元勇者提督   作:無し

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出逢い

イタリア ヴェネツィア

綾波

 

綾波「…ザラさん、これ本当に使っても構わないんですか?」

 

ザラ「はい、どうぞ」

 

…小型のジェット機…確かに間違いない

確かに海を深海棲艦に潰されて以来大陸では航空機の需要がかなりが上がっているのは知っていたが…

生産量も爆増したせいで大体価格は半額近くまで下落したとは聞いたが…

 

綾波「…まともな型、メンテナンスもされている…富裕層では無いはずですよね、ザラさん…?」

 

ザラ「ええ、でも父が好きなんです、飛行機」

 

綾波「…お父様は?」

 

ザラ「先月、深海棲艦が街の水路を登ってきまして…そのときに…外でワインを飲みすぎてたこともあり…」

 

綾波「それは…すみません、踏み込みすぎました」

 

綾波(書類にはまだ存命と書かれてたと思ったけど…記憶違いか…)

 

ザラ「ああ、いえ、そうじゃなくて逃げる時に転んで以来、ワインを外で飲むのを禁止されちゃったんです、だから今日も家でワインを飲んでると思います」

 

綾波「…そうですか、飲み過ぎに気をつけて欲しいですね…ええと…」

 

ロシアの飛行場にも話はついているし…

さっさと行くか…

 

綾波(ただ、気になるのは装備が何も無い点…いや、四の五の言っても仕方ない、時間がない…)

 

綾波「ザラさん、皆さんを呼んできてください、早速出発します」

 

ザラ「えっ…panino(パニーノ)は…?carpaccio(カルパッチョ)は?spaghetti nero(イカ墨パスタ)も美味しいのに…!」

 

綾波「…時間ないんで、早くしてくれますか…?」

 

ザラ「一日だけ!一日だけなので…!」

 

綾波「…日本に着いたら全部作りますから」

 

ザラ「本場のものを食べて欲しいんです…!」

 

綾波「ダメです、早く帰らないと…」

 

ザラ「…はい…」

 

ザラさんを何とか説得し、出発の準備をする

 

ザラ「30分だけ!30分あればテイクアウトができます!」

 

綾波(…みんな食にこだわりが強すぎませんか…?)

 

綾波「先にみんなを呼んできてください、間に合わなかったら置いていきます」

 

ザラ「は、はい!!」

 

 

 

 

 

 

綾波「うーん、あとはここが…はいはい、一通りチェック終わりましたね、みなさん、もう出られますよ」

 

リシュリュー「もう少しゆっくりしたかった気持ちはあるけど…」

 

タシュケント「いや、早くロシアに行こう」

 

グラーフ(コイツも考えてる事は同じだろうな)

 

グラーフ「それより綾波、ここで新聞を買ってきたんだが、読めるか?」

 

綾波「何で自分が読めない言語の記事、を…?」

 

グラーフ「ザラに言われたんだ、きっと喜ぶって……ドイツの深海棲艦はきっと掃討されていっているはずだ、綾波のおかげで」

 

渡された新聞には人から分離した小型の深海棲艦が大量に発見され、ドイツ軍がそれを潰して回っているらしい

変化しつつあった深海棲艦の細胞が死んだおかげでドイツの人たちには安寧が戻りつつある…というか、ビスマルクさんが深海棲艦の細胞大元だったのではないだろうかとすら考えられる…

 

いや、可能性で断定するのは良くない

まだ他の可能性がある以上は…

 

グラーフ「…あまり嬉しくないか」

 

綾波「いえ、根本を潰せてない可能性を懸念しているだけです…ですが、非常に喜ばしい事ですよ、良かったですね、グラーフさん」

 

グラーフ「…ああ!」

 

綾波「さて、人数確認…点呼してください」

 

グラーフ「もう済ませたさ、13人全員居る」

 

綾波「あれ、朧さん寝てるんですか?」

 

グラーフ「疲れているそうだ、ザラも奥でワインを飲んでいる」

 

綾波(そんなに悔しかったのか…)

 

綾波「じゃ、さっさと出ます、私は操縦室に戻りますので…もう搭乗口は閉じますからね」

 

グラーフ「ああ、急ごう」

 

操縦室のドアを閉じ、乗り込み口のドアを閉じる

 

綾波(電動は良いけど…時間かかるんですよね、この手のドア…あ、閉じたかな?さて、出発しますか…)

