元勇者提督 作:無し
大湊警備府
駆逐艦 天霧
天霧「アイドルというには…ギラついた目をする…まるで野生の獣のようであり…的確に獲物を殺し切るハンターのような…」
那珂「天霧ちゃんだっけ、那珂ちゃんのこと詳しいみたいだけど、もしかしてファン?」
天霧「…ある意味そうかもしれません、誰よりも人を研究している自信はありますね…ですので、貴方の手の内は…大抵読めている」
那珂「そういうの好きじゃないなぁ…天霧ちゃんデータ系かぁ…那珂ちゃん相手には不利だよ?」
綾波(不利上等…既に度のあってない眼鏡かけてるし、口の中変な感じだし…艤装が違うせいで完璧な動きなんてできやしない…でも…)
天霧「…いいですね、そういうの燃えるタイプなんです、私」
那珂「…前言撤回かな、いい勝負になりそう」
構えをとり、向かい合う
那珂「…ボクシング…キックボクシング?」
天霧「少し違う…」
那珂「ふーん…」
一歩踏み込んでジャブで牽制する
那珂「Linkって不思議だねぇ…艦隊として存在してるはずなのに近接戦闘まで仕込まれてるなんて…!」
まるでボクシングの試合のようだ、お互いがタイミングを読み合い、牽制し合い…決定打を待つ…
天霧「総合的にできなくてはならない…そんな場所です!」
那珂さんのジャブを掴み、掴んだ手ごと引く
那珂「っ!?」
綾波(この手は、折りはしないが…)
膝裏に掌底、そして首目掛けてハイキック…は、肩の上受け止められる
那珂(本気なら折られてた…!)
那珂「…シュートボクシング…掴みや関節技ありの…ほぼ何でもありのボクシング…」
天霧「…ええ、それと…警告です、離さないと痛いですよ」
那珂(電撃なんて堪えればいい、おられても関係ない…演習とかそういうのじゃない、負けたくない…!)
受け止められた脚の膝を折りたたみ、残った足で前方に軽く跳ぶ
体重移動で前に…那珂さんの方に倒れるように近づく
那珂「えっ」
天霧「だから、言ったのに」
即席のギロチンができた、私の体重で那珂さんの体は海面へと押し倒され、首を脛が押しつぶそうと体重をかけ続ける
那珂「っ…!やばっ…」
片手を掴まれ、片手は脚を抑えるのに使う…つまり両手が塞がっているので抵抗手段は脚のみ、それも好きにはさせないように残った脚を乗せて押さえつける
天霧「降参してくれますか」
答えを聞く前に私は残った自由な片手で懐から模造刀を取り出し、首に当てればいい
そう、当てれば那珂さんはとりあえず撃破判定…
綾波(背後か)
体勢を大きく沈め、背後からの槍の横薙ぎをかわす
那珂「ぐぇっ…」
那珂さんからカエルを潰したような悲鳴が聞こえた、首の骨は折れていないようだった
神通「かわされた…!?何故…!」
天霧「那珂さんの瞳の動きですよ」
那珂さんが神通さんを視認したのを確認し、瞳に反射した槍の角度を計算し、可能な範囲体を動かすことで避けた
それだけだ…そして、ただかわすだけじゃない、頭を振り、髪を…
神通「なっ…髪が首に!?」
空いた片手で毛先を持ち、神通さんの首に巻きついた髪で締め上げる
頭皮が痛いが…まあ良い、このまま締めてオとす
神通「かっ…ぁが…く…!」
那珂「ひゅ…あ…!」
天霧「降参するなら、口を閉じてください、無理に呼吸しようとすると海水が口に入りますよ」
那珂「……お、断り…!」
天霧「…魚雷か」
また左右から迫ってくる魚雷…でもこれでは那珂さん神通さんも犠牲にするようなものではないか…
天霧「ま、どちらでも良いか」
那珂「ぁっ」
神通「ぐ…」
2人の首を絞める力を一瞬だけより強くし、離れる
魚雷が炸裂し、2人を吹き飛ばす
天霧「ふう、間一髪でしたね…危なかった」
綾波(神通さん、髪を斬るか迷ってたな…そうでなければまだ私が無事なわけがない…互いにハンデ戦だったわけだ…)
戦艦 ガングート
ガングート「ちょこまか逃げるな!!」
川内「お断りだっての、馬鹿みたいに撃ち合ってたら負けるに決まってんじゃん」
ガングート(…よし、予定通りだ…川内の砲撃なら耐えられる、近寄らせずに仕留める…が、恐らく…このままいけば川内は私の周りを飛び回って撹乱に来る)
川内(どうしよっかなぁ…一手ミスれば負ける気がするし…私の手の内は綾波が知ってる、何も対策させないわけないよね…なら…)
川内がボクシングのような構えを取る
ガングート「…何?」
川内「綾波から聞いてない?何でもできるって」
川内が姿勢を沈めた瞬間に合わせて刀を抜き、前方を斬り払う
川内「!」
慌てて姿勢を戻した川内の鼻先を切先が掠める
ガングート「もちろん、聞いているさ…うちのトップを舐めないでもらおうか…!」
川内「…へぇ、それが秘密兵器か…」
川内(予想外だったな…しかもかなり射程があるせいで迂闊な距離をつめられない…!)
