元勇者提督 作:無し
ロシア
綾波
タシュケント「まさか会っていきなりの相手にあんなこと言うなんて思わなかったよ」
綾波「ええ、私もです、少し疲れていたのでしょうか…あんなに追い詰める必要はなかった…しかし、ガングートさんは決して戦闘狂なんかじゃない、彼女は自身の強さを証明したいだけ」
いや、それとも少し違うか…
軽巡洋艦にやられたと言っていたな…
綾波「そういえば、ガングートさんを倒した軽巡洋艦って言うのは?」
タシュケント「えーと…なんだっけ…」
綾波「もしかして、神通や那珂…とか言う名前でしたか?」
タシュケント「うーん、違う…」
綾波(天龍さんは戦闘を好まないし、龍田さんだと微妙か……じゃあ)
綾波「川内とか」
タシュケント「ああ!それそれ!」
おもわず頭を抱える、常識人だと思っていた…の、に…?
綾波「あ」
そういえばガングートさんがやられたのって装甲空母鬼の基地襲撃か?だとしたら…私の部下の不始末か
綾波(…責任は取りましょう、取れる限りね)
ガングート「出発だ、出てこい」
綾波「移動経路は?」
ガングート「サハリン州まで車だ」
綾波「わかりました、早速行きましょうか」
タシュケント「……」
ガングート「もう勝負をふっかけるつもりもない、安心しろ」
綾波「…せっかくです、軽くお相手して差し上げますよ」
ガングート「何…?」
綾波「貴方では、私にも、朧さんにも勝てない…タシュケントさんと勝負したら勝てはするでしょうが苦戦を強いられる…もし、タシュケントさんのアドバイザーに私がつけば貴方は敗北する」
ガングート「…あまり調子に乗るなよ、日本人…」
綾波「私は日本人ではありません」
ガングート「…なんだと?」
綾波「性格には私に国はありません、もはやどこにも存在を許されていない…いや、それよりも…タシュケントさん、ガングートさんと戦ってください」
タシュケント「無茶言わないでよ、戦艦相手に…」
綾波「戦う事自体は問題ないのなら戦いましょう、私が勝たせてあげます」
ガングート「貴様ら…!」
綾波「貴方はタシュケントさんを下に見てる、軽巡洋艦に負けた貴方如きがタシュケントさんに勝てるとでも?」
タシュケント「やめてよ綾波!」
綾波「これは、責務です、全うすべき責務だ…ガングートさん、貴方の思っているより世界は広い、見たくありませんか?真実を」
ガングート「…っ…」
ガングートさんが一歩後ずさる
綾波「逃げないでください…貴方は、知らねばならない…強い相手というのがなぜ強いのか、なぜ勝てないのか、戦うということについて…貴方は生きている、敗北した上で生きているのなら、強くなれる」
ガングート「強く…」
綾波「貴方は殺されてもおかしくなかった、何故なら負けたのですから…敵に情けをかけるなんて事、普通はあり得ないのですから…だから、命があるのならそのチャンスを掴みなさい」
ガングート「……貴様が負けたなら、何を失う」
綾波「全て、です」
タシュケント(結局こっちの意思は関係ないんだね…ああ、なんで同郷の友達と戦わなきゃいけないの…)
綾波「貴方は私の指示に従って戦えば良い、勝てますよ」
タシュケント「戦艦の装甲を貫けるわけが無い!当たっても大破判定なんて出ないよ!」
綾波「いいえ、やりようはあります、魚雷もあれば主砲もある、なのに何を恐れる必要がありますか」
タシュケント「…ああもう!負けたら恨むからね!?」
綾波「貴方がやることは簡単です、いいですか……」
タシュケント「……本当に?それでうまくいくのかな…」
綾波「長所と短所、必ず何事にも弱点はあります、その人の弱点を全て殺す事は不可能ですし…何より生身に弾を当てれば人は死にますから」
タシュケント「……わかった」
タシュケントさんを送り出し、ゆっくりと眺める
インファイトに持ち込め
と言っても私や朧さんの様な戦い方じゃ無い、接近して徹底的に近づいて…主砲の射角から外れる
それが狙い…
演習が始まる
戦艦の射程での行動はまずとにかく魚雷を撃つ事
これが1発でも当たればその時点で勝負は終わる、逆もまた然りだが…タシュケントさんの長所はその速さだ
タシュケント(至近弾が多い…!ああもう!切り抜けられるのかな、これ!!)
