元勇者提督 作:無し
離島鎮守府 食堂
教導担当 キタカミ
キタカミ「で、どうよ、電話の結果は」
ワシントン「……確かに、私たちは帰れば犯罪者扱い、居場所はここにしかないみたいね」
キタカミ「いやー、そうだろうね、なのにこっちでも傷害事件起こすようじゃね」
ワシントン「……」
キタカミ「アンタらさ、大使館に行った時スパイしろって言われたでしょ」
ワシントン「…そんな事ないわ」
キタカミ「まあ、隠したいのかなんなのかはどっちでもいいけど…それ、続けてたら自分達の首絞めるだけだよ?帰る国はない、だから日本に留まる…のに、そこで子供に怪我をさせました〜って」
ワシントン「貴方も、まだ子供に見えるけど」
キタカミ「私は大人びてるから、それにアンタらに怪我させられるほど弱くないし」
ワシントン「……歩くのに杖を使うのに?」
キタカミ「クセだね、それだけだよ…で、あんたらさ、これからどうするつもりよ」
ワシントン「…みんなに全部話してみて、それから…」
キタカミ「だと思った、悠長だよね、そんなの待ってもらえると思ってるんだ」
ワシントン「…待ってくれないの?」
キタカミ「当たり前でしょ、もう何ヶ月になるよ、2ヶ月だよ?そんだけ経ってコレ、終いには今回のコト、朝潮の姉妹達は大変におかんむり、アンタらがまずやるべき事は謝ることからだね」
ワシントン「…朝潮に謝るのね」
キタカミ「当たり前じゃん、追いかけ回して結果転けた、みんな知ってるよ、どっちが悪いか明白じゃん?」
ワシントン「…そうね、そうでしょうね…」
キタカミ「朝潮は優しいからその辺のことは自分で転けたって言うだろうけど、アンタらより敵視されてくだろうしさぁ……なんか、納得できないとは思うけど…とりあえず、誠心誠意謝ろっか」
ワシントン「…わかった」
キタカミ「いやー、崖っぷちの相手に一方的に要求押し付けるのって気分いいねぇ?」
ワシントン「…いい性格してるって言われない?」
キタカミ「おかげさまでよく慕われてるよ、一番追いかけ回したアイオワとアトランタ、しっかり連れてきなよ」
ワシントン「…わかってる…」
キタカミ「…あん?」
緊急の連絡の時に流れる短い音楽がスピーカーから流れる
アケボノ『問題発生しました、アイオワ、アトランタ両名が脱走、最終目的地点は埠頭、艤装を不正に持ち出した様です、手空きの人員は至急執務室に』
ワシントン「……なんてこと」
ワシントンが頭を抱える
キタカミ「まー、大丈夫、死にゃしないよ、手出さない限りはさ」
一応ウチで面倒見てる以上…粗相の始末はしてやらにゃならないだろう
キタカミ「…とりあえず、優先順位1番にアメリカ連中を抑えるが出てきたし、アンタはさっさと他のメンツのとこ行ったら?」
ワシントン「…捜しには…」
キタカミ「邪魔になるかな、それに…もしアトランタ達が撃って来た時、アンタどっちを撃つのさ、答え次第で今殺すよ?」
ワシントン「……大人しく、してるわ…」
キタカミ「それがいいね、大人しく祈ってな」
執務室
キタカミ「ういー、遅れたけど、もう行った?」
アケボノ「まだです、空母中心に捜索部隊を編成中です」
海斗「…待って、本当に?……わかった、君たちはその場で待機できるかな、もし見つけたら報告して…うん、お願い」
アケボノ「…どうされました」
海斗「任務から帰投中だった阿武隈の部隊が遭遇して襲われたって」
キタカミ「は?」
海斗「…朝霜達が連れて行かれたみたい、目的はわからないけど…」
キタカミ「…怪我人は」
海斗「阿武隈と潮は無事、朝霜、早霜、清霜はわからないらしい…もしもし、明石?急いで夕雲型の艤装の発信機を確認して」
アケボノ「捜索隊、すぐに出撃を、まず阿武隈さん達と合流してください」
バタバタと人が流れる
言葉が行き交い、それぞれの仕事をする
…私は、何をすればいい?
