元勇者提督   作:無し

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豹と狼

大湊警備府

綾波

 

綾波「来るか…!」

 

こちからも視認し、青葉さんへ向け砲撃を放つ

しかし…槍で防がれる

 

ガングート「槍だと?神通だったか…アイツと似たファイトスタイルか…!」

 

綾波(それよりもあの構え、ゲームの中で私に見せたものと似ている…!)

 

青葉「リベンジマッチ…させていただきます…!」

 

綾波「…簡単ではないですよ」

 

槍から距離を取りながらの砲撃…のはずなのに、距離を引き離せない

槍を振るわれるたびに間合いが迫る…

 

綾波(槍の遠心力を利用してそれを推進力に足してるのか…!)

 

馬鹿げた話だが、実際それで近寄ってくるのだから恐ろしい

いや、海を走る人も居るのだから今更か

 

青葉「やあぁぁぁッ!!」

 

槍の竿の先端部を持ち、コンパクトな横薙ぎを放ってくる

 

綾波(それはもう見ました…初撃は牽制、その後に本命の横薙ぎがくる……でも、初撃をガードして、そしてカウンターを叩き込めば…あまりにも無防備…!)

 

綾波「っ!?」

 

ガードしようと構えた刀がが弾き飛ばされる

 

綾波(なんて威力…!どんなパワーしてるんですか…だけど、蹴りでも何でもいい、今カウンターを…)

 

詰め寄り、放った回し蹴りを槍を持っていない腕を盾にすることで受け止められる

 

青葉「っ……重いですね…でも…!」

 

青葉さんの全身を使った斬撃が迫る

 

綾波(片脚を攻撃に使ったせいで、かわせない…)

 

朧「っりゃああっ!!」

 

青葉「!」

 

槍と脚部艤装がぶつかり、鈍い音が響く

朧さんの蹴りで槍が弾かれ、青葉さんの姿勢が大きく崩れる

 

綾波「カバーどうも…!」

 

青葉「朧さん…!」

 

朧「その技は…識ってる…!」

 

朧(蹴りで受けたのに…あの槍、折れないどころか…こっちの脚が痺れて…)

 

青葉(…手が痺れて、このままは不味い…一度撤退しないと)

 

ガングート「逃がすか!」

 

青葉「いいえ、失礼します」

 

綾波「煙幕…!」

 

青葉さんが煙幕に包まれる

 

タシュケント「そんな薄い煙なんかで…」

 

綾波「待って!…朧さん」

 

朧「居る……久しぶり…かな?秋雲、陽炎」

 

秋雲「ありゃー、バレてるよ、瑞鶴さんの援護も朧の前じゃ意味ないんだね?」

 

陽炎「まあでも…朧にしか、わからないみたいだし」

 

タシュケント「…どこから、煙の中?」

 

ガングート「この声の響き方…いや、待て、なぜ海の上で声が響く?」

 

綾波(…瑞鶴さんの術中か…!本気のようですね…)

 

綾波「ガングートさんグラーフさん!防御の姿勢をとって!狙われるならあなた達です!」

 

ガングート「何言っ…っぐ…?!」

 

ガングートさんが砲撃を受けてよろける

 

ガングート「なんだ!?ぎ、艤装が…動かない!?」

 

綾波(だめだ、致命的な部分に被弾してガングートさんはもう主砲を操作できない…陽炎さんと秋雲さんにとってこの近距離は得意な距離なんだろう…完全に向こうのペース…これ以上呑まれるわけには…!)

 

朧「…秋雲、陽炎、そこ、危ないよ…」

 

朧さんが虚空に主砲を撃つ

 

秋雲「うわっと!?」

 

朧「それ、アタシにも、できるから」

 

陽炎「ふんっ…こ、これくらい…!」

 

見えないが、砲戦になっている…

朧さんは主砲で攻撃しながら、砲弾を弾いている…

 

綾波(角度は…そして…ああ)

 

綾波「ここか」

 

煙に撃ち込む

 

秋雲「うわぁぁっ!?」

 

当たった

なら、斬り込めばいい

 

刀を抜き、進路を指し示す

何かを言う前に狭霧さんとタシュケントさんが詰め寄る

 

綾波(刀を帯刀させた選択肢は、悔しいが良い判断だという他ない…視界不良でこの距離なら砲撃よりは当たるだろう)

 

陽炎「痛っ…!あーもう!秋雲!?」

 

秋雲「逃げるが勝ちだって!」

 

朧「逃がさないよ」

 

陽炎「ぐぇっ」

 

秋雲「ちょっ、か、陽炎!?ぎゃあっ!?」

 