驚いた川内の動きが止まった瞬間に…全ての主砲が川内を捉える
ガングート「ようやく止まったな!」
川内(マズ…)
一斉射が川内を撃ち砕く…
川内「っぶな…」
ガングート「何…な、なんで無事なんだ!」
川内「そりゃ…ま、秘密兵器はお互い様だからね…」
ガングート(至近距離の一斉射を全て防ぐ秘密兵器だと…?なんなんだ…!)
川内「…教えてあげるよ」
ガングート「…雷のカートリッジ…!」
川内「これでちょいとね、信管を全部」
ガングート(それをあの短時間でやってのけたというのか!?…バケモノめ…!…だが、感じる…わたしにも恐怖が理解できたぞ綾波…!だから、私は強くなれるはずだ!)
主砲で川内を捉え続ける
ガングート「なら、何度でも!!貴様を倒せるまで撃ち続ける!」
川内(弾切れまでかわすってのも…無理か…なら、左右に揺さぶって重心を崩したところで裏を取る)
左右が砲撃を左右に跳ねながらかわし、直撃コースは雷に防がれる
ガングート(こいつ、全く撃ち返してこないな…舐めたマネを…!!)
川内「今…!」
川内が私の頭上を飛び越える
ガングート(…綾波と同じ軌道…)
ガングート「…その動きは、もう見た!!」
反転し、刀を振り抜く
川内「あだっ!?…う、うそ…!」
振り抜いた刀は川内を確かに捉えた…
しかも当たった部位は胸部、真剣なら致命傷…
ガングート「…私の勝ちだな、川内?」
川内「…くっそー!なんでその巨体で綺麗に反転できるの…!」
ガングート「ハハハ!好きなだけ吠えるがいい!よし!!……やったぞ綾波…!」
川内(あの喜びよう…なんか悔しい通り越しちゃったなぁ…というか、綾波慕われすぎでしょ、何したの?脳弄ったのかな…)
ガングート「…ふう…よし!こちらガングート!蹴りがついた!すぐに援護に向かう!」
無線機に声を送り、向き直る
ガングート「演習が終わったら聞きたいことがある、またな」
川内「はいはい、いいよ、逃げないから」
駆逐艦 朧
朧「レーベ!マックス!…だめだ、応答しない…絶対あの炎のドームの中…」
天霧『ユーさんから退避したとの連絡がありました、熱湯に近づきすぎて負傷したようなので今手当てをさせてます』
朧「ユーが?…曙、演習なのにやりすぎだよ…!」
天霧『いいえ、潜水艦という艦種は珍しい…調整に慣れていないんでしょうね、仕方のない事故です…』
炎のドームが弾け飛ぶ
少し離れてるだけではこの熱風で消し炭にされるのではないかというほどの…
曙「あら、朧じゃない」
曙の足元には2人…マックスとレーベ…
マックス「ごめん、無理」
レーベ「怪我しそうだったから降参しちゃった…」
朧「それで良いよ、無事でよかった……曙、2人が離れるの待ってくれるよね?」
曙「勿論、何も焦る必要なんてないのよ」
朧「……」
2人が離れたのを確認した瞬間、アタシと曙を囲うように細い直線の炎の壁が現れる
曙「…アンタ、カートリッジ持ってる?」
朧「…持ってないよ、残念だけどね」
曙「なら…これで完封ね」
確かに、大きな動きをしたら炎の壁に焼かれるほど狭い空間
炎を自在に操る曙、もしくはカートリッジの使用者でなくてはこの炎は…手痛いダメージだ
朧「…完封?…甘いよ」
海面を踏み鳴らす
海が沈み、大きな波を立てる
荒波の隙間に…炎と海の境目ができる
朧「曙…見てなよ」
炎を潜り抜け、通路から抜け出す
曙「……読めてんのよ」
朧「えっ…」
魚雷…?
