元勇者提督   作:無し

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水中戦

佐世保鎮守府

軽巡洋艦 川内

 

川内「とーちゃくっと」

 

まあ、出迎えはないか…

 

北上(ほくじょう)して行く大井達を眺める

 

川内(……うまく行くのかなぁ…多分これは…)

 

作戦はうまく行っている

でも、敵の攻撃に対する対処は、まだ微妙

 

瑞鶴「あれ、かわうちじゃない」

 

川内「…あの、私、川内なんだけど」

 

瑞鶴「知ってる」

 

川内「…名前くらい、普通に呼んでくれない?」

 

瑞鶴「嫌だった?」

 

川内「割と」

 

瑞鶴「それは、ごめん、で?なんでそんな顔してんの?」

 

川内「…何も感じない?敵の狙い、本当にやろうとしてる事はなんなのか」

 

瑞鶴「…人間を殺しまくるとか」

 

川内「……何も考えてないって言われない?」

 

瑞鶴「バカにしてる?」

 

川内「バカだと思ってるの、多分…これ、何か、目的があるんだよ、でもまだ掴めてない」

 

瑞鶴「…全部倒せば済む話じゃないの?」

 

川内「じゃないと思ってるから…こうやって頭を悩ませてるんでしょ」

 

瑞鶴「……っ…!?」

 

川内「どうかし…ぁ…?」

 

遥か遠くの海に黒いモヤ

まるで風の様に消えたそれは…確かに心をざわつかせて、不安を…

 

川内(…私が、こんな感覚に陥るなんて…)

 

瑞鶴「…見た?」

 

川内「見たよ、あれは…何?」

 

瑞鶴「…わからない、真っ黒なモヤに包まれた何か……わからない、けど…確かに聞こえた…「許さない」って」

 

川内「…許さない…?つまり、あれ…人?誰の声だった!?」

 

瑞鶴「わからない…声が、潰れてた…壊れたスピーカーから流れてるみたいで…判別がつかなかった…」

 

川内「……この戦い、やっぱり裏がある…」

 

それを知らないままに戦うのは、間違いだ

 

 

 

 

 

 

離島鎮守府 工廠

潜水艦 イムヤ

 

イムヤ「新しい、艤装…私の?」

 

明石「そう、そうなんです!これ!試してもらえませんか!」

 

イムヤ「…いいけど」

 

受け取った艤装を眺める

 

イムヤ(…なんか、普通のとは違う…カートリッジのスロットもあるし、魚雷もある…でも、何かが違う)

 

イムヤ「これ、明石が?」

 

明石「…まー…設計は特務部です」

 

イムヤ(特務部…もしかしたら、昔綾波が設計したとかだったりして…)

 

とにかく、装着してみないと始まらない

艤装を装着し、身体を軽く動かす

 

イムヤ「…うん、いい感じ」

 

明石「本当ですか!良かったー…火力などもかなり上がってるんですけど…」

 

明石の説明が耳をすり抜ける

何も聞こえない

 

…これは、間違いなく綾波が作ったものだ、なんとなくだけどわかる

 

これは、私の艤装だ

 

明石「あのー、イムヤさん?」

 

イムヤ「ん?ごめん、何?」

 

明石「いや、ぼーっとしてたから、大丈夫かなって」

 

イムヤ「大丈夫、そうだ、春雨に自慢してこよっと」

 

明石「え?」

 

イムヤ「じゃ、また後で!」

 

明石「…まあ、いいからどうせ報告しなきゃだし…」

 

 

 

 

 

医務室

 

春雨「…それが、ですか」

 

イムヤ「うん、綾波、これは綾波が設計してくれたんだよね?」

 

アヤナミ「……多分…」

 

不安そうな顔でこちらを見る綾波

記憶がないから、自信がないんだろうけど

 

イムヤ「これつけたらなんか身体が軽いし!ガンガン戦果あげるから!ね!綾波!」

 

アヤナミ「……」

 

春雨「綾波さん?」

 

イムヤ「おわっと」

 

携帯が鳴る…

 

イムヤ「キタカミさんだ、緊急の呼び出しみたいだし、行くね」

 

急いで医務室を出る

 

アヤナミ「あ…」

 

春雨「綾波さん?」

 

アヤナミ「ダメ…!ダメ!止めて!」

 

春雨「落ち着いてください、何があったんですか」

 

アヤナミ「少し…思い出したんです…あの艤装はダメ…何か嫌な、何か…」

 

春雨「…止めないと…っ…?目が、あ……因子が、反応、して…?!…ぐ…う……!」

 

 

 

 

 

 

執務室

 

キタカミ「…というわけで、まあ、敵潜水艦隊を処理したいんだけどさ、水中の索敵を任せたいわけなのよ、もちろんレーダーとか使うけど…」

 

イムヤ「大丈夫、イムヤにお任せ!やってやるわ!」

 

キタカミ「……危険だよ」

 

イムヤ「でも、私がやらなきゃみんながもっと危険、それに…新しい艤装を試したかったから」

 

キタカミ「…その手のやつ?」

 

