元勇者提督   作:無し

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化学兵器

イギリス 市街

綾波

 

綾波「良いですか!まず武器が必要です、此処は一応軍人の詰所の様なところみたいですし、とにかく重火器と爆弾を中心にかき集めてください!」

 

レーベ「わ、わかった!」

 

周囲を探索し、とにかく使えそうなものを探す

 

綾波(…洗剤…深海棲艦は毒薬の耐性は案外低い、だが…民間人を巻き込みかねない…いや、持っていくべきだ、巻き込まれる位置にいるなら既に死んでいる…)

 

非情なようだが、できる最善を尽くすしか、今の私にはない

 

綾波「これだけ有ればいい…マックスさん!ユーさん!これを使ってください」

 

マックス「ら、ライフル…!?あれに効くの!?」

 

綾波「効きません、しかし足止めにはなる、護身用に使ってください…あとこれ、有効打になるのはコレだけです」

 

ユー「グレネード…」

 

レーベ「僕たちはどう戦えば良いの…!?」

 

綾波「まず、貴方達にはナノマシンを注入してあります、それは旧式ですが感情で運動性能が向上します、とにかく怯えは捨ててください、生き残る、敵を倒すことだけを考えてください…難しいでしょうが、とにかく今の貴方達が生き残るにはそれしかない」

 

マックス「倒す事って…」

 

綾波「手本は、見せましょう」

 

ハンドガンを手に取り、街に出る

逃げ惑う人々、そしてそれを追いかける駆逐級や軽巡級の深海棲艦…

 

綾波「…狙いはあの白い部位です、目も有効です、とにかく肉質の柔らかい部位を狙い、ダメージを与えて足を止めてください」

 

イ級を撃ち抜く

悶え、苦しむ様子で動きを止める

 

綾波「……何よりも優先すべきは、自らの命です、良いですか、敵は南から侵攻している、北に逃げてください、できるだけの人を守りながら、何より自分を守りながら」

 

ユー「わ、わかりました…!」

 

綾波「困った事があったらとにかく声を出して私に助けを求めてください、無線をオンラインにしてあります、私は…」

 

カートリッジを、探さなくては…アレがあれば、この辺りの深海棲艦を全て消し飛ばす事も…

いや…ここにあるのか?……不確かなことに、命を賭けるのが私のやることか?

私らしく、行け

 

綾波「私は、高所から皆さんを援護しつつ指示を出します!良いですか!」

 

レーベ「了解!」

 

マックス「とにかく足さえ狙えば…」

 

ユー「う、うん…」

 

3人が方々に散るのを確認し、大きく息を吸い込む

 

綾波「私は、此処だ!かかってこい!!駆逐古鬼!!」

 

目的が私なのなら、誰かを巻き込む真似は許さない

そんな事を、認めたりはしない

 

例え誰が許しても、天が許したとしても、例え神が許したとしても…私は、許さない…覚悟しろ

 

綾波「…縊り殺して、あげましょう…」

 

不可能だ、頭の中でそう結論付けられた

だけど、何一つ関係ない

何一つ、問題なんてない

 

私がやる事に何一つ澱みなどない

私の前に立ち塞がる障害は解剖し、理解した上で殺す

 

綾波「……っ…」

 

体内の機器を操作し、運動性能を可能な限り上げる

 

高く飛び上がり、屋根に乗り、ライフルを構えて敵を撃ち抜く

 

綾波「戦闘記録は…!確か、見たはずだ、キタカミさんのやり方を…思い出せば…」

 

とにかく、私にできる全てを

 

ハンドガンを幾つかばら撒き、そのトリガーを狙い撃つ

撃つ、撃つ、ただ撃ち続け、壊れるまで…!

