元勇者提督   作:無し

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チキンスープ

大湊警備府

綾波

 

川内「Link…ねぇ」

 

綾波「ええ、世界を再び繋ぎ(Link)直すこと、それが我々Linkの目的であり…現在、ヨーロッパ各国との提携を結んでいます」

 

朧(え?そんなにしっかりした協力関係なの?いつの間に…)

 

川内(正直、コイツ(綾波)がそんなマトモな事してるなんて…全く信じられないけど…)

 

綾波「お互いの為に、ここは引き下がってくれませんか?長旅で疲れてるんです、私達」

 

曙「…朧、アンタは…」

 

朧「アタシはもう暫く戻るつもりはない…だって、新しい仲間ができたし、それに何かあった時綾波を止める役が必要でしょ?」

 

曙「……負けた以上、何も言うつもりはないわ」

 

朧「曙」

 

曙「…なによ、あたしは混ざるつもりないわよ」

 

朧「強くなってたよ、ものすごく」

 

曙「…アンタに言われても嬉しくないのよ…」

 

川内(…それにしても、3対1で負けたのはかなり良くないよね…しかも綾波は一度もダメージを受けてない、曙も私達も、一撃も与えられてない…もし、綾波が敵だったら?間違いなく勝てない…)

 

綾波「川内さん、あなた達が弱いんじゃないんですよ」

 

川内「…自分が強すぎるって?」

 

綾波「違います、賢すぎるんです」

 

川内「……頭が良ければ勝てるってほど単純じゃないでしょ」

 

綾波「そうですね、単純じゃない…複雑だからこそ、賢い私は負けない」

 

川内「…ちぇっ」

 

川内(倒せなきゃ、いざという時負けを認めて諦めるしかないのに…)

 

綾波「貴方達は根本的に間違えています、川内さんと那珂さんは全力を出せなかったし、神通さんは出さなかった…それは全て連携のためです」

 

川内「え?」

 

綾波「神通さん、あなたはメイガスだけではなく、AIDAも封じて戦っていますよね?そうじゃなければ私の腕一本は落とせましたよ」

 

神通「……それは」

 

綾波「川内さんも那珂さんも、本来の碑文の力を失っているせいで脳のセーブがかかっているんです、キタカミさんを思い出してください、あの人個人の演算能力はハッキリ言って異常、あんな技も使うようですし…」

 

那珂「待って、ずっと気になってたけど…なんで朧ちゃんの失敗した技を成功させられたの?元々知ってたの?」

 

綾波「いいえ、ですがやろうとする事の意図と目的、考え方、そう言うことを理解したら真似なんて簡単ですよ」

 

那珂(絶対普通は無理だよ…)

 

綾波「朧さん、キタカミさんの凄い所を言えますか?」

 

朧「す、凄い所…?デタラメな撃ち方をしても外さないこと…?」

 

綾波「ハズレです」

 

川内(…演算能力とか言うのかな)

 

綾波「外さないのはその力の結果です、大元にある素晴らしい力は…そう、徹底した射線管理とでも言いましょうか、あの人の…いや、あの人が率いた隊の被弾率の低さを知っていますか?不知火さんや阿武隈さんとの違いが分かりますか?」

 

神通(…そういえば、確かにキタカミさんは味方の主砲の角度などを指摘する場面も多かった、なにより相手の砲の角度を瞬間的に完璧に把握していた)

 

綾波「不知火さんは確かに当てる能力、正確な射撃に関しては比類ありません…阿武隈さんはキタカミさんの周りを見る目を部分的に…同じように見えて属性が全く違うんですよ」

 

川内「…成る程ね、それで?」

 

綾波「私はキタカミさんのマネをしただけです、朧さんがやろうとしたのはキタカミさんの射線管理…そう理解した時点で私はそれができると確信し、主砲を投げさせました、そして実行した」

 

那珂(…バ、バケモノ…)

 

綾波「とまあ、その気になれば…あなた達全員の技を盗むことも可能です、私に見せると言う事の意味を理解してください」

 

川内「……みたいだね」

 

綾波「まあ、いいものを見せていただいた御礼も兼ねて…碑文の力の取り戻した方を教えて差し上げましょう」

 

那珂「え?」

 

綾波「というか、そもそも神通さんが教えてないのが不思議なんですけど…」

 

神通「…だって、リアルデジタライズしないと…」

 

綾波「いいえ、The・Worldにログインしてください、そしてその中にいる碑文使いきら力を受け取ればいい」

 

川内「受け取る?」

 

綾波「受け取ると言うと語弊がありますが…少なくとも神通さんはそうやって力を取り戻した」

 

神通(…そうでしたっけ…?いや、私は強く覚悟をしようと決めて……あれ?そっか…)

 

綾波「まあ詳細は神通さんから聞いてください」

 

神通「…正確には漏れ出してる碑文の力に共鳴した感じだと思います、確かに力の大部分を失ってはいますが、私の中にメイガスは眠っていましたから」

 

綾波「次は…改二艤装とダミー因子を相手にしても大丈夫である、と…信じてますよ?」

 

那珂(さ、さらに上があるの…!?)

