元勇者提督 作:無し
海上 輸送船内
綾波
綾波「さて、面談を始めましょうか…」
アークロイヤル「…おい、このメンバーに意味あるのか?」
ビスマルク「私と、アークロイヤル、それに…シャルン」
綾波「あなた達は全員就労可能な年齢です、シャルンさんは日本での生活に不自由しないために艦娘システムに登録して日本語をインストールしますが、決して艦娘になることを強いられるわけではありません」
アークロイヤル「……また、ドイツ語で話すな…わかるにはわかるが、少し時間がかかる……要するに、選べと言うことか」
綾波「はい、皆さんには日本で一般人として生活する道も、艦娘としてLinkに従事する道もある、どちらの道も私はあなた達を見捨てずに支援します」
シャルン「で、でも、働けないんじゃ……ビザも戸籍も…」
綾波「其処はなんとかしますから、日本語が完璧になれば誰も文句は言いませんし」
アークロイヤル「……後から、変えても良いか?」
綾波「まあ、辛い道を強いていますし…でも、艦娘となった後に就職するのは難しいですよ、野蛮人扱いされますし」
アークロイヤル「ああ、先に……仕事をしてみたいと思ってるんだ」
ビスマルク「え?アークロイヤル…働くの?」
アークロイヤル「ああ、私は綺麗な血筋なんかない、どちらかと言えば汚い産まれだった、だから艦娘システムにも捨て駒として雇用された、端的に言えばあまり良い思い出がない…と言うのが大きいか」
綾波「どちらを選ぼうと自由です、ビスマルクさんとシャルンさんは?」
シャルン「…私も、普通に生きていたいです…」
綾波(意外だな、辛さを忘れるために戦いの道を選ぶかと思ったけど…)
シャルン「…ダメ、ですか」
綾波「いいえ、しかし…シャルンさんはまだ幼いですね、故にできてもアルバイトくらいでしょう、学校も手配しますので」
シャルン「ありがとう、ございます」
ビスマルク「……もう少し考えても良い?」
綾波「ええ、明日までにお願いします……しかしこの辺りは深海棲艦が少なくて良いですね、大湊の皆さんが掃討してくれているから少しくらい船を出しても敵襲がない…」
ビスマルク「今どのあたりなの?」
綾波「そろそろ津軽海峡です、北海道を通っても良かったんですがこの辺りなら安全に海を通れることと、私たちの基地が海沿いなので…おや、無線が…」
朧『綾波…なんか、ヤバいかも、誰の匂いってわけじゃないけど…ヤバい匂いがする』
綾波「…おや、私の判断が間違ってたかもしれませんね、陸路で帰るべきでしたか…」
朧さんの鼻は正確だ、そういうのなら…
綾波「私も出ますか、深海棲艦なら大湊の人達がやってくれるでしょうけど……」
大湊警備府
駆逐艦 五月雨
五月雨「ごめんなさい!本当にごめんなさい!」
亮「あー、いや、もうわかった…」
徳岡「番号が変わってたから連絡ができなかったんだ、書類のミスってだけでだな」
川内「無駄足かぁ……別に取って食いやしないから演習しない?」
神通「怪我をさせるつもりもありませんし…」
徳岡「……いやぁ…」
曙「……悪かったわね、たしかに叢雲とか陽炎の艤装はドロドロに溶かしたけどもう調整できるわよ」
五月雨「なら大丈夫ですよ!提督!」
徳岡「…あー……」
徳岡(来てもらってる手前…無下にもできないしなぁ…)
徳岡「そう、するかぁ…」
演習結果は惨敗
私達は川内さん達に終始圧倒された
と言っても怪我をしないことを最優先にした模擬戦だけあって…半分お遊びみたいに…
最後なんか那珂さんがゲリラライブを開催する始末…
神通「…おや」
五月雨「どうかしましたか?」
神通「ここには駆逐艦の艦娘しか居ないんですよね?今日輸送の予定などはありましたか?」
五月雨「いえ、何も…」
怪訝な表情の神通さんが海の彼方を睨む
神通(…重巡級か…?しかも、外国人………いや、あれは…!)