艤装の最高速度は大体42ノット…そして直線的では無い動きを不規則にし続ければ当てることは容易ではない
綾波「タシュケントさん、次左に」
タシュケント『了解…!』
ジリジリと、決して焦らずに距離を詰める
ゆっくりと時間をかけて、ねぶる様に仕留める
蛇行しながら迫り、魚雷を放ちながら…
ガングート(なんだ、タシュケントのやつ…この動きはまるで蛇の様だ…いや、そんなことよりもう射程内のはず、なぜ撃ってこない…!?)
綾波「まだ撃たなくて良い、貴方の艤装の有効射程距離は気にしなくて良い、貴方自身が当てられる有効射程距離を目指しましょう」
タシュケント『うん…!』
最初こそ怯えは見られたものの、ここまであたらない時間が続けば自信になる
自信を持って戦えば…人は強い
タシュケント『撃っていい!?』
そして、自信があるからこそ、この言葉が引き出せる
綾波「どうぞ、相手は戦艦、大物ですよ」
タシュケントさんの砲撃が一方的に当たり続ける
射撃も実践経験を積んである以上…自信はすでについている
綾波「ガングートさんの動きが乱れました、今ですよ…詰め寄りましょう」
戦艦の艤装は駆逐艦などと違い自分の手で動かして操作するものでは無い
基本的に体自体を動かして操作する
反対方向に肩を使って主砲を向けられる駆逐艦と違い、真裏に回られた戦艦は身体そのものを回転させて主砲を向けなくてはならない
この無防備な背中こそが狙い目…
タシュケント(もらった…!)
ガングート「なッ…舐めるなァ!!」
ガングートさんが片足を浮かせ、バランスを崩しながら無理矢理反転を試みる
綾波(まずい!倒れる…)
艤装の重みに引っ張られ、ガングートさんはそのまま海面に倒れ込む
ガングート「くそッ!!何故だ!何故私がこの様な無様を晒す…!」
綾波「…無様…か、タシュケントさん、無線機の音量を上げて外してください」
タシュケントさんが無線機を外したのを確認する
綾波「ガングートさん、実に素敵でした…私は貴方を軽んじていた、心より謝罪させていただきます」
ガングート『何…?ふざけるなよ…!私を愚弄したいのか!』
綾波「いいえ、貴方に足りないのは単純に、自信です…貴方が負けた川内さん、あの人は日本の軽巡洋艦なら随一の実力者、貴方が負けたのは仕方のない事です」
ガングート『仕方ない…?そんな事で納得しろというのか…!?』
綾波「いいえ、むしろ普通ならそれで納得してしまうべきだ、例え、絶対に勝てない相手だろうと貴方は…ガングートさん、貴方は川内さんにリベンジしたいのではないですか?だから、駆逐艦にすら勝てないと言われたから、私たちを標的にしたかった」
ガングート『…そうだ、いつかアイツにもう一度勝負を挑む…!!』
綾波「その為でしょうね、あの無茶な振り返り…川内さんは攪乱するような動きが得意です、だから背後をとられたことをずっと悔いている、次は背中を取られても勝つと決めている」
ガングート『…だからなんだ』
綾波「私たちときませんか?」
タシュケント『えっ?』
ガングート『貴様ら、と…?』
綾波「ロシアは艦娘システムに参加している人は多い、ですが貴方の様に…真剣に訓練に取り組み、実力をつける人は少ないと聞いています、だから過去の極秘裏の輸送作戦の様な重要な作戦に参加できたのでしょう?」
ガングート『…何故、貴様がそれを……』
綾波「私とくれば、川内さんにリベンジする機会を作ります…貴方をもっと強くできます、それにタシュケントさんとも一緒にいられますよ、如何ですか?」
ガングート『……考えさせてくれ』
綾波「日本に到着する前にお願いしますね」
タシュケント「どういうつもりなんだい綾波…君は…」
綾波「大丈夫、ガングートさんは決して問題のある人ではありませんから」
