元勇者提督 作:無し
ブラックローズ
「はぁぁぁあ!!」
自分の身長ほどある剣を振るう
気づけばいつしかのめり込んでた、いつぶりだろう、こんなにゲームをしてるのは
だけど、私は命をかけている
本は、私でも扱えた、だが、使うべきではなかった
今私が手にしている武器は微弱なデータドレインを常に放っている
そう、触れれば消えるか、データ改竄、恐ろしいものが出来上がった
「…ふぅっ…チッ全然来ないわね」
「そんなものです」
現実で使おうとも思ったが、ヘルバにそれを咎められた
現実で使えば間違いなく大量殺人の悪魔になっていただろう
それに、この武器くらいなら何とかなる
問題と言えば運営側くらいだが、それもヘルバが何とかしてくれるらしい
あとはこの子
「あんたも物好きよねぇ」
「…そうですか?」
「ネットの中から何ができるのか…まあ、セグメントを持ってる以上狙われる覚悟はいいのよね?」
「勿論です」
アウラのセグメント、コレを集めることが私たちの狙い
スケィスを始めとした八相もコレを集めて、アウラを完全に消去したい
「…お化けは要らないからね」
「なりませんよ」
しかし驚いたことに朝潮のキャラクターは借り物、しかも面識のある相手だったのが驚きだ
庄司杏、アウラをかえした、とは聞いていた
だから彼女は自分のキャラクターを放棄したのか
「ちゃんと断って借りてますからご心配無く」
そういう事らしいので、何もいうつもりもない
「操作は問題ないのね!?」
「まだもう少し…」
ブゥゥゥゥゥン
画面にノイズが走る
嫌な音、頭が直接揺さぶられる感覚
「来る…!?」
違う、八相じゃない
「…深海棲艦…?」
「………コレが?」
武器を向ける
「………」
白い髪を靡かせ、黒い甲殻のような物に目や足を覆われた姿はこのゲームには似つかわしくなかった
だが、何か、知ってるかもした
「……あぁ」
「……ヒサシブリ」
「やっぱ摩耶ちゃんか」
最悪の出会いをしてしまった
大砲のようなものを向けられている時点で、戦闘は避けられないのだろう
「ゴメンナサイ」
ボコボコと黒い泡が噴き出す
「…謝んなくていいよ、ちょっとしんどい思いするかも知れないけど」
「…やるんですか」
「やるしかないのよ……死んでも恨まないでね」
「モチロン…オタガイサマ」
良い返事、やるならお互い全力で
「ライディバイダー!追撃して!」
「は、はい!えーと…これ、メバククルズ!」
「ライドライブ!」
「…ボコボコ…」
接近戦を仕掛けられた遠距離タイプってなかなかどうして悲しいわよね
「……」
シャッという音が何だか頭の中で繰り返される
「朝潮!」
振り返れば爆炎が朝潮を包んでいた
「やってくれるじゃない…!」
こっちだって全力だが、それはお互い様
何より向こうはダメージをものともしてない
本当にデータドレインの、効果はあるのかと問いたくなる
正直やりすぎた時が怖いが、そんな甘いことは言ってられない
「あんまり調子に乗ってると痛いわよ!」
大きく剣を振り上げる
「いっけぇぇぇぇ!」
地面に剣を叩きつける
衝撃波が摩耶を襲う
「ッッ…イタイ…!」
「どうやら効いてるみたいね」
「そのようですね…」
「無事だったの?」
「………HPが残り少ないんですけど」
「回復してなさい!ハープーン!」
飛び上がり、剣を向け突き立てる
「ハァッ!」
弾かれる、手が痺れる
「………マズイわね」
感覚が呑まれるのがわかる
未帰還者はごめんだ
「…そろそろ決めるわよ!」
「無茶言わないでください!」
「これ以上が無茶だっつーの!」
大きく剣を振り抜き回転する
「サイクロン!からの…!」
吹き飛んだ摩耶を追い、飛び上がる
空間を蹴り、剣を振り抜きながらまっすぐ地面へ
「死なないでよ…!メテオドライブ!」
速水晶良
思いっきり地面に衝突した
ゲームのはずなのに脳が誤認して痛覚の信号を出している
「…どうよ」
キャラクターが寝転んだまま、私は視覚デバイスを外し、マイクに向かって声をかける
「お見事、ですか?」
「見事だな」
