元勇者提督   作:無し

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見る目

本土 

神奈川 横浜

 

「よーし!本土に上陸!明石さん!目的地はどこ!?」

 

「えーと、このメモに」

 

「……なになに?みなとみらい跡地にて待つ?」 

 

「お使いとしか聞いてないけど…決闘なの?」

 

「流石にないと思うわよ…」

 

「あのクソ提督がやれっていうなら仕方ないわよねぇ?で?どうなの?明石」

 

「いや、決闘じゃないんですけど…」

 

「チッ」

 

「アオボノちゃんって思ったより血の気が多いのね」

 

「それより、結局なんの用なの?」

 

「そこに行って人に会えとしか聞いてません…」

 

「はぁー?やっぱりあのクソ提督、後でぶん殴ってやろうかしら」

 

「レディーはそんなことしちゃいけないのよ!それよりも、このみなとみらいってどこかしら」

 

「横浜県の西区ですよ」

 

「神奈川だから!県民に聞かれたら殺されるよ!?」

 

「それより跡地って?」

 

「あそこ元々開発都市だったんだけど、昔あった事件で色々取り壊してそのままなのよ」

 

「……どういうこと???」

 

「第二次ネットワーククライシスって知ってる?」

 

「ああ、冥王の再来(プルートアゲイン)…あれの中心地って横浜だったんでしたっけ」

 

「そう、みなとみらいは約6時間もの間、陸の孤島になった」

 

「陸の孤島?」

 

「今、私たちの持ってるケータイから、何でもかんでもネットで管理してるでしょ」

 

「そりゃそうね、ネットに繋がなきゃなんにもできないんだから」

 

「じゃ、ネットが使えなくなったら?リアルタイム組、もしくはニュースでやってた時代を知らないと想像つかないかな…その時、大混乱が起きた、信号や電化製品はもちろん、発電所までダウン、複数あったルートも渋滞や事故で潰れ、街は飲食店や民家から発生した火災により炎上する場所もあった」

 

「……たかがネットひとつで?」

 

「私たちの生活にはもう欠かせないものになってますね」

 

「でも私たちの鎮守府にはテレビすらないのよ?一応Wi-Fiは飛んでるけど…」

 

「あれも海上の電波塔を潰されたら終わり、脆いでしょ?だからみんなあんまりケータイを持たないの」

 

「それで?」

 

「ネットに頼りすぎたからみなとみらいの大部分は大きな傷を負ったわけ、大きく上がる黒煙がそれはたくさんあったそうよ、よその消防署から応援を呼ぶにも、電話だって通じやしない、もちろん電気がダメだから電車も動かない、車は事故だらけでまともに進めない、あそこは6時間のうちにボロッボロ、これが他の都市でも起こってたら深海棲艦どころじゃないわよね」

 

「横須賀鎮守府は?その時何もなかったの?」

 

「海側からホースで放水してたって聞いたけど、ほとんど何もしてないようなものでしょ?だって私たちはもう人を乗せられないんだから」

 

「……」

 

「ネットに頼りすぎたって事よね?でもなんでその時以上にネットだよりな生活になってるのかしら」

 

「それは簡単です、便利だから」

 

「呆れるわねぇ…」

 

「…ま、その文明の力がなければ、私たちはまともに連携も取れず、補給物資も欲しい時に求められないのよ」

 

「そんな話をしてる間につきましたね」

 

「旧みなとみらい、今はその広大な敷地を利用して作られた、データ管理局とレジャーの複合施設…と言ってもほんの十年ちょっとしか経ってないから…まだたまにニュースでやる度に批判されてるけどね」

 

「……都市ひとつ分を丸々?」

 

「そんなわけないでしょ、百分の一も使ってないわよ、奥にあるのは…言っちゃダメだけど掃き溜めよまだ取り壊しが終わってない古い民家とか、ホームレスの溜まり場とか、とにかく、人の目にうつしたくないものばかり」

 

「それを容赦なくメディアは報道してる、と」

 

「そもそも立ち退かない人もいるんでしょうね…」

 

「ま、いいんじゃない?さて、多分この施設でいいと思うけど…待って、クソ提督から連絡が来たわ、何?」

 

『ごめん、メールが来たんだ、ダックドナルドで待ってるって』

 

