元勇者提督   作:無し

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旅は道連れ

離島鎮守府 医務室

秘書艦 アケボノ

 

アケボノ「…なんで私の顔をそんなに見るんですか」

 

春雨「珍しいと思いまして…」

 

キタカミ「ちょっとしんどいくらいでダウンする奴じゃないからねぇ…」

 

アケボノ「…悪かったですね」

 

現実から目を背けたい気分だが、そうもいかない

綾波は再誕を使った、となると…

 

ああ、頭が痛い、今の綾波はどれくらい強いのか、殺しても死ななくなった綾波をどう仕留めるべきなのか

この情報を秘匿するわけには行かないが話すのにも神経を使う

綾波を大事に思ってる様な輩の前で喋るわけには行かない

 

いや、本当ならなによりも先に提督に報告すべきなのだが…それすらも後回しにしてしまった

私の失態を知られたくなかったと言う気持ちが大きかった、幻滅されたくなかった…

 

アケボノ「…っ……はぁ…!」

 

ムシャクシャする、何もしてない時間が本当に苦痛だ

時間が流れるほど事の深刻さが大きくなっていく

綾波に1秒でも時間を与えてはならないのに…

 

春雨「何か、薬を処方しましょうか」

 

アケボノ「…必要ありません」

 

ここに来たのは隠れる為だ、気持ちを整理する間は誰かに会うことを避けたかったからだ

なのに何故キタカミさんまでいる…

 

キタカミ「…春雨、ちょいと提督呼んできてよ」

 

春雨「わかりました」

 

アケボノ「なっ…ま、待ってくださ…っ!?」

 

止めようとしたところをキタカミさんに捕まえられる

 

キタカミ「ちょーっと、話さない?」

 

アケボノ「話しても良いですが提督は呼ばないでください…!」

 

キタカミ「春雨はもう呼びに行ったからさ、手遅れだよ」

 

アケボノ「だから、私は春雨さんを止めたいんですよ!」

 

キタカミ「綾波の事でしょ」

 

アケボノ「な…!?なんで…いや…違…」

 

キタカミ「あー、うん、知ってるから心配しないで、アレじゃない綾波のコト」

 

アケボノ「……何故…」

 

キタカミ「まあ、ちょっと訳あって知ってるんだよ」

 

…キタカミさんはカマをかけているのか?それとも…

いや、もはや隠し事なんてできるわけがない…

 

アケボノ「……私は、その…」

 

キタカミ「朧も一緒にいる、大丈夫だよ」

 

アケボノ「え…?」

 

キタカミ「ダミー因子と私達の碑文ってさ、思ってた以上に深い繋がりがあるみたいだね…朧が私の意識にアクセスしてきたんだ、多分無意識にだろうけど」

 

アケボノ「朧が…?」

 

キタカミ「新しい仲間ができたんだろうね、誰かを守りたいって気持ちが伝わってきた、いつの間にか碑文が共鳴してさ、見た事ない景色になって…でも、何してたのかよくわかんなかった」

 

アケボノ「……それで」

 

キタカミ「そしたら急に調子悪くなってさ、ここに居るわけ…そこでアケボノが体調を崩して来た事も考慮すると…ダミー因子が誰かの手に渡ってるんじゃないかなって…アケボノは碑文とダミー因子両方を持ってたから」

 

アケボノ(…そこまで予測を立てた上での発言だったのか…?まるで心を読まれてる様な気分だ…)

 

キタカミ「で、私と同タイミングなのも併せて考えると…ダミー因子は綾波の手に渡っている……なんて考察はどう?」

 

アケボノ「……」

 

キタカミ「沈黙は肯定なり…ってね、マジかぁ…」

 

アケボノ「……春雨さんに聞かれると面倒です、ここでそれ以上は…」

 

キタカミ「わかってるって、ちょうど帰ってきたし」

 

春雨「遅くなりました」

 

海斗「2人とも、大丈夫?」

 

アケボノ「…提督」

 

キタカミ「まー、春雨、悪いけど外してもらって良い?」

 

春雨「…ええ、わかりました」

 

キタカミさんが春雨さんを追い払い、3人だけの空間になる

 

キタカミ「提督さ、ここ数日アケボノが不調だったのは綾波のせいだよ、気づいたんだって、生きてるのに」

 

海斗「…そっか、全然気づかなかった、ごめん、アケボノ」

 

アケボノ「…提督、まさか知っておられたのですか…?綾波が生きている事を…」

 

海斗「うん、でも…そうだね、アケボノも物事を抱え込んじゃうタイプだし…先に話すべきだった、負担をかけてごめん」

 

アケボノ「いえ…しかし、何故…綾波と何の繋がりが…?」

 

海斗「そう言うわけじゃないんだ、ただ知ってるだけ…別にそれ以上も以下もないよ」

 

キタカミ「マジ?この際だから隠し事はなしだよ?」

 

海斗「本当に綾波が今どうなってるのかは知らないよ」

 

キタカミ「…アケボノもなんか言わなくて良いの?今なら文句言えるんじゃない?」

 