一息つき、もう一度デバイスを付け直す
「これがAIDAって訳ね」
ブンッと音がなるほどの勢いで剣を振り払う
目の前にいる紫のアメーバのようなそれを見る
「さて?私の友達に手を出したんだから、どうなるかわかってるんでしょうね」
横になったままの摩耶に手を差し伸べる
しっかりと手を握り、引き起こす
「…こんなのに寄生されてたのか」
「犠牲者は多いです」
「…ま、そんな建前は置いといて…一度やってみたかったのよ、コレ」
私には腕輪はない、代わりにこの剣がその役割を果たす
「アタシの命より興味かよ、ひでーな」
「ま、いいじゃない…データドレイン!」
AIDAを完全に消滅させた
ゲームだというのに、はっきりと手応えがある
「…ふふっ…いつだってアイツがリーダーじゃないのよ」
「しっかし、何でアタシはこの格好で居るんだ?いや、デジタライズしたらそうなるもんなのか?」
「深海棲艦から戻れただけ良かったじゃないですか、現実に帰ったらお祝いの言葉をあげます」
「…ピーピー泣いてたあのルーキーが言うねぇ」
「はいはい、やる事があるんだから行くわよ」
「待ってくれ、アタシを戻す前に…提督もこっちに来てる」
「…カイトが?」
「…司令官もここに…」
「ああ、アタシと一緒にデジタライズした」
「……いいじゃない、勇者を助けるなんて、相棒以外に譲れないわよ」
「じゃあ、私も手を貸すのでコレで相棒ですね」
「アタシ、達だろ?」
「…ふふっ…競争率は高いわよ?」
「げ、まじか」
「覚悟の上です」
「さて、叩き起こしてやろうじゃない!」
「へぇ、本当にクリスタル漬けね」
「信じてくれたか?」
「…さて、起きなさい、この私が迎えに来てあげたんだから」
剣を構える
「ちょ、ちょっと、何する気ですか?」
「ぶち壊すのよ、こんなのに守られてるようじゃ、まだまだってとこかしら?勇者サマ!」
剣を突き立てる
「おいマジかよ!?」
「敵にコレを攻撃されてる時、現実の体にもダメージがあったと聞いてますが…!」
「私の剣はデータドレインが放出されてる、これで改竄しながら斬ってやるわ!」
「…すごい自信だな…」
「……アオボノさんのデータドレインじゃダメだったんでしょうか…」
「データドレインを使える奴がいたの?まあ、それにしてもダメに決まってるじゃない…こんだけデータドレインを当てても壊れないんだからね…だから、次はこうするのよ!」
今度は剣を何度も振り上げ、叩きつける
「起きろぉぉぉぉぉ!!」
ピシッと音を立ててヒビが入る
「良い加減に!起きなさい!」
音を立ててクリスタルが砕け散る
「……ハハハ…強引だな、ブラックローズは…」
「何言ってんのよ!アンタはこうでもしなきゃダメでしょうが!」
「そうかもね(笑)」
「さ、行きなさい、挨拶はまた今度」
「うん、どうやら時間みたいだ」
カイトのPCが消滅する
「あ…」
「アタシら話しをする間もなかったな」
「いーじゃない、いくらでも会えるんだから」
「……まさか…」
「リアルに帰ったのよ、さて、摩耶、アンタも帰れるの?」
「…多分無理かなぁ」
「……よし、この身体、アンタにあげるわ」
「え?」
「ブラックローズは今日で卒業、アンタが使いなさい」
「……良いのか?」
「強い奴ってのは、一から始めてもまた強いのよ」
「………本当に強い人ですね」
「コレでも勇者の相棒だからね、さ!アンタらも帰った帰った!」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
「さようなら、ブラックローズ」
私がヘルバに怒られたのは言うまでもない
凄く、寂しいけど、私のブラックローズとはさようならだ
重巡 摩耶
「……ただいま」
「おかえり、摩耶」
「おかえり」
みんなで出迎えてくれた
私はしっかりと、今を噛み締めた
嬉しかった、何よりも嬉しかった
小っ恥ずかしくて、ちょっと強がったことも、心にもないこと言ったりもしたけど
「ただいま!みんな!ありがとな!」
言いたいことは言えたから満足だ!