 

飛行機を操縦し、いざロシアへ…

 

綾波(…なんだか客室が騒がしい…はしゃがないで欲しいなぁ…)

 

 

 

 

客室

正規空母 グラーフ

 

グラーフ「お、おい…ザラ?」

 

ザラ「は、はい…あ、危なかった…本当に置いていかれるところでした!綾波さんの冗談だと思ったのに…」

 

リシュリュー「…なんで、ザラが閉じかけた搭乗口から乗り込んでくるの…?え…?ど、どうなって…」

 

ザラ「どうしたんですか、みなさん…あ、そうだ!いろんなもの買ってきたんですよ!空の旅の間に食べま…あれ?この匂い…ワイン開けちゃったんですか!?」

 

タシュケント「…いや、開けたのはザラじゃ…?」

 

ザラ「…皆さん、さっきから何を…?」

 

グラーフ「いや…待て、まさか…」

 

ワインセラーの方に近づく

未だに騒ぎを無視してワインを煽るコイツは…

 

グラーフ「…き、貴様は、誰だ…?」

 

ザラと良く似た…

 

ザラ「ああぁぁぁぁぁっ!?!?ぽ、ぽぽっポーラぁっ!?」

 

ポーラ「…んぇ?あ、ザラ姉様だ〜」

 

ポーラがよろよろと立ち上がり、ザラに抱きつく

 

ポーラ「わーい、今日もザラ姉様に会えた〜♪」

 

ザラ「ちょっ…えっ?な、なんでここに…と言うか…あのワイン瓶、どれだけ飲んで…!」

 

ポーラ「ザラ姉様〜、ポーラ寂しかったんですよ〜?」

 

ザラ「ちょっ…あ、服引っ張るのやめっ…グラーフ!助けて!?」

 

グラーフ「わ、わかった!」

 

ザラ「ああもう!」

 

ザラのチョップがポーラの頭に直撃する

 

ポーラ「ぁえ…?い、痛い…痛いよぉ…なんで?なんで痛いの…?」

 

うずくまり、泣き出すポーラ

 

グラーフ「…何だ、様子がおかしいな」

 

ザラ「ポーラ、あなた酔ってるのね…お酒なんて今まで飲んだ事なかったのに…何でそんなの…」

 

ポーラ「痛いよ…姉様ぁ〜!」

 

ザラ「あーもう!はいはい!」

 

ザラがポーラを抱きしめて宥める

 

ポーラ「姉様ぁ…んぅ…」

 

グラーフ「…ね、寝たのか…?」

 

ザラ「…その様で…はぁ…どうしよう、綾波さんに戻ってもらうわけには…」

 

グラーフ「…それより、ザラ…確かに昨日もイタリアにいたが…トリノだよな?」

 

ザラ「えぇ、それが…?」

 

グラーフ「…その、ポーラだったか、なんで「今日も会えた」なんて言ったんだ?」

 

ザラ「…確かに、言われてみれば不自然で…ぁえっ!?ひ、ひた()、かんだ…」

 

飛行機が大きく揺れる

 

綾波『こちら綾波です、緊急連絡です、面倒なのに捕まりました、無理やり着陸させられることになったので衝撃に備えてください』

 

グラーフ「なに…?今どこだ!」

 

リシュリュー「えーと…タシュケント!」

 

タシュケント「今見てる!……ウクライナか…!」

 

窓の外を別の飛行機が通る

 

ザラ「…空賊って事ですか…?そんなファンタジーみたいな…」

 

グラーフ「わからない話じゃない、こんな飛行機を持ってるのは金のある証拠だ、狙われても文句は言えん…特に武装してない、民間人の物ならな…!」

 

タシュケント「戦闘の用意を!ビスマルク!アークロイヤル!2人とも奥に隠れてて!」

 

アークロイヤル「…私たちは戦わなくて良いのか…?」

 

タシュケント「そんな震えながら聞かれてもね」

 

アークロイヤル「す、すまない…覚悟している時にくるなら良いが…急に死が迫ると…」

 

ビスマルク「そんな事いいから!」

 

グラーフ「着陸する!衝撃に備えろ!」

 

滑走路とも言えない様な場所に着陸させられたのだろう

ガタガタと強い揺れが感じられる

 

綾波『皆さん、決して出ないでください、私が話をつけます』

 

グラーフ「な…まさか1人で行く気か!待て!」

 

操縦室から出てきた綾波が手で私たちを静止し、降りていく

 

 

 

 

綾波

 

綾波「…ふう、まだ向こうさんは降りてきてませんね…」

 

あたりを見渡す

ミサイルの積んだ車両もあれば型の古い戦闘機、戦闘車両…

規模はかなりなものか…このまま抵抗しなければ私たちは人売りに売られるのか?

