元勇者提督   作:無し

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peaceful

フィリピン

駆逐艦 狭霧

 

狭霧「五名全員無事でしたか、よかった」

 

龍驤「な、なんや?あんたら…日本語喋っとるのに、ほぼ外人やし…どこの誰なんや…」

 

狭霧「我々は、Link…海を繋ぐ者です、あとこれ、そちらのキタカミさんから任を賜った証明になります」

 

書類を渡す

 

龍驤「…確認したわ、どうやらマジに助け舟みたいや…良かったぁ……あと何日持つか数えんのが億劫になる前でホンマに助かったわ…」

 

狭霧「…随分参ってるみたいですね」

 

龍驤「まあなぁ…食料も食い尽くしたし、そうなると現地で勝手にとるほかないやろ、でもこの辺の魚やらなんやらを取る道具もない」

 

狭霧「食糧を積んでなかったんですか?」

 

龍驤「いや、現地の人らに配ってもうたんや、食糧難はみんな同じやしな」

 

狭霧「それは徳の高い事で」

 

龍驤「せやろせやろ、ま、正直言うてここまで遅うなると思っとらんから、ついな」

 

狭霧「とりあえずですが、早速二式大艇の方に、ここに長居はできません、それに…未だ戦いは続いています」

 

龍驤「…せやな」

 

龍驤(ずっと気ィ張っとったから…休ませてやりたい気持ちはあるけど、そういう訳にもいかんか…)

 

春日丸「…あの」

 

狭霧「何か」

 

春日丸「……いえ、すみません、なんでもありません」

 

狭霧(…主人を求めているかの様な、不安そうな目…綾波さんに会いたいのでしょうが、そもそもここにはいない……綾波さんは、今どうなっているのか)

 

二式大艇を直接戦地に向けるのは正直危険だが

行くしかない

 

 

 

 

 

 

ソロモン諸島 近海 駆逐古鬼のアジト

アヤナミ

 

輸送級の体内から、ゆっくりと排出される

久方ぶりに見た空はすでに日が昇っていた

 

アヤナミ「……」

 

あきつ丸「綾波様、到着致しました、ここに我々の同胞がおります」

 

アヤナミ「…そうですか」

 

まだ迷いはある…が

駆逐棲姫、綾波、その、2つの名が残した爪痕を知った今

この行為に躊躇いはなかった

 

私は私の進むべき道を進む

すでにレールが敷かれているなら

 

私はそれを進むのみだ

 

駆逐古鬼「来タカ」

 

あきつ丸「は…綾波様をお連れいたしました」

 

駆逐古鬼「…フム…使イ道ハアルノカ」

 

あきつ丸「綾波様なら、海域全ての深海棲艦を統べることもできましょう、必ずやお役に立つかと」

 

駆逐古鬼「マア、良イダロウ……丁度、補充ガ必要ダトオモッテイタ」

 

アヤナミ「…一つ、伺っても」

 

駆逐古鬼「ナンダ」

 

アヤナミ「貴方は」

 

駆逐古鬼「…駆逐古鬼ダ、今、コノ瞬間ヨリ貴様ノアルジトナル」

 

可能な限り身体を傾け、頭を下げる

 

アヤナミ「…よろしくお願い致します」

 

駆逐古鬼「折角ダ、良イ物ヲ見セテヤロウ」

 

 

 

 

あきつ丸「これは…?」

 

駆逐古鬼「ツイ、先程ノ事ダ、私ノ兵ヲスベテ打チ倒ストイウ事ヲヤッテノケラレタ…毒ヲ喰ライ、四肢ヲ落トサレテモ…私ニ歯向カッテキタ…コレハソノ時ノ傷ダ」

 

衣装から覗く駆逐古鬼の背中は大きく裂けていた

 

駆逐古鬼「…然シ、ダカラコソ…コレニハ価値ガアル……我ガ手駒トナッタコレニハ」

 

ソレに無数に繋がれた管

虚を覗く片眼

 

