元勇者提督   作:無し

427 / 625
撤退

イギリス 廃墟

駆逐艦 タシュケント

 

タシュケント「こっち!急いで!」

 

レーベ「た、助かった?」

 

マックス「何も助かってない、ここからどうすれば良いの!?あんな数!」

 

タシュケント「とにかく!そこの廊下をまっすぐ進んで地下室に行ける梯子から地下室に!奥の鍵がかかる部屋でみんなで隠れて!」

 

ユー「わ、わかりました…!」

 

三人を見送り、あと1人を待つ

 

リシュリュー「待ってくれてありがとう、ここなら安全?」

 

タシュケント「全然さ、この辺りは罠がない…だから今仕掛けるところ」

 

ドアノブにゴムロープを引っ掛け、爆竹をセットする

 

リシュリュー「…攻撃になるの?それ」

 

タシュケント「とにかく時間を稼ぐものばかりだよ、でも…火力は正面入り口に集中してるし…」

 

立てかけてあったショットガンを手に取り、弾を詰める

 

タシュケント「護身用の武器はある」

 

リシュリュー「…使えるの?」

 

タシュケント「使った事はないけど、扱いは簡単さ、2発撃ったらリロード、綾波には安全に敵を待てる場所を指示されてる、ハンドガンはいる?」

 

リシュリュー「…殺すな、じゃなかった?」

 

タシュケント「でも、脚はメチャクチャにしてやれって言われてるよ」

 

リシュリュー「…ほんとにめちゃくちゃね」

 

グラーフ「おい!来るぞ!」

 

奥からグラーフが走ってくる

 

タシュケント「ザラ!プリンツ!戻る用意しなよ!」

 

プリンツ『了解です!』

 

ザラ『正面入り口、12人、突入してきます!』

 

ドアを蹴破った音と同時に爆竹が鳴り響く

 

リシュリュー「あれ、小さい花火みたいなの…何?」

 

タシュケント「綾波が作った、バクチクって言うらしいね…音だけ派手な物だよ、クラッカーみたいなね…」

 

覗き穴から玄関の方を覗く

 

タシュケント(…3人入ってきた、もう少し引きつけて……今!)

 

手元のロープを引く、兵士が足をロープに引っ掛け転び、銃を乱射する

 

タシュケント「うわっ!?…っ…!最悪だ…」

 

薄い壁を貫通し、腕を銃弾が掠める

 

リシュリュー「大丈夫!?」

 

タシュケント「問題無いよ!でもそっちのロープを引いて欲しい!できるだけ早く!」

 

リシュリュー「これねっ!」

 

銃声が何度か響く

呻き声、叫び声…

覗き穴から様子を伺う

 

タシュケント(…よし、ちゃんと作動したね、ショットガン…入ってきたやつみんな脚に弾を受けてまともに立てなくなってる…)

 

タシュケント「よし、仕事は終わりだ!早く引き上げよう!」

 

リシュリュー「先に降りて、ショットガンは私が持つから」

 

タシュケント「でも……うん、悪いね」

 

腕がズキズキと痛む、火傷のようであり、切り傷のようであり、鈍く鋭く、とにかく思考を掻き乱す様な痛み

梯子で手に重さがかかるたびに止まりそうになる

 

リシュリュー「ゆっくりでいい、まだ敵はきてないから、落ち着いて降りて」

 

タシュケント「…ごめん、リシュリュー」

 

言われた通り、でもなるべく早く降りる

 

グラーフ「飛び降りろ!受け止めてやる!」

 

タシュケント「えっ!?」

 

グラーフ「良いから早くしろ!」

 

タシュケント「…あーもう!ドイツ人は野蛮だな!!」

 

梯子から手を離し、飛び降りる

 

グラーフ「野蛮で悪かったな!だが仲間を助ける為ならなんだってやる、それが良いところだ」

 

タシュケント「みたいだね…ありがとう、グラーフ」

 

梯子の上からガタガタと物音がする

 

リシュリュー「誰か来てる!」

 

リシュリューも急いで梯子を降りるが、手を痛めているせいかかなり遅い

 

グラーフ「任せろ、指示は受けている…!」

 