 

馬鹿馬鹿しいな

 

綾波「…偽善者……偽善者、かぁ…」

 

腰を下ろし、つぶやく

 

綾波「ま、もう気持ちの整理は終わりましたよ、ごめんなさい、私はやっぱり偽善者だ、中途半端な私が嫌だったんですよね、ちゃんとやりますから」

 

私達の機を囲んでいた戦闘機から人が降りてくるのを見て、立ち上がる

 

綾波「ウクライナはロシア語も通じなくはないらしいですけど…」

 

ポケットに片手を突っ込み、カートリッジを起動する

 

綾波「それは人間に限った話ですからね、蛮族には通じません…たとえば、もし私がウクライナ語を喋れたとしても…こうしますけどね」

 

近づいてきた男の頭を蹴りで撃ち抜く

周囲の兵士が一瞬ざわつき、こちらに銃を向ける

 

綾波「…ああ、殺してしまった…一つ、命を奪ってしまった………でも、あなた達が悪いんですよ、私達を脅して何もかもを奪おうとしたから…私の宝物に手を出そうとしたから」

 

踏み込み、空を蹴る

正面にいた兵士が吹き飛ぶ

 

綾波「それと、時間がないんですよ…綾波には」

 

兵士達が撃った弾丸が電撃に弾かれる

 

綾波「なので、許してくださいね」

 

弾かれ、潰れて地面に落ちた弾丸を拾い上げ、兵士に投げる

まるでショットガンの様な威力で放たれたそれは後も簡単に兵士の片腕を吹き飛ばした

 

綾波「できるだけ、殺さないので」

 

といっても…片腕を失ったり大怪我をした時点で他所の集落に狙われて終わるだろうが

 

綾波「三つ目…四つ目」

 

爪が眼球を裂き、肘が顎砕き、圧倒的な力の差を見せつけ、戦意を徹底的に失わせようと試みる

 

綾波(…ああ、なんでみんな私をこんなに殺そうとして…無駄なことを…)

 

つい、蹴りに力が入り過ぎた…首がちぎれ飛ぶ

 

綾波「…まだ、やりますか?」

 

わずか3分ほどの間に、私が一歩前に歩くだけで兵士たちは悲鳴を上げて逃げ出す様になった

それでいい、私たちを攻撃する意思さえ奪えば…

 

綾波「……おや…?」

 

兵士が女の子を連れて近寄って来る

ある程度近寄り、拳銃を女の子のこめかみに押し当て、何かを喚く

 

綾波「猿語は履修してないんですよ、悪かったです…ね…」

 

…女の子の顔を眺める

別に何を思ったわけではない、ただ何となく眺めただけ…

 

女の子「た、たすけて!お願いします!お願いします!」

 

ドイツ語で必死に助けを求められる

無視して兵士を殺すことは簡単だ、私はどこまでも残虐に堕ちることができる

だけど…この感覚、何を思っているのか…

 

綾波「…ああ、そう言うことか…」

 

両手を挙げて見せ、喚く兵士を宥める事を試みる

 

綾波「私に改二を使わさないでください、あなたを確実に殺してしまいますよ」

 

今後のために蛮族の言語を習っておこう…

 

兵士の視線が一瞬こちらを向いたのを確認し、小型のブラックホールで兵士の腕を粉砕する

 

綾波「ね?」

 

近寄り、兵士の顔面に靴底を叩き込み、顔を踏み潰す

 

綾波「…ごめんなさい、感情が昂ってしまいました…ふう、立てますか?」

 

女の子「え…?ど、ドイツ語…?」

 

綾波「喋れますから、安心して…とりあえず立ってください、早くここを抜け出しますよ」

 

少女を飛行機へと招く

しかし本当によく似ているな…春日丸さんに

 

 

 

グラーフ「あ、綾波…」

 

綾波「血まみれでごめんなさい、汚れない戦いをするには…その、まだ本調子じゃないみたいで」

 

グラーフ「…1人で戦う必要なんか…無い、だろう…?」

 