「……ファーストフードねぇ…私お昼は豪華にしたいんだけど」

 

『それは管轄外かな…頑張って』

 

「…暁?」

 

「何よ」

 

「ハンバーガーとフレンチ、どっちがいい?」

 

「ハンバーガーに決まってるじゃない」

 

「…お子様…」

 

「何言ってんのよ!フレンチでキッズプレートでも出すつもりでしょう!?」

 

「私も日頃の行い、か…旗艦の希望でお昼はファストフードに決定ね…」

 

「私お寿司食べたいんだけど」

 

「私は……ファストフードでいいや、楽だし…」

 

「島風さん、栄養が偏りますよ…」

 

「天龍さんは何か好きなものはありますか?」

 

「……その、お恥ずかしながらお肉が…」

 

「うん!普通!天龍さん、何も恥ずかしくないわ!っていうか明石こそ何かないの?」

 

「……私外食初めてなので……」

 

「アンタこの前外出てきたんじゃなかったの?」

 

「…お弁当持参したので…」

 

「ピクニックか!」

 

「…まあ、何を言っても目的地は変わらないんだけどね」

 

「無駄なやり取りしてたの?今…」

 

 

 

「ガラッガラねぇ……」

 

「さっき言ったでしょ?取り上げられる度に批判されるって…ま、想像してた以上に客が居ないのは別の何かを感じるわね?店員も仕込みかしら」

 

「さあ?」

 

「……あの人でしょうか」

 

奥の席に一人で座った女性、いけすかないお高く止まった感じ

そして此方を見てニコリ

 

「ビンゴね、行くわよ」

 

 

「初めまして、と言っておくわ」

 

「アンタ誰よ」

 

「名乗る程のものじゃないの、それよりも早く要件を済ませましょう?」

 

「あの…要件ってなんでしょうか、私たちはあなたに会うように、としか…」

 

「あなたが明石かしら、フフフ…データ兵器だったかしら?とんでもないものを作ろうとしてるみたいね」

 

「……なんでそれを」

 

「そんな事はどうでもいい、話を進めるわよ、私たちは貴方に、データ兵器をプレゼントする、試験段階だけどね、これを使ってテストをして、データが欲しい…私たちの協力者になって欲しいのよ」

 

「お断りよ!軍でもない貴方たちがなんでそんな事してるのかしら?」

 

「暁って意外と頭回るのね、私もお断りだわ、こっちは一応軍艦…今は軍人か、なんにせよ、戦争に利用できるものを一般人が作ってるのがいただけないわ」

 

「お利口ね…でも、私がもっと賢かったら、貴方の手はもう落ちてるんじゃない?」

 

「………どこまで知ってる…!」

 

「腕輪、その力があれば戦争の為にデータ兵器を作るなんて必要は全くない…それに…腕輪に近いもの…いや、データドレインそのものの解析を断った事もある…私はその力自体には興味がない」

 

「…じゃあなんで?」

 

「家族を守る為かしら」

 

薬指の腕輪が光ったように見える

スマホから小さな子供の写真を見せられる

 

「私も親、子供を守る為に尽力してはおかしいかしら?」

 

「納得はいくわ、だけど個人の力の範疇をゆうに超えている」

 

「そうでもないわ」

 

「………貴方が、もしかして…ヘルバ?」

 

「明石、知ってるの?」

 

「正解、もっと早く気づいてほしかった」

 

「え、えー!?ホントですか!?」

 

何?このテンションの上がりよう

 

「……なんか変なスイッチ入りましたね」

 

「…大人しく見守りましょうか」

 

「え、その子が例の?!きゃーかわいい!って言うか名前!教えてくださいよ!約束したじゃないですか!」

 

「やっぱりこんな感じか…先に話を終わらせてからにしよう」

 

「で?何を話してくれるの?」

 

「私は今、月の樹というグループを主導している」

 

「…名前くらいは知ってるわ、ホワイトハッカーの集団ってね」

 

「正確には警察で言うサイバー犯罪対策課だ、組織とは便利なものでな、金を持ってくるやつ、政府と繋がりを持つやつ、メディア関係者、色んな繋がりを作れる、それこそ大きな拠点を堂々と持てるほどに」

 

「………まさか」

 

