元勇者提督 作:無し
ドイツ ベルリン
綾波
綾波「さて、ドイツに到着しましたよ」
グラーフ「なんだ、この対応は…まるで要人だぞ…」
到着すれば辺りには警戒体制の軍
そして移動用の車まで用意されている…
綾波「当然でしょう、私は世界中の艦娘システムの始祖とも言える…それほど優秀な技術者に敬意を払わないなんて、大罪もいいとこですよ」
グラーフ「待て、国にはそれは知られてないんじゃ…」
綾波「ええ、貴方が漏らしてない限りは伝わらないはずです…が、この対応…ああ、そっちか、納得」
後者の理由なら…恐らく、この国に滞在するのは大変になるな……
ホテル
朧「良い部屋だ…なんか、外国って来た古都ないから新鮮…」
リシュリュー「一般的なホテルより少し高いくらい?どうなの、グラーフ」
グラーフ「わざわざ自分の国のホテルの相場なんて調べるか……だが、まるでVIPの対応の様な……って綾波!貴様何を!」
入り口に指向性の爆薬を仕掛けているところをグラーフに止められる
綾波「え?罠を仕掛けてるんですよ」
タシュケント「わ、罠?」
ザラ「何のために?」
綾波「まだわかりませんか?朧さん、貴方ならわかるはずですよ?」
朧「……街中から海水の匂いがする」
グラーフ「待て、ベルリンは海に面していないぞ」
綾波「ではグラーフさん、ここで問題です、ここから海まではとても離れています、なのに海の匂いがする理由は?さあお答えください」
グラーフ「……まさ、か…」
綾波「そうですね、思ったより深海棲艦の進行は静かで激しいモノだった様だ…そして何より問題なのが、おそらく人に扮した深海棲艦…いや、他人の姿のままの深海棲艦が大量にいるのでしょう、まるで見分けがつかないし…きっとそれは政治家にも紛れている」
グラーフ「…政治家どころじゃない、貴様の言う通りなら…辺り一面敵じゃないか…!どういうことだ!」
グラーフさんが頭を抱え、座り込む
綾波「…手遅れだったのでしょう、私たちは遅すぎたのでしょう……ですが、やれるだけのことはやる、やらなくてはならない…」
グラーフさんに手を差し伸べる
綾波「さあ、この街を、国を救ってみましょうか」
グラーフ「……ああ…やってやる……」
グラーフさんが私の手を握り、よろよろと立ち上がる
綾波「さて、まずホテル提供の飲食物は口にしない事、私が持ってきたこれらの飲水と食べ物だけを口にしてください、毒殺しにくるか、ダイレクトに深海棲艦にされるのか、それとも直接殺しに来るか…神経を張り巡らせるにはまだ些か早すぎます、とりあえず今はリラックスしましょう」
グラーフ「リラックスだと?できるわけがないだろう…」
綾波「今は気を張るだけ無駄です、向こうはこちらが無警戒な獲物だと勘違いしている、動くには絶好の機会ですが…民間人を巻き込みかねない、できるだけ犠牲を減らすなら誰もが…少なくとも普通の人が寝静まる深夜に動くべきでしょう?」
タシュケント「そうだね、わかった」
綾波「おや、タシュケントさんが1番に賛成してくれるんですか?」
タシュケント「ジャパンで学んだ、明日は我が身、ロシアがそうなる可能性は常にある、助けてもらうために助ける、ここで余計な事をしようとは思わないさ、それにグラーフとは気が合うし、友達の故郷を荒らしたかなんかない」
グラーフ「…タシュケント、感謝する」
綾波「それでは、時間潰しにトランプでもしますか?」
グラーフ「…外に出るのはマズイか」
綾波「ええ、1人になった所を狙われかねないですから…さて、私たちのやるべきことは何か、まずは親玉を殺すところから始めましょうか」
朧「それって最後なんじゃ…?」
綾波「親玉が消えて浮き足立った所を識別しましょう、擬態深海棲艦を割り出すのは現状朧さんにしかできませんが…っと?」
コンセントを凝視してから荷物を漁る
綾波「えーと……これでいいかな」
グラーフ「今、何を挿したんだ?」
綾波「んー…言うなれば盗聴器クラッシャー…えーと、あとはこれとそれとあれと…」
部屋中の盗聴器や隠しカメラを取り出して並べる
タシュケント「…全部筒抜け、か…」
グラーフ「作戦がバレた以上変更が必要だな…」
頭を悩ませる2人をよそにカーテンを閉め、ベッドに腰掛ける
綾波「作戦は変更しませんよ?だって作戦は誰にもバレてませんから」
グラーフ「何?盗聴器は機能してなかったのか?」
綾波「いいえ、というか私が盗聴器を警戒しないとでも…?舐めないでくださいよ……」
