元勇者提督   作:無し

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勉強

大湊警備府

綾波

 

綾波「やー、今日はどうも」

 

徳岡「あ、ああ…よろしく…」

 

ひきつった笑顔の徳岡さんに迎えられる

まあ当然だろうな、勝手に演習をしようと言い出して、その相手が私たちとなると嫌な顔の一つもするだろう

 

綾波「まあ、今の私はあなた達に非敵対的です、心配ありませんよ」

 

徳岡「…だと良いんだが」

 

綾波「さ、はじめましょう」

 

大湊警備府は駆逐艦のみ、これでアメリカからの最短ルートでの輸送作戦を高い割合で成功させてきたのだ、実力は折り紙付き…

となるとこちらも精鋭で相手をする事になる

 

綾波「こちらの編成です」

 

徳岡「…戦艦2に、駆逐3の重巡1か」

 

綾波「完全に演習用の編成ですよ」

 

徳岡「…実戦は?」

 

綾波「実戦だと戦艦1巡洋艦2、駆逐4、空母1の8人想定ですが…まあ?今回は演習ですし、良い刺激になると思いまして」

 

徳岡「8人?」

 

驚くのも無理はない、艦隊のメンバーは基本6人、それが限界

円滑なコミュニケーションと衝突防止などの観点から基本は6人までとするのが一般的

精鋭なら絞ることもある…が、私は別だ

私の部隊は全員が精鋭であり、何よりも生存率を重視する

そうなると8人なら何らかの事情で半数が抜けても4人、不足の事態でもよりカバーが多く、できるだけ撤退し易い状況を作れるだろう

 

8人である事はとても有意義だ

殲滅力も高いし索敵での見落としも減る

 

それは人数が増えれば当然のことだが、8人なのがちょうど良いように私が艦隊の行動メニューを作ってきた

 

綾波「さて、そちらは……白露、時雨、夕立、睦月、菊月、長月…おや、エースはお休みですか」

 

徳岡「五月雨か?」

 

綾波「いいえ、弥生さんですよ」

 

徳岡「ああ…」

 

弥生さんは私の腕を落としたこともあれば、揺らめく煙のような接近戦を仕掛けてくる事もある

正直言って戦い辛い相手だろう…が、ガングートさんと戦わせれば発見につながる…そう思っていた

 

徳岡「弥生は…ずいぶん前から引きこもってる、どうしてもやりたいことがあるんだと」

 

綾波「あなたは上官でしょう」

 

徳岡「…他の奴らも納得してるし、艦隊に支障はでていない」

 

個を優先した、それ自体を否定するつもりはないが…

しかし…

 

綾波「…余所者が口出しすることではありませんが…気にかけてあげてくださいね、どうしても気になるもので」

 

徳岡「そいつは、どうも」

 

綾波(…何か、悪いことでも起こっているような感触だ…)

 

そういう空気、そういう気配がする

 

綾波「……とりあえず、始めますか」

 

演習が始まる

旗艦はリシュリューさん、最後尾…

そして間にレーベさん、マックスさん、タシュケントさん、ポーラさん

そして先頭に立つのはガングートさん

 

徳岡「戦艦のうち片方だけが先頭か?」

 

綾波「ええ、彼女はそういう人ですから」

 

戦艦の射程を活かした長距離攻撃

これをガングートさんは嫌う、前に居る駆逐艦達が直撃を喰らうのを後ろから何度も見てきたそうだ

 

ガングートさんは今まで何も思わなかったが、考え方を改めて以来「前に出たい」という申し出をしてきた

勿論、私はそれを受け入れた、なぜならそれは予測済みの事で、そのように訓練過程も組んであるからだ

 

徳岡「…戦艦2人、しかも片方が前衛に出てくるとなると…弱ったな」

 

綾波「私もてっきり五月雨さんか弥生さんが出てくるとばかり思っていましたから…負けるつもりだったんですけど」

 

