元勇者提督   作:無し

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ファンブル

Link基地

綾波

 

綾波「グラーフさん!」

 

グラーフ「…綾波…すまない、逃げ帰るのがやっとで…パッケージは消失してしまった…」

 

綾波「よく戻りました、朧さんとザラさんは?」

 

グラーフ「朧は1人でパッケージを破棄に向かった…さっき通信があった、ザラは狭霧に治療を受けている…私は艤装がダメージを肩代わりしてくれたが…ザラは後頭部に直撃を2発もらったのと、私を庇って被弾が増えて……その……私のせいだ」

 

狭霧が治療をしているとなると…どうなったのかわからないな

素人目には派手に見えても問題ないこともあれば逆もあり得る

 

綾波「今それを言われてもどうにもなりません、それと、顔に垂れてる血を拭いておいてください、ついでにさっさと泣き止んでください」

 

タオルを投げて奥に向かう

 

綾波「狭霧さん!ザラさんは!?」

 

狭霧「重症というほどではありません…衝撃で気絶しているようです」

 

横たわったザラさんの顔一面に血の痕

額の上部に裂けたような痕…

 

綾波「失血は」

 

狭霧「止めてます、それと頭部の傷はバリアの電撃によるものだと思われます、艤装のダメージや傷などから20発は受けてます」

 

綾波「………」

 

何よりも、悪いのは私の作ったカートリッジが命を危険に晒したことか

 

狭霧「カートリッジ挿入口とカートリッジ自体にも被弾の痕があります、綾波さん、カートリッジのせいではありません」

 

狭霧が手当てをしながら言う

 

綾波「関係ないんですよ、そんなこと…耐久性が足りてなかったということでしょう、戦場で使うんです、多少のダメージに耐えられなくてどうするというのか」

 

狭霧「……私と貴方が別の存在だと貴方が言うなら…私は無責任な事を言いましょう、生きていたのだから良かったではないか、と、貴方は悪くないではないか、と」

 

綾波「ふざけた事を言わないでください、生きていたから良かった?貴方ならわかっているはずです、そんな言葉を言えないことくらい」

 

狭霧「それよりも、朧さんの事は」

 

綾波「…1人でパッケージを処理しに行ったそうです」

 

狭霧「助けに行かなくていいんですか」

 

綾波「ガングートさん達を送りました、しかし…」

 

狭霧「…パッケージはロスト、と…」

 

綾波「ええ…ザラさんは任せましたよ、グラーフさんの治療と聞き取りに行きます…そうだ、アークロイヤルさんに部屋から出ないように指示を」

 

狭霧「ビスマルクさん達もリシュリューさんに迎えに行ってもらいましょう」

 

綾波「わかっています…!」

 

 

 

 

グラーフ「…どうだった」

 

綾波「特に大怪我ではありません、それより…交戦したのはやはりアメリカの?」

 

グラーフ「…おそらくな、全員仮面をつけていた」

 

綾波「露出した肌は?」

 

グラーフ「指すら手袋で隠して露出はゼロだった、だが艤装のペイントがアメリカの艦娘と特徴が一致していた」

 

綾波(深海棲艦を取り込んでる可能性が高いな…仕方ない、これは仕方ない事だ…)

 

グラーフ「…綾波…私のせいだ、私が操作ミスをしたんだ…私のせいで全部崩れた…ついこの間艦隊としての行動を叩き込まれたところなのに…」

 

綾波「気にしないでください致命的失敗(ファンブル)は誰にだって起こりうる、あなたは不幸な失敗をした、1度2度の失敗を機に病むな」

 

選択ミスや操作ミス、どんな些細なミスもは必ず起きる、仕方ない事だ

私がこの前グラーフさんが叱責したのは防げるミスを防ぐ為、どんな人でも、この私ですらやらかしはある

 

綾波「後悔は不要です、深く反省し、次に活かしなさい」

 

グラーフさんの顔の血の痕を拭い、傷口を消毒する

 

綾波「……それに、あなた達の失敗は私の失敗です、私が招いた失敗です」

 

狭霧「綾波さん!朧さんが負傷しているそうです!」

 

綾波「…わかりました、狭霧さん、グラーフさんの手当てもできますか?消毒までは済ませてあります」

 

狭霧「お任せ下さい」

 

手持ちの装備は…ハンドガンと簡易的な脚部艤装、開発中のカートリッジ類

 

綾波「位置は」

 

狭霧「津軽海峡の東側、太平洋との合流地点です」

 

