元勇者提督 作:無し
提督 三崎亮
「まずはおめでとうか?」
「ありがとう、でもこうなるとは思ってなかった」
「そうか?アンタはなんでもお見通しだと思ってたぜ」
「全くそんな事ないよ」
「で?早速本題と行こうぜ、秘策ってのは?」
「秘策、か」
「あの日、アンタは何をしたんだ?」
「…選択した、ただ、考える時間が長すぎた……今となっては苦しむ結果となった」
「…何を狙ってる?」
「………まだ言えない、だけど、お互いわかってるはずだ」
「………マジに秘策って訳だな」
「痛みが伴う」
「……俺らだけの痛みなら幾らでも受け入れたが…これはすぐには返事ができねぇな……なんにせよ俺はもう手出しできねぇが…」
「いや、スケィスは取り戻すよ、僕一人じゃ無理だ」
「………本気か?」
「本気だよ、今のモルガナは、まさに無敵だ、あの時のデータドレインは複数の狙いがあった、その中の幾つが失敗に終わっただろう……まず、モルガナの消去、失敗、せめて実態を与えようともした、これもダメ、何かの情報を得ようともした、これもダメだった……だから、ある仕込みをした」
「仕込みか…で?その成果は?」
「悪くないけど、まだまだ先になる」
「そうか」
「あの日、大量の深海棲艦をデータとして取り込んだ、大量のウイルスコアが手に入ったよ」
「………まさかマジに深海棲艦がウイルスバグだって言いたいのか?」
「そんな訳ない、出てきた時期と合わないから…だけど、もう同じ物になりかけてる」
「…気付くのが遅すぎたと?」
「こっちはやっと芽が出るかも知れないところで、向こうはもう花が開いてる…」
「じゃあ次は枯れる」
「実をつけるかもしれないよ」
「…悲観的だな」
「用心深いんだよ」
「俺は今、アンタの選択を支持するつもりはない」
「うん」
「だから他の手を考える」
「僕も他の手を望んでるよ、それと、あと一つだけお願いがある」
「…ネットのことか?」
「わかってるみたいだね、向こう側をどうにかして欲しい」
「……俺はその前に助けなきゃいけねぇ奴がいる」
「イニスの所有者…日下千草さん?」
「耳がはええな、俺の大事な仲間だ」
「やっぱり、まだ意識は戻らないか…」
「残念ながらな……で?予想はできてたんだろ?」
「……予想はできても対処はできないこともあるよ」
「…今の俺はアンタが頼りなんだぜ」
「キミにはまだ力があるはずだ」
「多分モルガナは、こっちの手を読んでる」
舞鶴鎮守府
「初めまして、大将殿」
「他人行儀な挨拶はやめてくれませんか」
「他人だろ?」
「…確かに初対面ではありますが」
「火野拓海、アンタのことは聞いてる」
「お互い様です、私は良い話はほとんど聞きませんが」
「…一応アンタの方が上官だよな」
「構いません、そのままでどうぞ?」
「……はぁ…アンタには敵わねぇな」
「私は徳岡さんほどではありません」
「……で?渡会のヤツは?」
「佐世保鎮守府での活躍は目覚ましいとか」
「そうか、俺も後輩が頑張ってくれて鼻が高い…が、もう少し楽させてくれてもバチはあたらねぇだろ、本部様」
「私は代理であって、本部ではありません、それより、あなたの持ってるチップが欲しい」
「……アレはずいぶん昔のデータだろ?」
「やはり持っておられますか」
「…くそっ…鎌かけてくんなよな、嫌になるぜ」
「少しでも過去のデータが要ります、事態は一刻を争う」
「何が起きてるんだよ」
「説明の義務はありませんが」
「………ああ、そうか…信用できるやつに持って行かせる、心配するな、コピーなんかねぇよ」
「むしろそれも欲しいくらいです、要件は以上です、失礼しました、それでは」
提督 徳岡純一郎
ここなら良いだろう
俺の鎮守府にまさか盗聴器が仕掛けられてるだなんてな
無職で彷徨ってたのを拾ってもらったこと事態はありがたいが、もうすぐ俺も爺さんだ、いや、もう既にか?