と言っても2人とも艦隊としての運用ができないのが難点だが

五月雨さんの場合は艦隊が五月雨さんの支援、つまり安全な狙撃の護衛などをしなくてはならない為、艦隊ではなく五月雨さんを守る隊になる

弥生さんは前の世界のままなら…艦隊行動は苦手、すぐにフラフラと離れて個人で殲滅するだろう

 

2人とも実力者故許される事だが…

 

綾波「会敵した」

 

長距離での攻撃は戦艦もしくは雷撃のみ

しかし夕立さんと白露さんはインファイト型、そして主導権を握ろうとしているのもこの2人…

私に恥を欠かせたいがために突出した動きをしている…故に…

 

徳岡「直撃しやがった…!」

 

ガングートさんとリシュリューさんの砲撃の的になる

 

リシュリューさんは長距離砲撃において素晴らしいスコアを残した、この結果も当然だろう

 

雷撃が届く前にインファイトが得意な2人が落ちた

そうなると次は?

 

綾波「さて、見ものですよ」

 

徳岡「突出した?」

 

ガングートさんが最大速に上げて前に出る

駆逐艦や巡洋艦を置いて

 

綾波「彼女は自分の命を安売りする癖がありまして、それを矯正したんですが……その上で、こんなことができる人は…強いですよ?」

 

戦艦故に舵を切るのが遅い、速力が低い、囲まれて狙い撃ちにされる

 

だからどうした、彼女に駆逐艦の攻撃なんて効くわけがない

弥生さんと五月雨さんのいない編成なら、間違いなく負けるわけがない…

 

徳岡(睦月のやつ、仕留めに行ったな…!)

 

睦月さんが魚雷発射管を構え、ガングートさんの脇を取りに行こうとする

至近距離で魚雷全てをぶつければいくら戦艦でもひとたまりもない…だが…

 

綾波「もう少し、あと1メートル離れないと危ないな…」

 

至近距離に迫った睦月さんにガングートさんが刀を向ける

 

徳岡「か、刀?」

 

綾波「良いでしょう?秘密兵器(リーサルウェポン)

 

あの後、私がまず最初に教えたのは刀の扱いだった

手元に振り回せる武器があればそれで良い、ライフルでもバットでも何でもよかった

 

ガングートさんの反転は体重移動をしっかり教えれば簡単にクリアしたし、あとは望む武器を与えるだけ

それが刀だったというだけ

 

刀を差し向けられた睦月さんは固まる

まあ、まさか刀を持っているなんて思わなくて当然だ、長身のガングートさんは刀の射程もそこそこ長い

睦月さんは被弾を避けるためとはいえ接近しすぎた

 

綾波「…チェックメイトですね?」

 

徳岡「…ああ」

 

睦月さんの判断は悪くなかった、むしろ褒められるべきだ

私がタシュケントさんに指示した事と同じ、接近して戦艦の有効射程を潜り抜け、駆逐艦が戦艦を獲る

 

それをやろうとしたんだ、後の巡洋艦やら駆逐艦やらを相手にする前に前衛を倒そうとした、悪くはないのだ

 

綾波「しかし、詰めが甘い」

 

徳岡「……タバコが切れた、買いに行ってきてもいいか」

 

綾波「どうぞ」

 

 

 

 

コンビニ

 

徳岡「あ?」

 

佐藤「どうも」

 

 

 

 

大湊警備府

 

綾波「お疲れ様でした、みなさん」

 

ガングート「どうだ、中々に堂々とした立ち振る舞いだっただろ?」

 

タシュケント「うん、綺麗に構えられてたよ、実際振ったらどうなのかは知らないけど」

 

リシュリュー「昨日はイアイをやろうとして指を切ってたものね」

 

綾波「あのー」

 

リシュリュー「あ、ごめんなさい、どうだった?」

 

綾波「30点ですね」

 

ガングート「低いな…」

 

綾波「40点減点の原因はリシュリューさんですけどね、レーダーは置いてくるように前持って言ったのになんで装備してるんですか」

 

リシュリュー「使わなければ良いんじゃないの?」

 

綾波「そういう問題ではありませんよ、全く…事前の準備に不備があるなんて最低の仕事です、大幅減点」

 

