも意思があり、生きている

少しだけ時間が要る、私には終わらせることができない話だから

 

「明石、頑張ったね、おやすみ」

 

 

 

工作艦 明石

 

「あれ?」

 

何処だろう此処

ずっと暗くて、何処までも深くて

つらくて悲しい、寂しいところ

止まってると不安だから前に進もうとした

引いてくれる手も、灯りさえもない

ふと後ろから手を掴まれた

反射的に振り返った、見えない何かが私の手を握っている

聞き取りづらい声で言うのだ

 

『お前のせいだ』

 

と、私が何をしたのか…いや、役には立たなかった

せいぜい建造や開発を少し頑張っていた

その仕事も手放した

確かに、私のせいなのだ

 

前に光が見えた

 

暗い手を振り切りたくて走った

より、とても辛かった、光が痛かった

そして、痛みに耐え、走ったのに…それに報いる事なく、光は急に消えた

再び闇に掴まれた、それはとても気分が良かった

暗闇の中へ引き返すことに躊躇いはなかった

 

辛く、辛い底の底へ、今度は両手が掴まれた

 

「あぁ、痛いのに」

 

離してくれない、みんな離そうとしない

全力で引っ張るから私の手は今にも引きちぎれそうだ

 

心地よくも、優しくも、なんにも無いけど

 

どうして心はこんなに暖かいのか

 

「明石、おはよう」

 

「………はい」

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