元勇者提督   作:無し

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ヒガンバナ

The・World R:1

Θサーバー 病める 忘却の 戦慄

錬装士(マルチウェポン) ハセヲ

 

ハセヲ「見つけた…!」

 

黒い影を追う

今、この世界のことを調べるにあたり、情報を持ってそうなやつを捕まえ、吐かせる

その為に…

 

ハセヲ「待ちやがれッ!!」

 

楚良「およ?…誰?アンタ」

 

黒い影が立ち止まり、此方に振り向く

特殊なタイプの双剣士、全身を包む黒い衣装に、拘束具のようなベルト、そして…

籠手から飛び出す刃

 

ハセヲ「お前に聞きたいことがある」

 

楚良「んー…オレは「誰?アンタ」って聞いたんだけど…自己紹介って知ってる〜?」

 

ハセヲ「…ハセヲだ、お前楚良だろ、俺はお前に…」

 

楚良「何?オレに情報提供しろって?」

 

ハセヲ「…チッ」

 

こいつ、うぜえ…

 

楚良「そ、れ、よ、り…うーん…アンタのキャラ、おもしれ〜…武器も、双剣みたいで見たことないし…」

 

ハセヲ(…お友達、か…?)

 

楚良「で、も…アンタは面白くないから、アンタの武器だけ貰おうかな」

 

楚良が籠手から刃を出し、構える

 

ハセヲ「俺もお前のメンバーアドレスはゴメンだ!!」

 

楚良「ちゅばっ!……と」

 

楚良が自らの口で効果音を鳴らしながら飛び上がり、此方の背後へと回る

 

ハセヲ(動きなら、読めてんだよ!!)

 

ハセヲ「環伐!!」

 

大鎌に換装し、周囲を切り刻む

 

楚良「あっらら〜ん?……そんな武器、見たことないケド」

 

ハセヲ「…言うなら、未来の武器だ」

 

楚良「ひぇー、おったから〜……なら、オレもちょっと頑張っちゃおうかな」

 

ハセヲ(来る!!)

 

大振りな鎌を最低限の動きで受け流され、多数の手数によるダメージ…

 

ハセヲ(こっちが不利か、なら…)

 

ハセヲ「疾風双刃!!)

 

楚良「っとぉ?…また武器が変わった……いいね、やっぱりおっもしれ〜……」

 

ハセヲ(今のを全部かわされた…!クソ、油断してかかると…こっちが痛い目を見ることになるな)

 

武器を大剣に切り替える

 

ハセヲ(手数は向こうが上、だが多数で勝負するとなると…向こうのほうが上だ、それなら、一撃の破壊力で…!!)

 

大剣を振り回す

 

ハセヲ「虎乱襲!」

 

楚良「おわっ」

 

楚良が飛び退き、かわす

 

楚良「当たったらいったそー」

 

ハセヲ(クソ、ふざけた態度しやがって!!)

 

楚良「……あっ…そうだ」

 

楚良が踵を返し、ダンジョンへと向かう

 

ハセヲ「逃がすか!!」

 

 

 

 

ハセヲ「クソッ!どこに消えやがった…!」

 

楚良「こったこっちぃ…」

 

少し離れた、見通しの悪い部屋から声がする

楚良がオブジェクトに腰掛け、こちらを挑発する

 

ハセヲ(…突っ込むか、それとも…いや!!)

 

アイテム欄から呪符を取り出す

 

ハセヲ「粋竜演舞の召喚符!!」

 

楚良「おわっ!?」

 

楚良の足元から水が召喚され、楚良を呑み込む

 

ハセヲ「破魔矢の召喚符!!」

 

光の矢がダンジョンの壁を削り、壁の裏に隠れていたモンスターを貫く

 

ハセヲ「やっぱりな…狙いはMPK(モンスタープレイヤーキル)か…!」

 

楚良「ちぇっ…バレてたか、んー…」

 

ハセヲ「…お前の手の内は読めてる、やられる前に降参したらどうだ」

 

楚良「ホントに?」

 

ハセヲ(…待てよ、このエリア…確か、モンスター召喚の魔法陣から出るモンスターの数は…)

 

背後から別のモンスターが斬り掛かり、ダメージを受ける

 

ハセヲ(やっぱアンデッド系か…!ここはそういうエリアだった、なら…)

 

ハセヲ「破魔矢の召喚符!!」

 

ありったけの呪符でモンスターは制圧する!!