タシュケント「後の30は?」

 

綾波「細かいことばかりですが…魚雷の使い方がなっていませんね、進路を潰すように魚雷を流せば良かった、ガングートさんが攻撃を受けてくれているのに何故後ろにいた駆逐艦がダメージを受けているのか、よく考えましょう…特に、タシュケントさんは被弾4、1番多いです、反省」

 

タシュケント「あー…ごめんなさい」

 

綾波「貴方は速さに頼って回避をする癖をなおしましょう、今回は個人作戦ではありませんから、あとレーベさん、魚雷発射管に異常がありましたね?後で報告してください」

 

レーベ「は、はい!」

 

マックス「え、ほんとに?」

 

レーベ「うん、ちょっと動きが悪いんだ…」

 

リシュリュー「よく見てるのね」

 

綾波「まあ、あとポーラさん」

 

ポーラ「んぇ?」

 

綾波「ザラさんがいなければワインを飲む癖をやめましょう」

 

ポーラ「だってぇ…こうしないとザラ姉様どこか行っちゃうんです…」

 

綾波(もはや精神疾患だな、これは)

 

目頭を強く摘む

 

ガングート「…頭を使うときの癖か?」

 

綾波「悩ませるときの癖です…ん?」

 

睦月「にゃはははー!負け負け!提督知らない?」

 

綾波「タバコを買いに行きました…というのは建前で、顔を合わせづらいんでしょう、勝手に組まれた演習とはいえ負け続き…なんでしょう?この前の呉とのやり合いといい」

 

睦月「うむ!でも…ま、仕方ないかなぁ」

 

綾波「……駆逐隊のメリットとデメリットをわかった上で…駆逐隊として運用しているなら問題ありません、しかし、今のままでは難しいでしょう」

 

睦月「あー、やっぱり、か…」

 

綾波「睦月さん、貴方は判断力があります、ガングートさんに迫ったのは良い判断でした…夕立さんは接近戦ならこの警備府ではトップクラス、白露さんは…突っ込み癖がありますね、よく生きてるものです…戦術らしい戦術を組めていない」

 

睦月「まあ、今日のは暴れたいだけだったから」

 

綾波「そうでしょうね、徳岡さんと少し話しましたが…あなた達のことを分かった上での戦術を複数持っていました、誰を軸にするか、誰は艦隊としての動きが苦手か、遊撃に出るなら誰か」

 

個人での戦力…

そして、艦隊での戦力…

 

綾波「睦月さん、取引をしてみませんか?」

 

睦月さんはニッと笑い

 

睦月「待ってました…!」

 

 

 

 

 

睦月「おー…これが、最新式の艤装…」

 

綾波「まあ、私が作ったものでしかありませんが…言うなれば、改二…まあ、正規のそれよりは出力があるでしょう…」

 

睦月「なるほどねん…で?こっちは何を?」

 

綾波「定期的な演習と一部設備の使用許可、それで全員分の艤装を用意します」

 

睦月「司令官殿の説得は任せて!」

 

綾波「では、そういうことで」

 

ガングート「お、おい…?」

 

タシュケント「こっちのメリットは…?ほとんどないに等しいじゃないか…!」

 

綾波「取引とは言いましたが、別に私はお金儲けをするつもりはありません…十分な見返りが手に入りました」

 

リシュリュー「見返り?」

 

綾波「ここの人たちを強くすれば、お互いに助け合いが成立します…私達を攻める敵は大湊警備府も敵に回す事になるでしょうから、防衛費を浮かせたと思ってください」

 

レーベ「ええと、つまり結果的に節約したってこと?」

 

綾波「そう考えてください、この程度…安い出費です、それよりも早く引き上げますよ」

 

ガングート「貴様は本当によくわからんやつだ、どこまで考えている?」

 

綾波「さあ……おや」

 

端末を確認する

 

綾波「急いで戻りましょう、グラーフさん達がしくじったようです」

 

ガングート「何?どうしたんだ」

 

綾波「不運、という他ないでしょうね、とにかく戻りましょう」

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