「………げ…」
俺に新たに与えられた仕事はどうやら国の意思と反してるらしい
また無職になるかもな
まあ、金など使い道もなければ、やりたい事も他にない
今もらったこの紙切れ一つが俺の原動力か
AIDA感染者を救ってくれ
ワクチンは今佐世保に有る
佐世保の船着場に人を待たせる
人助けが好きな訳じゃない
俺が、手を出した世界、あのネットゲームの波がまだ死んでない
俺の指揮下のヤツまで被害を被った
部下くらい大事にしてやるさ、あの頃のように
「佐世保に行く、しばらく留守を頼めるか?」
「わかりました、提督」
「すまんな、任せっきりで」
「……あの子たちは治るんですか?」
「わからん…だが治してみせるさ」
長崎 佐世保
船上
「………まさかお前さんらと会うとはねぇ」
「お久しぶりです、徳岡さん」
「シックザールの曽我部隆二に黒のビト、なかなかの顔ぶれじゃねぇか」
「おんやぁ?気に入らない?」
「…やっぱりお前は嫌いだよ…さて、ネットワークアナリストの佐藤さんよ、例のブツは?」
「……先に、貴方はヘルバ様の監視の元にある事をお忘れなく、余計なことはしないでいただきたい」
「あいあい、確かに受け取ったぜ、で?そっちの精神科医は何の用だよ、曽我部センセ」
「…ま、九州に野暮用だ、しかし、こう、屋形船ってのも風情があるねぇ」
「俺は嫌な事を思い出したがな」
「ですが、ここなら誰にも聞かれない」
「徳岡さんよ、今アンタらが被害を被ってるAIDAは所詮偽物だ、だがな、俺は本物も絡んでくると読んでる」
「本物ぉ?冗談よせよ、そんな事になったら本当に国が終わるぞ」
「それは軽いですね、世界が終わります、お忘れですか?冥王の口付けを」
「プルートキス、たかだか10歳の少年に世界中のネットワークを握られ、危うく核戦争になりかけた最悪のネットワーク事件…」
「別名第一次ネットワーククライシス、か…次はなんだ?ワールドクライシスか?」
「そうならない事を願います」
「さて…そろそろ帰るか…俺がわざわざこの船に乗った理由だが、アンタらの監視って意味もある、お互い、余計なことは無しだ」
「……お前はどこについてるんだ?」
「ここには、誰も居ません、ヘルバの使者も、国の軍人も、どこかの組織と手を組んだ精神科医も」
「ヘルバの使者?月の樹の使者の間違いだぜ」
「余計な口は謹んでもらえますか」
「…俺は何も聞いてねぇよ」
舞鶴鎮守府
「戻った、遅くなったな」
「…提督、言われたものは用意しましたが…これは…」
「VR装置HMD(ヘッドマウントディスプレイ)、聞いたことくらいあるだろ」
「…もう古い物ですけどね」
「うるせぇよ、こいつが俺の中では最新だったんだ……もう準備はいいのか?」
「全員に装着、機械に繋いであります」
「………よし、休んでくれていい…後は祈るのみだな」
そう言ってパソコンにファイルを読み込ませる
「それは…」
「俺の仕事を始めるんだよ、こいつは機密だ、しばらく部屋を出てくれ、15分…いや、10分で終わるから」
15分で終われば充分だ
流石は、スーパーハッカーのお手並みと言ったところか
正直自分の理解を超えている、だがそれを慎重に読みとく
「………問題ない、これならあいつらに危害は加えられないだろう」
確認を終え、HMDを繋いだPCにファイルを突っ込む
「…俺の仕事も祈るのみ、か」
「いっちばーーーん!」
「もう一回寝ててくれ、おじさん疲れたよ」
「提督さん、ありがとうっぽい!」
「頑張った提督にちょっと良いお料理作りますねー」
なんだろうな、騒がしいことこの上ないが、まあ、良かった