朧「ぁがっ!…ぐっ…うぅ…」
海面を無様に転がる
あの数、曙じゃない、重雷装艦だ…誰の…
北上「よ、久しぶりじゃん」
朧「…北上さん」
北上「この演習勝てばさ、北海道旅行行けるんだわ、つーわけで…負けてくれると嬉しいな」
北上さんの魚雷発射管全てから魚雷が飛び出す
朧「…そういう理由…まあ、良いんですけど…」
海面を踏みならそうとしたところを撃ち抜かれる
曙「それは、もうさせない」
朧「…曙…!」
前より砲撃精度が遥かに高い、その上…この冷静な感じ…凄く嫌だ…!
魚雷を防ぐ術を奪われ、徹底して追い詰められる
北上「ほらほら、逃げても逃げても無駄だよ」
魚雷はアタシが進路を変えてもついてくるみたいに…
朧(…読まれてる、徹底的に…しかも、北上さんは自在に魚雷を曲げられるんだ…!…いや、落ち着け…そんなの大したことない、魚雷を飛び越えて…インファイト!)
くるりと反転し、片足で跳び上がり魚雷を飛び越える
砲撃しながら北上さんへと近寄る
北上「っとと、危ないなぁ…魚雷発射管で防がないとやられちゃう」
朧(盾を潰すよりも近寄って…叩き潰す!)
曙「…そこ、危ないわよ」
朧「え?」
手遅れになってから気づいた…
北上さんには近づけない、魚雷が周囲を回ってて、近づけばそれが刺さるから
脚部艤装に魚雷が2本刺さってからそれに気づいた、つまり、手遅れ
朧「っ…?」
北上「ああ、安心して、信管は抜いてあるから、大破判定にはなるけどね」
朧「……やられた…」
別働隊のプリンツとタシュケントも向こうで別の球磨型とやり合ってることだろう…残り半分の戦力で勝つには…
ガングート『座標は』
朧「…ここ」
北上「ん?」
曙「…北上!離れなさい!」
北上さんに砲弾が着弾し、派手に吹き飛ばされる
ガングート『ハッハー!当たりだな!』
曙「チッ…やるじゃないの」
朧「…良いでしょ、今のアタシの仲間」
曙「……良かったわ、アンタのそんな顔見られて…今日は来た甲斐あった…ついでに勝って帰らせてもらうから」
曙の方に飛んできた砲弾が寸前で溶けて炸裂する
曙「……今のアタシは、負ける気が、しない…!!」
朧(…そうか、曙は落ち着いたんじゃないんだ…落ち着いた振る舞いもできるようになっただけ…強みが無くなったわけじゃない…!)