この苛立ちをどうすればいい?捜しに行って、みつけたら…
アトランタとアイオワなら間違いなく殺す、絶対に、例え清霜達が無事でも殺す…やってはいけない事を何度もやった以上…絶対に
海斗「キタカミ」
キタカミ「ん?」
海斗「…君は択捉達についてあげてて、不安がってるみたいだから」
キタカミ「…私の鼻があれば早いんじゃない」
海斗「…択捉達をお願い」
殺す事は認めない、という事らしい
キタカミ「……あいあい…わかりましたよっと」
アケボノ「随分恐ろしい顔になっていますよ」
海斗「朝霜達を出迎える時は、優しくしてあげてね」
キタカミ「…見つかる前提?」
海斗「見つける、絶対に」
無人島
駆逐艦 朝霜
朝霜「……ンだよこれ…なんであたいら…こんな目に…」
帰投中にいきなり捕まって、艤装の燃料抜かれて、挙句艤装はどっかに捨てられて…
早霜「…大丈夫、この島は岩だらけというわけじゃないから、きっと1日くらいは持つわ」
清霜「おー…ホントに?」
朝霜「…チッ……こんなとこじゃ退屈すぎて…あ?」
遠くに黒い影…
いや、見間違えようがない、深海棲艦だ
それも駆逐級…1番の雑魚…
朝霜(艤装ありゃ、ぶっ殺してやんのに……あ?)
清霜「…深海棲艦だ!こっち来てるよー!?」
早霜「…島の奥に逃げましょう」
2人に無理やり立たされ、森林の方に引っ張られる
朝霜「別に逃げる事ねェだろ…」
清霜「危ない!」
清霜に頭を押さえつけられる
顔面が砂に埋まり、鼻が潰れる様に痛い
朝霜「ぶはっ!何しやが…」
すぐ先で、砲弾が爆発した
朝霜「撃って来やがった…!チッ!」
早霜「それだけじゃない…上陸して来た」
朝霜「あァ?!ンなわけ……なんで陸に上がって来てんだ!?」
遅い、だが…確実にこちらへと迫って来ている
早霜「早く逃げないと、全員…」
朝霜「……逃げるぞ!!」
…また、こんな思いをするのか
惨めで、怖くて、辛くて
朝霜「っはぁ…はぁ……ここ、まで…来りゃ、良いか…?」
なんとか駆逐級から逃げ切って
山の中腹の森林に姿を隠す
早霜「ふー…はー……」
清霜「…静かに、何かいるよ」ら
清霜に口を抑えられながらあたりを見渡す
朝霜「!」
深海棲艦、それも…人型のやつもいる
数も多い…
朝霜(こんなとこに深海棲艦の隠れ家があったなんて…どうなってやがんだよ、全然知らなかった…)
鎮守府から離れては居ないはずだ…だが…
清霜「離れよう、見つかったら殺されちゃう」
早霜「そうね、急ぎましょう」
朝霜「…待て……は、走るのか…」
まだ、息が整いきってない…
頭が酸欠でクラクラするし、このまま動いてもこけそうで…
清霜「今行かないと見つかるかもしれないよ」
早霜「…ゆっくり、離れましょう」
朝霜「わ、悪りィ…」
少し下がった途端、周りのカラスが飛び立つ
清霜「……」
早霜「何…?不吉な感じ…」
清霜「見つかった…」
朝霜「あ…?」
近くの木がバリバリと音を立てて裂ける
早霜「走らないと」
朝霜「クソッ!!」
清霜「こっち!」
清霜に先導され、山を駆け降りる
木の間をすり抜け、丘を滑り、落ち葉をかき分けて逃げる
朝霜「かっ…はー……かひゅっ…はー…」
早霜「ごほっ…ぜぇ…はぁ…」
死にたくないという気持ちで走り続けた
本当に体力の限界まで走った
今度こそ、撒いたはずだ
