元勇者提督 作:無し
二式大艇 機内
駆逐艦 狭霧
狭霧「……通信が繋がらない…妨害されている…」
グラーフ「繋がりにくいだけではないのか」
狭霧「いいえ、通信関係の掌握は綾波さんの1番の得意、戦いにおいて、これをやらない理由はない…」
そして、この感覚
前方に映る破壊の後
狭霧「……最悪ですね」
もし、綾波さんが…そう望んでいるなら、私達は応えるしかない
悪になる事はない、私たちの意志は正義のためにある
狭霧「…先射出した朧さんとも連絡が取れない、何が起きてるのかも把握しきれない」
グラーフ「…艦載機を出すか」
狭霧「この位置からの発艦は最高難度ですよ」
グラーフ「関係ない、アーク!神鷹!」
神鷹「や、
アークロイヤル「任せておけ、この程度!!」
ハッチを開く
艦載機が落ちるように飛んでいく
グラーフ「ぐ…この!持ち直せ!…良し…!」
アークロイヤル「神鷹!動かせてるか!?」
神鷹「ほ、方向が、うまく…いかない…!」
グラーフ「一度真っ直ぐ下に向けて行かせろ!スピードに乗ったら徐々に方向を変えるんだ!!そのまま方向を変えると機体に負荷がかかりすぎる!」
神鷹「…ぅ……
アークロイヤル「焦るな!使い潰すぐらいの気持ちで行け!」
狭霧「エリアの安全を確認してください!降りられる場所はありそうですか!」
グラーフ「一帯に深海棲艦は居ない…だが、あそこか…戦闘してる集団がいる!」
狭霧「……何と戦ってますか」
グラーフ「…深海棲艦…まて……あれ、は…」
グラーフさんの表情が固まる
アークロイヤル「……見間違いだ、違う、そんな訳ない」
神鷹「……も、持ち直しました…!…あ、れ…」
狭霧(反応からして間違いない、綾波さんはやられたか…)
グラーフ「…おい!狭霧!よく聞け、私には理解できない光景が広がっている…!綾波が殺されている、だが、深海棲艦も、綾波に見える…!」
狭霧「…最悪です」
2人とも、殺されたか
神鷹「…
グラーフ「…狭霧、私はどうすれば、いい」
狭霧「……深海棲艦を完全撃破、それだけが、目的です」
私たちの、目的であり、望みでもある
潜水艦 イムヤ
…目の前で繰り広げられてる戦いが理解できない
私では力になれない
わかってる、でも…戦わなきゃいけないのが、耐えられない
ゆっくりと、捨てられた綾波に近づき、うつ伏せのそれを抱き起こす
イムヤ「っあ…!……こんな…」
両の目が抉られていた
傷つけるのが目的なのか、それとも…どれ程苦しめられたのか、綾波に何ができたのか
脚は何故か再生していたけど…
イムヤ「こんなの…酷い…!綾波はもう戦おうとはしてなかったはずなのに…!」
アヤナミ「…イムヤ…さん…?」
イムヤ「綾波!…ま、まだ、生きて…?」
アヤナミ「……よかった…あの、艤装…使わなかった、ですね」
イムヤ「え?…いや、艤装は使ったけど…」
アヤナミ「え…なのに、生きて…」
イムヤ「…綾波…今はしゃべらないで、一度撤退して治療をしてもらうから」
アヤナミ「…艤装…二度と……使わないで…アレは…深海の、チカラ…」
イムヤ(…深海の力……危険なもの?)
今は、いい
とにかく、みんなの元に
駆逐艦 春雨
駆逐水鬼「…そろそろ、本格的に始めますよ」
春雨「あれは…カートリッジ?」
何か、何かのカートリッジを、大腕に取り込む
キタカミ「……絶対にあの腕触っちゃダメだよ」
神通「勿論です」
神通(…私の目を以ってしても、何かわからなかった…当然わかりやすいラベルなんてない、アレは一体)
駆逐水鬼「…全力で…」
こちらへと手を伸ばそうとした瞬間、駆逐水鬼の背後からアケボノさんが飛び出す
レ級「当然…一切の躊躇いなどない!!」
戦艦棲姫、そして自身の尻尾からのゼロ距離の砲撃を駆逐棲姫の背中に撃ち込む
駆逐水鬼「……その程度ですか?」
レ級「チッ…!火力が足りないか…」
キタカミ(弱点になるような部位は…やっぱあの腰の大腕の付け根…そこに全力で合わせ技を打ち込むしかない…でも、どうやって?あの隙だらけに見える棒立ちが恐怖しかない…)
駆逐水鬼「……来ないんですか?それとも、もう心が折れましたか」
朧「…春雨、キタカミさん、アタシに合わせて」
春雨「…私は火力は出せませんよ」
手数ぐらいしか、ない
それも接近戦限定…
キタカミ「…朧、考えあんの?」
朧「ある…だから、2人が動けばみんな動くから…!」
朧さんが飛び出す
キタカミ「マジ…?」
春雨「…やるしか、ないか」
正直、不安しかないが…
朧(一瞬の隙が有ればキタカミさんが撃ち込んでくれる…その後は、その隙をこじ開ける!!)
朧さんへと大腕が向く
拳を作り、朧さんへと伸びる
朧(何かを飛ばしたり、撃つ様子はない…触れるタイプか…それなら…)
大腕は構造上、腰、背側から伸びている
なら…正面からなら、一瞬腕が伸びる前に見極める猶予がある
朧(真正面から殴る!!)