綾波(陸奥湾を縦断して陸路経由でうまく行けば20分で狙撃地点に行ける…ライフルだけ取れば…よし)

 

綾波「狭霧さん!任せましたよ!」

 

狭霧「いってらっしゃいませ」

 

 

 

 

 

 

 

綾波「無線!応答しなさい!」

 

ガングート『こちらガングート、交戦中だ!』

 

綾波「座標をアップロードしてください!」

 

ガングート『送信した!』

 

[41.6313309, 141.4561827]

 

デバイスに打ち込み確認し、表示された方角を確認する

 

綾波「…目視しました…朧さんは」

 

ガングート『ポーラ達に連れて戻らせた!私がしんがりだ!』

 

綾波「なら撤退を開始しなさい」

 

ライフルを向けて引き金を引く

仮面の敵が血を噴き出して倒れる

 

綾波「背を向けてさっさと帰ってください、あなたに傷一つ負わせはしません」

 

仮面の敵を順に撃ち抜こうとするも、こちらに艤装の装甲部を向けられ、弾丸が通らない

これでは狙撃の意味がない

 

綾波(…久しく、こんな気持ちになりましたね…しかし…復讐されるばかりの私が復讐する側に回るとは…)

 

仮面の敵の艤装は戦艦や巡洋艦クラス

明らかに両手の指では足りないほどの数…

来た方向やパッケージの受け渡し地点などから推察するに、敵は東から来ている…そしてこれだけの艦娘達を大量に動かせるのは…

 

綾波(いや、全員殺さなければいい)

 

カートリッジを起動し、ライフルの弾丸を強化する

 

綾波(どうやって朧さんに傷を負わせたかは知りませんが…!)

 

弾丸が装甲を貫通し、撃たれた敵の身体が内側から弾け飛ぶ

 

綾波「私は、優しくありませんよ…」

 

次々に撃ち抜き、殺す

一つずつ、順番に…

 

綾波(おかしい、恐怖を感じない…殺されているのに恐怖する様子すら見せない…やはり、私の予測は正解か…)

 

敵の隊列は乱れない、進行方向も何も変わらない、まるでロボットのよう

だから、撃ち殺す事は凄く簡単で…

 

綾波「…殲滅完了、サンプルを確保後帰還……いや、無理か、サンプル消失を確認」

 

撃ち殺した敵の死体は、艤装ごと海に溶けていった

 

 

 

 

 

Link基地

 

綾波「…戻りました」

 

狭霧「おかえりなさい、これを」

 

狭霧がパッケージを私に差し出す

 

綾波「……これは」

 

狭霧「朧さんが確保していたそうです」

 

要するに、朧さんがダメージを受けた原因はこれだ

朧さんはこのパッケージを持ち帰ろうとして被弾したわけだ

 

綾波「…朧さんもわかってないですね」

 

狭霧「わかっているからこそです、きっと」

 

中身を確認する

数枚の書類と複数のUSBやマイクロチップ

 

綾波「全て解析にかけてください、これを無駄にするわけにはいきません…それと、朧さんのダメージは」

 

狭霧「軽いものです、ただ、脚の腱を痛めてしまったようで」

 

綾波「……そうですか」

 

狭霧「私に任せてくださいますか?」

 

綾波「ええ、私はあなたの様にはなれない…私では叱責することしか出来ませんから」

 

狭霧「もっと素直になればいいのに」

 

綾波「早く行きなさい」

 

眉間を摘む

少し、疲れた

 

 

 

 

 

駆逐艦 朧

 

朧「……あの」

 

狭霧「ん?…大丈夫、心配してただけですよ、朧ちゃんの事を怒ったりしてません」

 

朧「…そうですか」

 

アタシたちは…パッケージ…つまり、荷物の受け渡しをしに行った

そして帰りの道中に仮面の集団に襲撃された…

 

道中で受けた攻撃でパッケージを紛失、基地までの距離が僅かだったこともあり、万が一の際は完全破壊による破棄という命令を無視して確保しようとした

結果被弾もしたし…いい結果とは言えない

グラーフとザラのダメージも、何もかも…

 

狭霧「…ふふ」

 

狭霧さんがアタシの頭に手を置く

 

狭霧「よく頑張りました」

 

朧「え?」

 

狭霧「綾波さんはこの言葉を言うのが苦手ですから、私が代わりに…綾波さんは褒めたりするの、下手ですから」

 

朧「……いや、アタシ失敗して…」

 

狭霧「ううん、そんな事ない、みんな帰ってきたし、パッケージはちゃんと持って帰ってきてくれました…大成功ですよ、偉いですね」

 