辺りの煙が晴れる

陽炎さんには朧さんが馬乗りになり、後頭部に主砲を突きつけており

秋雲さんは両脇から刀を差し向けられていた

 

狭霧「降参…してくれますよね?」

 

秋雲「…するする、しますって…」

 

陽炎「……」

 

朧「陽炎はまだやる?」

 

綾波「いや、それ息できてませんよ、口と鼻が海水に浸かってます」

 

朧「えっ!?嘘!ごめん!」

 

陽炎「ぷぁ……あ、こ、こーさん…うん、死にたくないし…」

 

朧「ほ、ほんとにごめん…わざとじゃないんだ…」

 

綾波(朧さんは無自覚にやりすぎるな…)

 

朧「…?………こっち!」

 

朧さんが振り返り、虚空を蹴る

金属音が響く

 

青葉「っ…!ダメでしたか…!」

 

綾波「青葉さん、退いたのはブラフでしたか…全員周囲警戒!もう迫ってきててもおかしくありませんよ」

 

綾波(しかし、日向さんからも瑞鶴さんからも支援攻撃が無い?そんなバカな…)

 

ガングート「綾波!」

 

ガングートさんの艤装が日向さんの刀を受け止める

 

日向「…止められましたか」

 

ガングート「どうやって近づいた…!レーダーにも反応は無かったしグラーフも見落としをするようなやつじゃ無い…!」

 

綾波「光学迷彩…風の事をしてるだけですよ…しかし…瑞鶴さん!思ったよりあなた達の連携は穴があるんですね?いや…物理的に不可能なのか…」

 

聞こえているだろう

 

綾波「戦闘中は姿を表すのは姿を隠すことが不可能だから、派手な動きをするときや撤退の支援は煙幕のような大雑把な物で姿を隠す…その方が確実ですよね…日向さんが撃たずに近づいたのは、砲撃で見つかる事と、予定外の動きで迷彩がとけることを嫌って…」

 

日向(…お見通しというわけですか)

 

綾波「朧さん!龍田さんを捜してください!タシュケントさん、グラーフさん、狭霧さん!朧さんに追従してください!ここは2人でいい…」

 

グラーフ「私もか!?」

 

日向さんの放った砲弾がグラーフさんのすぐ側に着弾する

 

ガングート「その方がいい!巻き込まれるぞ!」

 

グラーフ「その様だな…!」

 

4人が離れるのを支援する

 

青葉「…一対一は、得意ですよ」

 

青葉さんが槍を構えた手に呪符を挟み込む

 

綾波「その呪符は私が作った物です、ナノマシンの集合体…全ては私の意思一つ」

 

青葉「演習でもやるんですか?そんな事」

 

綾波「勿論、そうしないと厳しそうですから」

 

綾波(せめていつもの艤装なら圧倒できたものを…)

 

青葉「破魔矢の召喚符!!」

 

呪符が光る、その光が辺りに散らばり、矢となって私へと伸びる

 

綾波「無駄で…ッ!?」

 

気付くのが遅れていたらどうなったかわからない…

でも…今のは…私が作ったものだったそれは…

 

綾波「…誰が複製したんですか?いや…もはや複製じゃないですね、根幹が違う、私がアクセスできなかった…」

 

青葉「明石さんとは、連絡が取れてましたから」

 

やはり、明石さんも凄い人だ…

 

綾波「これは、予想より頑張らなきゃいけませんね…!」

 

青葉「予想を上回れたみたいで、嬉しいですよ…!」

 

綾波「大きく、上回っています…!」

 

槍を蹴りで弾きながら立ち回る

 

綾波(距離を取るのはやめだ、下手に動くといい様にやられる…それなら、詰めて、とことん詰めてやる…!)

 

青葉さんの動作を観察し…予備動作を見極めろ

 

青葉(近い…なら)

 

青葉さんが半歩引き、片手で槍を縦に振るう

 

綾波「っと…」

 

青葉(退いた、次は…!)

 

突き下ろし、突き上げる2段攻撃…

 

綾波(…この動き……)

 

青葉(またかわされた…でも!)

 

左右の薙ぎを受け、体制を崩す

 

綾波「……ははは、成程…あなたも随分…面白い事をしますね…」

 

青葉「…なんのことですか」

 

綾波「直接やり合ったからこそ、わかります…その動き、さっきの縦に槍を振るう挙動、二段突き…ゲームの動きの再現ですか?」

 

青葉「……槍の扱いは、それしか知りませんから」

 

綾波(それでここまで立ち回られては…神通さんが聞いたら唸るだろうな…)

 

青葉「お粗末でしたか」

 

綾波「いいえ、踏み込みも…目線も、どれも一級品です、恐れ入りましたよ…全く…」

 

私の前髪を槍の先端が払う

 

青葉「なら、このまま」

 

先ほどと同じ、回転をつけた…横薙ぎが来る

 

綾波(かわすか詰めるか、腕に鎖帷子を仕込んでる様ですが、片腕の防御なんて簡単に破壊できる…いや、ここはかわすべきか…)

 

背後に飛び、間合いの外に…

 

青葉(跳んだ!!)

