元勇者提督   作:無し

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駆逐古鬼のアジト 跡地

綾波

 

綾波「すみません、みなさん、私の茶番に付き合わせて…おわっとと」

 

深く頭を下げる、頭の重みに耐えきれず、よろけて倒れる

 

キタカミ「茶番…茶番ねぇ……他に手はなかったの?」

 

綾波「あるには、ありました…しかし、再誕を許さないほどの強力な力、もしくは再誕を連続発動させ、使えなくする必要があった…一つは限界までダメージを与えたあなたの…呪殺遊戯でしたっけ、そのままダメージを返す技」

 

キタカミ「まあ、人1人が死ぬ程度…私が死ぬギリギリまでのダメージじゃ足りないだろうけど」

 

綾波「あれは精神系に作用します、再誕とはいえ…廃人にして仕舞えば問題ないでしょう……それ以外は、マグマに突き落とすとか…いつか耐性がつくリスクもありますから避けました、それと後はまあ、核とか」

 

キタカミ「それらを踏まえた上で、自分が改二になる選択をしたと」

 

綾波「もうすでに聞いてるかもしれませんが、本当はなる予定はなかったんですよ、私はそうするつもりはなかったのに…アヤナミが出てくるとは思わなかった…まさに私としては最悪の事態になってしまった…」

 

那珂「だから改二を選んだんだっけ」

 

綾波「ええ、本当ならもう少し力が手に入って…その、駆逐古鬼を完全消滅させようと思ったんですけど…如何せん私の…力不足…いや、違うな…消し飛ばすこと自体はできた、でも、不安だからと直接消し去るのを避けた…」

 

狭霧「…本来のどのくらいの出力だったんですか」

 

綾波「50%しか…」

 

キタカミ(50%でアレか…)

 

綾波「本来の改二カートリッジの様に調整を済ませておけば、その必要もないくらいの出力が出せたんですけど…まあ、一撃必殺に拘る必要はありませんでしたから…駆逐古鬼は十分な回数、死んだでしょう」

 

瑞鶴(あ、何回も殺してるんだ…あの短時間で…)

 

キタカミ「…それで?もう、終わり?」

 

綾波「いいえ」

 

空気がヒリつく

 

綾波「…警戒しないでください、私たちが戦うわけじゃない」

 

キタカミ「……何だ、違うのか」

 

綾波「ええ、まだハッキリとは言えませんが…全てが終わったわけじゃない、これからも何かが起きる」

 

…それだけは、間違いない

 

綾波「だから、私は…まだ、少なくとも地獄に嫌われているうちは…Linkとして、世界を繋ぐために戦いましょう」

 

アケボノ「…もう、私たちと敵対するつもりはないと」

 

綾波「はい」

 

川内「正直、どこまで信じていいんだか…って感じだよね、色々もらってるけど」

 

綾波「約束しましょう…あなた達と敵対したりはしません、少なくとも、大義のために戦っているうちは…歪んだ正義にならないうちは」

 

神通「その約束を信用できるのか、という話です」

 

綾波「…私は、嘘をつかれること、そして約束を破られる事が大嫌いです」

 

アケボノさんに視線を送る

 

アケボノ「…悪かったですよ、誓うとまで言ってすぐに裏切ったのは」

 

綾波「いえ、あの時の私は…とても正気ではなかった、なにをされても文句はありません」

 

春雨「…あの」

 

綾波「なんでしょうか、春雨さん」

 

春雨「…ずっと聞きたかったんです、なぜ、綾波さんは…2人も…」

 

綾波「…私は彼女のコピー、私は綾波という存在ではありますが、オリジナルではない…」

 

アヤナミ「そういう意味では、もう綾波という存在はこの世には存在しないのでしょう」

 

イムヤさんに連れられ、目を閉じたアヤナミが近寄ってくる

 

綾波「…無茶をしましたね…随分と」

 

アヤナミ「お互い様です、それに…大事な大事なあなたの為ですから、綾ちゃん」

 

綾波「…はー…記憶を取り戻されたのは、誤算でしたね」

 

キタカミ「…オリジナルの人格が宿ったのが、そっちの綾波、そっちは…」

 

綾波「かつての駆逐棲姫の中に宿った、AIDA…それが私を模倣した存在であり、私と戦い、私と共にあった、もう1人の私…」

 

アヤナミ「…ねえ、綾ちゃん」

 

…アヤナミの表情から、何を言いたいのかくらい、すぐにわかる…

 

アヤナミ「…この身体…やっぱり…」

 

綾波「要りませんよ、そんなキズモノの身体なんて」

 

アヤナミ「っ……ごめんなさい…」

 

綾波「……いっ!?」

 

頭を叩かれる

 

狭霧「どうしてあなたはそんなに素直じゃないんですか!…率直に言えばいいでしょう…貴方にも幸せになって欲しいって、私を繋ぎ止めてくれた貴方こそに幸せになる権利があるって…」

 

綾波「……うるさいですよ、狭霧さん」

 

アヤナミ「…そう思ってるのなら、そうであってくれるのなら、だからこそ、私にこの身体は勿体無い…綾ちゃん…」

 

綾波「…もう、敷波にもぜーんぶ、バレてるんだろうな」

 