タシュケント「いや、それは知ってるよ!だけど…!」
綾波「ガングートさんの事についてロシア政府と話してきます」
綾波(それさえ終われば日本に帰れる、まあ大湊の人達になら見つかっても騒ぎにならない…大丈夫、大丈夫…)
ガングート「…戦艦、ガングート…Linkに参加する」
綾波「歓迎しますよ、ガングートさん」
ガングート「…ああ、私を強くしてくれ」
綾波「その前に、一つ頼みがあるんです…ドイツ行きの便を用意してくれますか?」
ガングート「ドイツだと?」
綾波「民間人を保護しまして、ドイツ人なんですよ」
ガングート「…そうか、すぐに手配を…」
プリンツ「綾波さーん!」
綾波「…おや、プリンツさん…とその他ドイツ人の皆さん、どうかしましたか?」
レーベ「シャルンを説得したんだ、日本についてくるって」
綾波「…はい?」
ユー「…家族、みんな殺されちゃったって…」
…要するに、行くあても無いからついてきたい、か
私のした事に対する責任だ、殺すか連れていくか…ドイツに送り返すのも選択肢だが…
綾波「……ガングートさん、キャンセルで」
ガングート「あ、ああ…大変そうだな」
悪い癖だ、つい悩むと目頭を強くおさえてしまう
これでは私は今困っていますとアピールしてる様なものだ
綾波「本人に意思確認を…してきます」
綾波「……ええと、一応言いますけど私達深海棲艦と殺し合いしてるんですよ、決して貴方の思ってる様な素敵な人たちじゃ無いんです」
シャルン「…それでも、良いから…」
死んだ目の少女
…護衛棲姫…春日丸さんに似てはいるものの、そこは違う
あの野蛮人達に酷い目に遭わされたのだろうな、身なりも汚ければ心が死んでいる
表現するなら、死に場所を求めている様な目というところか
綾波「…艦娘システムに登録しても構わないのですか?あなたの背中を開いて艤装を埋め込む事になりますが」
シャルン「構いません」
綾波「……簡単には死なせませんよ」
シャルン「…はい」
私に気に入られたのが運の尽きだ、そうそう死なせはしない
絶対に、死なせはしない…それが私なりの責任の取り方…
綾波(…アヤナミ、これで良いんですか…?私は、私はどうしたら良いのかわからない、あなたが私を恨んでるのはわかってる、だから…)
想い、願い、懇願する
それしか今の私にはできないのだから
2人で描いた理想の私を目指すことが、あなたの記憶を奪った私の償い…責務だ
綾波「……では、日本に戻ったら艤装を用意します、これからよろしくお願いします」
…あっという間に人数は膨れてしまったな…
綾波「……あ」
そういえば、ここについてから聞かされたけど…ザラさんの妹さんは…?
ポーラ「嫌です…姉様と離れたくありませんー!」
ザラ「ごめんなさい、この調子で…」
グラーフ「話を聞いているとな、別に悪いやつではなさそうなんだ」
綾波「………はぁ…」
結果から言えば、Linkのメンバーは私、朧さん、グラーフさん、ザラさん、リシュリューさん、タシュケントさんの6人から、プリンツさん、レーベさん、マックスさん、ユーさんの4人
アークロイヤルさん、ジェーナスさん、ビスマルクさんの3人
そしてポーラさん、ガングートさん、シャルンさんの3人を合わせて合計16人になった…
一気に大所帯になってしまったな…
私にのしかかる責任はより大きく、重い…
ポーラ「ザラ姉様が行っちゃってからお酒を飲む様になったんです、夢の中でザラ姉様と会えたから…」
ザラ「だからってあんな無茶な飲み方したら身体を壊すでしょ…!?もうお酒はやめてね…?」
ポーラ「はい、だったザラ姉様はここに居るから」
ザラ「ポーラ…!」
グラーフ「ずっとあの調子でな、胃が痛くなってきた」
綾波「頑張って相手しててください、もうすぐ輸送車輌が来ますから」