元勇者提督 作:無し
ベンガル海
軽巡洋艦 川内
川内「こちら川内!神通が敵艦隊発見、戦闘陣形に変更!」
亮『了解、こっちはペナン基地の周辺の安全を確保しておく、無理だと判断したらそっちの判断でも撤退しろ』
川内「了解!まずは複縦陣に変更して!」
呉と離島の連合艦隊、その先駆けとして今回の編成には呉と離島の3:3で攻略艦隊を編成
メンバーは離島の赤城、加賀、そして朝潮、呉からは私、神通、曙の合計6名
神通「姉さん、潮さんが」
潮「潜水艦が居ます、探知しました…!数は3」
川内(…3か…空母を狙い撃ちされると辛いな…複縦陣で突っ込むより一度広がる形…空母2は後ろでそのままに前の4人を横陣に…)
潮「川内さん、先制対潜の許可を!」
川内「え?…いける?」
潮「はい!」
川内「…よし!じゃあ複縦陣を維持したまま進行!潮、頼むよ!」
潮「爆雷投下!!」
潮が爆雷を射出する
前方で水柱が上がる、バラバラになった敵潜水艦が浮かび上がってくる
神通「2体分ですね…残り1!警戒を!」
川内(はは…マジ?いい腕してんじゃん…!)
曙「やるようになったわね、潮」
潮「私も頑張ってるからね、行こう!」
赤城「加賀さん、私達も」
加賀「そうですね、何もせず立っているだけでは不愉快です」
艦載機が頭上を通り過ぎる
加賀「攻撃隊」
赤城「……仕留めました」
神通「視認していた三体の敵水上艦、かんさいきによる撃破を確認…残りの潜水艦は…」
すぐ横で水柱が上がり、潜水艦の死骸が上がってくる
潮「撃破完了です」
川内「…ははは、こりゃ…離島のメンツにいいとこ取られちゃったね」
神通「全くです、が…油断せず行きましょう」
川内「勿論」
加賀「敵発見、水上部隊、戦艦もいるようです」
赤城「そのまま仕掛けます」
川内「…ウチも横須賀も空母はいないからねぇ…居るとこんなに頼りになるとは…いや、赤城と加賀だから?」
赤城「よしてください、随分古い仲ではありませんか」
加賀「それこそ世界線を一つ変えるほどに」
川内「あはは、そりゃそうだね、うちや横須賀も空母運用すればいいのに」
神通「横須賀にはいますよ、候補生だけですが」
曙「居ないようなもんじゃない」
川内「さて、航空隊の戦果は?」
加賀「航空戦になっています、が…こっちの被害は軽微」
赤城「こちらの与えたダメージは敵空母級、二隻撃沈、戦艦級大破炎上、軽巡級炎上、残り二隻駆逐級はダメージが軽微です」
神通「恐ろしいまでに、優勢ですね」
川内「もちろん油断はなし、確実に仕留めていくよ」
と言っても敵は満身創痍
こっちは勢いの乗ったまま
敵の残党を圧倒しながら進む
神通「…北側に進みたかったですね、陸地と離れ過ぎてしまいました」
川内「そうだね、怖いのは…強襲されて撤退せざるを得ない時、撤退戦で追い込まれるのは怖い…」
ベンガル海をインドまでまっすぐ突っ切る形…インドに到着したら陸上を飛行機で移動できることになってる、決して海は通らない…
川内「……神通、増援の要請して」
神通「わかりました、編成は」
川内「C編成で」
川内(…今、すごく嫌な感じを肌で感じた…ヤバいかもしれない)
赤城「やや北、北西の位置に敵です、敵航空隊と交戦します」
加賀「少数ですね…敵機撃墜……水上部隊もたいした敵は居ません」
川内(…順調だ、例の敵はどこ?仮面の敵は…私たちが一番警戒するべき敵は…)
神通「姉さん」
神通が近寄ってくる
神通「敵の艦隊を確認しました…非戦闘艦のみで編成されています」
ぞわり
背中を何かがなぞった
川内「それだ……それを徹底的に叩いて!!神通!位置を赤城と加賀に伝達!攻撃機全部そっちに回して!!」
神通「は、はい!敵確認の地点をアップロード…」
赤城「片方の隊は水上部隊を狙った方が…」
川内「赤城!…私に賭けて」
赤城「……了解しました、第二攻撃隊も出しましょう、加賀さん」
加賀「わかっています」
今はっきりと感じた、察知した、死の感覚
川内(出てくる前に、潰す!!)
