元勇者提督 作:無し
佐世保鎮守府
青葉
青葉「すみませんこんな早朝に」
渡会「いや、構わない、それよりも要件は?」
青葉「はい…その、答え辛かったら答えなくていいのですが…リコリス、と言うNPCのイベントについて教えてもらえませんか?」
渡会「…リコリス、だと…?」
渡会さんの表情が変わる
渡会「……詳しく聞かせてくれ」
青葉「私は、今過去のThe・Worldで調査をしています、そして、その時代で…その、渡会さんの、アルビレオと出逢いました」
渡会「…何?」
青葉「そのThe・Worldではまだモンスター襲撃イベントが残ってて…その」
渡会「…タウン襲撃イベントか、入手したアイテムとか、聞いたか」
青葉「…ええ、と…変な拡張子の…」
渡会「.cyl」
青葉「そう、それです!たしか…ray.cyl…」
渡会「……そのイベントは…」
渡会さんが目を伏せる
それがどう言う感情なのかは読み取り切れないが…
渡会「救いの…いや、そのイベントには触れないでやってくれ、過去の俺が…」
…悲しげで、悔しそうで
つまり、とても…形容できない感情がある
満足いく結果ではなかっただろう、だけど…とても綺麗な、儚い想い出、という事だ…
青葉「…わかりました、それでは」
部屋を出ようとした私に声をかけられる
渡会「…もし、可能なら…」
躊躇う様な素振りを見せながら
渡会「…写真が、一枚欲しい」
青葉「……お任せください」
歪な感情を…必死に、前に向けている…
何処か、不確かで、カタチを作ろうと必死な…
青葉(…ザワン・シンのイベントは確か9時から挑戦するはず、まだ1時間ある…十分取材に間に合う)
The・World R:1
Ωサーバー 病める 囚われの 堕天使
重槍士 青葉
青葉「…あれ?な、何この感じ…」
エリアに入った瞬間から、なんだか身体がおかしい…?
いや、違う…PCボディに何か変化が…
いつの間にか容姿を隠す様なローブが装備されて…こんなもの装備した覚えないのに…
青葉(それより、アルビレオさんは来るのかな…きっと見に来ると思ったけど…)
青葉「あ、来…た…?」
三つの転送エフェクトとともに3体のキャラクターが転送されてくる
赤髪の、学生服の少年
そして…カイトとブラックローズ
青葉「…!」
カイト「あれ、先客が居るみたいだね…どうする?ブラックローズ、トキオ」
ブラックローズ「関係ねえだろ、さっさとザワン・シン倒しに行こうぜ」
トキオ「あー…うん、そうだね」
青葉(確かあの学生服の人ってマク・アヌで見かけた…いや、それよりなんか、元気ない様な…やっぱりログアウトできなくて困ってるんだ…それに、このコピー達に連れ回されてるから…)
この時代にカイトとブラックローズが存在しないことは調べてある
つまり、コピー達が時代を超えて来たんだ、それなら…
この2人はアカシャ盤の正常な運行を阻む、敵だ
カイト「…槍を、向けられてる…」
ブラックローズ「…やる気か、面白え…!」
カイト「トキオ!君は下がってて!」
青葉「…あなた達をデリートします…アカシャ盤の正常な運行を守る為に」
カイト(あれ、声に聴き覚えがあるような…)
トキオ「なんだって…!?コイツ、シックザールだ…!」
トキオと呼ばれた学生服のキャラが短剣を取り出す
青葉「……シックザールを認識しているのなら」
わかっていて、邪魔をするなら…
青葉「一度、フリーズさせてから対処します…!!」
踏み込み、槍を振るう
カイト「っ!!」
カイトが私の槍を阻み、此方を睨む
青葉「"フリーズ"」
カイト「なっ…!」
カイトの手から離れた双剣が石化する
カイト(この能力、フリューゲルさんと同じ…!)
青葉「ダブルスィーブ!!」
カイト「ケイオスの呪符!!メアンゾット!!」
青葉「っ!?」
スキルを発動したせいで動きが固定されたところを闇の範囲魔法にやられる
青葉(前やった時より、戦術の幅が広い…!)
ブラックローズ「サイクロン!!」
槍の竿で大剣を受け、ゼロ距離でスキルを発動する
青葉「リパルケイジ!」
ブラックローズ「がッ…!?な、こ…れ…!痛…!?」
カイト「ブラックローズ!」
ブラックローズ「カイト!近づくな!こいつやべえ…!ダメージが、痛え…!」
青葉(…ダメージが痛い?火力の話…?いや…そんなことどうでもいい…)
踏み込み、槍の竿の先端部を持ち、横薙ぎに一閃
バックステップでかわさせる
青葉(もらった…!)
