元勇者提督   作:無し

450 / 625
補助器具

横須賀鎮守府 工廠

工作艦 明石

 

明石「……」

 

綾波「お口に会いませんでした?コーヒーはお嫌いでしたか?」

 

明石「……いえ」

 

嫌々口に流し込み、止むを得ず喉を通す…

嫌味の一つも言いたいが口で勝てる気がしない、こんなところでコーヒーなんてと言えば夕張を非難することにもつながるし、私自身工廠での飲食は…慣れている

とは言え、敵と一緒には…

色々頭が混乱している、鎮守府にいる車椅子の方は何だ?

 

夕張「そ、それより…今日は何の用事で?」

 

夕張もどこか浮き足立った様子、当然だ、ついこの間まで戦争してて、しかもその大将をやってた相手なんだ…

 

綾波「お二人の力を借りたくて…カートリッジを開発してくれませんか?」

 

明石「お断りします!」

 

コーヒーのカップをつい強く叩きつけてしまう

 

夕張「あ、明石!一回落ち着いて!それで…私たちにわざわざ頼む理由って?」

 

明石「夕張、まさか作るつもり…!?」

 

夕張「まあまあ!話だけだから!」

 

明石(…夕張、怯えてるんだと思ったけど何か違う…)

 

綾波「大抵のものは…私でも作れます、しかし、それは量産品というべきで…使用者のことを考えられて作られたものとは違う、あなた達には…自分のカートリッジを使う人のことを考えて作る能力がある」

 

夕張「…えっと?」

 

綾波「これを」

 

机に置かれたカートリッジに刻まれた文字は…改二

 

明石「…改二?」

 

綾波「私の全力の力を解放するためのカートリッジです、これを生身で使えば…脳の過負荷で斃れます、使えてアケボノさんか深海棲艦くらいでしょう」

 

明石「…それで?」

 

綾波「出力を下げて、複製してください…言っておきますが簡単な作業ではありません、私がやるのを躊躇い、あなた方に任せたいと思うくらいには大変なことです」

 

明石「目的は」

 

綾波「日本の戦力の底上げ、全員に改二レベルの実力を引き出せば…今後の戦いにおけるリスクは大幅に低下します」

 

…それが目的?わけがわからない

 

綾波「お願いします、これは身体強化カートリッジでありながら艤装の強化も行うカートリッジ、今までの何よりも作成難易度の高いものだと思いますが…」

 

明石(…あー…もうこの人が何言っても自分にはできるけどあなた達には難しいですねって嫌味にしか聞こえない…)

 

夕張「…なんでリスクを下げようとしてるんですか?今のあなたにとっては私たちの戦いなんて関係ないことなんじゃ…」

 

綾波「敵対してるわけじゃないし…何より、私たちにもメリットがある、協力したい…と考えたんですよ、それに…明石さん、あなたは凄い、だってカートリッジを開発したのはあなたなんです、私は外部接続機器で強化するなんて…考えもしませんでしたから」

 

明石「…何なんですか、急に誉めてみたりして」

 

綾波「あなた達にとって私が憎悪の対象であることは理解しているつもりです、しかし……もっと大きな敵も世界にはいる…お願いします、少しだけでも良い、私に力を貸して欲しいんです」

 

明石「いきなり…そんな事言われても、もう意味がわからないんですよ…!死んだはずの貴方が生きていて協力してくれとか…!」

 

綾波「深く考えないでください、私は…ただ……いや、無理な話か…」

 

明石「このコーヒーひとつにとってもそうですよ!私からしたらこれを飲むのも命懸け!断れば殺されるかもしれない!毒が入ってるかもしれないものを飲まなきゃいけない…今この場はそういう状況なんですよ…!なのに協力?何を考えてるのか、本当にわからない…!!」

 

綾波「…無理のない話です、貴方の言ってることは間違いじゃない…当然ですね、すみません、無理を言ってしまい」

 

綾波(…どうにか口説こうと思いましたが…流石にダミー因子持ちには…通じ難いのかな……上手い言葉が思いつかない、どうするのがいいのか)

 

明石「…朧ちゃん、返してくださいよ…!朧ちゃんを探すために出て行った曙ちゃんも…!貴方のせいで鎮守府が滅茶苦茶なんですよ!!」

 

綾波(…2人が再会したこと、伝えたいけど…Linkの存在を公にしたくない…最低限の人間で済ませたい、特にアメリカ人がいる離島に流したくはない…)

 

綾波「…朧さんの無事だけは保証します…それでは、失礼します」

 

