元勇者提督 作:無し
The・World R:1
Δサーバー 水の都 マク・アヌ
重槍士 青葉
青葉「限定イベント…?」
アルビレオ「おそらくだがな、あるエリアで出会ったリコリスといつのまにか手を繋いでいた、そして俺は…この手を繋いだままモンスター襲撃イベントに参加した」
青葉「そこで私はホームキーをもらいました」
アルビレオ「……リコリス、まさか、この…青葉もこのイベントの参加者なのか…?」
リコリス「ray.cylを、わたしにください」
青葉「しゃ、しゃべった……それにしても、.cyl…知らない拡張子…」
アルビレオ「もう1時間近く変化もないか、仕方ない」
アルビレオさんは観念したようにアイテムをトレードしたらしい
アルビレオ「…一つ前も同じ拡張子のアイテム名で使用は不可能、何か少しでも攻略情報が欲しかったんだがな」
青葉「…それは、ご期待に添えずごめんなさい」
アルビレオ「いや、こっちこそ変な話に巻き込んで悪かった、ごめん、あれ?いつのまにかパーティに…ほくと?」
ほくと「え?わたし知らないよ?」
青葉「…アルビレオさんが申請したんじゃ?」
アルビレオ「いや、おれはないしょ話は
そう言えばそうだ、リコリスさんについては私にウィスパーで口止めをしようとしていた…
だとすると…
3人の視線が、目を閉じた少女に集まる
アルビレオ「リコリスが…?」
青葉「……NPCが勝手にそんなことを…」
アルビレオ「…お約束から外れてる…」
不満げにアルビレオさんが声を漏らす
オルカさんやバルムンクさんの話で察せてはいたが、この人はロールプレイに重きを置いている
別にそれを強要するわけじゃないけど、ネットゲームの楽しみ方として重きを置いている、リアルの自分とネットの自分は別物だと考えている
だから、ゲームのシステムが勝手なことをするのが気に食わないのだろう
ふと、アルビレオさんの目が私の槍に止まった
アルビレオ「その槍…みたことないものなんだが、どこで手に入れた?」
青葉「…この槍は…ある人に託されたんです、今は力を失っていますが…」
アルビレオ「託された…?」
青葉「この槍の名前は、神槍ヴォータン、グラフィックは違いますけどね…」
アルビレオ「……同じ名前の槍?そんなもの……いや、リコリスのイベントの影響なのか…?」
アルビレオさんが考え込む仕草を見せる
ほくと「ねぇ、青葉ちゃんだから、青ちゃんって呼んでいい?」
青葉(またこのあだ名…)
青葉「構いませんよ」
ほくと「…青ちゃんはさ、どうしてパーティに入る前からリコちゃんが見えてたの?」
青葉「…私にもわからないんですけど…」
アルビレオ「……」
アルビレオさんの、2色の眼が私を見る
アルビレオ「…そのエディット、今のバージョンでできるものか…?」
青葉「へ?」
あ、この流れ、覚えがある…
アルビレオ「…言い方が悪いが、
青葉「もちろんですよ…」
うんざりという気持ちがどこかにある
疑われるのに慣れている自分がいることに嫌気がさす
アルビレオ「…すまない、少し気になったんだ」
青葉「いえ、私もつい変な対応を…ごめんなさい」
アルビレオ「…おれは今日は落ちる」
ほくと「落ちる??」
アルビレオ「ログアウトする、回線を落としてゲームを一旦やめるってことだ」
ほくと「え〜!!」
アルビレオ(しばらくこのホームには近寄らないでおこう……いや、このホームは捨てて夜逃げだ、アドレスを拒否して完全に断ち切ろう)
アルビレオ「じゃ」
青葉「あ、は、はい、お疲れ様です!」
アルビレオ(なぜそう固くなる…)
アルビレオさんが棒立ちのまま怪訝な表情で虚空を睨む
ほくと「どしたの?」
アルビレオ「………」
ほくと「黙ってないで何か言ってよ!固まってないでさ」
アルビレオ[………]
わざわざ、テキストでそう送られてきた
大抵のプレイヤーの不満を示すときのチャットの使い方
アルビレオ「できない」
ほくと「なにが?」
アルビレオ「ログアウト、できない」
青葉(未帰還者…!?)