駆逐艦 天霧
天霧「……残すは、炎の勇者様だけ…か」
球磨「クマぁ…やるもんだクマ」
天霧「お互い様です、ですが…その、爪はやめてください、普通に痛かったので」
球磨型との戦いはプリンツさんとタシュケントさんを合わせた3人で臨んだ…
というのに、圧倒的な魚雷の物量と絶え間のない砲撃により2人は大破、私もそこそこの被弾はしたが…まあ、球磨型はこれで全滅
綾波(…ガングートさんはまだ健在か)
天霧「ガングートさん、やれそうですか」
ガングート『…無理だ、川内もバケモノだったが…こいつは別のバケモノだ…!!』
ここまで熱風が吹き付けるんだ、普通に相手をしたら勝てないことくらいわかっている
天霧「もう少し耐えてください、上手くやりますから」
魚雷を幾つか取り出し、手で弄る
球磨「…工作艦かクマ?」
天霧「駆逐艦ですよ、ただの駆逐艦…」
魚雷を真下に向けて海に落とす
天霧「…あとは、これですね」
主砲を頭上に向けて4度放つ
天霧「…さあ、私には予知能力はありませんが……人間の限界まで脳を酷使したらどうなるか、ご覧あれ」
球磨「…まさか、マジかクマ…!」
天霧「ええ、私は本気ですよ」
ゆっくり、ゆっくりと曙さんの方に近づく
ガングート「ぐっ…!まだか!」
天霧「到着しました」
曙「援軍?無駄よ!燃やし尽くして…?」
天霧「…もう終わっていますよ」
魚雷が曙さんの真下で炸裂し水柱があがる
曙「っ!!…どうなっ…て…!?」
砲弾が降り注ぎ、曙さんの艤装を撃ち抜く
天霧「大破判定には届きますよね?航行不可能でしょう?」
曙「……主機が動かない…!」
天霧「良い時間稼ぎでした」
ガングート「…時間稼ぎか…ははは、いつから…利用されていたのやら」
天霧「最初からですよ、当然でしょう?」
曙「……アンタ…いや、顔が…でも、整形して……?わからない…」
綾波(どうやら、変装はかなり有効らしい)
2戦目は勝利という形で幕を閉じた
ガングート「川内、何故主砲を一度も撃たなかった?魚雷は?」
川内「あー…近距離戦に頭がいっちゃうとね、つい忘れるんだよ…」
ガングート「忘…そ、そうか…舐められていたわけではないのか」
川内「もし舐めてるならタイマンなんてしないって!いやー、強かったよ、またやろうね」
ガングート「…ああ、だが今後も演習のみで頼むぞ、殺し合いはごめんだ」
川内「それはお互い様」
神通「…あなたは髪を武器にしているのですか?」
天霧「女の武器ですから」
那珂「え、いや、そういうのじゃないと思うけど…?」
天霧「自分の体は全て武器です、使えるものは全て使うべきでしょう?」
那珂「…確かに、参考になったよ、ありがとね…」
神通「後でもう一度手合わせ願えますか、どうしても…」
天霧「いや、演習控えてるんで…」
しつこい神通さんをなんとか振り払う
神通「では今日出なくて構いません、明日にでも…」
天霧「私Linkの仕事あるんですけど…うぉっと」
背中から神鷹さんが飛びついてくる
神鷹「ママ…学校、終わりました」
那珂「ま、ママ!?」
神通「…お子さんが居たんですか?……どう見ても同年代…」
天霧「違います…というかよく分かりましたね、私だと…」
神鷹「…ちょっと、違うけど、すぐわかった…」
観戦していた大湊の連中がゾロゾロと近寄ってくる
睦月「…あれ?神鷹ちゃん」
神鷹「…睦月ちゃん、ママカッコ良かったですか?」
天霧「だからママと呼ぶなと…」
睦月「え?………え?…綾波さん?」
神通「……え?」
那珂「嘘…!?」
綾波「……はぁ…ええ、私です、綾波ですよ」
髪を結び直し、眼鏡を外してワタを吐き捨てる
神通「…なぜ気付けなかったのか…」
綾波「気付かれたら変装の意味がありませんし…眼鏡のせいで変な戦い方になってましたから」
那珂(つまり手加減された上で負けたと)
綾波「那珂さんのジャブを止めるのに距離感が掴めなくて時間がかかりました…ああ、気持ち悪かった…」
曙「驚きよね、あの綾波がいつのまにか子持ちだなんて」
川内「時の流れって早いねぇ!」
綾波「…違いますからね?神鷹さん、自己紹介してください」
神鷹「…神鷹です…その…ええと…なんて言えば良いんですか…?」
綾波「うちで保護してるドイツの子です」
川内「へぇ…何もされてない?大丈夫?脳弄られたりしてない?」
神鷹「…ママはそんな事、しません…!」
綾波(だからママと呼ぶなと…というか、脳弄ったりは……いや、色々前科あるんだけどな…)
朧「神鷹、綾波が不機嫌になるからその呼び方はやめてあげなよ」
神鷹「好きに呼んで、良いって言いました…」
綾波(…そう言えばコンビニで言ってしまった覚えが…ああ、なんでそんなこと言ったんだ私…)
目頭をつまむ
狭霧「はーい、動かないでくださいね」
綾波「え…ああ…」
狭霧に即座に髪型を戻され、新しいワタを詰め込まれる
天霧「狭霧さん、少しは優しくですね…」
狭霧「佐世保の人たちに見られますよ」
天霧「……わかりました…」