清霜「……うん、追ってきてないと思う」
朝霜(こ、こいつ…息切れしてねェ…体力お化けめ…)
早霜「…はっくしゅんっ!」
朝霜「うー…確かに冷え…ぇ…っくしょい!!」
清霜「…寒い?」
朝霜「当たり前だろ、冬真っ只中に混んだか汗かいて湿った服着てるんだぞ、そりゃ冷えるだろ」
早霜「う…ぅ……」
清霜「火を起こすのは…怖いけど…どうしよう」
朝霜「…そうか、煙でバレちまうのか…」
清霜「うん、どうしようかな…」
朝霜「……腹も減ってきた…」
腹の虫がさっさとメシをよこせと鳴く
早霜「…このままここにいるのは危険だと思うの」
清霜「…深海棲艦が陸で活動するなんて聞いてない…いや、前に東京侵攻の事例…」
朝霜「おい、清霜」
清霜「え?」
朝霜「とにかく、ここから離れようぜ、あたいも寒くなってきやがった」
清霜「……うん、わかった」
早霜「…あら…戦闘音が」
朝霜「様子見に行こうぜ…味方かもしんねえ」
離島鎮守府 執務室
提督 倉持海斗
海斗「艤装は破損はしてなかったんだね?」
阿武隈「はい、燃料だけ抜かれてましたけど…」
キタカミ「アメリカに帰るために?艤装に入ってる燃料なんてたかが知れてんのに、足りるわけ無いじゃん…バカでしょ」
阿武隈(めちゃくちゃ怒ってる…)
海斗「加賀達から連絡は?」
アケボノ「お待ちください、今……交戦中のアイオワ、アトランタ両名を発見した様です、深海棲艦の群れに襲われている様ですね…それと、所属不明の二式大艇らしきものを見かけたと、こちらは捜索エリアより南西に離れた地点ですので関連性はなさそうですが」
キタカミ「二式大艇?…特務部の連中って事?」
海斗「水上部隊を編成して出撃、アイオワ達は艤装を破棄させてから保護…長門達に行かせて、それから…いや、なんでもない」
アケボノ「…憂慮されている事があるのでしたら、仰ってください、きっと応えて見せます」
海斗「…アケボノ、悪いんだけど君にも出て欲しい、特殊な…ウイルスバグを宿した深海棲艦に対しての対抗手段が足りてないから」
アケボノ「わかりました」
キタカミ「春雨がいるじゃん」
海斗「春雨はアヤナミから離れないと思うよ、それに交渉する時間が惜しい」
アケボノ「キタカミさん、申し訳ありませんが漣と山雲さん、それから長門さん、扶桑さんを呼んできてください」
キタカミ「わかった」
バタバタと全員が部屋を出る
海斗「……さてと…聞こえてた?」
綾波『ええ、バッチリ…お任せください』
二式大艇 機内
綾波
綾波「さて、波の流れなどから予測するに…この辺りか」
複数の小島を横目に二式大艇を着水させる
この辺りの海域は装甲空母鬼が居た頃に任せていた辺りだ
アレのせいで外来の野生動物が増え、生態系も狂っているし、深海棲艦の残党もいる
早いところ見つけたいが
綾波「…でも、見つけても連れ帰るわけには行かないんですよねぇ…どうしましょう」
海上を低速で移動する
綾波「……あ、深海棲艦…まあ、無視でいいか」
わらわらと湧いて出てくる深海棲艦を音波を流して黙らせる
綾波「これが効くならコイツらは"群れ"か…ボスは何処に…いや、刺激しない方が安全?」
要するに、ここから安全に抜け出せればいいのだ、力を誇示する必要は微塵もない
綾波「…食料と、水…だけ渡せばいいか、艤装は使えないみたいだし、大体の位置も教えてあげないと…おや」