朧さんが大腕を殴りつける
朧「っ!!…やっぱ…重…!!」
キタカミ「バカ!直接殴んなって!」
朧「…大丈夫」
大腕が爆発し、駆逐水鬼が一歩退く
春雨「な…」
駆逐水鬼「……主砲を…そうでしたね、あなたの艤装は近接格闘を主体に置いている」
朧「綾波が教えてくれたことだよ」
主砲をメリケンサックがわりにして、突きつけて撃った
だから完全に腕に衝撃はいかなかったし、与えたダメージも大きいはず…
朧「次!」
脚部艤装から魚雷が射出され、駆逐水鬼に突き刺さる
そして同時に拳での打撃
隙を与えない攻撃
春雨(…今なら気付かれずに背後を取れるか…いや、まだ早い……焦るな、落ち着け…)
朧「っりゃあああぁぁぁぁッ!!」
朧さんの蹴りが、空を切る
朧(かわされた…!?流石に何度も正面からは攻撃させてはくれない…いや…それよりも)
朧さんが普通の手に脚を掴まれ、振り回される
朧「ぅぐ…!」
春雨(今しかない!!)
背後から大腕の付け根に刃を振るう
駆逐水鬼「お待ちしてました」
朧「うっ!?」
春雨「ぁっ!?」
朧さんを私の方に投げ飛ばされた…
朧さんを受け止め、地面を転がる
春雨「っ…痛……大丈夫ですか…」
朧「うん…ごめん…あ!」
鈍い金属音
振り下ろされた大腕を朧さんが両手の艤装で受ける
朧(ぐ…砲口が外れてるから、撃てない…!)
キタカミ(…いいね、今しかない)
駆逐水鬼「っ…」
駆逐水鬼の背中を複数の砲弾が撃ち抜く
川内「…効いてない」
キタカミ「火力が足りてないね、川内、神通、那珂、前行っていいよ」
神通「…1人でなんとかするつもりですか」
瑞鶴「私忘れられてる?…任せといて、加賀さんの分の艦載機も貰ったし、全部叩き込む」
キタカミ「注意する事はただ一つ、同士討ちだけ…朧!!」
朧「はい!」
駆逐水鬼に正面から一撃、大きく斬りつける
よろめき、一歩…
朧「やぁっ!!」
朧さんの前蹴りを受け、二歩下がる
朧「春雨!主砲全部投げて!」
キタカミ「3人とも主砲投げて!」
川内「了解!」
神通「わかりました!」
春雨「えっ」
川内達がそれぞれの主砲を空に投げたのを見て、戸惑いながらも投げる
朧「……タルヴォス…力を貸して…!」
キタカミ「っ……この感覚…そういうこと…!」
2人が主砲を撃ち続ける
撃たれた主砲が反応し、駆逐水鬼に向けて砲弾を放つ
たった2人が作り出す、圧倒的な弾幕…
駆逐水鬼(…これは、要らない)
駆逐水鬼は弾幕をすり抜けるように逃げる
春雨(避けた…!?)
川内(でも、隙ができた)
神通(貰いました!!)
神通の槍と川内の双剣の斬撃が駆逐水鬼の大腕にダメージを与える
川内「!…斬ったのに、再生してる!」
神通「あれは再生の効果を持つカートリッジ…いや、増殖か!ならば尽きるまで!!」
瑞鶴「2人とも気をつけてよ!!」
2人の頭上から爆撃機が爆弾を落とす
駆逐水鬼「っ……」
駆逐水鬼が片膝をつき、地を見る
川内(今しかない)
川内「終わらせるよ!!」
那珂「わかってる!」
春雨(この中で一番破壊力があるのは間違いなく神通…なら!)
川内と那珂に加わり、大腕を抑え、駆逐水鬼を拘束する
朧(アタシも、やる!!)
キタカミ(…神通も朧も行く気か、もうラストチャンスかな…)
神通「トドメ!!」
朧「やあぁぁぁぁぁッ!!」
朧さんの蹴り、神通の槍とAIDAの腕から繰り出される斬撃
それと同時に、落下する主砲からの一斉射…
駆逐水鬼(…これが最高火力か)
捉えた
砲弾も全て当たった、斬撃も、蹴りも確実に捉えた
大腕が受けた衝撃に耐えきれず、駆逐水鬼の本体部分が分離し、地面を転がる
大腕はチリになって消え始める
朧「…どう…これは…」
キタカミ「……!今呼吸した!まだ終わってない!」
川内と那珂に合わせて駆逐水鬼に迫る
川内(…何か、おかしい……肌の色が戻って)
那珂「っ!?」
那珂の動きが止まる
那珂「……あ……う…ぁ…」
川内「那珂…?」
那珂「止まって…!」
那珂が川内を組み伏せる
川内「ちょっと!那珂!…操られてる!?」
春雨「…くッ!」
川内を無視し、駆逐水鬼に迫る
…いや、もはや肌の色も戻ったそれは…
綾波「……もう、いいです」
春雨「え…?」
かわされた
私をかわされた、ほぼゼロ距離を通り抜けられた
朧さん達の方に…
朧(来る!)
神通「捉える!!」
綾波「…もう、その必要はありません」
綾波の姿が消える
神通「…どこに」
綾波「背後です」
神通の背後にいる綾波の手には…
キタカミ「カートリッジ…?」
綾波「…もう、茶番は必要ありません」
綾波さんがカートリッジを起動する
綾波「改二…」
綾波さんの姿が、黒い球体に呑まれ、消える
キタカミ「…改二…」
アケボノ「また、アレを相手にするのか…」
那珂「…違うよ」
神通「那珂ちゃん…?もう、操られてない…?」
那珂「そもそも、操られてなんかないんだよ…識ったから…姉さんを止めただけ」
朧「…川内さんを?」
春雨(あの「止まって」は川内に対してだった?でもなぜ)
川内「…説明してくれるんだよね」
那珂「…うん、全部わかったから」