 

川内「…力の半分も出してないってことか…」

 

綾波「そうですねぇ…2%って所でしょうか?」

 

川内「にっ…!?……っ…ヤバすぎ…」

 

神通(鵜呑みにするつもりはありませんが…もし真実なら…)

 

綾波「さて、私はお仕事がありますから…あ、そうだ曙さん」

 

曙「何よ」

 

綾波「良ければ…溶けないような頑丈な艤装、作りましょうか?今のあなたの艤装、中身がドロドロに溶けてメチャクチャになってますし」

 

曙「遠慮しとくわ、あたしは明石の艤装しか使わないのよ」

 

綾波「では明石さん名義で送りますね♪」

 

曙「そう言う話じゃないっつーの…!」

 

綾波「それでは、もうすぐクリスマスです、良い日を」

 

川内「最悪のクリスマスプレゼントをもうもらったから、充分かな」

 

部屋の南側の壁の方に近づき、ノックする

 

綾波「もう帰りますので、直接の御目通りができず申し訳ありません、高岡提督、三崎司令官…さ、行きますよ、朧さん♪」

 

軽く頭を下げ、部屋を出ようとする

 

綾波「…あ、川内さん、春雨さんと連絡取れますよね?」

 

川内「…春雨と?」

 

綾波「離島にいる彼女にこのメモの通りの薬を処方するようにお願いします、あなたには捨て石のように見えているかも知れませんが、彼女は決してそんな扱いをしているわけではありませんから」

 

川内「…彼女……離島にいる、アヤナミ…?」

 

川内(直接見たわけじゃないけど、ボロボロの体を身代わりにして自分は雲隠れしてるようにしか見えないんだよね…)

 

綾波「そのように思うのは仕方のないことです、しかし…彼女は私にとって大事な存在、もし手を貸してくれるのなら何かお願いを聞いて差し上げますよ?」

 

川内「……後が怖いからやめとく、そのメモは貰うけど…」

 

綾波「それと、これは特務部からの連絡ということで…私達は極秘裏の、秘密組織ですから」

 

川内「……わかった」

 

綾波「私達は世界を再び繋ぎ直す、そう言う存在です、ただそれだけです、それ以上も以下もありません、人間に対しては専守防衛を貫きます……が、私たちに手を出したのなら…死をもって贖う事となる、よく覚えておく事です」

 

川内(…物騒なやつ…)

 

 

 

 

 

Link基地

 

長旅を終え、ようやく我が家に帰ってきたか

思えば土産が多すぎる旅だった

 

基地に一番最初に足を踏み入れ、振り返る

 

綾波「さて、そうですねぇ…これからはここが皆さんの家になる訳だし…まずは、おかえりなさいと言う事で♪」

 

朧「…ただいま…?」

 

朧(綾波こんなキャラだったっけ…?)

 

グラーフ「…あー…Ich bin zurück(今もどった)…で、良いのか?」

 

ザラ「Sono tornato(もどりました)って感じですかね…?」

 

綾波(あー、そっか、おかえりとただいまって日本しかないんだ…)

 

綾波「まあ、今後は日本にいる訳ですから、帰ってきたらただいまと言って入る、おかえりなさいと言って迎え入れる、良いですね?」

 

グラーフ「それが日本のルールか、ならば従おう」

 

綾波「さて、シャルンさんに日本語をインストールしないと…ああ、でもお腹減ってますよねどうしよう…」

 

タシュケント(結局ロシアで何も食べられなかったからなぁ…みんなで色んなところ周りたかったのに…)

 

綾波「…うーん、朧さん、適当に何か店屋物をとっておいてください、アレルギーのある人居ますか?」

 

ガングート「…海老が食えん」

 

綾波「甲殻類アレルギーですね、ほかは?…無しと」

 

ジェーナス「あ、fish()は嫌だなー」

 

綾波「好みは聞きません、時間がかかりますからね、シャルンさんKomm bitte her(こっちに来てください)…あ、グラーフさん、チキンスープの材料とりんごとバナナ、それからパンと卵を買ってきてください」

 

グラーフ「チキンスープ…?レシピは」

 

綾波「グラーフさんがよく食べるもので構いません、頼めますか?」

 

グラーフ「あ、ああ…わかった」

 

グラーフ(風邪なんて誰もひいてないよな…?)

