元勇者提督   作:無し

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第467話

Link基地

駆逐艦 朧

 

朧「……」

 

二式大艇が帰ってきた、こんな早朝に、だ

綾波はどうでもいいことにうるさい、例えば二式大艇を飛ばすのも早朝とか深夜は避ける

近隣の人に迷惑だって

 

そんな綾波がこの時間に二式大艇を動かしたとなると…

 

絶対におかしい、最近の綾波は確かにおかしいくらい働いてた、でも、いつもと変わったところといえばそれくらい…

つまり、要するに綾波がこの行動を取るのは、不自然、余程の緊急事態

 

朧(乗ってるのが綾波だけなのかも…わからない)

 

機体が降りるときに吹き付ける風で匂いが散る

誰がいるのかわからない

 

基地の方からガングートやリシュリューも異変を察知して出てくる

 

何が出てきても、戦う準備はいい

万が一の場合の事も想定してるし、綾波をすぐに回収する用意も…

 

朧「…降りた」

 

ハッチが開く

 

朧「……あ、アケボノ!?」

 

アケボノ「朧…ちょうどよかった、面倒な説明は省けそうね」

 

なんでアケボノが二式大艇に…

いや、ということはアケボノが綾波と闘った?

 

朧「…綾波は…!」

 

アケボノ「中で倒れてる、それより朧」

 

朧「…何」

 

アケボノ「帰るわよ」

 

朧「今は綾波を優先するよ」

 

アケボノ「……帰るわよ」

 

アケボノの声に圧が含まれる

 

朧「…綾波の無事を確認してから話をさせて」

 

アケボノ「話なんて要らない、アンタは離島(ウチ)の艦娘、勝手に出て行って…何もなし?許されると思ってんの?」

 

朧「提督なら許してくれる…」

 

アケボノ「なら許可を取りなさい!今はまだアンタの独断で決めたこと、せめて先に許可を取っていたなら100歩譲ってわかるけど」

 

朧「…リシュリュー、ガングート、行って、無関係な奴にまで手を出すタイプじゃないから」

 

ガングート「…ああ」

 

リシュリュー「通るわよ」

 

アケボノ「お好きにどうぞ、しかし…綾波はもはやどうにもならない」

 

ガングート「何…?」

 

朧「…ソレ、どういう意味?」

 

アケボノ「おそらくこのまま死ぬ、いや、間違いなく」

 

朧「だから、なんでだって聞いてんの…!」

 

アケボノ「毒を仕込まれたみたいだからよ、深海棲艦に」

 

朧「…!」

 

ガングート「…貴様がやったんじゃないだろうな!」

 

アケボノ「違いますよ、私は毒なんか使いません」

 

リシュリュー「朧」

 

朧「…確かに毒は使ったことないし、真実だとは思う…でも」

 

深海棲艦に遅れをとる様な事、信じられない

 

アケボノ「そこで私を睨んでいる暇があるなら、さっさと病院にでもかつぎ込めばいい」

 

ガングート「言われなくてもそうする!!」

 

リシュリュー「狭霧!早く出てきて!」

 

…重い

空気が、重い…

 

アケボノ「…帰るわよ、みんなアンタを心配してる」

 

朧「まだ、帰れない…」

 

アケボノ「仲間を捨てるの?私を?曙を?潮を?漣を?捨てるの?」

 

朧「そうじゃない!……ここのみんなも、アタシにとっては大切な仲間なんだ…だから…」

 

アケボノ「アンタだって綾波に苦しめられたのに」

 

朧「っ…」

 

アケボノ「みんな傷つけられたのに、あんなに恨んでたのに、許せなかったのに、今更何?……漣のことわかってる?離島にいる車椅子の頭いかれたアヤナミを見て怯えてるのよ?ソレでも必死に我慢して一緒にあの島で生活してる」

 

…わかってる

 

アケボノ「アンタ言ったわよね、漣は誰より優しいって、あのバカ()が居ないのも、アンタがいないのも凄くストレスなのに、ソレでも文句ひとつ言わない漣の気持ち考えたことある?アンタがやりたいことって漣に辛い想いを強いる事?」