アヤナミ「……」

 

鏡写しの、私

 

駆逐古鬼「コレハ最強ノ兵器ダ…駆逐水鬼ハ、モウマモナク完成スル」

 

駆逐水鬼…これが

 

アヤナミ(……これを、私は…)

 

 

 

 

 

 

 

海上 

駆逐艦 春雨

 

春雨「…潜水艦、可能な限りの掃討は終わりましたが…」

 

川内「こっからどこ行くの?」

 

イムヤ「確かに、どこに行けばいいかわからないと…」

 

神通「いいえ、わかります」

 

キタカミ「ちょっとでも匂わない?……この、濃ぉい…血の匂いがさ」

 

川内「…言われれば、血の匂いはするけど…」

 

神通「少し南進すればわかります、道導は無数にある」

 

 

 

 

 

川内「な、なにこれ…!」

 

那珂「…どれだけの戦闘が、ここで…」

 

深海棲艦の死体が海を埋め尽くしている

押しのけずに海を進むことが不可能なほどに

この大海原に山を作るほどの死体が、そこに存在している

 

キタカミ「……うん、やっぱ綾波の匂いがする…」

 

春雨「…え…?」

 

嘘だ、綾波さんは…両足が無い、もし車椅子だけで移動したとしても、自由には戦えない

 

いや、どう説明づけても無理だ、だって…こんな数、いくら雑魚でも…私にも、川内にも無理だ

今居る全員でも、無理、もしくはほぼ壊滅まで追い込まれる

 

春雨(…いや…まさか)

 

綾波さんは、まさか…ダミー因子を手に入れているんじゃ…

バタバタして確認していなかった

もし再誕で全て元通りになっていたら…

 

春雨「……あ…あの」

 

キタカミ「…どうしたの」

 

川内「なんか、まずそうどけど」

 

 

 

川内「…再誕をもし、綾波に取られてたとして…」

 

キタカミ「……これをやる意味ってなんだろうね」

 

確かに、私たちと再度敵対するためなら…この数の深海棲艦を倒す理由がわからない

掌握し、自身の手駒とするべきなのに

 

春雨「…じゃあ…」

 

キタカミ「手放しで喜ぶには早いよ」

 

頭に浮かんだ可能性を止められる

 

キタカミ「……進もう、死体が場所を教えてくれる」

 

…真実を、見に行かなくては

 

 

 

駆逐古鬼のアジト

アヤナミ

 

駆逐古鬼「ドウダ、素晴ラシイダロウ?」

 

駆逐水鬼の虚ろな目が私を射抜く

早くしろと、急かすように

 

アヤナミ「……ええ、とても…ですが」

 

だから、私は

 

駆逐古鬼「…ム…?」

 

あきつ丸「綾波様…?」

 

歩き出そう

 

アヤナミ「…再誕…」

 

 

 

駆逐古鬼「ゴホッ…ナ、ナニガ起キタ!!」

 

アヤナミ「一帯を吹き飛ばしただけです、大した事はありません」

 

周りにあった何もかもが、瓦礫になる

何もかもが、無くなっている

 

駆逐古鬼「…貴様…ヤハリカ!!」

 

アヤナミ「わかっていたのなら、招き入れない事です」

 

そのミスのおかげで、私の計画は進む…!

 

アヤナミ(…再誕のお陰で脚が再生した、だけど、体力を消耗しすぎた、今の一回で、私の体力をほとんど持って行かれた…)

 

やむを得ない、できる限りのことはする

 

チラリと後ろを見る

あきつ丸さんは、しばらくは起き上がらないだろう

駆逐水鬼は完成前に止められた

 

アヤナミ「…後は、私が頑張るからね…綾ちゃん、もう、良いよ…ゆっくり休んでください」

 

…眼が、再誕が、全てを教えてくれた

記憶も、何もかもが戻ってきた

 

例えそれが戻らなくても、例え脚がなくても、例え動くことさえ叶わなくても

私はもう決めていた

 