離島鎮守府
提督 倉持海斗
「…長い眠りだったかな」
ずっと見てた景色だけど、もう一度見る事ができた
「おはよう」
不意に後ろから声をかけられる
「おはよう北上、僕が起きるってわかってたの?」
「勘、でも、賭けて良かった…ねぇ提督、今は何も聞かないから、明石のそばにいてあげて」
明石は…僕の声が届かなかった、唯一、声が届かないところにいた
「…明石にも、みんなに迷惑をかけたから…もう、決して離れない、もちろん、君からも」
「信じてるよ」
「任せて」
だから僕は自分のしたことの責任を取る
「明石、おはよう」
「………はい」
「長く待たせてしまったね」
「ほんと、ですよ…!」
泣かせてしまったな、あんまり良くない
「明石のおかげで、此処がまだある、本当にありがとう…僕は君達をずっとここから見ていたよ」
「…知っています、ですけど、何か言って行ってください…不安になりますから」
「わかった、でも、コレは解決じゃない、一つ終わっただけ、次がすぐに来る…ごめんね、明石、今はまだ泣いている暇は無いんだ」
「……グスッ…わかりました、提督代理の明石は只今より工作艦に戻ります!」
「うん、みんなにも伝えなきゃ、それに、帰ってくる摩耶の出迎えも用意しなきゃね」
「久しぶりなみんなもいると思うけど、改めて、僕がこの鎮守府の提督です、今まで長く眠っていましたが、これから改めて指揮を執ります、よろしく!」
「こんんっのクソ提督がぁぁぁ!」
見事なドロップキックが脇腹に入り、吹き飛ばされる
「いたた…ごめん、曙」
「私の髪!アンタのせいでどうなってるかわかる!?見えるわよね!」
「青くなっちゃってるね、ごめん、腕輪のせいかな」
「そうに決まってるでしょ!?何してくれてんのよ!
「でも、曙のおかげでみんな助かった…本当にありがとう、コレからは君一人に負担をかけたりしないから」
「……また勝手なことしないでよ」
「勿論だよ」
「提督、お久しぶりです」
「翔鶴、おかえり」
「ふふふ、もうそれは私の台詞ですよ?」
「そっか、じゃあただいま」
「お帰りなさい、提督」
「Hey〜?貴方がテートクナノ?」
「君は新しい人だね、よろしく、金剛さん」
「ヨロシクネー!コレからガンガン行きマスヨー?Are you ok?」
「あんまり無茶はしないでね、あ、それと、全員聞いて欲しい、新たにもう一人、帰ってくる…」
「おかえり、摩耶」
「おかえり」
みんなが摩耶を迎え入れる
高雄型のみんなは特に嬉しそうだった
「ただいま!みんな!ありがとな!」
「よし、曙…今はアオボノか、大丈夫?」
「腕はボロボロだけどね」
「…すぐに治るよ、それともデータの腕なんてどう?」
「……やめてよ、ゾッとするわ」
「ごめん、じゃあ、行ってくるから」
「そ、行ってらっしゃい」
カイトとして、僕は輸送船の護衛をする
勿論今度は一人じゃない
何かあったら船を、みんなを護る為に、全力を尽くす
結局の所、戦いは終わっていない
だから終わらせる為にも、物資は必要だった
僕の腕輪は今までのものと少し違う
まず名前が変わった
暁の腕輪
薄明と同じ意味の腕輪
この腕輪があれば、きっと大丈夫
「ご主人様!前方深海棲艦多数!」
「交戦用意!あんまり無理しないでね、この船は特に装備がないから!」
「提督、レーダーに反応、深海棲艦では無いものが反応しています!」
「…よし、北上と僕で当たるよ、順に抑えていく!漣達も異常を感じたら即座に船まで撤退して!」
「提督、多分あれ、なんだっけ」
「八相」
「そうそれ、変な石板みたいなやつがきてる」
石板、壁画の姿をした八相、イニスであることは間違いないだろう
「……マズイかもね、漣、ごめん戻って!船にピッタリとついて、相手は幻覚を見せてくるから」
『それは無理です!もう霧に囲まれてますぜ!』
「遅かった…!北上、急いで片付けるよ!」
「おっけー」
第二相惑乱の蜃気楼イニス
そう記された強敵
「コイツはワープしたら攻撃してくる!気をつけて!アプドゥ!」
「うぉっ!?なんか速力がおかしい!」
「今速度バフを…えっと、スピードアップさせたから!慣れないと思うけど、それで攻撃をかわして!」
「先に言ってぇぇ!」
「よし、僕も行くよ!」
足元に六角形のガラスのようなものが浮き上がる
「水帝霊王召喚の巻!メロー・クー!」
イニスの真下から水が強く噴き上げる