こちらへと幾つかの深海棲艦が砲撃してくる
綾波(群れと野良の混合か、仕方ない)
最低限の深海棲艦だけを撃破し、上陸できそうな場所へと近づく
無人島
綾波「ふう…荷物が多いせいで疲れますね、ええと…この島の中にも結構深海棲艦が居るのかな、それなら危険かも……」
朝霜「あー!人だ!」
綾波「……しまった、いきなり見つかるとは」
だけど捜索対象の3人の無事が確認できただけよかった
綾波(…おや)
何も感じさせない様にしているが、私に疑念の目を向けている人もいる様だ
綾波「…ま、いいか……倉持司令官へ、聞こえてますか、合流しました、予定外ですけど」
海斗『場所はわかる?』
綾波「……海流などを詳細に記した地図を送っておきます、明日にでも迎えに寄越してください」
海斗『…それまで大丈夫?』
綾波「ええ、私はそこまでヤワじゃありませんから」
通信を切り、3人の方を向く
綾波「こんにちは、いやー、無事でよかった」
清霜「貴方誰?見たことない人だ…」
綾波「捜索隊のお手伝いをさせていただいています、綾波と申します」
清霜「所属は?」
綾波「…単冠湾です!」
実際にその基地は稼働はしているが、そんなところに綾波という艦娘は居ない
というか、今のところは綾波という名前を艦娘につけるのは避けられている、全部私のせいだけど
清霜「……」
綾波「毛布とお食事、持ってきたんですけど、如何ですか?」
朝霜「本当か!?良かったな早霜!」
早霜「…えぇ…」
綾波(…寒さによる震え、それと空腹による体力の低下…1日2日遅かったら深海棲艦に喰われていてもおかしく無かったな)
綾波「一度お洋服は脱いで乾かしましょう、こんなに汗で濡れていては…風邪をひいてしまいます」
早霜「…ありがとう、ございます…」
清霜「おー、サンドイッチだ!」
綾波「あ、勝手に…」
荷物を漁られ、食料を勝手に食べられる
清霜「んー……」
綾波(…やっぱりか)
清霜「はい、朝霜、早霜」
朝霜「なんでお前が先に1人で食うんだよ…」
早霜「…頂きます」
綾波「…ポタージュスープもありますよ」
清霜「いただきます!…あづっ!?」
朝霜「だからなんで清霜が一番に飲んでるんだよ!早霜に回せよ!」
清霜「ご、ごめんなざぃ…お水もある?喉焼けちゃった…」
綾波「ええ、どうぞ」
早霜「…暖かい…良かった…ホントに」
綾波「それにしても、姉妹想いな方ですね」
清霜「うん、朝霜はいい子だよ!」
朝霜「清霜が突っ走ってるだけだろ…」
綾波(…本当に、気が回る…清霜さんは…厄介な程に)
朝霜「はー!食った食った!美味かった!ありがとう!」
早霜「本当に…助かりました…」
綾波「いえ、しかし…弱りましたねぇ…」
朝霜「あン?」
綾波「実は、海水にやられたのか無線機がダメになってて…私の馬力では皆さんを連れ帰る前に燃料が切れてしまいます」
朝霜「…じゃあ、遭難生活は続いたままなのか?いや…でも、誰か…」
綾波「皆さん、かなり変な流され方をしてるんです、多分捜索方向の真反対なんじゃないかな〜…」
早霜「…今夜は、ここで過ごすことになりそうね…」
綾波「大丈夫、今夜だけで済ませますから」
清霜「……」
朝霜「どーすンだよ、この辺深海棲艦だらけだぞ」
綾波「……見に行ってみましょうか」