カイト(今だ!)
回転の勢いを全て槍に乗せ、手の中で槍を滑らせ、最大射程で…
カイト「くらえ!」
青葉「っ!!」
いつの間にか懐に潜り込んだカイトの斬撃を籠手で受け止める
青葉(対応された!…日向さんに言われた通りだ、この動き、やっぱり読まれやすいんだ…!)
カイト(防がれた…!このままじゃ駄目なのか…!)
トキオ「うおおおおっ!!」
背後から迫るトキオに呪符を差し向ける
青葉「地獄蟲の召喚符!!」
ブラックローズ「ま…間に合え…!ライディバイダー!!」
雷を纏った斬撃が召喚された蟲の脚を切り裂き、魔法を阻止する
青葉「…!それなら直接仕留めるまで…!トリプルドゥーム!」
カイト「やらせない!」
突きを背後からの斬撃で阻害される
青葉「くっ…!…なんで、その姿で…!」
カイト(ダメージになってない、レベル差が大きすぎる…!なら3人でやるしか無い!)
カイト「トキオ!ブラックローズ!畳みかけるよ!」
槍を強く、握りしめる
まるで、感覚があるかのように手に熱が籠る、悔しい気持ちが、込み上げる…
青葉(司令官の姿で…!)
槍を大きく振るい、間合いを取り…
青葉「絶対に、許さない…!」
カイト「はぁぁぁッ!!」
槍と双剣がぶつかり合う
カイト(レベル差が大きいなら…これならどうだ!)
カイト「風・妖・刃の巻物!オラジュゾット!!」
青葉「っ!?」
隆起した木片に貫かれ、吹き飛ばされる
ブラックローズ「デスブリング!!」
トキオ「っらぁぁぁぁァッ!!」
吹き飛ばされた先で2撃
私のHPが完全に削り切られる
青葉「…な…んで……負け…?」
いや、大丈夫だ、私は…
再ログインするだけだ、もう一度…すぐに追いかければ追いつけるはずだ…!!
双剣士 カイト
倒したシックザールのPCが消滅したことを確認し、息をつく
カイト(…聴き覚えがある声だと思ったけど…誰だったんだろう…襲われたから倒したけど…本当なら協力したかったな…)
ブラックローズ「…っ…まず…頭痛くなってきやがった…」
カイト「大丈夫?摩耶…」
ブラックローズ「……アイツに斬られたとこが疼きやがる…悪ぃ、カイト、落ちる…」
ブラックローズが転送されていく
トキオ「…カイト、どうする…?」
カイト「…僕たちも出直そうか…あれ?」
さっきまでシックザールのPCが居た場所に…剣が…
カイト「…トキオ、これ」
トキオ「……剣…?なんでこんなところに…」
トキオが剣を引き抜く
トキオ「……カイト、これ貰ってもいい?」
カイト「いいけど…」
剣をターゲットする
"ソード・オブ・"
未完成の剣といったところか
トキオの物語を語る剣なのかもしれない…
カイト「僕たちも戻ろうか、トキオ」
青葉「あ、あれ!?誰も居ない!ローブもなんだか外れて…え?ど、どうなって………相変わらず他のメンバーにも連絡つかないし…このまま待とう…」
所変わって
リアル
Link基地
神鷹
神鷹「ただいま…あ…居ない、んだ…」
みんな、今は戦いに行ってる…
どうしよう、
ジェーナス「あれ、神鷹の方が早かった?」
神鷹「…ジェーナス…さん」
ジェーナス「ジャパンのスクールって退屈ね!日本語の書き取りはめんどくさいし…あー、お腹減った、tea timeにしないと、お菓子とかあるかな?」
神鷹「…あれ…いい、匂い…」
紅茶の、匂い…
ジェーナス「…アーク?居るの?」
ジェーナスさんに連れられて奥へと進む
神鷹「…あれ?」
ジェーナス「誰も居ないのに、ティーセットが用意されてる…?この香り、アールグレイ…?」
神鷹「…違う、誰か、居ます」
ジェーナス「…どこに…」
クローン「はい、ここに居ますよ」
ジェーナス「わぁぁっ!?」
神鷹「…綾波、さん?」
片目をアイパッチで、隠してるけど…
綾波さん…なんで?…帰ってきた?