グラーフがカードケースから2枚取り出し、リシュリューの両脇を潜らせて艦載機を飛ばす

 

グラーフ「時間は稼ぐ!ゆっくり降りろ!」

 

リシュリュー「わかったわ!」

 

上階から戦闘の音が聞こえてくる

 

タシュケント「…待って!プリンツとザラは!」

 

グラーフ「何!?まさか一緒にいたわけじゃないのか?!」

 

タシュケント「多分今降りてきてる途中だよ…!ど、どうしよう!」

 

朧「アタシが行く」

 

グラーフ「朧?怪我はいいのか?」

 

朧「大丈夫、このくらいの怪我…慣れてるから」

 

リシュリュー「…上にいるのは私たちを殺そうとしてる奴等よ…?」

 

朧「うん、わかってるよ…でも、仲間が殺されかけてるのに何もしないわけにはいかないじゃん」

 

朧がリシュリューからショットガンを受け取り、背中にかける

 

朧「ただ、悪いけどタシュケントには来て欲しい、アタシ屋内の罠の位置知らないんだ」

 

タシュケント「…わかったよ、急いで登…え?」

 

朧が腕を掴んで朧の肩へと引っ張る

 

朧「しっかり捕まってて、2人とも、離れて」

 

梯子の真下へと連れて行かれる

 

朧「もっと近寄ってくれないと少し危ないかな」

 

タシュケント「えっ?あ、あの…まさ、か…ねぇ、朧?」

 

グラーフ「あ、おい、何するつもりだ!?」

 

朧「跳ぶよ」

 

地面がミシッと音を立てる

艤装の力なのか、とんでもない勢いで梯子がある穴を…約5メートルの高さを一跳びで超え、床に降り立つ

 

タシュケント「うわぁぁぁっ!?」

 

朧「左右に2、いけるね、多分」

 

何が起きているのか理解する余裕もなく、砲音と悲鳴が聞こえる

 

タシュケント「っ…?な、何、この子達は!?」

 

朧「綾波の言ってたイギリスの駆逐艦かな、J 級とか、その辺のじゃない?」

 

タシュケント「そ、そうじゃなくて、なんで倒れてるの…」

 

朧「非殺傷弾で撃ったからかな、それより早く上に案内して、急がないと間に合わなくなる」

 

タシュケント「わ、わかったよ…」

 

倒れた駆逐艦の子達を無視して階段を駆け上がる

 

朧「匂いはまだ階段まで来てない、階段を通らずに上の階に侵入してるのかな」

 

タシュケント(匂い?)

 

タシュケント「あ、そこロープトラップ!」

 

朧「わかった」

 

罠を掻い潜りながら4階まで駆け上がる

道中で下階から悲鳴や銃声が鳴り響いているあたり、馬鹿みたいになだれ込んできているらしい

 

タシュケント「あと少しだよ!」

 

朧「5人いる、全員男、それと血の匂いもする…タシュケント!3階のトラップは!」

 

タシュケント「えっ!?さ、3階はそっちの棚と右のドアに…」

 

朧「あのあたりは安全!?」

 

朧が指した辺りには罠は設置してない…

 

タシュケント「うん、何もないよ!」

 

朧「よし、タシュケント、これ任せた!」

 

朧が指した位置まで走り、カチカチと艤装を操作する

 

朧「タシュケントは階段から上がって!アタシが上を制圧する!!」

 

タシュケント「え、どうやって…」

 

朧「心配ないから」

 

朧が両手に主砲を構える

 

朧「揺れるよ!」

 

朧が飛び上がりながら反転し、蹴りで天井…いや、4階の床を突き破る

 

タシュケント(う、嘘でしょ…ジャパンの艦娘ってみんなああなのかな…)

 

階段を登り切るまでに砲音が5回、そして斃れた音…

 

タシュケント「…本当に一瞬で制圧してる…」

 

気を失い倒れた兵士

そしてその中心、床の大穴のそばの朧とザラ、プリンツ…

 

朧「それよりも、プリンツ、ザラさん、大丈夫?」

 

ザラ「…プリンツさんは肩を撃たれてて、私は…脚を」

 

朧「…殺せば良かったかな」

 