 

楚良「うっはー…正面からやりあうのキッツいのに、これもダメか〜」

 

ハセヲ「…次はお前だ」

 

楚良「後悔すんなよ」

 

ハセヲ「っらああァァァァァッ!!」

 

楚良「…ハッ」

 

楚良とすれ違いざまに斬り合う

 

ハセヲ「……」

 

楚良「……へ〜」

 

楚良の体が倒れ、霧散する

 

ハセヲ「調子乗ってんなよ、悪ガキ…まだ居るんだろ?」

 

倒されてもおばけとしてその場に透明なキャラクターは残る

蘇生もできる

 

楚良「…悪ガキ、か……随分と、おっさんくせ〜」

 

ハセヲ「お前に聞きたいことがある、司についてだ」

 

楚良「……メンバーアドレス、ちょ〜だいっ」

 

ハセヲ「断る」

 

楚良「じゃあ、無し」

 

ハセヲ「……チッ」

 

ハセヲ(なんで過去の自分とメンバーアドレス交換しなきゃなんねえんだよ!!)

 

楚良は、俺だ

R:1の頃に使ってたキャラ…

 

ハセヲ「ほらよ」

 

組成し、メンバーアドレスを渡す

 

楚良「んじゃ、教えてやる…司クンは今頃猫のPCと一緒にいるんじゃないかなあ、きっと」

 

ハセヲ「…猫か」

 

このバージョンで獣人キャラは作れない、要するにチートPC扱いされる奴だ

 

楚良「Δの隠されし禁断の聖域に最近よく居るみたい…オレが知ってんのはそんだけ」

 

ハセヲ「そんだけわかりゃ十分だ、助かった」

 

楚良「……で、アンタ何者なワケ?」

 

ハセヲ「…さあな」

 

 

 

 

 

The・World R:2

Δサーバー 悠久の古都 マク・アヌ

重槍士 青葉

 

青葉「……はあ…」

 

司令官に用があったのに、折角訪ねてきてくれたのに話せなかった

連絡しようにも自分の携帯やパソコンのメールは何故か使えない

 

朧さんに借りて連絡しようと思ったら朧さんは七駆の連絡先しかない

 

青葉(どうしよう…)

 

今頃西方海域を攻略中だろう、と、聞かされたけど…

 

わたしだけここで何も成せずにいるのは心苦しい

未帰還者を救う為に奮戦してるつもりが、なんの手がかりも無くなった

 

青葉「…あれ?」

 

ヒガンバナを取り出す

 

青葉「…何か、呼ばれた気がしたんだけど……」

 

青葉(…リコリスさん、私は、どうすればいいんでしょうか…)

 

このままでは良くない、何かを、手にする為に…動かないと

 

青葉「え?」

 

花が、手から消える

つい一瞬前まで持っていた花が視界から消え失せる

 

青葉「そんな!…なんで?何処に…あ!」

 

あわてて周りを見渡し、自分の手が伸びている先が妙なことに気づく

片手には槍、もう片手には…いつの間にか、手が握られていた

 

青葉「…リコリス、さん?」

 

リコリス「……」

 

つぶられた瞳、閉じられたままの口…私が見た、そのままが

つい一瞬前まで、誰もいなかった場所に、確かに居る

 

青葉「…全部、失ってる…?いや、そんなのおかしい!だったらアルビレオさん達は何のために…!」

 

落ち着いて、状況を整理しよう

リコリスさんは何故か戻ってきた、この槍の持ち主の所に

 

それは何故か

 

青葉(…リコリスさんを完全に目覚めさせれば、わかる筈…!)