アヤナミ「…私は、この世界の最後の砦になりましょう」

 

駆逐古鬼「…ハハッ…ハハハッ!!ソウハイクモノカ!」

 

駆逐古鬼が艤装を召喚し、こちらに撃ち込んでくる

 

アヤナミ「…!」

 

しばらく無かった脚での動きには、身体が慣れていない

どう動けば良い

 

どう戦えば良い

 

アヤナミ(…大丈夫…私は、まだ、頑張れる…)

 

ステップを踏むように砲撃をかわし、接近を試みる

 

駆逐古鬼「艤装モナイ貴様ニ負ケルト?…舐メルナ!!」

 

アヤナミ「…!」

 

肩に被弾

地面を転がり、突っ伏す

 

駆逐古鬼「ハハハハハ!!…コレハ、僥倖ダ…取リ逃シタチカラガ、自ラノコノコヤッテクルトハ…」

 

近づいてくる足音を聴く

そうだ、後少し、もう少し…

 

駆逐古鬼「モウ一度、目ヲ抉ッテヤル、ソシテ…殺ス」

 

アヤナミ(今だ!!)

 

起き上がりざまに殴りかかる

 

駆逐古鬼「…ハ……」

 

…私の攻撃はようやく届いた、しかし…

 

駆逐古鬼「効カンナ?コレデ倒スツモリダッタノカ?マサシク児戯ヨ、ナニモデキズ死ヌカ」

 

アヤナミ「…そんな…」

 

…今の私の力は、ただの人間のそれと何も変わらない…

まさか、そんなわけ…

 

いや、これが現実…

 

 

 

 

 

駆逐艦 春雨

 

春雨「あれは…」

 

キタカミ「……色々、遅かったのかな…」

 

たった今、綾波さんの目が、引き抜かれた

まさしく、この瞬間に

 

駆逐古鬼「…仲間カ、ククッ…遅カッタナ…!」

 

深海棲艦が綾波さんを投げ捨てる

意識が無いのか、それとも死んでいるのか、ピクリともしない

 

春雨「……許さない…絶対に…!」

 

両手を振るう

籠手から刃が飛び出す

 

キタカミ「…冷静になりなよ、敵は、1人じゃない」

 

駆逐古鬼「…ハハハ…完成シテイタカ…!起動シタ…完全ニ…」

 

瓦礫の中から、ソレが姿を表す

 

春雨「え…」

 

キタカミ「……2人とも、ここにいたわけだ」

 

駆逐水鬼「……」

 

春雨「…綾波、さん…?」

 

…今さっき、投げ捨てられたのは?

そして、目の前にいる、この敵は…

 

キタカミ「……やるよ」

 

川内「春雨!ボサッとしてないで!」

 

春雨「…どうなって…」

 

神通「2人いた、と言うだけでしょう」

 

どういうことだ

何故2人いる

 

春雨(わからない、わからない…!)

 

川内「春雨!!」

 

春雨「…ぇ」

 

いつのまにか、目の前にいた駆逐水鬼の腰から伸びた大腕が私に向けて伸びる

 

神通「はぁッ!!」

 

神通の槍、そしてAIDAの腕がソレを受け止める

 

駆逐古鬼「サア、全部、殺セ」

 

深海棲艦が瓦礫の山の奥へと消えていく

 

川内「逃がす…かッは…」

 

川内が砲撃を受けて吹き飛ぶ

 

駆逐水鬼「……」

 

那珂「川内姉さんじゃなくて…那珂ちゃんを見てよ!!」

 

那珂が接近戦を仕掛け、神通から引き離す

 

神通「那珂ちゃん!絶対に腕の攻撃をくらわないで!一撃でもくらえば…」

 

那珂「わかってる!」

 

…目の前で起きてる光景が、まだ理解できない

 

キタカミ「聞こえる!?こっちキタカミだけど!!」

 

キタカミさんが無線に怒鳴る

 

狭霧『はい、聞こえています』

 

…無線の相手は、鎮守府で見かけた人か

 

キタカミ「…綾波、殺されてたよ」

 

狭霧『……そうですか』

 

キタカミ「どうなってんの、綾波は、なんで…」

 

狭霧『なんでも何も、ありません…綾波さんは1人で戦い続けた、1人だったから、孤独だったから、何もかもを失った』

 

…1人で、戦っていた?