娘よりも幼いような子供を見殺しになどできる奴はいない
「提督、お疲れ様です」
「……ああ、なんとかなってよかったよ、全く」
「夕立たちが元気になって本当に良かった…」
「これで安心してドジできるな」
「………あんまりしたくはないんですけど」
離島鎮守府
駆逐艦 暁
「え?暁が旗艦?」
「そう、お願いできる?」
「任せなさい!明石さん、暁は一人前のレディーよ?」
「って言ってるうちは無理じゃないの?」
「んなっ!?」
「北上さん…大人気ないですよ」
「ほっときなさい、どうせお使いだし」
「お使い!?今お使いって言った!?」
「でも、本土で、ですよ!」
「本土!?」
さっきから旗艦だ本土だと頭がグルグルしてくる
アオボノさんは言葉に棘があるのよね
後は余計な事を言う北上さんも
「要するに、本土に行って、必要なものを受け取ってくる、自由行動は予定通りに帰ってくるなら好きにして良いよ、本土との行き来には連絡船を使うことになります…それから随伴艦はアオボノと、あと4名好きに選んでねってことです」
「アオボノさんがいるのは良いけど…演習や出撃、遠征が封じられてるせいで私たちの練度は殆ど上がってないわよ?」
「大丈夫、暁ちゃんにしか任せられない仕事なの」
ふふん、やっぱり私は頼りになるわね
「それにメインはお使いだから練度は関係ないしね」
「またお使いって言った!?」
「事実だし…」
「でも暁ちゃんじゃなきゃできない仕事なの!」
「………腑に落ちないってヤツね…」
「ほら、誰連れてくの?アタシ?アタシは困っちゃうな〜、行きたいお店沢山あるからさ〜?」
「北上さんには用はないから気にしなくて良いわよ」
「………やっぱ駆逐艦なんて嫌いだ…」
「自業自得ですよ…」
「全くね」
「じゃあ、明石さん行きましょ!あとは天龍さんと島風ちゃん、後は高雄さんかしら!」
「え、私ですか!?」
「………随分変わったメンバーね…戦艦と空母がいない事を除けば割と悪くないのかしら?」
「駆逐艦3工作艦、軽巡、重巡1かー」
「みんなあんまりここを出てないでしょ?せっかくだし普段行かない人と行きたいな!」
「暁ちゃん…!」
「別に良いけど、雷と響は?」
「あの二人にはたっぷりお土産を用意するわ!大丈夫!」
「ちゃんと妹を気遣って立派ねぇ…ねぇ、そう思わない?北上サマ?」
「………何?やるの?」
「相手になってあげても良いけど?」
「…喧嘩売ってきたのはそっちだよ?」
「ちょっ!?ストップ!ストーップ!喧嘩はやめましょう!」
「そうよ!レディーのする事じゃないわ!」
「これは喧嘩じゃなくて決闘よ」
「いいねぇ…!痺れるねぇ…!」
「変わらないから!北上さんにもお土産用意しますから!」
「んじゃ、私最新のゲーム機が欲しいな、明石!」
「……出汁にされた…!」
「あー!もうわかりましたから!駄々をこねる子供ですか…!?」
「それで、次の連絡船はいつくるの?」
「明日、午前10時です」
「じゃあ準備を急がなくっちゃ!」
「具体的に何するかはいいの?」
「私も行きますし…まあ、移動中に」
「いやぁ、最新のやつ楽しみだなぁ…!」
「………アンタ狡くなって来たわね…」
「いや、七駆のゲーム番長が最近強くてさ」
「…ゲーム番長…?誰よそれ」
「曙」
「………あいつ、最近部屋にいないと思ったら…」
「ずっと朧とやってるから…練習量凄いせいでどのゲームもみんな勝てないんだよね…そこでこの北上さんの部屋に最新鋭のを配備!すると、私と敗北者だけが練習できる環境ができてしまう訳ですよ」
「…ゲスの発想ね」
「好きに言いたまえよ、これも戦いさね」