アケボノ(…私の知らないところで、何かが起こっている…その不安を口に出す事が怖い…私をどう見てくださってるのかはわからない、だけど…私は…)

 

キタカミ(……)

 

キタカミさんが立ち上がり、私の背後に周り背中を突き飛ばす

姿勢を崩し、提督の腹部に顔を埋める

 

アケボノ「っ!?」

 

キタカミ「ほら、言いたい事ちゃんと言いなよ」

 

アケボノ「…言いたい、事…」

 

キタカミ「率直な自分の気持ち、言ってみなよ」

 

海斗「…アケボノ、僕には君の気持ちがわからないんだ…思いやる事はできても、僕は君の気持ちがわからない…だから、教えて」

 

…私は

 

アケボノ「…怖いんです、何もかもが…確かに私自身決して弱くない自覚はある、だけど…今、綾波と対峙したら絶対に負ける…私じゃ勝てない敵が出てきたら、失望される…それに、私は…」

 

…失望されたくない、見捨てられたくない

信じられたくない、期待されたくない

 

戦いたくない

 

だけど、大事な仲間を守りたい…

 

アケボノ「…お願いします…どうか、見捨てないでください…」

 

キタカミ「…馬鹿じゃん」

 

海斗「まあ、アケボノはそう言うところあるからね…大丈夫、絶対そんな事しないから」

 

キタカミ「アケボノさぁ…ホントそういうのめんどくさいよ…?」

 

アケボノ「……わかっています…でも、そうならない様にしてるつもりで…」

 

キタカミ「だーかーら、それがめんどくさい原因なんだって、不安抱えて周りに迷惑振り撒くくらいなら大人しく甘えときなよ」

 

海斗「アケボノの仕事量は他の人よりもずっと多いんだから、もっと休んでくれて良いんだよ…?」

 

アケボノ「…いえ…何かしていないと落ち着かなくて」

 

キタカミ「ワーカーホリックまで併発してるのか…」

 

アケボノ「そうじゃありません…綾波の事を考えてしまうのが嫌なんです、時間があればあるほど、どう対処すれば良いのか…」

 

海斗「…綾波のことは一度忘れて、大丈夫だから」

 

アケボノ「…宜しいのですか…?」

 

海斗「たぶん、だけどね」

 

 

 

 

 

フランス パリ

綾波

 

綾波「んー…久々に海鮮を食べましたけど…やはり生は非常に美味しいですね」

 

朧「生の魚介を食べるのって日本だけだと思ってたよ、フランスは特に食べるイメージなかったけど…」

 

リシュリュー「マリネも所謂生色だし、生の牡蠣や海老、ウニもそうだし、色んな海鮮を食べる文化があるわ」

 

綾波「お寿司もスーパーで買えますしね、あ、その海老取ってください」

 

タシュケント「うう…やっぱり生のは匂いがキツイよ…食べても大丈夫なの…?これ」

 

グラーフ「…ザラ、そのピザ分けてくれ」

 

ザラ「どうぞ〜?」

 

プリンツ「あ、このムニエル美味しいですよ!」

 

レーベ「そっちのワイン取ってよ」

 

マックス「ダメ、これは私の分」

 

ユー「…違う、それ私のなのに…」

 

ジェーナス「……なんでみんな日本語で喋ってるの?Englishは?」

 

綾波「艦娘システムをインストールした人はみんな喋れますから、便利でしょう?」

 

ジェーナス「確かにそうだけど…えーと、とりあえず…この状況って何?」

 

リシュリュー「食事ね」

 

グラーフ「騒がしい食事は嫌か」

 

ジェーナス「…いや、人が椅子に縛り付けられてる様な光景は間違っても食事中に見るものじゃないと思う」

 

綾波「起きた時混乱して暴れられたら困りますから、レストラン側への配慮ですよ」

 

リシュリュー「どの口が言うのかしら」

 

綾波「この口です♪」

 

リシュリュー(ムカつく…)

 

グラーフ「しかし、ふむ…流石にいい店だな、パリの一等地にあるだけはある」

 

リシュリュー「でしょ?お気に入りなの、絶対荒らさないでね?」

 

綾波「わかってますよ、それに今の私はそんな事する理由ないし、深海棲艦の時も余計なことしなければご飯食べてさようならだったのに」

 

リシュリュー「…はいはい、私も悪かったわ」

 

朧「ねぇ、ジェーナス、ちょっといい?」

 

ジェーナス「何?」

 

朧「…煙幕の中でなんでアタシの位置がわかったの?」

 

ジェーナス「簡単よ、深海棲艦の目は熱源感知の力を持ってるの」

 

綾波「おや、それは知りませんでした」

 

ジェーナス「そうなの?みんな使えると思ってたけど…だから朧の位置も分かったし、私は好きに動けた」

 

朧「じゃあ、あの駆逐艦の子を庇ったのは?」

 

ジェーナス「ああ、ジャービスの事?……まあこれはあんまり大きい声で言えないんだけど、私達もともとクローンみたいな作られ方してるの」

 

朧(やっぱり)

 