クローン「私は綾波ではありません、というよりサブのボディです、現在運用中の本体が破壊されることがあれば私に意識が乗り移る事になっています」
ジェーナス「…た、大概よね、それ…」
クローン「はい、クローン技術は禁止されており、私の存在は禁忌のものとも言えるでしょう、存在そのものが地獄送りにされて仕方ないという私の本懐を的確に表現した存在ともいえます」
神鷹「…
クローン「綾波は人を傷つけすぎました、後悔するのすら遅いほどに、故に地獄に行き、永遠の時をかけて償うのです」
ジェーナス「…そんなこと考えてるの…?」
クローン「はい、それよりも、紅茶が冷めてしまいますよ」
ジェーナス「…いただきます」
神鷹「いた、だきます」
…渋い
神鷹「Z…
ジェーナス「ちょっと濃すぎね、砂糖よりミルクの方がいいと思うよ」
砂糖とミルクを注ぎ込む手を掴んで止められる
クローン「ミルクはかまいません、砂糖は5グラムまでにするように」
神鷹「えっ」
ジェーナス「こだわりがあるの?」
クローン「虫歯になります、甘いものは摂りすぎてはいけません」
ジェーナス(健康管理目的に残したのね…)
神鷹「…でも、これ…」
クローン「砂糖を紅茶に入れると渋み成分を強く感じやすくなります、砂糖は少量でミルクを足せば美味しく飲めますよ」
神鷹「…
いわれたままに、紅茶を混ぜ、口に流し込む
少し、物足りない…
クローン「それと、お茶菓子も用意してあります…此方も甘い品ですので」
ジェーナス「…スコーンじゃない…チーズケーキ?」
ケーキと紅茶を口に含む
あまい味がひろがる
神鷹「……
クローン「それは良かった」
ジェーナス「…あなたは食べないの?」
クローン「ええ、私は後期型ですので、電力でエネルギーを賄うシステムを試験投入していまして」
ジェーナス(それってただのロボットじゃ…)
クローン「生体発電システムも組み込んでいるので半永久機関と言うわけです」
ジェーナス「え?それほんと?」
クローン「嘘です、食事もしますし人間の作りと何ら変わりませんよ」
ジェーナス「……」
クローン「では、夕食の用意をしますので」
神鷹「……クローンさん、名前、無いのかな」
ジェーナス「ないんじゃない?」
神鷹「…考えたい」
ジェーナス「そんなペットみたいな…あー…でも、あった方が呼びやすくて良いのかな…」
神鷹「絶対に、良い…」
綾波
綾波「予定より早く一帯の殲滅が終わって良かった、まさか今日中に戻れるなんて…あれ?」
「しー…」
クローンに縋り付くように眠る神鷹さんとジェーナスさん…
綾波「あら、それは失礼を…と言うか、髪染めたんですか?」
真っ白に髪まで染めて、色々手が早いというか…
「はい、新しいお名前もいただきました」
綾波「…名前、ですか…そこまで貰ったらあなたをクローン扱いはできませんね、名前は?」
狭霧「綾波型駆逐艦、6番艦、狭霧」
綾波「Happy Birthday 狭霧、しかしなぜ狭霧なんですか」
狭霧「この子達にとっては私は貴方の妹のようなもの、でも敷波は他にいる…朝霧とか夕霧とかって名乗っても良かったんですけど、私も朧さんのお姉ちゃんになりたくて」
綾波「…やはり貴方はクローンですね」
狭霧「一緒になりましょう?お姉ちゃん」
綾波「お姉ちゃんに、なのかそれとも…まあいいでしょう、狭霧、貴方を歓迎します」
狭霧「はい、ありがとうございます、姉さん」
綾波(姉さん呼びされるのは初めてだな…しかも…いや、顔も微妙に違う…)
狭霧「クローンなのに随分違うと思いましたか?当然です、私は急いで作成されましたから、多少貴方とは違いが出てもおかしく無い」
綾波「……いいえ、貴方は貴方、私は私…そしてもう言いました、私は"狭霧"を歓迎している、"クローン"ではなくね」
狭霧「ありがとう、姉さん」
綾波「姉さんはやめてください、私は貴方の姉…とは言い難いので」
狭霧「では、綾波さん」
綾波「ええ、それでいきましょう、お互い上手くやりましょうね?」
狭霧「勿論です、雑務は任せてください」
綾波(こうなるとは思わなかったけど、これで少し楽になるな…)