「そう、このデータセンターは、私達の基地だ、どんなに安全に設計されていても、それを批判し続ける、表向きの致命的な欠陥なんてもちろんないが、反論はしない、さらにレジャーといっても近くに民家がないから態々車で来る必要もあるだろう?来てみてもあるのはゲームセンターくらい、規模は大きいが人は来ない、交通の弁も電車や高速があるにはあるが……ここに来るために、と言われると嫌がるだろう」

 

「……おっそろしい相手と出逢ってるって今知ったわ」

 

「私はもう気づいてた」

 

「さらにここは今みたいに、オフレコな話をするにはもってこいだ」

 

「……それをアンタらが拾って情報収集にもバッチリってわけね」

 

「わざわざここに来る物好きな目的は、聞かれたくない話をする、と言うのがほとんどだからな、それで、ここまでこちらは姿を見せた、協力してもらえるか?」

 

「玄関前まで来たのに土間にいる奴にそんなこと言われるなんてね」

 

「…提督に指示を仰いでも?」

 

「お前たちの判断に任せるそうだ」

 

「…優柔不断」

 

「司令官は正しいわ、私たちが使う武装なら、私たちの命をかける必要がある、私たちに判断を任せるのは当然よ」

 

「暁が鋭い意見を…じゃあ賛成」

 

「ちなみにその実験データなどありましたら、それを見てからでもいいですか?」

 

「残念ながら、出せない、今日OKをもらうつもりはなかった、次の補給船に入れておく、試験的に使ってみるといい」

 

「……至れり尽くせり、かしら?」

 

「仕事なら億は超えるさ」

 

「…で?私たちに求められるのは?」

 

「戦果のみ」

 

「ありがたい話ですね」

 

「だけど、それが戦争に使われない保証はないわ、目というのはどこにでもある、もちろん耳も」

 

「……わかってる、考えておくわ」

 

「じゃあこれで話は終わりよ、せっかく来たのだから、もてなすわ」

 

「…流石にそこまでしてもらったら悪いわよ」

 

「アオボノちゃん、よだれよだれ」

 

「そういえばランチはまだみたいね、いいフレンチを知ってるけれど、ここで済ませていく?」

 

「行きます!フレンチ!」

 

「……フレンチって何ですか?」

 

「天龍さん、フレンチっていうのはフランス料理とかそういう感じです」

 

「…ナイフフォークはめんどくさいよぉ…」

 

「島風!そんなこと言ってたらレディーの道は遠いわよ」

 

「………アオボノちゃんは多分フランス料理が好きなんじゃなくて、オシャレな自分に酔いたい感じなのかなぁ」

 

 

 

 

 

工作艦 明石

 

「うっわぁ……」

 

「…なんか選択肢間違えた気がするわ」

 

「イタリアンだったらサイゼリヤみたいなオチを期待してたのに、普通に高そうなところでカエルを食べるなんてね」

 

「アオボノ固まってるし」

 

「フランスではポピュラーだと言いますが、日本ではまだ馴染みありませんからね」

 

…察してはいたけど、これ、弄ばれてるなぁ

 

「っ………」

 

「アオボノちゃん、カエル食べたばかりなのはわかるけど、これも美味しいよ?」

 

「羊の脳みそなんて…」

 

「美味しい!美味しいわよ!島風!」

 

「…あ、ホントだ」

 

「はしゃいでなければレディーなのに…」

 

「これはラビオリですか…」

 

「パスタ生地で肉を包んである、私のオススメだ」

 

「……何が入ってるか分からないのが恐怖…?この私が…怯えている…!?」

 

だいぶんキてるなぁ…

 

「ん、おいし!」

 

「……これも美味し…い…」

 

「ちゃんと食べるのが偉いわね、アオボノ…これは何が入ってるんですか?」

 

「これはウサギのラグー、煮込みだな」

 

「………ごめん漣…」

 

「何?どうしたの?これ漣ちゃんじゃないよ?」

 

「…いや…こんなに美味しいと……漣のうさぎ食べちゃうわ……」

 

「アオボノちゃんがクリティカル受けて胃袋轟沈しました!」

 

「気に入ったようで何よりだ、ゆっくり食べてくれ、私は迎えがあるので失礼する、ここも月の樹の勢力下だ、何も気にする事はない」

 