綾波「私は死にませんから、心配ありません…ああ、それよりこの子の面倒をお願いしても良いですか?」

 

少女をグラーフさんに押し付ける

 

綾波「あ、そう言えば…名前は?」

 

シャルン「…シャルン…」

 

綾波「艦娘システムすら搭載してない様なので、ドイツ語しか通じません、仲良くしてあげてくださいね?」

 

グラーフ「……ああ、だが…どうするんだ?これから…」

 

綾波「ここの先頭車両などに爆薬を仕掛けてあります、追いかけてきたり撃ち落としたりはできません、このままロシアに行きますよ」

 

タシュケント(…せめて、ロシアでは楽をさせたい…絶対)

 

綾波「シャルンさんのことはそのあと考えましょう、それでは」

 

 

 

 

 

 

 

ロシア 飛行場

 

綾波「ロングフライトお疲れ様でした…予定より2時間も遅くなりしたから、流石に出迎えは…」

 

降りてすぐのところに銀髪の女性がこちらを睨みながら立っている

 

綾波「…居ますね、驚きだ……お待たせしました」

 

 

ガングート「歓迎しよう、Link、私はガングート、貴様らのことを一任されている」

 

綾波「これはどうも、Linkのリーダー、綾波です」

 

ガングート「あーやなみ…駆逐艦か?」

 

綾波「はい」

 

ゾロゾロと搭乗口から降りて来る中、タシュケントさんが声を上げる

 

タシュケント「あぁぁあっ!」

 

ガングート「…なんだ、タシュケント、騒がしいぞ」

 

綾波(知り合いか、話がスムーズに進んだのはそのおかげでしょうか)

 

タシュケント「同志!まさかまだ何もしてないだろうね!?綾波達はもう疲れ果ててるんだ!絶対変なこと言わないでよ!」

 

ガングート「変な事だと?ただ試しに戦いたかっただけだ、ジャパンの駆逐艦がどんな物か、な」

 

綾波「…あなた戦艦でしょう?えらく性格の悪い…」

 

タシュケント「…ガングートはバトルジャンキーなんだ…その、前に日本の軽巡洋艦に負けた時…」

 

ガングート「ああ!アイツは強かった…!そいつ曰く私ではな、駆逐艦にも勝てないと言う…好奇心を抑えられないんだ、やろうじゃないか…!」

 

綾波「…駆逐艦?私が…?」

 

振り返り、タシュケントさん達を見る

黙って首を横に振られたと言うことは私は駆逐艦ではないのだろう、少なくとも実力は

 

朧「いつの間についてたの…?」

 

ガングート「む…?そっちもジャパンの…貴様も駆逐艦か!」

 

朧「え、うん」

 

タシュケント「ままっ待ってくれ!同志!朧と綾波は違うんだ!駆逐艦だけど色々違うんだ!」

 

ガングート「…違う?」

 

タシュケント「君じゃ殺されかねない!だからやめよう!」

 

ガングート「…お断りだ、より楽しいじゃないか…!貴様!!私や勝負しないか!!」

 

朧「いや…えっと……」

 

綾波「ガングートさん」

 

ガングート「む…?」

 

綾波「認めた方が楽ですよ、きっとね」

 

ガングート「……なんだと」

 

綾波「あなたはバトルジャンキーなんかじゃない、表情筋の動きのリズムでわかります、嘘をつく時左頬に力がこもってしまっていますよ」

 

ガングートさんが左頬に手を当てる

 

綾波「わかりやすく言いましょう、貴方…負けるのが怖いんですよね?本当は負ける戦いなんかしたく無いけど戦って勝たなきゃ色々まずい…って感じですか?」

 

顔をじっと眺め、頷く

 

綾波「戦艦のくせに軽巡洋艦に負けたことでよっぽど絞られたわけだ…でも貴方も弱くは無いはずなのに…」

 

ガングート「貴様、さっきから聞いていればなんだ!私が脅されているとでも言うのか!!」

 

綾波「ええ、それと私相手に嘘は通じません…未知の私に対して恐怖を抱いている、正しい感情です」

 

ガングート「…調子が狂う、後でまた来る!用意しておけ!」

 

綾波「…プライド高いと早死にがしやすいと思うんですよねぇ…」

 

ガングートさんを見送り、ホテルへと案内される

 

綾波「長かった旅も終わりの目前…さ、気を抜かずにあと少し♪」

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