ゴレを利用した、となれば伝わっているだろう、私の計画、今の私の存在、全て

 

綾波「…アヤナミ」

 

アヤナミ「はい」

 

綾波「この薬を呑みなさい、今出ている症状を抑える薬です」

 

アヤナミの口にカプセルを押し込む

 

アヤナミ「…ん………ぁ…?」

 

綾波「…敷波は優しい子です、そばで見守っていてあげてください…春日丸さんはあなたを助けてくれるでしょう、イムヤさんもきっとそばにいて、良き友人であってくれる…春雨さん、アヤナミを頼みます」

 

イムヤさんと春雨さんがこちらを見て頷く

 

アヤナミ「…なん…で…」

 

アヤナミが眠りに落ちる

 

瑞鶴「眠らせたの…?」

 

綾波「この子は…強情すぎる、それに…いや、瑞鶴さん、一つ頼めますか」

 

瑞鶴「…病気まで治るかは、わからないけど」

 

綾波「少しでも良くなれば、治るキッカケになるでしょう」

 

瑞鶴「…わかった」

 

キタカミ「身体は放置しとくんだ?」

 

綾波「…私と彼女は別人です、私にはこの子のように振る舞うことができない…」

 

視線が、いつのまにかつま先まで落ちていた

 

イムヤ「綾波」

 

少し、顔を上げる

 

イムヤ「…さっき、良き友人であってくれると言ってたけど…私達も、友達だから」

 

春雨「今の貴方なら、貴方を否定する人は…そう居ないはずです」

 

綾波「……」

 

キタカミ「ま、ウチには厄介なアメリカ人どもが居るからさ、会うなら本土にしてよ?」

 

綾波「…ありがとうございます」

 

キタカミ「…私なりの償いさね、頭なんて下げないでよ…あの時、勝手に突っ走って仕掛けなければ一回死ぬ必要なんか無かったでしょ」

 

綾波「…いいえ、私の思慮不足です」

 

キタカミ「ま、それならお互い様ってことにしとこうか」

 

綾波「ええ…それでは、私達は帰ります」

 

狭霧「龍驤さん達は先に送りましょう」

 

キタカミ「頼んだよ」

 

綾波「狭霧さん、ついでに2人も回収してください」

 

狭霧「勿論です」

 

 

 

 

 

 

二式大艇機内

正規空母 グラーフ・ツェッペリン

 

グラーフ「…良く、似ているな」

 

龍驤「せやなぁ…」

 

春日丸「……」

 

神鷹「…えと……Was ist das(なんですか)…?」

 

春日丸「…英語?」

 

龍驤「いや、ちゃうやろ」

 

グラーフ「神鷹、日本語で対応しろ」

 

神鷹「…はい」

 

龍驤「あんたらみんな喋れるんやな、日本語」

 

グラーフ「まあな、綾波にインストールしてもらった」

 

龍驤「インストール?」

 

グラーフ「艤装を付けられるようにする手術の時にな」

 

龍驤「頭もいじっとんのか?…怖いな」

 

グラーフ「そうでもない、もとより戦って死ぬ覚悟をして手術を受けるんだからな」

 

龍驤「…そーか、えらい覚悟決まっとんな」

 

グラーフ「その覚悟も今は無くなった」

 

龍驤「なんやそれ」

 

グラーフ「…生きていれば仲間と過ごすかけがえのない時間がある…それだけだ」

 

龍驤「……悪ぅない話やな、他所の国のモンおもて変に勘繰っとーたけど、アンタらもウチらも…案外同じやねんな」

 

二式大艇のハッチが開く

 

綾波「戻りましたよ…と?…うわっ」

 

脱兎のごとくふたつの影が綾波に駆け寄る

 

神鷹「ママ…」

 

春日丸「綾波様…!」

 

神鷹「え?」

 

春日丸「…ま、まま?侭?…いや…聞き間違い…?」

 

綾波「…狭霧さん、回収した5人について何も聞かさなかったのはこういう事ですか」

 

狭霧「ええ、勿論です」

 

グラーフ(様付けで呼ばれる仲…給仕の者か?)

 

春日丸「…ええと…綾波様、この方は…」

 

綾波「…神鷹さん、その…私の仲間であって、娘ではありません」

 

龍驤「…や、やんなぁ!どう見ても歳変わらんモンな!」

 

春日丸「…何故、ママなどと…」

 

神鷹「…優しくて、ママみたいだから…」

 

春日丸「ひ、人の優しさに漬け込むのはどうかと…!」

 

グラーフ「その呼び方を容認した綾波に半分くらいの責任はあるがな」

 

綾波「……」

 

綾波が目を逸らす

 

春日丸「よ、容認したんですか…認めたんですか…!?」

 

グラーフ「2回もな」

 

龍驤「それ寧ろ呼ばれることに快楽得てる奴やろ」

 

綾波「違いますよ!…神鷹さんが酷く落ち込むから仕方なく…」

 

神鷹「…だめ?」

 

綾波「あなた、私を弄んで楽しんでません…?」

 

綾波は項垂れ、大きなため息をついた

 

綾波「…さっさと、帰りましょうか、この戦いは完全に終わりました、もうここにいる意味はない」

 

狭霧「ええ、それでは」

 

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