 

綾波(…目が…)

 

青葉さんの手の中で槍が滑る、竿の先から石突まで手の中で滑らせ、槍をそのまま振り抜くのが…その技なのに…

 

綾波(中間で握った…?不味い、突き…)

 

防御に使っていた片手を添え、槍を押し出す様に、全身の勢いを乗せた突き…

 

青葉(決める!!)

 

全身に鋭い衝撃が走る

 

綾波「……ぐ…なんて、威力…!」

 

青葉「…掴んで止めるのは反則ですよ…本当なら指が飛びますから」

 

掴んで止めたのに、全身が痺れる様な、この衝撃…威力…

 

綾波「……ははは…御冗談を、こうしなければ私は死ななくても内臓が潰されてましたよ……それに、私は実戦でも…この槍が本物の槍でも、掴んで止めたでしょうね…」

 

青葉「そうですか…」

 

綾波(なんでゲームばかりしてるはずのあなたがそんなに強いのか…意味わかりませんよ、本当に…!)

 

手が痺れて槍を掴み続けるのも厳しい、青葉さんが槍を引いたと同時に片膝をつく

 

綾波(破壊力は言うまでもないが、単純な技だったから対処できるはずだった、でも…直前で選ばれては…対処のしようがない)

 

青葉(…大丈夫、うまくいった…まだ試したい事はあるけど…)

 

後方に振り返った青葉さんの姿が突如現れた霧に消える

 

綾波(マズイ…!朧さん達の方に行くんじゃ…)

 

立ち上がり、霧を見つめる

何も見えない…まさか背後から強襲してくるのか?

 

ガングート「うぐっ!」

 

綾波「そっちか…!」

 

霧が晴れ、日向さんと青葉さんがこちらに向かってくる

 

綾波「……ガングートさんを先に狙いましたか」

 

青葉「…龍田さんが危険なので」

 

日向「ええ、私は無粋な真似をするつもりはありません」

 

日向さんが背を向けて別の方向に動く

 

綾波「一匹狼ですか」

 

青葉「…いいえ、時間さえ稼げば他の人達は3人が倒してくれます、その間の時間稼ぎです」

 

綾波「時間稼ぎ?勝つのは諦めましたか」

 

青葉「…狼は群れで狩りをするものでしょう?」

 

綾波「…成程、その通りだ」

 

主砲と機関を外し、海に捨てる

 

青葉「…なんですか」

 

綾波「馴染まない装備を使う余裕はないなと…これ、ナノマシンタイプなんですけど…私既に別のナノマシンをインストールしてるので、合わないんです」

 

青葉「…そうですか」

 

青葉さんが片手に主砲を持つ

 

綾波(…呪符は節約か?…まあ、いい…この方が細かい動きができる)

 

脚部艤装のみ、つまりは…推進力は自分の脚だけ、進むにはこの海を走らなくてはならない

航行速度ほどのスピードは出せないが、瞬発力と旋回などの細かい動きには優れる…

 

綾波(行きます…!)

 

青葉(蹴りなら朧さんで慣れてます!それに…)

 

砲撃をかわしたところを炎に襲われる

 

綾波「なっ…」

 

青葉「炎殺球の呪符…」

 

綾波(砲撃をかわしたところに炎…主砲を見せたのは意識させる為、本命は呪符…接近するのも、難しい…)

 

綾波「……私にそこまでして黒星をつけたいという事ですか、いいでしょう…」

 

青葉「火焔太鼓の召喚符!」

 

砲撃を弾き、召喚された炎の中に突っ込む

 

青葉「えっ」

 

綾波「他の呪符なら止まったかもしれませんね…!」

 

炎を突っ切り、手で水を掬い、前方に飛ばす

 

青葉「うわっ!?」

 

海水は目には入らなかっただろうが、目を瞑った

 

青葉「い、居ない!?…え?」

 

青葉さんの目は海面に残された脚部艤装に釘付けになっているはず…

 

綾波「本当に勝ちたいなら、手段は選ばない事です!」

 

青葉さんの脚を掴み、水中に引き摺り込む

 

青葉(潜って…!?あ、わ、私あんまり泳げない…!)