神通さんの表情が変わり、川内さんの方に駆ける
神通「姉さん!曙さんは?!」
川内「……曙!!」
どう言うことだろう、何に焦って…
五月雨「あ」
忘れてたけど…綾波さんがこの辺りにいるんだった…しばらく見てないけど
微かに聞こえる声に綾波さんの声が混ざる
五月雨(あ、これ…大変な事になるんじゃ…)
海上
綾波
綾波「……嫌な風が吹いてますね」
朧「川内さん達の匂いだ、なんでここに居るの?」
綾波「とりあえずこちらから手は出さない事、話し合いで解決すれば最良、それと、やるなら私と朧さんだけです…他の方々を出すとややこしくなる」
朧「……わかった」
どんどんと船は進む
このまま無視されて基地に帰れるなら…どんなに良いのか
神通さんじゃなければバレなかったのに…
綾波「……前方魚雷」
海に降り立ち、海面を踏み鳴らす
目の前で魚雷が炸裂する
綾波「先に手が出るのは悪い癖じゃないですか?曙さん」
赤々と燃える炎が私に近寄ってくる
曙「…返しなさい、朧を……そしたら、灰にするだけで済ませてあげるから」
綾波「それ以上となると何があるのやら」
曙「アンタのせいであたしはメチャクチャよ、今ここで…」
双剣を構え、踏み込む姿勢…
綾波「まず話を……?」
綾波(この感じ……いや、そんなありえない…まさか…)
曙「殺す…!!」
曙さんの炎が蒼く染まる
青い炎が私の皮膚を焦がす
綾波(…信じられないが…曙さんは…)
この熱
そしてこの勢い
曙「っらぁぁぁぁぁッ!!」
双剣を振り回し、私を狙う曙さんからたしかに感じた感覚…
綾波(……黄昏の書は完全に抜き取ったはずだ、だからあれは曙さんが燃料を消費して作り出した炎…の、はずだ…でも、この感じは…間違いない、曙さんは、曙さんのナノマシンは身体に記憶した黄昏の書を自分で産み出した…!)
綾波「ありえない、だけど…」
素晴らしい…
炎に身を焦がされながら曙さんに詰め寄る
剣撃を避けて、炎を掻き分けて…
綾波「間違いない…!」
曙「さっさと…燃え尽きろぉぉッ!!」
激しい乱舞をかわし、距離を取る
目の前を赤い炎が走る
綾波「…勝手にそれを使わないでください、朧さん」
船から朧さんが降りる
手には黄昏の書のカートリッジ…
過去に曙さんの艤装を使い炎を操った事自体はあったが…まさか、低い適合率とはいえ黄昏の書を扱えるとは
朧「曙、話を聞いてよ」
曙「…あたしは、アンタのためにここまで来たのよ…とりあえず1発殴らせなさい…!」
朧「……綾波」
困ったように朧さんがこちらを見る
綾波「躾が足りてないのかもしれませんね」
朧「…だね、良い機会だし…軽くやろうか」
曙「上等よ…!」
朧さんが曙さんに詰め寄り、インファイトを開始する
互いの炎はもはや意味を成さない、しかし私たちを寄せ付けないと言わんばかりに炎が道を遮る
綾波「…朧さん、なかなかやるようになったと思いませんか、川内さん」
振り返り様に短刀を借りで弾く
川内「だね、じゃあ代わりに私達が綾波を仕留めなきゃ」
綾波「…川内型屈指の常識人だと思ってましたけど、話を聞く気も無いんですか」
川内「リスク、高すぎるんだよね」
背後からの神通さんの突きを横跳びで交わし、着地を狙った那珂さんには蹴りを合わせて攻撃を防ぎ切る
綾波「ならとりあえず殺しておこう、か…」
川内「あんな代役まで立ててさ、こっそり何してるのか…吐かせるべきだし、殺しておいた方が世のためでしょ」
神通「それに、私は貴方が姉妹を笑った事…許していません」
那珂「ハッピーエンドになったんだからさ…もうかき回さないで欲しいな」
川内「何はともあれ、話をしたいなら私達を倒して、尚且つ生かしてよ、そうすれば嫌でも話は聞くからさ」
綾波(要するに…力尽くで従わせなきゃ話を聞く事もしない…か、確かにお利口だ、私のやってきた事からして殺す事で防げる被害の方が大きい)
綾波「…しかし、3対1というのは…」
改めて見直すと川内さんは両手に短刀、神通さんは槍と刀…那珂さんは素手…
綾波(刀か槍が欲しいがあの槍、持ち手以外に棘がついていてこちらからは掴めない…刀だな、槍の扱いは慣れてないし、刀ならナイフくらいのつもりで…)
踏み込もうとした瞬間、間合いのギリギリを槍が斬り裂く