 

綾波さんにとって、私達は?

イムヤさんは?敷波さんは?朧さんは?私は?

 

…仲間では無かったのか

私達は、分かり合えていなかったのか

 

狭霧『…急行します、それまで、うまく時間を稼いでください』

 

キタカミ「…了解……でも、時間稼ぐったって…」

 

狭霧『適任を、送り込んであります』

 

キタカミ「……ああ、こりゃ確かに」

 

風が、流れる

 

ピリピリと肌に感じる、向かい風

 

アケボノ「…増援か」

 

アケボノさんに釣られて振り返る

 

春雨「何処に…」

 

アケボノ「少し、上です」

 

そう言われて、視線をやや上にあげる

 

もうすぐそこまで迫っていた

 

朧「せいっ!やぁぁぁぁッ!!」

 

朧さんが駆逐水鬼を蹴りで吹き飛ばす

 

駆逐水鬼「っ……」

 

朧「…綾波、止めに来たよ」

 

春雨「朧さん…!綾波さんは…」

 

朧「春雨、細かい話は後、今は綾波を止めよう……綾波もそれを望んでる」

 

…やはり、この駆逐水鬼は綾波さんなんだ

 

構え、姿勢を低くする

 

春雨「…はい」

 

朧「綾波、安心して、絶対に、止めるから」

 

春雨「……綾波さん…」

 

朧さんの眼は、綾波さんの事を信じていた

 

なら、私も信じる

綾波さんの事なんて、何も分かってない

私はあなたの強さを、頑張りを、碌に知らない

 

…だけど

 

春雨「…今ここで、私達が止めます…!」

 

踏み込み、斬りかかる

 

駆逐水鬼「っ」

 

目が、合う

片目はない、然し…感じる、まだ…

 

この人の意識は完全に死んでないと私は信じる

 

春雨「どうして…誰かを頼らなかったんですか!どうして私を頼らなかったんですか!!」

 

大腕の軌道を読み、跳び上がって攻撃をかわす

 

春雨「あなたは一人なんかじゃないのに!」

 

呼び掛けに、応えてくれる事を信じて

もう一度、意識を取り戻してくれる事を信じて

 

駆逐水鬼「……」

 

春雨「あなたは特別なんかじゃ、ないんですよ…!!」

 

…だから、ただ、帰ってきて欲しかった…なのに…

 

駆逐水鬼「…いいえ、特別です」

 

朧「!…意識が」

 

キタカミ「……チッ…!」

 

私の両脇を砲弾がすり抜ける

その砲弾は、大腕に弾かれ、防がれる

 

駆逐水鬼「私は、特別な存在です」

 

春雨「…綾波、さん…」

 

……相容れない

そう言う事なのか

 

…いや

 

春雨「違う…!私は知ってる、あなたを……貴方は強い人です!なのに、目を背けた…誰にだって目を背けたくなることがある!誰だって苦しくて、誰だって辛くて……だから…あなたは、特別なんかじゃないんだ…!!」

 

駆逐水鬼「……いいえ、もう一度言いましょう…特別だと…それは、あなたも、私も…同様に」

 

キタカミ「春雨!もう諦めな…」

 

川内「一回死んで、諦めてないなら…」

 

朧「綾波!!」

 

春雨「……ああぁぁぁぁッ!!」

 

願わくば、この刃を振るうのは、最後であって欲しい

人を傷つける事は、もうしたくない

 

それは、みんなが望んでる事

 

キタカミ「もう、迷うな……合わせるよ…ここで仕留める!!」

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