アルビレオ「…堕ちられない、なんでトラブル…」
青葉「あ、アルビレオさん!モニターは!?デバイスを外せますか?!」
アルビレオ「…外せるが、どうした」
青葉「……そ、そうですか」
青葉(てっきり、未帰還者になったのかと思ったけど…コマンドが動作してないだけか…)
アルビレオ(まさかゲームの中に取り込まれるなんてSFを信じてるのか…?)
ほくと(SF好きなのかな、この子)
青葉「システム管理者は?」
アルビレオ「便利や扱いして無闇に呼ぶとおこられる」
青葉「こういうときのためにいるんじゃ…」
アルビレオ「それは、まあ……こういう原因不明なトラブルはたいてい一時的なもの、そのうち直る」
ほくと「案外さ!そのコがアルと離れたくないんだったりして!」
アルビレオ「…なんだ、そのアルってのは」
ほくと「あるびおれって呼ぶのめんどくさいからアル!そのコはリコリスだからリコちゃんね!」
アルビレオ「アルビレオだ、名前を間違えるな」
ほくと「ねぇ、アル」
アルビレオ「なんだ」
ほくとさんがアルビレオさんの顔に近づく
ほくと「アルって左右で目の色が違うんだね」
アルビレオ「何色に見える」
ほくと「右目が青で左目が黄色い」
アルビレオ「そういう設定だ」
ほくと「なんで?かっこつけ?」
アルビレオ「AFK」
ほくと「えいえふけー?」
アルビレオ「Away From Keyboar 繋げたままパソコンの前から離れる、このままキャラクターを放置する」
ほくと「ちょっ…わたしたちは!?」
アルビレオ「外で遊んでこい、パーティは解散しとくぞ」
青葉(…この人…というか、子…やるとは思ってたけど、とうとう怒らせた…)
ほくと「……2人で遊び…行く?」
青葉「遠慮します」
迷いなくログアウトを選んだ
リアル
青葉
青葉「…アルビレオ、アルビレオ…」
何か、聞いたことあるような…
青葉「なんだっけ、直接聞いてみようかな.」
The・World R:1
Δサーバー マク・アヌ
双剣士 カイト
カイト「お疲れ、トキオ」
トキオ「あ、うん、お疲れ…」
ブラックローズ「…はぁ…今日も何も収穫なしか…」
エリアを幾つか周り、聞き込みをして、情報を集めて…
確かにこれじゃ解決はしないのかも、だけど…
カイト「他に何もできないからね…でも、何かを掴まないと」
このまま時間を浪費するつもりはない、何かを掴む必要がある…けど、それはなんだ?
どうすればいい、僕はどうすれば…
考えろ、思い出せ、この世界に起こった事件を、イレギュラーを…イレギュラーは、明らかな異常は…
カイト(…クロノコア、そうだ、司を探そう…!この時代に居るはずだ…!あのとき、最後に司はクロノコアという何かをPCボディに取り込んでいた、だから…!)
ブラックローズ「おい、カイト」
カイト「どうかした?摩耶」
ブラックローズ「何回その名前で呼ぶなって言ったらわかるんだよ…!それより、さっきザワン・シンって敵が出てくるイベントの話聞いたんだ、誰も攻略できない…バグみたいなイベント」
カイト「ザワン・シン?…ああ!」
カイト(オルカとバルムンクがフィアナの末裔と言われるようになったイベントだ、オルカとバルムンクの2人がザワン・シンを倒し、蒼海のオルカ、蒼天のバルムンクって通称を手に入れたんだっけ…確かバルムンクの羽もこのイベントって言ってたはず…!)