明石「…タダで帰れると思ってるんですか…ここは横須賀ですよ、戦闘になるに決まって…」

 

綾波「いいえ、なりませんよ…私は犯罪者綾波として侵入したのではなく、客人として正面から招待されたのですから、例え手違いだったとしても面子がある、私を黙って見送るでしょう」

 

明石「そんな…!」

 

…私の頭では、どうすればこの人を消せるのかがわからない

目の上のたんこぶだ、どうにかして殺さなくては害を振り撒く、存在自体が邪悪…

 

去りゆく背中をただ見送ることしかできない

 

 

 

 

綾波

 

綾波「ああ、電さんに大淀さん、どうも?」

 

大淀「堂々と歩かないで欲しいのですが」

 

電「人に見られてはことなのです」

 

綾波「それより、お二人…手を出してくれますか?」

 

大淀「何も受け取らな……ふむ…」

 

電「そういう装備なのですか」

 

未来を先読みされたか、問題はないが…

 

綾波「どうですか?使ってみませんか?」

 

大淀「効果は」

 

綾波「艤装とのリンク率の上昇…つまり、限界を超えて強くなれます」

 

電「…試しにワンセットいただいておくのです」

 

大淀「え?1つだけ?」

 

綾波「…電さん、仲間割れにつながるようなことしないでください…後日人数分持ってきますから」

 

大淀「…それで」

 

綾波「ええ、そうですね…指輪型の演算補助器具なのですが、どの指につけますか?」

 

電「当然薬指なのです、サイズは今測りますか?」

 

綾波「……ええ」

 

何と趣味が悪い、親指でも人差し指でもいいのにわざわざ薬指か

 

大淀「まあ、提督宛に送ってください、貴方から貰ったものを身につけたくないので」

 

綾波「貴方も性格が悪いですね…あー……はぁ…火野提督に胃薬でも差し入れたほうがよかったか」

 

電「何を気にしているのですか、ただ、提督が艦娘に指輪を配るだけですよ」

 

綾波「それに特別な意味を持たせようとしてる人がいいますか…」

 

大淀「それで、具体的にどうなるのか教えてくれますか?」

 

綾波「簡単に言えば…状況判断能力、瞬発力の強化です、例えるならPCの増設メモリというか…許容量を増やすというか…これを持っているだけで脳への負荷を軽減し、普段の倍以上の速度で脳を動かせます」

 

電「カタログスペックは素晴らしいのです」

 

綾波「お好きに言ってください、効果は保証します…それと、カートリッジの件ですが、納期遅らせてくれませんか?」

 

電「お断りするのです」

 

綾波「…明石さん口説けなかったんですよ」

 

電「それはそちらの問題なのです、こちらに求めた以上、応えて欲しければ応えるのです、横須賀に支援して欲しければ納期までに一通りのカートリッジを用意するのです」

 

綾波(…商売相手にするには面倒な人を選んでしまったな)

 

綾波「わかりました、わかりましたとも…」

 

Linkの財政難は言わずもがな、さてはて、上手く乗り切らないと

 

綾波(これは、二徹はしないとなー…演習も組ませてもらう以上…あ、いや…そうか、Linkの代表表向きには狭霧さんに任せればいいか、演習も任せてしまおう) 

 

大淀「しかし、なぜ指輪型の艤装にしたんですか、カートリッジタイプでも良かったでしょう?」

 

綾波「…ナノマシン技術を使い、簡易的な艤装を召喚できるようにするつもりです、つまり…武器に見えない武器、暗器として、使えるんですよ」

 

電「…本当にですか?」

 

綾波「嘘つくわけないでしょう、ほら、これ」

 

ポケットから指輪を取り出し、縁をなぞる

主砲と魚雷発射管が手脚に召喚される

 

綾波「弾数は多くないんですけど、どうですか?」

 

大淀「…見せてくれるのはいいですけど何も言わずに展開するのやめてください、捕まえますよ?」

 

綾波「それは申し訳ありませんでした」

 

艤装を収納する

 

綾波「拳銃でもライフルでも、近接武器でも作り出せます、まあ事前に用意しておく必要がありますし、リングの作成時にナノマシンにそれを覚えさせる必要があるので…艤装用はあくまで艤装用、サイドアームは別のものが必要になります」

 

電「……暗器というか、侵入後には非常に役立ちそうなのです…相手が人間なら」

 

綾波「火野提督には敵も多いでしょう、コレを提供するんですから、カートリッジは勘弁して欲しいものですが」

 

大淀「では、ひとつ機能を付け足してください」

 

綾波「…なんですか?」

 