ハンドガンが放った弾が深海棲艦を撃ち抜こうとも、南から溢れんばかりに押し寄せる深海棲艦が私へと向かってくる

 

綾波「…足りないか、なら……なりふりは構わない、コルベニク!力を貸してください!!」

 

目に熱が籠り、思わず手で抑える

 

綾波「あぁぁぁっ…ぁ…がっ……クローンの肉体じゃ、フルパワーは…厳しい、か…!」

 

だけど、もう止まらない…

引き金は引いた、撃鉄が弾の雷管を押したのだ、あとは発射された弾が着弾するのを待つのみ

 

綾波「か……ぁ…っ……ああぁぁぁぁぁっ!……アハッ」

 

屋根から飛び降り、深海棲艦をひと睨みする

津波のように止まる事を知らない深海棲艦が私1人の、目だけで…ようやく、停止する

 

綾波「…こちら綾波、伝達、全員撤退の速度を上げなさい」

 

レーベ『りょ、了解…」

 

ユー『な、なんだか雰囲気…怖い…』

 

綾波「そんな事はありませんよ、この仕事が終わったら貴方達の歓迎会も兼ねてみんなで美味しいものでも食べましょう、バームクーヘンとか、食べたいですね」

 

ああ、良いな…

きっと、楽しいのだろうな…

素敵なのだろうな…その、光景は…私にはとても勿体無いくらいに

 

綾波「……駆逐古鬼は、来ないか…」

 

二体の深海棲艦が、こちらへとゆっくり歩を進める

 

欧州水鬼「…貴様ガ、綾波…」

 

欧州棲姫「…オロカナ、ヤツ…」

 

綾波「一つ、取り決めをしましょうか」

 

手をパンと音を立てて合わせる

 

綾波「私が貴方達2人を叩きのめしたら、大人しく全部引き上げてください」

 

欧州棲姫「バカナノ?愚カ者メ」

 

綾波「できたらで良いですよ」

 

欧州水鬼「私達ガ勝ッタ場合、メリットハナインダロウ」

 

綾波「有ります」

 

欧州水鬼「何…?」

 

ああ、右目が熱い、きっと…紋様が強く輝いているせい

私に求めてくる、私に、勝利を…最強の証明を

 

綾波「この目と…改二カートリッジを贈呈しましょう……最強の、力を」

 

欧州水鬼「……綾波・改二…ソノチカラハ…キイテイルゾ」

 

綾波「全て、差し上げましょう」

 

欧州水鬼「乗ッタ」

 

欧州棲姫「何!?何ヲ勝手ナ…!」

 

綾波「……さあ、科学の授業を始めましょうか」

 

洗剤を並べる

 

欧州水鬼「…オイ、何ヲ…」

 

綾波「わかりやすい説明をしてあげます、ここに混ぜちゃいけないって書いてあるんです、酸性の洗剤なんですけど」

 

欧州棲姫「マサカ…」

 

綾波「これと塩素系のものを合わせると、塩素ガスができます」

 

洗剤を流し、蓋をしたボトルを両手に持つ

 

綾波「私は素手なんですから多少は許してくれますよね?」

 

ボトルをよーく振ってから投げ、撃ち抜く

泡が周囲に撒き散らされる

 

欧州水鬼「クッ!?ア、危ナイダロウガ!!」

 

欧州棲姫「ハ、離レナイト!」

 

欧州水鬼「……オイ、奴ハ何処ニ行ッタ」

 

欧州棲姫「逃ゲタ…!?」

 

背後から、2人の髪を掴む

 

綾波「誰が逃げますか…」

 

強く引っ張り、肘を2人のうなじにあて、首をへし折る

 

欧州水鬼「ガァァァァァッ!?」

 

欧州棲姫「ゴッ!ガボッガバガッ!?」

 

綾波(折れろ!折れろ…!折れろ!!)

