元勇者提督   作:無し

425 / 625
期待

イギリス 

綾波

 

綾波「よく調べましたね、さすがです」

 

タシュケント「言われた通りに資料を集めただけだけどね、多分あってるはず…」

 

綾波「私の信頼に応えてくれてます、完璧な働きですよ」

 

タシュケント「…信頼か、信頼なんてしてくれてるのは納得できないけどね」

 

綾波「私は感情というものを知っている、理解しています、貴方が私に向けた怒りは本物でした、私を恨んでいた貴方を私は信用しますよ」

 

タシュケント「…どうしてさ、全然わからない、普通逆じゃないか」

 

綾波「怒りとは最も偽り難い感情です、ザラさんの様に友好的に振る舞うのは簡単ですが、怒りは隠す事も作る事も難しい、真の怒りを向けてくれた貴方達は私にとっては最も信用できる、むしろ一番信用しづらいのはザラさんですよ」

 

タシュケント「…よくわからないよ、そういうの」

 

綾波「しかし…アークロイヤル、彼女は可哀想と言うと簡単ですが…」

 

タシュケント「……悲惨だね、犠牲者とでも言うべきか」

 

綾波「艦娘システムを輸出する前、たった1人の試験的に運用された艦娘…か、彼女はとても苦しんだのでしょう」

 

…アークロイヤルについての資料を改めて見返す

彼女はイギリスが独自に作り上げた艦娘システムの犠牲者、イギリス最初の艦娘で、全くもって不完全なシステムに殺された…

 

タシュケント「これ見てよ」

 

綾波「……ああ、なるほど、完璧に理解しました、あの2人は思ったより腐ってましたね、クイーンの供回りには相応しくない…いやぁ、羨ましいなぁ…」

 

タシュケント「羨ましい?」

 

綾波「2人とも、きっと私より先に地獄に行けるんですよ、すごく羨ましいです…私も早く行きたいなぁ…最低で最悪な地獄に…」

 

タシュケント(……やっぱりよくわからないな、グラーフとリシュリューは子供みたいだって言ってたけど…破滅願望が強すぎる様に見える)

 

タシュケント「死ぬ為に生きるって、本末転倒なんじゃないかい?そうでなくても楽しいとは思えないけど」

 

綾波「…踏み込みすぎでしょう、人の人生に」

 

タシュケント「…ごめん」

 

綾波(…あの一件から、私に向けられる目が変わってしまったな…憐れむのはやめて欲しい、私は恨まれるべきなんだ)

 

紅茶を口に含む

 

綾波「…安いだけあってまずいですね、どこの茶葉なんだか」

 

タシュケント「オリジナルブランドだってさ、2ポンドで500グラム」

 

綾波「……何か体に悪い物でも入ってるんじゃ…はぁ……コーヒーの方がずっと良いんですけど、どれも焼失したみたいだし…」

 

頭脳労働者にとってコーヒーや紅茶の様な嗜好品は重要だというのに…

 

タシュケント「それで?どうするんだい」

 

綾波「Linkは空母が足りてませんねぇ…それに戦艦も足りてない、作戦地域を選ばない為にも、戦力を拡充する必要が有りますね?」

 

タシュケント「……引き込むつもり?無理だと思うけど」

 

綾波「私はもう何度も言いましたが……天才に不可能はありません、故に天才なのです、そしてやる前に諦めている人には成功は訪れませんよ、信じて進みましょう」

 

タシュケント「天才か…自分で言っててなんとも思わないの?」

 

綾波「思いませんよ、事実ですから…まあ、不遜であれ傲慢であれ、それほどの強さが上には求められる物です」

 

タシュケント「…安心させる為、かい?」

 

綾波「半分正解、ちゃんと戦えるでしょう?」

 

タシュケント「残り半分は?」

 

綾波「素です、これが本来の私と言うだけですよ」

 

タシュケント「……」

 

綾波(疑念を向ける顔……めんどくさいなぁ…)

 

綾波「急にオドオドと、弱々しい演技をして見せましょうか?」

 

タシュケント「…いや、遠慮するよ、気持ち悪いからね」

 

綾波「それがいいですよ、しかしみなさん寝ぼけた私を見て何を思ってるのやら」

 

タシュケント「…案外可愛いとこあるんだな程度じゃないかな」

 

綾波「私の顔、もともと可愛いと思いますよ、この傷さえなければ」

 

タシュケント「ハハハ、言うね」

 

綾波「事実ですから」

 

 

 

 

 

綾波「さてさて、トラップハウスが完成したわけですが」

 

タシュケント「…手伝っておいてなんだけど…これ、本当に大丈夫なのかな」

 

綾波「電気を使わないことがそんなに不安ですか?ハイテクにはローテクが劣るなんて誰が決めたんですか?ローテクだからこそハイテクを潰せるんですよ」

 

リシュリュー「向こうはハイテクなの?」

 

綾波「ええ、ものすごく」

 

グラーフ「それで、プランは」

 

綾波「A〜Zまで24通り」

 

ザラ「ええと、ふざけずに…」

 

綾波「24通りあるのは事実です、3つは既に実行中、ちゃんとお話を聞いてくれますか?」

 

グラーフ「ああ、だから勿体ぶるな」

 

綾波「簡単ですよ、正面からやります、ここに来るまでに供周りの坂を片付けてね?」

 

グラーフ「どうやって」

 

綾波「とにかく撃ちましょう、向こうの数が多ければ多いほど当たりやすくなりますから」

 

タシュケント「君、天才を自称するわりにめちゃくちゃ言ってる自覚あるかい?」

 