 

…ぐうの音も出ない

 

漣のことは確かに気にかかってる

だけど…

 

アケボノ「アンタに何ができんのよ、アンタはここで何をなそうとしてるのよ、アンタの守るべき仲間は…どこに居るのよ」

 

朧「……」

 

アケボノ「わかったから、帰るわよ」

 

朧「…アタシは、まだ…帰れない」

 

アケボノ「まだわからないの?それなら…」

 

アケボノの腕が白く染まる

 

アケボノ「ぶん殴って連れて帰るケド」

 

朧「…アケボノ、お願い、見逃して…アタシ達は…別方面でみんなのために戦ってる、確かにアケボノからしたら違うと思うかもしれないけど…」

 

アケボノ「…私じゃない、提督に許しを乞え」

 

…だから面倒なんだ

アケボノは、だから面倒、だから、話を聞かない

 

朧「…提督はこの事を知ってるの?」

 

アケボノ「お知らせする必要はないと判断した」

 

朧「提督はアタシが綾波といることは知ってる」

 

アケボノ「そうね、それで?」

 

朧「…無理矢理連れて帰るのは、違うんじゃない?」

 

アケボノ「…違う?何が?…アンタを連れて帰る理由は2つ、勝手な行動を止めるため、だけど…こっちの方が大事よ…漣の為、潮の為…私の為、連れて帰りたい、それ以上の理由はない」

 

朧「……どうあっても、連れて帰る?」

 

アケボノ「そうね、私は綾波が嫌いだし、そんな嫌いな奴のところにアンタが居るのも納得いかない」

 

朧「意外と嫉妬深いんだ」

 

アケボノ「今更気づいた?」

 

アケボノの姿が揺れ、消える

 

朧「えっ」

 

アケボノ「それとも、まだ気づいてない?」

 

後頭部を掴まれ、顔面を地面に叩きつけられる

 

朧「ぁぐあ…!?」

 

レ級「話し合いになって、意識が緩んでる事、自分じゃ気づかなかった?私はアンタを叩き潰してでも連れて帰る…これでわかったでしょ」

 

頭がぼやける

 

アケボノ「…無駄な力を使わせないで」

 

朧(…ダメだ、意識…持たない…)

 

 

 

 

 

狭霧

 

狭霧(…不味いことになりましたね……あの圧倒的な力…今私が出ても無惨にやられるだけ、私はただ見てるしかない…)

 

アケボノさんが朧さんを連れて行くのを、じっと眺める

 

ガングート「おい!狭霧!」

 

狭霧「あ……それ、が…」

 

リシュリュー「…急いで手当を」

 

 

 

 

 

狭霧「……これが限界ですね」

 

失われた眼の部分は、肉ごと抉られていた為…かなり大雑把な処置になった

それと背中の傷…刺し傷だが…毒が、注入されている…

毒の方はまだ解析できていない

 

狭霧「…誰にやられたんですか…」

 

…アケボノさんではないだろう

この抉られ方、獣の手の様な躊躇いのなさ

深海棲艦の人型のタイプだろうが……

とりあえずアケボノさんは除外できる、彼女はこんな戦い方を好まないというデータがある

それに…今の綾波さんは精々駆逐水鬼と同レベルの力しかないが、無傷で済む相手などまあ居ない

 

綾波「…っ……ぅ…」

 

狭霧「!…わかりますか!綾波さん、狭霧です!」

 

綾波「さ…ぎ……さ…」

 

狭霧「無理に喋る必要はありません、今毒を解析しています、大丈夫ですからね」

 

綾波「……みん、な…は」

 

狭霧「あなたを心配してます、でも大丈夫、みんな落ち着いてますから」

 

大嘘も良いところだ

神鷹さんの様に綾波さんへ強い信頼を寄せている者は…ひどく憔悴している

絶対的強さを誇っていた綾波さんが急に…こんなにボロボロになるなんて

さらには朧さんも連れ去られた

精神的支柱を2本ともへし折られたのだから…

 