朧「……そっか、護衛を集めるつもりで…」
リシュリュー「さっきのはブラフって事?じゃあ今回の狙いは…」
綾波「少数の擬態深海棲艦を撃破し、傾向を探ります」
グラーフ「傾向?」
綾波「擬態深海棲艦…と便宜上呼んでいますが、寄生するタイプの深海棲艦も存在しますし、助かる命かどうかもわからない…それに深海棲艦がこの国の中枢に入り込んでいるならより慎重な調査が必要になる」
グラーフ「…ああ」
綾波「大丈夫、私はヨーロッパの深海棲艦をある程度知っています」
リシュリューさんが顔を顰める
綾波「上手くやりましょうか」
街中
綾波「あの人は?」
朧「多分、深海棲艦…」
綾波「なら、問題ないですね」
すれ違い様に一般人の顎を殴りつける
朧(た、ためらいがない…)
綾波「……おや」
殴られた男がヨロヨロと近づいてくる
綾波「…あまり派手にやると注意を惹き過ぎますよねぇ?」
ポケットに手を突っ込み、カートリッジを見えない様に起動する
綾波「ま、知りたい事は山ほどあります…順番に進めましょう」
近寄ってきた男に肩をぶつけ、足をかけ、転ばせる
綾波「あれ、大丈夫ですか?こけちゃったみたい……おーい…すみませーん、誰か救急車を呼んでください、この人意識が無くて!」
事故を装い辺りの人間に助けを求める
少ししてやってきた救急車を見送り、朧さんの方へと帰る
朧「…ドイツ語喋れたんだね」
綾波「主要な言語は一通り、しかし…わかった事は多いです、本当なら救急車に乗せて欲しかったんですけどね」
朧「何がわかったの?」
綾波「あれは寄生タイプではありません、そちらは次第になっても襲ってきますから……で、単純な擬態……面倒なことになりそうですねぇ、この国は水道水より買って飲むタイプですし…」
朧「…今何考えてた…?」
綾波「薬品を流して国中の水を薬にしようかと」
朧(相変わらずエグい…下手したらアタシ達も毒を撒かれてたかもしれない…)
綾波「擬態深海棲艦と呼び続けていましたが……果たして深海棲艦が擬態しているのか、それとも人間が深海棲艦になりつつあるのか…どっちでしょうねぇ…前者なら容赦なく叩き潰すんですけど、気絶したところをみると…ううん…」
朧「…ねぇ、綾波、この辺をまとめてるような深海棲艦っているの?」
綾波「居ますよ、多分北海くらいにまだ居るんじゃないでしょうか」
朧「…知り合いなの?」
綾波「いいえ、軽く捻った程度ですよ、首を」
朧「く、首…」
綾波「だって生意気なんですよ、それにドイツ語とイギリス英語をバラバラに喋って聞き取りづらいし」
朧「…2人いるの?」
綾波「ええ、欧州棲姫と欧州水鬼とか名乗ってましたね、私の艦娘システムの利用者で戦没者、元々はアークロイヤルというイギリスの艦娘とビスマルクというドイツの艦娘だったそうです」
朧「……その2人を倒せば、何か変わるのかな…」
綾波「いいえ、何も変わりませんよ…擬態深海棲艦はあの2人が消えても残り続けるでしょうから……さて、作戦を立てましょう、擬態深海棲艦を一掃しなくては」
ホテル
グラーフ「…作戦は決まったか?」
綾波「いいえ、優先すべきは薬品です、擬態深海棲艦を元に戻すためのね……そういえばこの話はしましたっけ?深海棲艦が望まれて生まれたという…」
タシュケント「望まれた?あの深海棲艦が?」
綾波「深海棲艦とは、不老不死の力を求めた結果なんですよ、御老人たちが永遠を欲した結果なんです」
グラーフ「ゴロウジンとやらは…どこのどいつだ」
綾波「寿命で死んだんじゃないですか?少なくとも10年前に本格的に動き出した計画のようですが、私は気に食わないので関与してた奴らを深海棲艦にしてやりましたけど」
ザラ「…その計画って、世界中の誰かが関わってるんですか?」
綾波「恐らく、この計画には富裕層や特権階級の皆々様が、特に良心のかけらもない人たちが関わり、進行されてるのだと思いますよ?」
ザラ「…イタリアも?」
綾波「かもしれませんね、さて、と」
携帯から電話をかける
グラーフ「誰に電話をかけてるんだ?」
綾波「私達に仕事を依頼した人です……おや、おかしいな、出ませんね……ああ」
携帯をスリープモードにし、両手を合わせて目を瞑る
グラーフ「死んでるのか…?」
綾波「そうでしょうね、ですが請け負った以上最後までやります…さてさてさて…私はどうしようっかなぁ…」
頭を働かせて、落ち着いて…考えろ
この国を救ってやる、その為には?