綾波「メチャクチャなのがいいんですよ、相手に作戦を読まれることが一番最悪ですよ」

 

朧「その作戦内容を聞いてるんだけど」

 

綾波「叩いて潰す、以上です」

 

リシュリュー「…まさか」

 

リシュリューさんが耳をすますジェスチャーを取る

ようやく気づいたらしい

 

リシュリュー「……日本語も、ダメなのね」

 

リシュリューさんがフランス語で呟く

 

綾波「子供のようですが、艦娘システムを使ってる様でして」

 

それにフランス語で返す

 

グラーフ「おい、何を言っている」

 

綾波「告白の練習中ですよ、野暮ですねぇ」

 

朧「他所でやってくれる…?」

 

綾波「さてさて、ゆっくり休んでおいてくださいね、明日は早く、忙しい…本当ならもっと楽なのに朧さんが勝手なことしたせいでお仕事が増えてしまいました」

 

朧「…ごめん」

 

綾波「安心してください、部下の失態は上司の責任です、穴を埋めるどころか、そこに山を作ってあげますよ」

 

朧(その言葉そう言う意味じゃない気がするけど…)

 

綾波「リシュリューさん、トラップの操作方法を説明します、グラーフさんはタシュケントさんに担当区域を聞いてください、後の方はまとめて説明するので後回しです」

 

 

 

 

 

リシュリュー「私の役割は?」

 

綾波「第一防衛ライン、地雷原の担当です」

 

リシュリュー「地雷っ…って、そんな事してもいいの?」

 

綾波「許可はとってますよ、というか大仕事をするんですから文句は言わせません」

 

綾波(それよりも問題は撤退経路だな、間に合うといいけど)

 

リシュリュー「それで?ここが担当区域って…」

 

綾波「これ、全部で200くらい埋めてるんですけど、半分は薬品なんですよね…まあ、最後吹っ飛ばすので関係ないんですけど、リシュリューさんの仕事は地雷の起動です」

 

リシュリュー「…地雷原の真ん中でダンスしろって事?」

 

綾波「いいえ、離れた位置で起動してください、スイッチは渡すので」

 

リシュリュー(ああ、手動なのね)

 

綾波「悪かったですね、誤作動を防ぐ為にはこれしかないんですよ、一般人巻き込んだら国際問題もいいところですから…それと、第一波は無視してください、先遣隊として少数が通り過ぎるはずです、それを私たちが撃破した後初めて本隊が来る、これが戦争の定石です、それを狙う」

 

リシュリュー「…Oui(わかった)、任せて」

 

綾波「貴方は手が使えない、だから簡単な操作で済む仕事を割り振りましたが……全くもって危険な仕事ですよ、危なくなったら逃げなさい、仕事を果たす事は重要じゃない、生きることこそ重要なんですよ」

 

リシュリュー「破滅願望がある奴に言われるなんて、驚きね」

 

綾波「誰も巻き込まない願望なんです、そのくらい放っておいてくれますか」

 

リシュリュー「Oui,oui(はいはい)

 

綾波「…チッ」

 

 

 

正規空母 グラーフ・ツェッペリン

 

グラーフ「…そんなことを言っていたのか」

 

タシュケント「グラーフ、どう思う?」

 

グラーフ「素だと言うなら、そうなのだろうが…」

 

タシュケント「でも、腑に落ちない気もする…綾波のたまに見せるそう言う顔って、それこそが綾波なんじゃないかな」

 

グラーフ「…わからん、私には」

 

コンコンと壁を叩く音がする

 

朧「ねぇ、いい?」

 

グラーフ「…なんだ」

 

朧「いや、綾波と…こっちで綾波と会った時のことを教えてあげようかと思って」

 

タシュケント「こっち…?」

 

朧「どうする?聞きたい?」

 

グラーフ「…どうせ、時間は無限にある」

 

 

 

 

グラーフ「…人殺しの罪の意識に呑まれていた、か…しかしそれも姉妹を守ってのことなのだろう、何故そこまで気に病む必要がある?」

 

タシュケント「朧、キミの話だけを鵜呑みにするとさ、綾波はまるで今もずっと演技してる様に聞こえるんだよ」

 

朧「アタシもそう思うよ、綾波は今までも、これからもずっと、Linkのリーダーを演じるつもりだと思うし、アタシはそれに触れるつもりはない」

 

グラーフ「…釘を刺しに来たのか」

 

朧「…綾波は詮索されたくないだろうからね」

 

グラーフ「……だとしても、綾波は…1人で何を抱え込んでいるんだ、私達では力になれないのか…?」

 

朧「随分、あっさりと…綾波の事信じるよね」

 

グラーフ「…そう見えるか、だが私も私で悩んだ」

 

朧「…信じて、何か違ったとしても、恨んじゃダメだよ、綾波は綾波、アタシたちが思ってるような綾波じゃないかもしれないから」

 

グラーフ「…そう言う貴様が一番綾波に期待している様に見えるがな」

 

朧「……自覚はあるんだけどなぁ…罪悪感もあるのかなぁ…」

 

タシュケント「罪悪感?」

 

朧「ちょっと優しくしたら吐き出してる綾波見てストレス発散してたしね…うん、アレは無いなぁ…」

 

グラーフ「…反応しづらいな、やってる事は善行だが悪意からとなると…」

 

タシュケント「…でも、そんな綾波も見て見たいかもね」

 

グラーフ「ああ、私達は自分達のリーダーを知らなさすぎる、綾波も、自分を見せない様にしすぎている…」

 

朧「綾波を変えてあげることができたら、いいかもね」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。