「月の樹入ろうかしら」

 

「明石なら歓迎するぞ?」

 

「……いや、遠慮しておきます」

 

「だと思った、それではな」

 

 

 

 

「はー、食べた食べた」

 

「島風、下品よ」

 

「アオボノちゃん最後吹っ切れてたわね」

 

「…美味しいのが悪いのよ、でも魚は普通で良かったわ…」

 

「天龍さんずっと静かでしたけど、大丈夫でしたか?」

 

「……こう、生命の神秘に触れて、感動に打ち震えてました…」

 

「さて、仕事も終わったし、次の船は……3時間後!遊ぶぞぉ!」

 

「仕事っていうかお食事しただけですけどね」

 

「お土産買わなきゃ…」

 

「よし、行きたいところ!」

 

「はい、ネカフェ」

 

「却下!島風アンタ引きこもる気でしょ!?それならせめて港にしなさい!次の船に乗れないわよ!?」

 

「エステ!クーポンもらっちゃった!」

 

「あー、行ったことないけど私も行きたいわね」

 

「…もう別行動にしてもいいかしら」

 

「じゃあツーマンセルね、駆逐艦+誰かになるように別れましょう」

 

「高雄、私もエステに行きたいからアンタと組むわ」

 

「よし、ここは決まりね」

 

「島風さん、私とゲーム見に行きましょうか」

 

「……よし、それなら行く」

 

「じゃあ私と天龍さんね!」

 

「暁さん、よろしくお願いします…」

 

「じゃあ時間には船に戻ること、えーと、連絡用の携帯はひとつしかないし……」

 

「スマホ契約すると2.3時間はかかりますからね、そんな余裕はありません」

 

「私は持ってるけど…とりあえず、私と暁で連絡取れるようにしとけば何とかなるんじゃない?」

 

「アオボノちゃんなら何とかなりそうね」

 

「じゃあ私達は何かあったらその番号に連絡できるようにしておきます」

 

「……明石、都会に公衆電話ってもうないのよ」

 

「嘘ぉ!?」

 

「随分昔に撤去ラッシュがあったんだけど」

 

 

 

 

 

駆逐艦 暁

 

「よろしくね、天龍さん」

 

「よろしくお願いします、どこに行きましょうか」

 

「せっかくだしお洋服が見たいわ!あそこにしましょう!」

 

 

 

「…やっぱり天龍さんは白のワンピースが似合うわね」

 

「お洋服って、私のですか…」

 

「だって、あんなミニミニじゃあダメよ!島風ちゃんみたいに服を変えてくるならまだしも、制服なんて…」

 

「確かに浮いていた自覚はありますが…島風さんのようなジャージというのも…」

 

「……だから!いい服着ましょ?」

 

「わかりました…」

 

「このハットも被ってみて!……うん!最高のレディって感じね!」

 

「ありがとうございます、でもパンプスというのは歩きにくいですね……」

 

「じゃあ動きやすいのも見繕ってあげるわ!そのあと私のを見繕ってね!」

 

「…ふふっわかりました」

 

 

「ふー、だいぶん買っちゃったわね」

 

「流石に持ちきれませんでしたね…」

 

「大丈夫、ちゃんと船着場に届けてもらったから、次の船で送れるわ!それより、前から気になってたんだけど、天龍さんって眼帯をしてるものなんでしょう?」

 

「……とは聞いていますね、私は建造された時からさっきの制服でしたが、眼帯はありませんでした」

 

「眼帯がないってみんな気にして無いけど、何か違うものなのかしら」

 

「さあ……私にはわかりませんね…」

 

あれ?

 

「せっかくだし買ってみる!?」

 

「いえ、戦闘に悪影響をきたしそうなので…やめておきます」

 

「確かにそれもそうね、片目だと平面に見えて距離を測るのが大変っていうし」

 

「あ、それよりあそこでお茶でもどうでしょうか」

 

「いいわね!そうしましょ!」

 

うーん、天龍さんって本当はどんな人なのかしら

食事の時も物怖じせず食べてたし、もっと明るいタイプだと思うんだけど…

 

「暁さん、これ美味しいですよ」

 

「ホントだわ!天龍さんは見る目があるわね!」

 

まあもう少し様子見かしら

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