綾波「……まずは、病院か」
グラーフ「病院?病院で何をするんだ」
綾波「乗っ取ります、さて、行きますよ、テロリストのお仕事開始です」
ザラ「て、テロリスト…?」
グラーフ「…難解な言い回しは必要ない、病院の設備が必要なんだな?」
綾波「そうです、そして私が深海棲艦ならまず病院をおさえます」
グラーフ「その理由は」
綾波「技術者だらけですし…改造手術、しやすそうじゃないですか?」
タシュケント「そんな理由…?」
綾波「いやいや、これが真剣なんですよねぇ…研究施設よりも病院の方が平常を装いやすいでしょう?」
朧「アタシも病院はいいと思う…あとこれ、さっきホテルの人に貰った2ヶ月前の記事なんだけど」
朧さんが新聞を渡す
ザラ「複数の患者が末期癌から奇跡の生還…神の手の医師」
綾波「おや、それならみなさん確信を持てますよね?」
グラーフ「…殺して、生かす…」
綾波「深海棲艦とは生命反応のある死体…なんて私は昔言いましたけど、どうやら本格的にそうなってきましたねぇ」
朧「病院は遠くない、でもどうやって制圧する?」
綾波「簡単ですよ、相手が暴力を使うなら私たちも暴力を使うまでです、交渉でどうにかなる相手ではないですから」
グラーフ「まて、一般人まで巻き込むつもりか?」
綾波「いいえ、しかし相手は一般人に紛れて襲いに来るでしょうね」
タシュケント「見分けは?」
綾波「つきません、圧倒的に不利ですが、専守防衛…やられない限り攻撃しないという方式をとります」
ザラ「それじゃ死んじゃうんじゃ…」
綾波「大丈夫ですよ、私1人で行きます」
朧「えっ?」
綾波「グラーフさん、貴方は制服を着ていれば普通の軍人にしか見えませんし民間人の誘導を…あ、スペアの制服あれば皆さんに貸してあげてください」
グラーフ「それは構わないが…」
綾波「大丈夫、深海棲艦も存在がバレることを避けたがるはず、私にしか攻撃してきませんよ…あ、あと誘導する際にドイツ語を喋れないと怪しまれるので多少ドイツ語も教えてあげてください」
グラーフ「…わかった」
朧「本気で1人でやるの…?」
綾波「ええ、でも不安はありますし…朧さん、艤装返してくれませんか?」
朧「えっ?」
綾波「…怖いですか?」
朧(…綾波に艤装を返す……綾波に、力を持たせるのは……いや、大丈夫)
朧「ううん、驚いただけ」
綾波「ならよかった、あれさえあれば一国の軍も私には敵わない」
カートリッジを取り出し、眺める
グラーフ「…それは?」
綾波「暖房器具です、暖かいですよ」
タシュケント「…うわっホントだ」
ザラ「これ、なんですか…?見たことない…」
朧「…カートリッジ…まさか!」
綾波「アタリです、さて、ドイツの戦争は電撃戦……私も電撃戦を始めましょうか」
病院
ガシャガシャと艤装が足音を鳴らす
綾波「…よし、爆薬設置完了……あとは正面を潰せばいいか」
正面扉を蹴り砕く
綾波「皆さん急いで逃げてください!テロリストが攻めてきてますよー!」
民間人が蜘蛛の子を散らすように逃げ出す
警備員が奥から走ってくるのを確認し、悠々と歩きながら進む
綾波「さて、かかって来なさい、群れの深海棲艦」
目に熱が籠る
一部の民間人がこちらへと走ってくる
掴みかかり、殴りかかる動作を視てかわす
綾波「専守防衛……にはなりませんね、ダメージ受けてないし…でも良いか」
軽く、回し蹴りを放つ
近寄ってきた民間人が壁や地面に打ち付けられ、斃れる
綾波「〜♪」
向かってくるもの全て薙ぎ払い、伽藍堂になった病院の入り口を爆破する
正面入り口以外を全て瓦礫で塞ぎ、完全に制圧するまで病院内を練り歩く
綾波「……ふむ、逃げ遅れた人達も…いや、この人たちは患者…違う、被験者か」
ベッドに並べられた人間
そして中途半端な手術痕
綾波(人間を深海棲艦にする手術…この人たちはまだ間に合うのか?)
朧さん達に連絡を飛ばし、メスを取る
綾波「……これもまた、運命でしょう、受け入れられなければ逃げ出すしかない…」
グラーフ「…なんだこれは」
綾波「ここはアタリでした、人間を深海棲艦にする手順書などもある…これなら、すぐに必要なものができる」
グラーフ「……それより、お前は何をした?」
綾波「病院を制圧しました、警備員は気絶させて放り出しました」
グラーフ「その4人はなんだ、なぜ背中を切開された状態で放置されている」
綾波「彼女達は深海棲艦にされかけてました、これに関与していた人達はもう逃げ出したみたいですけど…」
グラーフ「手術中にか?…なんてむごい…」
綾波「切開したのは私です、この人達を生かすも殺すも私次第です」
グラーフ「…何?」
綾波「グラーフさん、私はあなたに一つ…お願いがあります」
グラーフ「願いだと?」
綾波「この方達はあなたに任せたいな、と思いまして…この方達がこれから苦しむ事は想像に苦しくありません、ですが私は日本人で、この人達の力になるにはさまざまなギャップがあり…」
グラーフ「…なんだ、そんなことか…わかった、それなら……任せてくれて構わない」
綾波「では、始めましょう」