 

青葉「…どこに行けばいいですか、私を、導いてください」

 

転送される

オートリーブ、ルールの外側の移動

 

 

 

 

The・World R:X

Δサーバー 忘刻の都 マク・アヌ

 

青葉「…ここは…」

 

R:Xのマク・アヌ…?何故ここに…

 

青葉「うっ!」

 

いきなり背後から斬りつけられる

謎の違和感が体を包み込む

 

エンデュランス「……」

 

青葉「貴方は…!エンデュランスさん…紅魔宮の宮皇(チャンピオン)…!」

 

…実力は私よりも確実に上、それと、戦えということ…?

 

青葉「…やるしかないようですね…!」

 

片手で槍を振り回す

できる限り射程を活かした大振り、寄せ付けないことだけを意識した攻撃…

全部かわされてるけど、それでいい

 

青葉(…間合いは、此方が有利、なら…)

 

大きく槍を引き、身を引く

 

青葉「神槍……ヴォータンッ!!」

 

全力で突きを放つ

槍がエンデュランスの剣に触れる

 

青葉「フリーズ!!」

 

エンデュランス「…!」

 

エンデュランスが剣を捨てる

剣は落ちながら石化し、地面に当たると同時に砕け散る

 

青葉(武器を封じた!これで…!)

 

エンデュランス「……こんな戦い、美しくないよ…ねえ?ミア…」

 

青葉「…ネ、コ…?」

 

いつの間にか、エンデュランスの肩には小さな白い猫…

その猫の目が私を射抜く

鋭く、魅力的な瞳…

 

エンデュランス「…ミア…ボクを見てよ…」

 

青葉(ミア?あの猫の名前…?あ、れ…?動けない…)

 

PC(プレイヤーキャラクター)が動けないわけじゃない

私だ、リアルの私が…固まっている

 

恐怖じゃない、まるで金縛りのような…

 

エンデュランス「…キミが居たら、ミアがボクを見てくれない…!」

 

エンデュランスが別な武器を取り出し、一気に近寄ってくる

 

青葉(動いて!動いて!!)

 

エンデュランス「鬼輪牙」

 

斬撃を受け、PCが大きなダメージを負う

 

青葉「ぁが…ぁ…?……かはっ…ぁ…!」

 

だけど、私が…リアルの、私が、より大きなダメージを受けている

はっきりわかる、斬られた感覚がある

脳がそう認識している

 

FMD(フェイスマウントディスプレイ)で見えないが、まるで血が流れているような感覚

大きく斬りつけられたような感覚…!

 

青葉(…ここで、殺されたら…)

 

…ゲームバトルが、一瞬にして本物の殺し合いに変わる

 

青葉「……動く」

 

痛みのおかげで解放されたのか、もう体は動く

 

ならば…戦うしかない

 

青葉「…一度、キルさせて貰います」

 

エンデュランス「……」

 

青葉「……」

 

睨み合いの膠着状態になる

また攻撃してきたら、カウンターを叩き込む…そのつもりで、ゆっくりと…

 

青葉(大丈夫、あの猫の眼を見なければ)

 

青葉「えっ…!?」

 

エンデュランスさんは何もしていないのに、魔法が展開されて…

 

青葉「ヴォータン!!」

 

魔法を槍でかき消す

 

エンデュランス「……」

 

青葉(これが強さの秘訣?自動でスキルを放つ猫と、剣士の、コンビネーション…)

 

エンデュランス「行くよ、ミア」

 

エンデュランスの斬撃を槍で防ぐ

防ぐ、防ぐ、防ぎ続ける

乱撃のようで計算された斬撃をなんとか防ぐ

一撃受ける度に一歩、何とか間合いの外へと退がるのに…それを許さず追撃が来る

 

しかし、斬撃に見惚れていては…

 

青葉「しまっ…!」

 

魔法にやられる

 

爆発に巻き込まれ、吹き飛ばされる

 

