元勇者提督   作:無し

477 / 625
潜水棲姫

ソロモン諸島 近海

綾波

 

綾波「さあ、持ってる戦力…全部吐き出しなさい」

 

大将首なんて後回しでいい…

 

戦艦級、駆逐級、空母級、巡洋級…どれも海の中から無限に出てくる

よくもまあ、これほどの数を集めたものだ

 

綾波(本当にこれで全部だろうか、本当にこれが全戦力なのか)

 

まだ、確信を持てない

だけど…もう、待てない

 

綾波「……おっと」

 

深海棲艦の砲撃が電撃に弾かれる

 

綾波「考え事をしてると…危険ですね」

 

主砲も魚雷も、とっくに弾が切れた

スペアも使い切ったし、何もかもを使い果たした

カートリッジなんてオートガードぐらいだ

 

綾波「でも、十分すぎる」

 

あと残されたのは、私自身の肉体と

鈍器として振りまわす主砲のみ

 

綾波(刀でも持てばよかった)

 

主砲を振り回すたびに腕に激痛が走る

血が撒き散らされ、出血が酷くなる

 

駆逐古鬼「何ヲ手コズッテイル…!」

 

砲撃を交わし、最低限受け、とことん殴り倒す

 

綾波(…ダメだな、だんだん、意識が鈍ってきた)

 

強烈な眠気

もう終わろうと囁く声がする

 

幻聴だ、でも、それに屈すれば私はあの幸せな世界にまた閉じこもることができる

 

…それの何が良いのか

私の正義は何処に行った、私の宝物を傷つけた奴等への復讐は何処に消え失せた

 

綾波「…おや」

 

身体をのけぞらせて振り下ろされた刀をかわす

 

綾波「良いもの持ってますね、それ、くれませんか?」

 

次の攻撃を前腕で受ける

刀が肉を割き、骨に当たる

 

駆逐古鬼「良クヤッタ!モウ左腕ハ動クマイ!」

 

綾波「まあ、捨てましたから」

 

ル級の腕を主砲で殴りつけ、刀をもぎ取り、ル級の首を突き刺す

 

綾波「……切れ味悪いですねぇ…錆びてるところもあるし」

 

横に振り抜き、首を裂く

 

片腕で振るうにはやや重いか

しかし大した問題ではない、今一番欲しかった、弾切れしない、殺しやすい道具

 

綾波「…最良ですね」

 

駆逐古鬼「…怯ムナ!ヤレ!」

 

砲撃を剣先でいなし、駆けて振り抜き敵を斬る

刀は確かに振り抜いた、が…敵は両断できない

仕留めきれない

 

綾波「…足りない、速度も、鋭さも」

 

黒いモヤが、私の体を包む

 

駆逐古鬼「ナ、ナンダ、ソレハ…!」

 

綾波「……私の、"綾波"の異名はご存知ですか?…ここは、ソロモン海、私は綾波」

 

ソロモンの鬼神であり

 

綾波「私が名を冠する(ふね)は、黒豹という異名を賜ったとか…ですので、この黒は…私に、良く似合う」

 

駆逐古鬼「…エエイ!サッサト殺セ!」

 

綾波「手負いの獣は、怖いですよ…特に、我が子を守る親は」

 

意識を呑ませる

刀を握る手が、より強く強張る

全身の痛みが、感じられなくなり…

 

綾波「……」

 

目の前の敵をもう一度見定める

 

 

 

 

 

 

太平洋 高速艇

教導担当 キタカミ

 

キタカミ「…潜水艦、あとどんだけいるんだよ…全然ダメじゃん、このままじゃ」

 

…もう何時間進んでるのか

敵を殲滅しながら本隊を探し、戦い続けているのに一向に敵本体が見つかる気配がない

潜水艦もどんどん逆に数が増えてる…

 

阿武隈「この辺り…どこだろう……あ、キタカミさん、前方に島が…!」

 

キタカミ「……あそこは……アレだ!トラック諸島…!」

 

ここまで来るのに滅茶苦茶時間かかったとは思ってたけど…

 

キタカミ(あーもう、頭回ってない、敵との戦闘に集中してそれに気づかない?2000キロは離れてる事になる…)

 

アケボノ「キタカミさん、先に進んでいるイムヤさんから、姫級を見つけたと…しかも2体」

 

キタカミ「……じゃあ、それをぶっ倒せば今回の戦いは決着?」

 

アケボノ「いいえ、頭を潰しても大量の深海棲艦が居ます」

 

わかってはいる

この大量の深海棲艦を倒し切らなくては…

 

キタカミ「っと…?」

 

この匂いは…

 

キタカミ「佐世保の連中?」

 

川内「ハズレ!」

 

阿武隈「うわぁっ!?」

 

キタカミ「川内…!なんでここに…」

 

川内「狙いは同じ、殲滅しようと思ってね」

 

瑞鶴「夜通し移動してたから疲れたー…ちょっと乗せて」

 

キタカミ「瑞鶴も居たんだ」

 