大淀「使用するにあたり、ロックをつけて欲しいんです、奪われたりした時のために…」

 

綾波「わかりました、指輪に使用者識別機能を…」

 

大淀「私たちが持つ指輪に新たにその機能をつけるのは大変でしょう?」

 

綾波「いや、別にそんなことないですけど」

 

大淀「なので、安全装置を管理する指輪が欲しいんです、新しく、一つ」

 

綾波(……うっわ………性格悪…)

 

電「良いアイデアなのです」

 

綾波「…明日、発送します…」

 

大淀「よろしくお願いします」

 

綾波「それと…横須賀もちゃんと戦力向上に励んでくださいね」

 

大淀「…勘違いしてるかもしれませんが、横須賀はどこの鎮守府にも全力で劣るつもりはありません」

 

電「もし、横須賀に勝てるとしたら…呉がいい勝負をできるかどうかなのです、ここにいるのはみんなエリートなのですから」

 

綾波「……期待しています」

 

 

 

 

 

 

翌々日

 

 

提督 火野拓海

 

火野「……ふむ、これが最新式の戦闘補助器具…か」

 

人数分の小箱に視線をやる

 

電「早速配備して欲しいのです」

 

火野「ああ、試用は任せる」

 

電「司令官さんから、確かに受け取ったのです」

 

火野「…なんだ?」

 

電「こういう事なのです」

 

いつのまにか電の左手の薬指に指輪…

 

火野「…中身はそれか?」

 

電「そうなのです、名称はケッコンカッコカリ…なかなか悪趣味なのです」

 

火野(君が言うか)

 

電(まあ、実際の所そんなは名称なんて無いのですが…)

 

電が指輪をなぞる

艤装が展開される

 

電「…少し軽すぎるのです、なれないと扱いは難しそうですけど…」

 

火野「十分過ぎるだろう、金属探知機に引っかかったとしても、外せば問題はない…」

 

電「それと、これのセーフティは司令官さんの分の指輪についてるのです」

 

火野「…私の分まであるのか」

 

小箱から指輪を取り出し、右手の人差し指につける

電が少し剥れた様子を見せるものの気にしない

 

火野「…こうか」

 

指輪に触れると電の艤装が消滅する

 

電「こんな感じなのですね…早速、全員に配るのです」

 

火野(カッコカリとはいえ結婚と名称のつく指輪を配り歩くのは些か問題なのではないか)

 

電「電が独り占めしても良いのなら別なのですが」

 

火野「…わかった」

 

電「…あ、それはなんなのですか?」

 

火野「…ついでにアオバの義手を用意してくれたそうだ」

 

電「なるほど…納期については目を瞑る事とするのです」

 

火野「何の話だ…?」

 

 

 

 

 

 

大湊警備府

駆逐艦 睦月

 

睦月「ほえー…これが最新式」

 

綾波「ええ、好きな指につけてください」

 

白露「人差し指につけて、これでパンチしたら強そうじゃない?」

 

夕立「威力倍増っぽい!」

 

綾波(メリケンサックじゃないんだけどな…でも電さんに比べたら百倍健全だ…)

 

綾波「細かい調整とかは後で連絡してください、私も忙しいので」

 

五月雨「……あれ?」

 

綾波「貴方のものは特別性ですよ、使ってみてください」

 

五月雨が指輪に触れるとライフルになる

 

綾波「貴方の適性は狙撃です、口径とかその辺のことはケースの中に説明書があるので…」

 

ビリッ…と、紙が破れる音が聞こえる

 

睦月「…五月雨?」

 

五月雨「…と、取り出そうとしただけなんです!」

 

破ってるし…いや、でもまだ読める…

 

綾波「まだ読めますよね、繋ぎ直して勝手に読ん…」

 

五月雨「ふぎゃっ!?」

 

五月雨が急にこけて…小箱ごと海に…

 

綾波「……わざとやってます?やってますよね、ねぇ?」

 

五月雨「ご、ごめんなさい!わざとじゃないんです!」

 

白露「…五月雨のドジは…うん、対策しない方が悪いよ」

 

夕立「次に活かすっぽい、ドンマイドンマイ」

 

綾波「……っ…はぁ…」

 

睦月(1番綾波と敵対してた2人が綾波慰めてる…面白いにゃ〜)

 

綾波「…明日、コピーを持って来させるので…絶対に五月雨さん以外が読み込んで伝えてください、取り扱いをしくじれば命にかかわりますよ」

 

睦月「はーい」

 

五月雨「ほんとにごめんなさい…」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。