狭霧「…綾波さん、大丈夫ですからね…」

 

綾波「……ぁ…っ…か…は……」

 

呼吸すらまともにできていない

息を吸い込めば咳き込み、吐き出せば血を吐く

 

死ぬ

 

どう考えても…死ぬ、こんな状態で生きていられるわけがない

 

何より不味いのは再誕を失ったこと…

このままでは、本当に死ぬ

 

狭霧「……絶対に死なせませんから、私たちはまだ死ねません、まだやり終えてない仕事が山積みです、絶対に起きてもらいますよ」

 

 

 

 

 

 

狭霧「…あれ、みなさん…そんなところに集まって何をしてるんですか」

 

治療室は現在誰も立ち入らせない様にとガングートさんとリシュリューさんに言っておいたが…

全員入り口で座り込んでいるとは思わなかった

 

ザラ「…狭霧さん、綾波さんは?」

 

狭霧「…良くは、ないですね…」

 

神鷹「Nein(そんな)…」

 

ガングート「誰にやられたんだ、あの曙か、呉とやらに行けば良いのか」

 

狭霧「…違いますよ、アケボノさんは曙という名前でも別人です、あれは離島鎮守府のアケボノさんです」

 

ガングート「どう見ても同じ顔だった」

 

狭霧「とにかく別人です……それより、食事にしましょう?ずっと落ち込んでいては、綾波さんに怒られますよ?」

 

神鷹「…Ja(はい)…」

 

リシュリュー「…神鷹、なにか食べたいものある?」

 

神鷹「…ラーメン…アルバイトの後、綾波さん、作ってくれた…」

 

リシュリュー「ラーメン…ストックはあるかしら」

 

アークロイヤル「ある、私が知ってる」

 

リシュリュー「教えてくれる?あと…みんなもそれでいい?」

 

グラーフ「……ああ、正直…食う気はせんが…」

 

ザラ「…綾波さん、うるさいですからね…3食きっちり食べろって」

 

狭霧(…面倒な決まり事が、ギリギリのところでみんなを繋ぎ止めてくれている…)

 

…これで、みんなが持ち直してくれればいいけど

 

 

 

 

 

アークロイヤル「…おい、リシュリュー…具がないぞ」

 

リシュリュー「袋にはヌードルとスープの粉しかなくて…」

 

狭霧「…いや、それが普通ですよ…?」

 

ビスマルク「え…?綾波のラーメンはいつも具があったけど…」

 

狭霧(態々作ってたんですね…じゃあ冷蔵庫にストックが……)

 

狭霧「ああ、あった…煮卵と焼豚、それとネギ…ここはラーメン屋じゃないのに…」

 

神鷹「…美味しくない…」

 

リシュリュー「えっ……そう…?」

 

アークロイヤル「硬い…か?」

 

ビスマルク「ふにゃふにゃしてるっていうか…」

 

狭霧「…フライ麺だからですね、でもこれも普通なんですけど…」

 

アークロイヤル「…普通…」

 

ビスマルク「…綾波は随分と手をかけてくれてたのね」

 

狭霧「その様です」

 

正直、無駄な手間だとは思うけど…

 

ザラ「うーん…お昼はパスタにしましょう、美味しいものを食べれば少しは気持ちも前を向きますから」

 

リシュリュー「なら、夕飯は任せて、コースを振る舞うわ」

 

狭霧(食費が嵩む…ええと、今月の予算あといくらだっけ……絶対に足りない気がしてきた…)

 

ザラ「…狭霧さん」

 

狭霧「はい?」

 

ザラ「…私達のことは、自分たちでなんとかしますから…」

 

リシュリュー「…綾波をお願いね」

 

狭霧「………わかりました」

 

重荷、だけど…

この荷は、取り合いになるだろう

だって、綾波さんは…Linkにとってかけがえのない存在だから

 

狭霧「どんなことをしても、治しますから」

 

…どんな手段を使っても

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