加賀「ほら、手」

 

加賀が瑞鶴を引き上げる

 

神通「あとは、私と」

 

那珂「那珂ちゃんだよー!」

 

キタカミ「……ホントどっからでも湧いてくるな」

 

神通「言い方に棘がありますね」

 

那珂「それよりー、姫級はいた?」

 

キタカミ「いる、それも2体」

 

川内「それさえやれば、とりあえずは落ち着くかな?」

 

キタカミ「…いや、そうでもないんだよね」

 

綾波が戦っている事と、Linkの事、それから、もう1人のアヤナミが連れ去られたことを説明した

 

川内「……今は姫級を倒す事に専念しよう、いい?」

 

キタカミ「もちろん」

 

 

 

 

 

 

潜水艦 イムヤ

 

イムヤ「…姫級の潜水艦か…ねぇ、どのくらい強いの?…綾波に操られてた私よりも強い?」

 

双子棲姫-白「ノコノコ、来タノネ…カンゲイシマショ?」

 

双子棲姫-黒「アア、ワカッテルヨ、姉貴」

 

イムヤ「どのくらい強いかって聞いたんだけどなぁ……」

 

2体の深海棲艦を視界の中心に捉え、しっかり狙う

 

イムヤ「…くら…っ!?」

 

また身体が、動かない…

なんで…どうして…

 

双子棲姫-黒「……ナンダ…オ前モ同ジジャナイカ」

 

イムヤ「…おな、じ…?」

 

動かなくなった身体に、なんとか視線をやる

四肢の先端が白く、染まり始めている

 

イムヤ「…え……」

 

双子棲姫-白「…貴女モ私達ト同ジ」

 

イムヤ「…嘘…嘘嘘嘘嘘!!そんなわけない!!こんなはずない!」

 

なんで?

私はもう深海棲艦じゃないのに、こんな事になるはずないのに…!

 

イムヤ(まさか、綾波の艤装が……ダメ!疑うな!)

 

そんな訳が、ないんだから

 

イムヤ「アンタらなんかと一緒に…しないでッ!!」

 

魚雷を発射する

しかし、的が外れている

 

双子棲姫-黒「イッ緒ニスルナ、カ…」

 

双子棲姫-白「仲良クハデキナイノナラ…」

 

イムヤ「…え…?」

 

潜水棲姫と同様の艤装が展開される

かつて、私が成ったソレと同じ艤装が二つ

 

生体部分の怪物がこちらに大口を上げて迫る

 

イムヤ(…大丈夫、アレはかつての私の力と同じ、だから…!)

 

身体が、動かない

 

肘まで、膝まで…白く染り、艤装が変質を始める

 

イムヤ「……嘘でしょ…?やめてよ…やめてよ!!信じさせてよ!疑わせないでよ…綾波は…私の大事な友達なの…!」

 

このまま、また深海棲艦になるのか、それともここで食い殺されるのか

 

末路は、見えた

 

双子棲姫-黒「喰ラエ」

 

その声に反応して前を見る

双子棲姫の艤装が、もう、そこに

 

イムヤ(…っ……)

 

…目を瞑った

抵抗することもできないのだから

 

ただ、怯え、耐えるしかできないのだから

 

私には

 

イムヤ「…痛く、ない…?」

 

目を開く

…艤装が、居ない…?

 

イムヤ「…!」

 

やや下に、ぐったりと沈んでいく生態艤装…

誰が…やったの

 

双子棲姫-黒「…ナンダ、オ前ハ…!!」

 

双子棲姫-白「深海棲艦…ダトイウノニ、敵対スルツモリカ…!」

 

イムヤ「…え…?」

 

…助かった…

 

レ級「なんという事はありません、私はただ……守らなくてはならない」

 

イムヤ「アケボノ…!」

 

双子棲姫-黒「ナンダ…貴様…!」

 

レ級「この人間の、友達ですよ、ね、イムヤ」

 

アケボノがこちらを見て笑う

姿が完全にレ級に成っている

 

…コントロールしている、深海棲艦の力を

 

双子棲姫-白「……深海棲艦デハナイ」

 

レ級「その通り、私は人間です、この姿は…訳あって、成れるだけ…さて、しかし…2対1というのはあまりにも卑怯でしょう」

 

双子棲姫-白「……私ガ」

 

レ級「では…イムヤ」

 

イムヤ「…何」

 

レ級「人払いはしてあります、解放してください」

 

イムヤ「…解放…?」

 

レ級「…深海棲艦の力を、使って下さい、貴方なら扱える」

 

イムヤ「……深海棲艦の…」

 

レ級「もし暴走しても、私が止めましょう…貴方は、私と綾波を信じればいい」

 

イムヤ「…アケボノと、綾波を…」

 

…そうだ

何を怯えていた

 

私には…

 

レ級「さて、行きますよ」

 

双子棲姫-白「ッ!?」

 

アケボノの尻尾が片方の深海棲艦に喰らいつく

 