 

 

 

処置室

 

綾波「どうですか?私の言葉わかりますか?」

 

シャルン「…は、はい…でも、すごく変な感じ…うぅ…」

 

綾波「脳に直接インストールするせいで負担が大きいんです、大丈夫ですよ、少しすれば慣れますから」

 

背中をさすりながら声をかける

 

綾波「艦娘システム自体の問題もあるし、多分少ししたら熱が出てきて風邪のような症状が出ます、暫くすれば治るのですが…」

 

シャルン「…わ、わかり、ました…」

 

綾波「…それと…貴方の艦娘としての名前…」

 

シャルン「…名前…?」

 

綾波「…シャルンホルストという船を知っていますか?」

 

シャルン「…戦艦の…?」

 

綾波「…いいえ、客船です、日本に来たシャルンホルストは…神鷹と名付けられました」

 

シャルン「…神鷹…」

 

綾波「どう、でしょうか…」

 

神鷹「…わかりました…これからは、神鷹と呼んでください…」

 

綾波(…軽空母神鷹…春日丸さんの改装した後の名、大鷹の…大鷹型の軽空母…なんというか、情けないな…まるで代わりにしようとしているみたいだ)

 

綾波「貴方の分の食事は後から用意します、もう暫く我慢できますか?…神鷹さん」

 

神鷹「Ja(はい)…あっ!は、はい」

 

綾波「無理せずに、私はドイツ語も話せますし…その、気楽にしてください」

 

神鷹「……ありがとうございます」

 

神鷹さんの笑った顔は…綾波の記憶に焼きついた護衛棲姫の笑顔とよく似ていた

 

 

 

 

綾波「…これは?」

 

朧「宅配ピザだよ?」

 

綾波「…なぜシーフードピザばかり…いや、ザラさんが倒れているのは…」

 

ザラ「…クリームピザ…ジャパニーズクレイジー…」

 

綾波「え?」

 

グラーフ「…綾波その…よその食文化にケチをつけるのは良くないと分かっているのだが…日本はシーフードピザにホイップクリームをかけるのか…?」

 

綾波「いや、かけませんけど…?……朧さん?」

 

朧「うーん…喜んでくれると思ったんだけど…」

 

どうやら、主犯は朧さんだったらしい

 

朧「潮が好きな生クリームピザとアタシの好きなシーフードピザを合わせたんだけど…」

 

綾波「どこのデリパリーピザがそんなものを売ってるんですか…!」

 

朧「この辺りにはなかったから、生クリームは買ってきたよ」

 

綾波(…話を聞くに朧さんだけじゃなく潮さんの味覚もやばそうだ…気をつけよう…いや、思えばアケボノさんの食に拘らないスタイルはまさかこの人たちが原因なのでは…)

 

綾波「と、とりあえず何か別なものを用意します!朧さん!」

 

朧「え?」

 

綾波「貴方は…外を走って来てください、罰です」

 

朧「べつにいいけど…」

 

綾波(ああ、そうだこの人トレーニング狂いだからそれじゃ罰にならない…)

 

綾波「…ついでに近くのサイゼリアで適当なものテイクアウトしてきてください…あー!やっぱり私が決めます!」

 

グラーフ(綾波、大変そうだが頑張ってくれ、私たちのまともな食事のために)

 

綾波(…頭が痛くなってきた…)

 

 

 

綾波「お待たせしました、チキンスープとすりりんごです」

 

神鷹さんは身体が強いわけではないらしく、平熱を2℃上回る高熱を出して倒れてしまった

となると、栄養補給は急務となる訳で、急いで栄養価の高く、食べやすい食事を与えなくてはならなかった

 

神鷹「……Es schmeckt gut(すごく美味しい)…ありがとう、ございます…」

 

綾波「…それは、良かった」

 

神鷹さんはそうは言ったものの、スプーンが進む気配がない…

でも、顔を顰めている訳でもないし味が悪いこともないはずだ…いや、まだ表情を掴み切ってないのか…?

 

綾波「…美味しくはないですか」

 

神通「…違う…その……Mama(お母さん)の作ってくれた…チキンスープの味…」

 

綾波「……そう、ですか」

 

弱って味覚が機能してないから、記憶からそれを手繰り寄せているんだろう…

だけど…まだ、幼い少女には…

 

綾波「…神鷹さん、貴方がこちらに来ると決めたのは半ば自暴自棄だったのではないですか?今からなら…艤装を完全に外してドイツに送り届ける事もできます」

 

神鷹さんは首を横に振る

 

神鷹「…確かに、決めた時はそうでした…でも、私は…貴方達と居たいです…」

 

綾波「……」

 

何を想っているのか、わからない…

当然だ、相手の気持ちなんか分かるわけがない

考え方や思考のクセから相手の気持ちを思いやる事が私にできる精一杯だ…だから…

 

背中に手を回し、優しく抱きしめる

 

綾波「…貴方がここを居場所にしたいのなら、私がそうなりましょう」

 

神鷹「……ぅ…うぅっ…」

 

命を細い一本の糸で繋ぎ止めた

だから生きた心地なんてずっとしなかったはずだ

殆どの人は自分の言葉もわからない土地に来て、いきなり派手な戦いを見せられて

自分もこうなるのかと怯えた筈だ

 

だから、泣けなかった筈だ

どんなに辛い目にあっても涙なんて出なかったはずだ

 

だから、今、ようやく泣けるのだから…

その涙を受け入れるのが私の役目…だと思う

 

大きな声で、涙を流しながら、必死に私にしがみついてくるこの人を護ってやることが…私にとれる責任だ

 

綾波「…よしよし…怖かったですね…」

 

これで何かの償いになんかなるわけが無い、だけど…

私にできる精一杯はこれが、限界

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