神通「…一瞬、早かったようですね」
綾波(踏み込みの動作を視られていたのか、危うかったな…)
綾波「……はぁ…あなた達、容赦無いですね」
背後から迫る川内さんを蹴りで退け、そのカバーに入る那珂さんから距離を取り、追撃に来た神通さんの槍を蹴りで弾く
綾波(綺麗に順番の決まった攻め方、しかしなによりも神通さんだ、槍を弾かれてもフラつきもしないのか、重心を持っていかれてすらいない…素晴らしい体幹だ)
綾波「故に使うしか無いか」
両手にカートリッジを持つ
神通「…那珂ちゃん!あのカートリッジ…」
那珂「あっ!?嘘!いつの間に盗られて…」
那珂さんから盗んだカートリッジの出力を調整し、艤装に挿す
そしてオートガードのカートリッジを挿す
神通(あれは身体強化系の…移動速度を上げるカートリッジ…)
綾波「さて、実験開始です」
出力は理論的には正しいが…
綾波「いきますよ…!」
神通さんに詰め寄り、槍の竿部分を蹴り弾く
神通「っ!?手が、痺れ…!」
綾波「金属製の槍なんか使ってるからですよ!」
回し蹴りで神通さんを吹き飛ばす
神通「くッ…あ…!?か、刀がない…!」
降ってきた刀をキャッチし、向ける
綾波「うーん、私には少し長いな…でもぴょんぴょん跳ね回るあなた達には有用か」
チラリと朧さんの方を見る
朧「だから!アタシはアタシの意思で綾波と居る!!わかってよ!!」
曙「アンタは洗脳されてんのよ!こんな馬鹿!!」
朧「…あーもう、頭きた…!」
朧さんが主砲を空中に放り投げる
綾波「…!」
神通(あ、アレは…!?)
朧「さっさと、倒し…あ、あれ!?」
朧さんがハンドガンを主砲に向ける…が、動きが止まる…
綾波(…成る程、失敗はしているものの…やろうとしたことは理解できた)
朧(だ、ダメだ…当たるイメージが、つかなかった…)
音を立てて主砲が水面に落ちる
神通(…今やろうとしたのは、キタカミさんの…!?…な、なんで朧さんが…)
川内(…朧にも驚きだけど、綾波の様子が…)
綾波(…ま、こんなところか…)
綾波「レーベさん、マックスさん、タシュケントさん、主砲を私の方に投げてください」
船から私の方へと6つの主砲が投げられる
川内「なッ…!?」
神通「ま、まさか!」
那珂「で、でも朧ちゃんは失敗してたのに…!」
綾波「失敗とは無価値なものですか?いいえ…失敗とは学びの過程だ、よく見ておきなさい、私に失敗とはいえ、それを見せたのなら」
拳銃を取り出し、主砲の引き金を撃ち抜く
6つの主砲から放たれた砲弾が那珂さんを集中して撃ち抜き、吹き飛ばす
那珂「がっ……あ…かッ…」
神通「那珂ちゃん!」
川内「神通!行くよ!」
刀を縦にし、川内さんの短刀を受ける
綾波「ッ!?」
刀にフック状の何かが引っかかり、強く引っ張られる
綾波(これは…青葉さんの!)
弧を描いて背後へと移動するあの動き…!
川内「意識は、こっちに向けないとね…!」
綾波(成る程、2本の短刀を防ぐのは刀を封じられた時点で不可能…アドリブの連携なのに上手い…)
川内「もらった!」
神通「ここで、決めます!」
綾波「忘れてませんか?私に触れると…!」
川内さんの腕を掴む
川内「がっ…あああぁぁああぁあッ!?」
電撃で痺れた隙に前蹴りで弾き飛ばす
神通「姉さん!!」
綾波「あなたを倒せば…話ができますよね?」
槍を刀が滑り、神通さんの鉢金に深い傷をつける
神通「っ!!」
綾波「…首を刎ねることもできました、御理解ください」
神通「……死するまで」
綾波「…それは…っ!」
背後から斬りかかる川内さんの手首を蹴り飛ばす
川内「ぐッ…!!」
綾波「あっ…しまった、早く手を出して!」
川内さんの手を掴み、患部を確認する
綾波「…折ってますね…ああ、ごめんなさい」
川内「…いや、え…?」
慌てて処置する私に困った様子の川内さんの目を見て言う
綾波「最初から、私はやるつもりなかったんですよ?…どうですか?話を聞いてくれますか?」
神通「…姉さん」
川内「…はいはい、参った参った」
朧「…綾波、こっちも終わったよ」
綾波「勝ちましたか」
朧「顎に叩き込んでやったよ」
綾波「さて、とりあえず腰を落ち着けられる場所…行けますか?」
川内「大湊に聞いてみる」