 

綾波(この焦り様…まさかカナヅチだったんじゃ…)

 

 

 

 

青葉「ぷはっ!…はー…はー…ぎ、艤装がついてると…足だけ浮くんですね…その…頭は沈むのに」

 

綾波「すみません、泳げないとは知らず」

 

青葉「まさか水中から来るとは思いもしませんでした、してやられたって感じですね…でも、それなら魚雷とか砲撃で良かったんじゃ?呉との戦いでやってましたよね?」

 

綾波「…できなくはないんですけど…青葉さん相手に通用するのか、一度見せた技を再び使うリスク…そして移動された際の対処……色々考えると、1人で戦う時に使う手段ではありませんから」

 

青葉「…水没で負けなんて…ホントに船みたい」

 

青葉さんが槍を投げ出す

 

青葉「こんなに強い人が味方なら…きっとみんな安心ですね」

 

綾波「…受け入れてもらえる様に精進します」

 

しかし、青葉さんは幾分…甘すぎるな、致命的な程に

 

綾波「こちら綾波、青葉さんを撃破しましたが…私もリタイアです、艤装がイカれました」

 

朧『えっ?……じゃあ負けだよ、こっち全滅してるし』

 

綾波「……何があったんですか」

 

瑞鶴『もしもーし!聞こえてる!?』

 

無線機をつい落とす、耳がキーンとする

 

綾波「はい…聞こえてますけど…」

 

瑞鶴『演習負けたんだから、どうなるか分かってんでしょうね!?』

 

綾波「……ええ、とりあえず…戻りましょう」

 

朧『ごめん、背後から来てた日向さんと龍田さんにボコボコにされちゃった』

 

綾波(…仕方ない…か)

 

 

 

 

青葉「綾波さん、まだ全然戦えたんじゃないですか?」

 

綾波「まあ、艤装を潰すつもりで使えば…でも、この艤装潰したらストックがなくなるんですよ、うちは裕福ではないので演習で偽装を破壊されては困るんです」

 

瑞鶴「それで勝ちを譲ったって?」

 

綾波「そんなつもりはありません、まさか負けるなんてというのが本音です、その…日向さんに全滅させられるとは…」

 

瑞鶴「一応言っとくけど私の艦載機の援護あってのものだから、私たち佐世保の勝ちだから」

 

綾波(何を…?ああ、青葉さんも日向さんも離島出身だからそれを気にしてるのか…)

 

綾波「わかっています」

 

大きくため息をつく

 

綾波「…負けは負けです、好きにしてください」

 

綾波(どのみち明石さんがバラしてる可能性はある、今更気にしても.仕方ない)

 

瑞鶴「……じゃあ、先に説明してくれる?あんたが言ってた…アヤナミっての」

 

綾波「…アヤナミのことを?」

 

瑞鶴「説明して、あんたが綾波じゃないの?」

 

綾波「………簡単に、ざっくりとだけなら……」

 

アヤナミの存在、現在と立場について説明した

 

 

瑞鶴「…つまり、私がそれをバラせば…そのアヤナミは居場所を失うかもしれない、と」

 

綾波「…みんな優しいですし、無条件に叩き出したりはしないでしょう…しかし、本土に送られるかもしれない…記憶を失っているとしても、あの肉体は情報の宝庫だと考える人もいます、あそこにいるのが…一番安全だったんです」

 

瑞鶴「…あんたが面倒見るのは」

 

綾波「私がその立場ならいきなり出てきた同じ顔したやつに面倒見られるなんて怖いですよ…それに、記憶を戻すのも不可能です」

 

できなくはない、だが…アヤナミは私の代わりになろうとする

 

瑞鶴「……あ、そ…まあ、私には関係ないから」

 

綾波「…そうですね」

 

瑞鶴「約束したのは、私たちが負けたときの条件、勝ったときのことは何も決めてないっけ」

 

青葉「そうですね、特には…」

 

瑞鶴「…言いふらしたところで寝覚め悪いだけだし、言いふらす様な事はしない…だけど、2度と悪事を働かないで」

 

綾波「……感謝します、深く…深く」

 

頭を下げる

 

青葉「…あ、そうだ、瑞鶴さん」

 

瑞鶴「何?………ふーん…そっか、それでいいか、ねぇ、綾波」

 

綾波「はい」

 

瑞鶴「横須賀に送った最新装備、こっちにも回しなさい、それで勘弁してあげる」

 

綾波(もともと各地に配備するつもりでしたが…丁度いい、落とし所にしてくれるならそれに乗ろう)

 

綾波「その様に」

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