レ級「これでも…水上戦以外の心得がないもので」

 

アケボノが深海棲艦を連れて急速浮上する

 

双子棲姫-黒「…オ前ヲ先ニスルカ」

 

イムヤ「…1人になっちゃったけど、大丈夫?」

 

もう、体は固まらない

こわばって動かなくなることもない

 

双子棲姫-黒「オ互イ様ダロウ」

 

イムヤ「…違う、私は1人じゃない」

 

双子棲姫-黒「ナニ…?」

 

イムヤ「私には…綾波やアケボノ以外にも、たくさんの仲間がいる…だから、私は、怖くない」

 

…身体が白く染まる

綾波の作ってくれた艤装が変化する

 

双子棲姫-黒「…ソノ姿ハ…!」

 

潜水棲姫「…また、この姿になるなんて」

 

今ならわかる

アケボノが、どんな思いで戦ってるのか

 

喰われる…命が

 

潜水棲姫「あんまり長くは戦えない…でも!絶対に、私が倒す!!」

 

艤装から魚雷を射出する

 

双子棲姫-黒「小賢シイ!」

 

魚雷を撃ち合う

直撃はしない、それでも確実にお互いがダメージを負う

 

双子棲姫-黒「チッ!!」

 

威力はこっちが上

当てさえくれば倒せるけど…

 

潜水棲姫(…一撃くらえばアウト…常に命を喰われてる感覚…身体中が痺れて、フワフワする…脳が痙攣してるみたいにバチバチしてヒリヒリする…)

 

…まだ、慣れてない

入ってくる情報が多すぎて、脳が正確に処理できていない

 

このままでは…

 

双子棲姫-黒「…ニブイ!!」

 

潜水棲姫「ぁ…!」

 

頭がぼうっとして接近する魚雷への反応が遅れた…!

 

炸裂した魚雷の衝撃を受け、吹き飛ぶ

 

潜水棲姫「ごはっ…あ…!」

 

双子棲姫-黒「アハハッ!!ウットオシインダヨ!!」

 

動きがブレた瞬間に、一切に魚雷が飛んでくる

 

潜水棲姫(…無理…!)

 

 

 

 

 

 

秘書艦 アケボノ

 

アケボノ「……おや」

 

双子棲姫-黒「…ナンダト…オイ!姉貴!ユルサナイ…ユルサナイカラナァッ!!」

 

アケボノ「それはお互い様でしょう、イムヤは…やられたのですね」

 

双子棲姫-黒「オ前モ…フットバシテヤル!」

 

魚雷だけじゃない

艦載機を射出し、攻撃してくる

 

アケボノ「……貴方のお姉さんは、どうやって倒されたと思いますか」

 

艤装を、召喚する

 

双子棲姫-黒「……エ…ナンダ…ソレハ…」

 

肌が、白く染まる、衣服が切り替わる

 

レ級「…これが、私の力の…一端」

 

離島棲姫と飛行場姫の艦載機を飛ばす

空を覆うほどに

 

戦艦棲姫の艤装を出し、魚雷を受けさせる

 

レ級「…ああ、艤装を扱ってるのは…当然私1人、1対1ですよ…卑怯なんて、言いませんよね?」

 

双子棲姫-黒「…ナ…!」

 

一斉射

 

双子棲姫-黒「ウガァァッ!!…ナ、ナンデ!ナンデソンナ…!」

 

レ級「…まだか、心は折れてるようなのに、頑丈な人だ…諦めれば楽になるのに」

 

詰め寄り、尻尾で弾き飛ばす

 

双子棲姫-黒「アグァッ!!」

 

レ級「もう一撃」

 

尻尾の艤装の先端の口が開く

大口径の主砲から砲弾が飛ぶ

 

双子棲姫-黒「ヒッ…!?」

 

どこまで吹き飛ばしたか…いや

 

レ級「なんだ、心配して損しました」

 

イムヤ「…心配…して、くれたんだ…」

 

双子棲姫をイムヤが掴み、魚雷発射管を突きつける

 

イムヤ「…ちょーっと……痛いけど…!」

 

アケボノ「うわ…」

 

ゼロ距離で、ありったけの魚雷を突き刺し、離脱…

 

双子棲姫-黒「ソンナッ!!コンナノ…!」

 

双子棲姫が爆発を受け、ズタズタになる

 

アケボノ「…死んだフリしてたんですか?」

 

イムヤ「そうじゃなくて、艤装が…庇ってくれたの、潜水棲姫のやつ……生体艤装だったから、勝手にね……それで間一髪生き延びた…でも、あの姿を維持する体力もなくて」

 

アケボノ「ギリギリの勝利、か…情けないですね」

 

白い方を掴み、持ち上げる

 

イムヤ「初めて使ったんだから許してよ!…でも、アケボノはアレを使いこなしてるなんて…凄いね」

 

イムヤさんが手に艤装をつけ、黒い方に向ける

 

アケボノ/イムヤ「「データドレイン」」

 

これで、頭目は仕留め切った

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。