頭を撫でられる…いつ以来だろう

嫌なわけじゃない、だけど…不思議な感じ

 

狭霧「んー…朧ちゃんは私の事、どう思ってますか?」

 

朧「え?どうって…」

 

意識外のことを質問されて戸惑う

そもそも考えたことがなかった

クローンだのなんだの、あんまり理解ができない

 

朧「…さあ」

 

狭霧「お姉ちゃんには思えませんか?」

 

朧「お、お姉ちゃん?」

 

狭霧「綾波型駆逐艦の6番艦、実は朧ちゃんの一つお姉さんなんですよ?」

 

朧「え、ええと…」

 

狭霧「ほら、甘えてもいいんですよ、お姉ちゃんですから」

 

朧「あ、いや、遠慮しておきま…むぐっ」

 

抱き寄せられながら頭を撫でられる

 

狭霧「えらいえらい、よく頑張りました」

 

朧(な、なにこれ、無理矢理離れていいのかな…あ、でも凄くいい匂いする…あったかい…)

 

狭霧「よーしよし、ゆっくり休みましょうね…」

 

朧(あ…これダメになる…)

 

 

 

 

綾波

 

綾波「何やってるんですか、これ」

 

狭霧「え?」

 

朧「ほぇ…?」

 

扉を開けて最初に視界に入った光景は…

蕩けきった顔の朧さんとそれを楽しんでいる狭霧…

 

綾波「…ええと」

 

狭霧「お姉ちゃんしてました」

 

綾波「…ごゆっくり」

 

それ以上は何も言わず、扉を閉めて他所へと向かうことにした

自分のクローンにそんな趣味が有ったとは…いや、潜在的に自分にもあるのだろうか…

 

今考える事ではないな

 

どうせあの調子ではメモリの解析は何もしていないだろう、そうなれば私がやる他ない

 

綾波(みなさんには悪いけど今日の夕飯はラーメンにしておこう…)

 

ビスマルク「帰ったわ!」

 

綾波「おや、ビスマルクさんに神鷹さん、リシュリューさんも…お帰りなさい、みんな生きてますよ」

 

リシュリュー「良かった、それより見て、綾波」

 

リシュリューさんがレジ袋を見せつけてくる

 

綾波「…随分と買いましたね?」

 

神鷹「違う、です、店長さんがくれました、ハイキ品です」

 

綾波「……今度お礼を言わないと…ありがたくいただきましょう」

 

ビトがわざわざ気を遣って食事を用意してくれるとは

ヘルバさんには2度と頭が上がらないな…

 

神鷹「あの…」

 

綾波「どうしました?」

 

神鷹「私も、らーめん、たべてみたいです」

 

綾波「…まあ、わかりました、ついでに作りましょうか…ビスマルクさん、動ける人を呼んできてください、リシュリューさん、袋の中身は?」

 

リシュリュー「全部すぐ食べられるわ、レンジで温めればね」

 

綾波「油モノばかりじゃないですか?」

 

リシュリュー「大丈夫、消化にいいものもあるから」

 

綾波「それは良かった…よし、一度落ち着きましょうか、どうか、食事の時だけはゆっくりとしましょう…」

 

朧さんと狭霧は放っておけば良いだろう

さっさと食事を摂って仕事を進めて…

 

 

 

 

 

 

 

 

綾波「…ふーん…」

 

暗い部屋をモニタの青い光がぼんやりと照らす

もう何時間これを眺めているのかはわからないが…発見は未だ尽きない

 

全く違う視点から見た深海棲艦

そして深海棲艦を使ったシステム…

 

識ってはいた

このシステムの存在を、開発していると言うことを

だが…

 

綾波「これは、かなりまずい…境界を壊そうとしている…」

 

元はと言えば、境界なんてないのだが

 

綾波「Cubia…世界を破壊する、最悪の存在、超古代生物…このままではThe・Worldの内部には収まりきらない…」

 

ネットの世界は無限に広がっていると信じられていた

 

綾波「…リアルにまで、侵食してくる…!」

 

リアルだって、そうだ、宇宙は無限だと考えられていた

でもそれが違うとしたら?

一つの世界に収まりきらない存在は…

 

ネットとリアルの境界を破壊し、自分の存在できる場所を作ろうとする

 

全てのデータを外部のメモリに映す

 

綾波「深海棲艦の誕生…そして進化……深海棲艦と融合した艦娘…いや、こっちか?」

 

敵は多い…

ネットとリアルの境界が壊れる前に、やらなくては

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