イムヤ「ああ、これは違う…」

 

もう随分前だ、この艤装を最後に使ったのは

綾波が完成させたデータドレインを、最初に宿した、歪な手を覆う様な艤装

 

イムヤ「これはデータドレインを撃てるの、ウイルスバグ出たら困るでしょ?でもプロトタイプ?みたいな感じだから…見栄えはあんま良くないかな」

 

キタカミ「綾波製か…ま、それは置いといて…じゃあ最新艤装は?」

 

イムヤ「これ」

 

キタカミ「…イムヤの艤装はあんま見ないから違いわかんないなぁ…」

 

イムヤ「じゃ、たっぷり教えてあげる…戦果報告期待してて!」

 

キタカミ「ん、待ってるよ、楽しみにしてる」

 

 

 

 

 

 

海に飛び込み、周囲を確認する

 

イムヤ(…まだこの辺りまでは来てない?…いや…感覚を研ぎ澄まさないと…絶対にいるはず)

 

潜水艦型の深海棲艦にはなった事もあるし、引き連れた事もある

 

…感じる、特有の息づかい

特有の動きを

 

イムヤ「…見えなくても、狙い撃てる」

 

魚雷を向ける

スクリューが静かに回りだし、魚雷が手元を離れる

 

イムヤ「戦果、あげてらっしゃい…!」

 

上の方が騒がしくなり始めた…と言うことは、出撃

 

阿武隈『お願いします!イムヤさん!』

 

イムヤ「任せて!」

 

阿武隈の隊の直属、それなら魚雷の指示もしなくちゃいけないけど

 

阿武隈『潮ちゃん!確認できた!?』

 

潮『水上部隊まだ見えてません!』

 

加賀『イムヤさん、できるだけそばにいて頂戴、見えないから巻き込まれるかもしれないわ』

 

イムヤ「わかりました!」

 

潮『前方で爆発!』

 

イムヤ「いや、アレは私の魚雷!あそこに潜水艦隊が居る!」

 

加賀『攻撃開始』

 

阿武隈『接近します!周囲に注意を払って!』

 

先手だ、とにかく先手を打つ

 

加賀『この辺りかしら』

 

潮『そこです!!』

 

爆雷が敵潜水艦を捉え、吹き飛ばす

海中でもみくちゃにされ、ズタズタになったソレを目隠しに、私も魚雷を差し向ける

 

イムヤ(…順調!…この艤装のおかげかな、全部が良い、いつも以上にいい動きができる!)

 

イムヤ「っ…?」

 

違和感

 

イムヤ(…身体が、固まる様な…慣れない艤装だから疲れ易い?…いや、そんな事ない…大丈夫…)

 

そんな不安とは裏腹に、感覚は研ぎ澄まされ、撃墜数は増えていく

 

阿武隈『すごい…半分以上1人で倒して…潜水艦ってそう言う役割でしたっけ』

 

イムヤ「…普通なら無理、だけど…」

 

この艤装、水中戦を考えて作られてる…

これなら、水中で誰にも負けない…!

 

イムヤ「さあ!戦果をあげてらっしゃい!」

 

魚雷を放つ

的確なタイミングで炸裂させ、爆発に巻き込む形で撃破する

 

イムヤ「やった…!また倒せた…!」

 

身体はまだ緊張のせいか硬い、だけど…

 

戦果十分!感度良好!

 

イムヤ「まだまだ行くわよ!」

 

 

 

 

 

 

Link基地

駆逐艦 狭霧

 

狭霧「…綾波さんが、消えた…か…絶対に秘匿してください、今それを知られては士気に関わります」

 

リシュリュー「で、でも…!」

 

狭霧「…気持ちまで死んでは、傷の治りにも響きます」

 

…何故消えた?綾波さんは何処に…

 

狭霧「…いや」

 

二つ可能性がある

綾波さんは…おそらく、あの自動砲台は綾波さんが作ったもの、つまり…こうなることを予見していた

だから、Linkを守る為に、もう一度立ち上がった可能性

 

そして、もう一つは…攫われた可能性

 

そもそも、この襲撃作戦は日本全域に対してのものだ

佐世保も呉も、かなりの数を相手にしているらしい

 

要するに…これは威力偵察

 

狙いは綾波さん1人、駆逐古鬼が綾波さんの潜伏先を探し出し、殺すための作戦だと私は踏んでいる

 

そしてあの自動砲台から…綾波さんの位置を割り出し、連れ去ったとしたら

 

狭霧「…リシュリューさん、二式大艇に人を集めてください、私達はここを離れなくてはなりません」

 

リシュリュー「…行き先は」

 

狭霧「…敵の本拠地」

 

リシュリュー「わかるの?」

 

狭霧「……わかるであろう、人の元に向かいます」

 

幸いにも敵は水上部隊を出してきていない

 

つまり、空は自由だ

 

二式大艇を堕とすのは容易ではない

今なら離島だろうが呉だろうが佐世保だろうが

何処にだって行ける

 

狭霧「……最悪の事態を、防ぎましょう」

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