青葉「あぁっ!!…っぐ…あ…」

 

青葉(だ、ダメ…これじゃ、まともな戦闘にならない…リコリスさんが同じようなことをできるわけはないし…)

 

回復アイテムの瓶を開け、飲み干す

 

青葉「…攻めきる、受けに回ったら間違いなく負ける!!」

 

呪符を取り出し、握りしめる

 

青葉「バフも全部使い切る…!剣士の血!騎士の血!法術師の血!占星術士の血!」

 

物理、魔法攻撃力、そして物理、魔法防御力上昇

 

青葉「それから封印!!」

 

そして、逆に物理、魔法攻撃力、物理、魔法防御力の低下を相手にかけ…

 

青葉「岩戯王の召喚符!!」

 

大量の岩石が降り注ぐ

 

青葉(ダメージにならなくていい!視界を潰して…)

 

一瞬の隙を、作る

 

青葉「トリプルドゥーム!!」

 

槍を大きく振りまわし、エンデュランスに防がせる

 

青葉「フリーズ」

 

剣が石化する

 

青葉(そして、この距離から!!)

 

ゼロ距離で呪符を使う!

 

青葉「斬風姫の召喚符!!」

 

竜巻が巻き起こり、自分もろとも切り刻む

 

青葉「ッ!!…まだ!!火炎太鼓の召喚符!!」

 

爆炎でエンデュランスを吹き飛ばす

 

青葉(追撃…!!)

 

体制を立て直す前に、仕留める…!!

 

青葉「……え…」

 

走って、詰め寄ってた筈なのに

一瞬、視界にキラリと何かが光った途端…

 

歩けない、動けない

 

ばたりと、体が倒れる

 

青葉(…なん……どうして…?)

 

青葉「なんで……弥生さん…?」

 

弥生さんの、キャラだ…弥生さんのキャラに、すれ違い様に斬られた

 

ヤヨイ「……エンデュランス」

 

エンデュランス「…ミア…?ミアは、どこ…?」

 

青葉(…エンデュランスさんは、弥生さんを見ていない…?これは、どうなって…)

 

猫が鳴く

目の前で小さく「ニャア」とだけ

 

…この猫か

 

この猫のせいで、こんな風に…

 

青葉「……デリート、しなきゃ…!」

 

The・Worldが"良いゲーム"である為に!

 

青葉「ぇ…」

 

転送され、景色が、切り替わった

 

 

 

 

リアル

Link基地

青葉

 

青葉「…っ…」

 

残った力を振り絞り、体をやっとベッドまで動かす

身体中ヒリヒリする

痛い、すごく痛い

 

青葉(……負けた、やられた…数に負けた、気づかなかったから、やられた、でも…次こそは)

 

油断したからやられた?違う

2対1だから負けた?違う

 

…私が弱いから負けた

 

最初から腰が引けていた

宮皇に勝つなんて無理だと

 

勝てるんだ、勝つつもりで戦えば勝てたかもしれないんだ

 

でも、勝ってどうしたらよかったんだろう

いや、弥生さんがあそこに居た、という事は…未帰還者を助けるチャンスだったんだ

 

青葉(…悔しい…悔しい、未帰還者を助けるチャンスだったかもしれない、それを……ただ、逃した…!)

 

…悔いても遅い

 

今は、休むしかない…でも、この身体の痛み…あの闘いはマトモじゃなかった

 

 

 

 

 

 

 

青葉「…うわっ…」

 

翌朝、顔を洗いに洗面所に行った時、鏡を見て気づく

首元に赤いスジ…

 

青葉(こ、ここ…弥生さんに斬られた…じゃあ、まさか!)

 

袖をまくる

部屋着が長袖だったから気づかなかったけど…内出血を起こしている

斬られたと脳が錯覚して…?

 

青葉(ま、まさか…ゲームの中で死んだら…)

 

嫌な考えだけど、否定するより肯定する根拠の方が多い

 

青葉「…病院にかかろう…一回…」

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