「北上!あれに魚雷を流して!」
「おっけー!全問発射!」
「そのまま後ろから攻めて!雷独楽!」
飛び上がり斬りかかる
昔見たそれだ、何度退治しても、やはり八相は恐ろしい
「時間はかけられない!無限繰武!」
「魚雷もう一回行くよ〜!」
イニスへの攻撃が空を斬る
何処かにワープした、攻撃が来る合図だ
「マズイ!北上!とにかく逃げ回って!」
「了解…うわっ!?」
北上の進路を防ぐようにイニスが現れる
「間に合わない!北上!」
「やるしかないね…!」
イニスの選択は最悪だった、イニスの背後に三つ石像のようなモンスターが現れる
コレをぶつけてくる、単純明快だが一番強く、ダメージが大きい
しかしそれに対して北上が取った選択も僕には驚きだった
「そりゃっ」
北上の魚雷発射管から薄紫の泡が吹き出す
まるでAIDAのようなそれは、北上を守るように広がり、石像を受けたのだ
「…AIDAを…操ってる…!?」
「説明は後ね!さぁて…近づいたこと後悔させてあげようか!」
\61cm五連装(酸素)魚雷\
/14cm単装砲/
\61cm四連装(酸素)魚雷\
AIDAを槍状にしてイニスに突き刺し
さらにそれをレールのように魚雷を全て直接叩き込む
「オマケだよ!」
主砲からAIDA入りの弾薬、爆風が吹き荒れる
「プロテクトが壊れた!今だ…データドレイン!」
イニスの姿が変わる
楕円形の繭のようなものがいくつか組み合わさったような
特徴といったものもない、まるで骨組みのような姿
「油断しないで!確実に倒すよ!」
「了解!」
トドメを刺す、確実にコイツのデータを消去する
以前は倒した時にウイルスを振り撒かれたが次はそうはいかない
「もう一度!」
腕輪の形状が変化し、いつも以上に巨大に展開される
「これが新しいデータドレイン…!いっけぇぇ!」
巨大なビーム砲と表現すべきか、それで確実にイニスを消し去る
同じ轍は踏むものか
「よし!仕留めた!漣!聞こえる!?」
『こちら輸送船団、結構先に進んでますぜ!』
「……えぇ…アイツら私たちを置いて行ったの?」
「いや、良いんじゃないかな、問題ないようで何よりだよ、急いで向かうけど、多分そっちの方が先に着くよね?帰るまでにパーティーの用意でもしてて」
『かしこまりっ!漣様が直接調理場の指揮を執ります!』
「頼んだよ、よし、北上、帰ろうか」
「…聞かなくて良いの?AIDAの事」
「キミに害がないなら、それで良いんだ」
「…思ったより便利なんだよ、この子は…他のAIDAを食べちゃうし、私の武器にも、鎧にもなってくれるから」
「聞いたことがある、世界に順応したAIDAがいるって」
「…この子もそうだと思うよ」
「でも、北上、北上も心配だけど、そのAIDAにも意思がある、力だと思わないで」
「…わかった、さ、帰ろうか、潮と朧がキッチンに立つのは阻止しないと」
「…海鮮パフェは勘弁して欲しいかな…」
「初めまして、キミは?」
「私は天龍です、よろしくお願いします」
「よろしく、気分を悪くしたら申し訳ないけど、元気がなかったりする?ここには来て時間が経ってないとは聞いてるけど」
「いえ、皆さんよくしてくれるので…」
「ならよかった、何か不自由があったら教えて、僕らでできることはするから」
「ありがとうございます」
「んー、本当に聞いてたより大人しい感じだね」
「えぇ、なので記憶を引き継いでるのかと」
「かもね、だとしてもあの性格も多分彼女の本来の性格だと思う」
「なんでですか?」
「なんとなくだけどね、ゆっくり付き合っていこう」
「…うーん、わかりました」
「それとこの島風って子は?」
「えっと、この子もちょっと違うタイプで、とにかく楽がしたい、走るのは好きじゃないと」
「そっか、じゃあ今度ゲームでも誘ってみてよ、きっと喜ぶよ」
「…そのことですが、軍医として派遣されてる夕張から、医務室はゲームセンターじゃないと」
「……娯楽室が必要かもね」
「そうですね」
「よぉ、提督」
「摩耶、調子はどう?」
「最高だよ、それより提督、次に出る時、アタシも連れてってくれよ!」
「うん?どうして?」
「勇者カイトの相棒って言ったら、ブラックローズ、だろ?」
「…もしかして」
「ああ、今は私がブラックローズだ」
「…そっか、頼りにしてるよ」
「任せときな!」
「ブラックローズ…またね」