 

嫌な音がして、首があらぬ方向に曲がった2人が力なく崩れ落ちる

 

綾波「……この程度で死んでくれるなら、楽なんですけどね…っ…コルベニク、ダメ……力が弱って、コレじゃデータドレインが使えない…!」

 

使えないのなら使わない、他の手段をとる

 

綾波「…生き返らないように…」

 

とにかく、叩きのめして、壊して、時間を稼ぐしか…

 

綾波「……ぁ…」

 

目が、霞む

周りが真っ白になって、眠くて…

 

綾波(ダメ、ダメダメダメ…)

 

私の意思と反して、意識は闇へと落ちていく

 

 

 

 

 

 

 

病棟

 

綾波「っ!」

 

…患者が着せられる、病衣…

そして、そこそこ柔らかいベッド…周りを取り囲む、見知った顔…といっても1人を除いてみんな寝ているのだが…

 

朧「綾波…良かった、起きたんだね…」

 

綾波「どう、なって……なんで、私は生きて…?」

 

朧「綾波、立ったまま気絶してたんだって…」

 

綾波「…え?」

 

朧「綾波の前に、地面を削って『今回はお前の勝ちだ』って書いてあったらしくてさ…」

 

綾波「……そう、ですか」

 

約束を守った…か

いや、あんな不意打ちに律儀に対応されても困る…

 

綾波「…それで、ここは」

 

朧「その…一応、アタシ達がLinkだってことは信用してもらえたみたい、それでここはイギリス軍の基地の中、病棟…かな?」

 

綾波「……そうですか」

 

とにかく、私は助かってしまったのだろう

大量の命を犠牲にして

 

綾波「今、何時ですか?」

 

朧「朝の4時かな」

 

綾波「よく起きてますね…」

 

朧「時差があるから、実はドイツにいた時も変な時間に起きちゃったり、お昼に眠かったりして」

 

綾波「…みんなが起きるまで、ゆっくりとしてましょう……それより、怪我の具合は?」

 

朧「なんともないよ、痛みはまだあるけど、戦える」

 

綾波「ならダメです、痛みがあるなら異常がある、療養してください……他の方は無事なんですか?座って寝てますけど…」

 

朧「リシュリューさんは手の指を何本か骨折したみたい、ザラさんは全くの無傷、ショックによる気絶だったみたいだよ」

 

綾波「グラーフさんは」

 

朧「頭をぶつけたみたいだけど、検査では問題なしだったみたい、タシュケントさんは腰を打って立てないって言ってたけど、22時ぐらいに歩き回ってたし…みんな無事だよ」

 

綾波「……奇跡、か」

 

朧「そうだね、でも綾波のおかげだよ」

 

綾波「え?」

 

朧「不時着する前にちゃんと安全対策を指示してくれたし、輸送機も壊れちゃったけど…おかげで軽い怪我で済んだんだと思ってる」

 

綾波「……私の不注意で落とされた、それに高度を落としていなければパラシュートでの脱出もできました」

 

朧「でも、綾波は残って人のいない所に落とそうとする…んじゃないかな」

 

綾波「…知りませんよ、そうならない限り」

 

ペースが、乱されるな…

 

綾波「明日、輸送機から回収できるものを回収します、戦闘も想定されますし……早い所ここの責任者と話をつけたいんですけど」

 

朧「…綾波、その身体で大丈夫?」

 

綾波「……酷いですか」

 

鏡を見せられる

右目を中心に顔に大きな亀裂…のような痕

痛みは無いが、この身体は限界ということか

しかしLinkのベースに戻らないとスペアのボディは使えないし、どうしようもない

 

私は私を殺すことに躊躇いはない、だがそれによって…周りに被害をもたらすのは違う…

ここで死ねば誰も助からない…か

改二カートリッジももはや使えないだろう、言わずもがな黄昏の書もそうだ

 

今の私は、頭でっかちで、足手纏いな…お荷物

 

 

 

 

そこから数時間経ち、責任者に呼び出され、詳細な話し合いを2時間かけて行った

イギリスの要求は簡単だった、私にあの2体を仕留めて欲しいとのことだった

 

理由は単純、ドーバー海峡を通れないからだ…

ドーバー海峡を通れるようにしろ、これこそが本当の要求…例え首を並べても納得はしてくれない…

 

それに私は首を縦に振るしかない

だけど、私はどうしたら…いや、手段は、ただ一つ…

 

とにかく、時間をかけるしかない

準備が必要だ

 

戦うための準備…

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