ブラックローズ「知ってるのか?…ウイルスバグなのか…?」
カイト「いや、正規のイベントのはずだけど…」
ブラックローズ「…行ってみないか…情報が少しでも欲しいしさ」
カイト「え?…うーん…」
確かに、なりふり構う余裕はないか…
カイト「わかっ…あれ?」
ブラックローズ「どうかしたか」
カイト「…リアルで物音が…ちょっと待って……あれ?……気の所為かな、ごめん、なんでもないよ」
ブラックローズ「…今から行くか?」
カイト「最高難易度のクエストだし、もう少しレベルが欲しいかな、レベル上げをして明日挑まない?」
ブラックローズ「わかった」
ブラックローズと別れ、一時間ほどレベル上げをしてからログアウトする
リアル
離島鎮守府
提督 倉持海斗
海斗「…早く終わらせないと、みんなを待たせすぎちゃってるな…」
かつての仲間がみんな意識不明になって、もうどれくらい経ったのか
…うまくやるつもりだったけど、どれだけ時間がかかってるのか
コツン
誰もいない執務室の、背後からの…足音
海斗「うわっ!?」
どたん、どたどた
大きな音が鎮守府に響いた
教導担当 キタカミ
執務室から大きな音がした、だから偶々近くに居た私が様子を見に来たけど…
キタカミ「ど、どーしたの、何があったのさ…」
海斗「キタカミ…ちょっと手を貸してくれない?」
珍しい事もあるもんだ、提督が誰かに手を出すなんて…
って冗談は置いておいて…
キタカミ「アトランタか、何しようとしてたの?」
アトランタ「……」
見れば明白だろう、アトランタの手にはナイフ、そして態々組み伏せるなんてよっぽどな状態だったわけだ
海斗「キタカミ?」
キタカミ「……はー…あーあ」
杖をつきながらゆっくり近づき、ナイフを持った手に杖をつく
アトランタ「ぐっ…」
キタカミ「
アトランタ「……
キタカミ「…はー……なんかさ、馬鹿だよね?アンタも…提督一応軍人なんだからさ、そういう心得あるのくらい想像つくだろうに…」
海斗「キタカミ、ナイフだけ取ってくれたら良いんだけど…」
キタカミ「んや、これじゃめんどくさい話が残っちゃうからさ…アトランタ、今話つけようか」
アトランタがナイフを握る手の中指だけを立てる
キタカミ「別に日本だとあんまり気にする人いないよ?それ、漫画のネタにされたりしてるしさ」
杖に体重をかけてナイフを手放させる
キタカミ「アトランタ…アトランタ級防空巡洋艦、実力は折り紙付き、ワシントンやアイオワからの評価も暴走する点があるものの良好…」
アトランタ「…
キタカミ「馴染もうとしてないのはアンタだけ、サムとかあの辺は
海斗「え、どういうこと?」
キタカミ「まー、まー話聞いてよ、私実はアンタのこと嫌いじゃないよ?アケボノと似た感じもするし…」
アトランタ「…あ?」
アトランタがドスを効かせて睨む…ものの、全く怖くはない、子猫が鳴いているようなものだ
キタカミ「脅しってのはさ……こうやるもんだよ」
カツン、と杖をつく
アトランタの身体が防御反応で大きく震える
キタカミ「別に派手な事する必要もないし、大きい声出す必要もない…痛いのを体に教えればいい、違う?」
杖をコツコツと叩く度にアトランタが小さく体を震わせる
キタカミ「アトランタ、私はさ、アンタの本質少しわかったよ、仲間思いで悪いやつじゃない」
アトランタ「…はあ?」
キタカミ「ね、仲良くしようよ」
ナイフを拾い上げ、デスクにおいてアトランタに手を伸ばす
アトランタ「…いきなり、何言って…」
キタカミ「簡単さね、私はアンタが嫌いじゃなくなった」
海斗「…ええと、もう離すけど、暴れないでね…?」
アトランタ「……アンタら、みんなよくわかんない」
そう言って出ていくアトランタを見送る
キタカミ「提督、怪我してない?」
海斗「大丈夫、それよりキタカミ、いきなりなんであんなことを…」
キタカミ「早霜とか、漣とかさ、いろんなのが教えてくれたんだよ、アイオワ達の話してることをね」
海斗「話してる事…?」
キタカミ「アトランタは結構アケボノとかに似ててさ、仲間のために突っ込んで怪我したりも多かったんだって」
海斗「……」
キタカミ「使えるなって思ってさ、引き込みたいなって」
海斗「…利用するために仲良くするのは、よくないよ」
キタカミ「かもね、でもアトランタは欲しい、空を潰せるのは凄くいい」
海斗「…キタカミ、それは…」
キタカミ「それにさ、アトランタは別に提督を殺すつもりはなかったみたいだし」
海斗「……まあね、撃てば済んでた話だからね…」
キタカミ「脅して何もかもしゃべらせたかったんだろうね…アメリカはとにかく情報が欲しいんだと思う、だから…」
海斗「…そこは僕の仕事だよ」
キタカミ「…手を出さないのはいいけど、自分1人で抱えて欲しいなんて誰も思ってないよ」
海斗「うん、わかってる…」
海斗(暴走気味のアケボノと、アメリカの人たちを利用したいキタカミ…2人が絡んでるうちは難しいだろうな…どうすれば……)
キタカミ「1人でアメリカの奴らとの蟠りをなくせるとは思わないでよ」
海斗「まあね…わかってる」