ジェーナス「で、ジャービスはオリジナルの個体…だと思う、とにかく…他人じゃない、だから助けたかった…」

 

綾波「へぇ…やる事やってるんですねぇ…本当なら深海棲艦と直接の関わりはないイギリスに行く予定は無かったのに、あろう事か一国の黒い部分と対峙するとは」

 

ジェーナス「ウォースパイトなら清い運営をしてくれる…今回の件で隠されてたことも全部明るみに出たし、きっと何年かしたら良い国に戻ってくれる…そうしたら、また遊びに来て?」

 

綾波「嫌ですよ、私イギリスは嫌いなんです、ご飯が美味しくないので」

 

グラーフ「…まあ、言わんとする事はわかるが…贅沢な舌だな」

 

リシュリュー「貴方の生い立ちを聞いたけど…今とのギャップ故に高いものに固執するわけじゃないんでしょう?」

 

綾波「食べると言う感じは人に良いと書きます、どうせ食べるなら美味しいものの方がいいし、美味しい方が基本的には栄養もある」

 

ジェーナス「美味しいお店もあるのに」

 

綾波「高いので」

 

リシュリュー「そういうところはケチなのね」

 

綾波「価値を見出したものには相応の金銭を払いますよ…さて、そろそろ2人を起こしますか、このまま寝かせていては食事が終わりますよ?」

 

席を立ち、縄に縛られたアークロイヤルとビスマルクの肩を揺する

 

アークロイヤル「…ん……」

 

ビスマルク「…んぅ…?」

 

綾波「おはようございます、気分はどうですか?私の喋ってることわかります?」

 

アークロイヤル「…な、なぜ私は縛られ…そうか、負けたのか…」

 

ビスマルク「な、何これ…なんで縛られて…」

 

動揺するビスマルクに対し、アークロイヤルは自身の末路を悟ったかの様に落ち着いている

 

アークロイヤル「真面目な時間を過ごすつもりはない、さっさと首を刎ねろ」

 

ビスマルク「く、首!?わ、私たち殺されるの!?」

 

アークロイヤル「当たり前だ、負けたのだからな…もはや抵抗するつもりはない、さっさとしろ」

 

ビスマルク「ま、負けたって何…?なんで…」

 

綾波(…これは…)

 

綾波「ビスマルクさん」

 

ビスマルク「な、何…」

 

綾波「貴方、人としての記憶はありますか?」

 

ビスマルク「人…?」

 

綾波「深海棲艦だった時の記憶は?」

 

ビスマルク「…深海、セイカン…?」

 

綾波「ふむふむ、なるほど…天津風さんに近いかな、先に一言、私たちは敵じゃありません」

 

アークロイヤル「何…?」

 

ビスマルク「じゃ、じゃあなんで縛られて…」

 

綾波「暴れられると困るからです、落ち着いて話ができるまでの間のつもりでしたから…誰か縄を解いてあげてください」

 

レーベさんとユーさんが2人の縄を解く

 

綾波「まず、私達はLinkという組織です、深海棲艦という化け物を排除し、海を取り戻す事を目的にしています」

 

アークロイヤル「…なんだと?」

 

綾波「そして貴方たち2人とも、我々Linkで身柄を預かりました…まあ、つまりようこそLinkへ、あなた達の参加を歓迎致します」

 

ビスマルク「参加…?」

 

綾波「あなた達には行くアテがないと思いまして…もし帰るところがあるなら帰っても構いません、しかしもし存在しないなら…Linkがあなたたちの帰るところです」

 

アークロイヤル「…何故だ、私達はついさっきまで敵だった」

 

綾波「深海棲艦となった人は基本的に本能で動きます、深海棲艦は悪意や人への敵意で動きます、しかし貴方たち2人は深海棲艦の力に呑まれた上で自分の意思を残していた、非常に素晴らしい、あなた達なら戦力になります」

 

ビスマルク「……ええと…」

 

グラーフ「…なんだ、別に悪い奴らじゃない、案外楽しいものだ」

 

アークロイヤル「…だが…」

 

リシュリュー「試しに、しばらく居るのはどう?綾波、抜けても文句は言わないわよね?」

 

綾波「ええ、勿論」

 

ザラ「暫く一緒に行動して、気に入らなかったらさようなら…ね?」

 

アークロイヤル「……アークロイヤル…参加させていただこう」

 

ビスマルク「…私も…」

 

綾波「Wellcome to Link 旅の道連れは多い方が楽しい、良き時間を共に過ごせること、大変喜ばしいです」

 

グラーフ「…ジャパンの諺か?あー…」

 

朧「旅は道連れ世は情け」

 

グラーフ「それだ」

 

綾波「ま、そんなところです…それに、重い荷物を分け合って持てば長い道でも疲れにくい、退屈な光景も話し相手がいれば有意義な時間にできる」

 

リシュリュー「ほんと、よくわからないヤツ」

 

グラーフ「まったくだ」

 

タシュケント「一回死んで脳みそ入れ替えたんじゃない?」

 

綾波「ま、半分正解ですよ」

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