朧が兵士を睨む

 

タシュケント「そんなことしてる場合じゃない、急いでここを離れないと…」

 

朧「無理だよ、一階なんて敵が無限に押し寄せてきてるし、戻って地下室の存在がバレるのが1番まずい、ザラさん、コイツらどこから?」

 

ザラ「そっちの…窓…」

 

朧「了解です、タシュケント、階段見張ってて!まだ来てないと思うけど!」

 

タシュケント「わかった!」

 

タシュケント(どうしよつ、どうしよう…)

 

死にたくない、怖い、不安だ…

絶対安心の作戦のはずが、細かな歪みに歪められてる…

 

朧「大丈夫、アタシが…ッ!?」

 

廃墟に何かがぶつかり、大きく揺れる

 

朧(この匂い、あの球だ…!)

 

床の大穴から笑い声が聞こえてくる

 

朧「…まさか、この建物壊す気じゃ…!」

 

タシュケント「どうすれば、いいの…!?」

 

朧(もし建物が崩れたらみんな大怪我じゃ済まないし、落ちたところを狙い撃ちにされる…!どうすればいい!?綾波ならどうする?…いや、アタシは綾波じゃない、アタシは…)

 

朧「アタシだ……アタシにできることだけやればいい」

 

タシュケント「お、朧!?」

 

朧「そう、アタシは綾波型駆逐艦、朧…誰にも負けない…たぶん…」

 

朧と目が合う

俺の目に光が灯る

 

タシュケント「そ、それは…なに…!?」

 

朧「……タルヴォス、やるよ、一回負けた相手だし…"復讐"、しなきゃね」

 

朧の主砲から薬莢が転がり落ちる

 

朧「タシュケント!…2人、任せたよ」

 

タシュケント「待っ…」

 

朧が穴から飛び降り、球体の様な深海棲艦に飛びかかる

 

 

 

 

駆逐艦 朧

 

目が熱い、力が漲って、体の痛みをを忘れさせる

今なら誰にも負けない、多分…

 

艤装のスイッチを入れ、空中で艤装に振り回されながら回転する

 

朧「いっっ……けぇぇぇぇぇッ!!」

 

回転の勢いを全て、一撃に集める

球体の深海棲艦を、ここで落とす

 

金属が破裂する様な、裂けるような音が耳をつんざく

圧力に耐えられなくなった装甲が弾け飛び、壁に穴を開ける

 

沖棲姫「ヒャヒャヒャヒャヒャ!!バケモノ!バケモノ!」

 

中から現れたのは少女の様な深海棲艦

 

朧「深海棲艦に言われたく…」

 

背後から迫る匂いを避けるために慌てて飛び退く

 

朧「危なかった…深海棲艦より先にこっち狙うかな、普通」

 

ジャービス「なんで、バレてないはずなのに…」

 

ナイフで背中を狙われてた…艦娘らしく無い戦法

 

朧(…あれ?深海棲艦の方とすごく似てる…いや、それよりも近づくまでほとんど匂いもなかった、たまたま呼吸のとき吐いた息の匂いで気づけたけど…この子が綾波の言ってたアタシ達を探ってるスパイか)

 

朧「それで、なんでアタシを狙うの」

 

ジャービス「わかりきってる、どっちも消すから、先にヤバい方を狙うのよ!」

 

朧(ヤバい…ヤバいかぁ……)

 

主砲に煙幕弾を込める

 

朧「じゃあ、ヤバいのかな」

 

煙幕を焚き、視界を奪う

 

ジャービス(な、なんのつもり!?お互い見えないのに…!)

 

俺(…深海棲艦は動かない、か…取り敢えず動けない様に…)

 

非殺傷弾を込めて撃つ

 

朧「えっ…?」

 

見えてはいない、だけど…

 

沖棲姫「ヒャヒャヒャッ!」

 

朧「…庇った…?!というか、見えてる?」

 

何故か、深海棲艦にはこの煙幕の中が見えて…

 

ジャービス「この!どこにいるの!」

 

朧「…いや、お互い様か」

 

位置がわかるのはお互い様、ならば…五分だ、負けるわけにはいかない

 

朧「やるよ、ここで」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。