この艦隊の旗艦は私
そして私の担った任は二つ、海域の敵の掃討と…
川内(全員を無事に連れ帰る事)
その為になら資材を無駄に使おうが、艤装を使い潰そうが関係ない…
必要だ
旗艦の私がそう判断した、文句は言わせない
川内「赤城、まだ?」
赤城「見つけました、攻撃に移ります……伏兵?」
加賀「隠れていた護衛艦が浮上してきました、想定内という事ですか…艦載機を狙われています」
川内「…敵のはらわたブチまけてやって…!じゃなきゃ、せっかくそっちに差し向けた意味がない…」
中身さえわかればいい、最低限…
赤城「…敵補給艦一隻撃沈……居ました!」
川内「やっぱり、か…」
加賀「倒した補給艦から仮面をつけた…人間でしょうか、少なくとも人型です」
神通「どうしますか」
川内「出た以上…
敵の強さを知るいい機会だ…測る、そして、確実に潰す…
でも、この感覚、嫌な感じは…
川内(どんなに強い深海棲艦と出会った時もこんな感じを感じた事はなかったのに…)
あの綾波とも違う感覚
綾波にあった時に感じたのは…
虚無、勝つ事が確実に"不可能“だと思い知らされるような絶望感
でもこれは違う
川内(……来る…!)
川内「全員!警戒して!!」
腰に差した短刀を逆手で抜刀し、海面に突き刺す
抉るように動かし、両手で持ち上げる
神通「そ、それは…」
川内「これが、敵の仮面、かな」
真っ白な顔全体を覆う仮面、そして目の部分のみに空いた穴…
川内「もう真下まで来てる」
一体は仕留めたけど
曙「川内!」
川内「好きにやっていいよ、みんな、できるだけ近くに来て」
曙以外が密着するほど近づく
曙「火傷注意!」
周囲を炎が包む
気温が一気に上昇し、海面が沸々と沸き始める
潮「わ、沸いてる…」
赤城「…話には聞いてましたが、こんな芸当を…」
加賀「高温の海水で茹で上がるわけですか…中々…おぞましいやり方ですね」
神通「でも、効果的です…深く深く逃げるしかない」
潮「…あれ?後ろから何か…」
赤城「……ジェットスキー…でも誰も乗ってない…」
誰も乗っていないジェットスキーがフルスピードで通り過ぎる
加賀「速いですね、50ノット…?」
神通「いいえ、60ノットは出ています、改造してあるようですね」
潮「で、でも誰も乗ってませんでしたよ…速すぎて落とされたんじゃ…」
川内「だとしても問題ないよ」
前方に大量の水飛沫が上がる
神通「振り落とされたのは直前だったようですね、良かった」
イムヤ「振り落とされてない!自分から飛び込んだの!」
川内「援軍到着を確認、よし…」
短刀をもう一本抜き、構える
イムヤ「C班到着!潜水艦隊配置良し!ヒトミ!イヨ!初出撃だけど大丈夫!?」
イヨ「まっかせて!」
ヒトミ「あ、あんまり調子に乗っちゃダメ…!」
イムヤ「曙!」
イムヤが曙にカートリッジを投げる
曙「待ってたわ、もう動けなくなるところだったから」
川内「何それ?」
イムヤ「補給カートリッジ、燃料とか弾薬もカートリッジで補給できるようにしてみたんだって」
川内「へー、便利…でも曙の炎って燃料使わなくなったんじゃないの?」
曙「そっちは体力を消耗すんのよ、だから燃料使ってたってわけ、援軍に補給のことは頼んでたしね」
川内「先に言ってよ…ま、いいや、下の安全は任せたよ、危なくなったら神通のそばに行って、守らせるから」
神通「そうですね…こうなった以上、出し惜しみはしません、守る事を優先します……多少、見た目がわるいですが……っ…と…!」
神通の肩からAIDAが吹き出し、三本目の腕を形成する
イヨ「うわっ…な、何あれ」
ヒトミ(こ、こわい…)
川内「怯えないで、味方であるならこんなに心強いものはないから」
曙「…出てきた」
100メートル先、頭数は7つ
川内「…私が行く、曙、カバーして…それと、全員自分の身を守ることを優先して、いい?身を守るって事はただ防御する事じゃない、先を読んで…怪我せず済むように立ち回って」
曙「んな事今更言わなくてもみんなわかってるわよ、さっさと動きなさい」
川内「7対2で行くよ、良い!?私たちが請け負うのは7だけ!後は…任せた!!」
海面を踏みしめる
足が沈む、艤装が水面から体を押し上げる
川内(さあ、私の勘はどこまで正しいのかな)
短刀を振りかぶる素振りで片手を背中に回し、人差し指にワイヤを括った輪っかを引っ掛ける
川内「行くよ」
曙「さあ、目瞑らないと火傷するわよ!」
曙が炎を上空に放つ
それが炸裂の瞬間、高温になり強く発光する
川内(この目眩しが効く、こうなればまともに狙いはつけられない、仮面で視界が悪いなら尚更もう狙えない、だから…)
ゼロ距離まで、近づける!!
川内「さあ、勝負!!」
一撃で1人斬り伏せる
そしてその動作とともにワイヤを飛ばす
ワイヤの先についた
川内(狙いはそうじゃないんだけどな、ったく!)
大きく腕を振るい、ワイヤを別の敵に巻きつける
川内「取った!」
ピンと張ったワイヤに短刀を押し当て、カートリッジを挿入する
川内「痺れろ…!」
ワイヤに電流が流れる
曙「どこが痺れろよ、黒焦げじゃない」
ワイヤを捨て、構え直す
川内「後五つ」
敵が此方に砲撃してくる
綺麗とは言い難い、バラバラの陣形、出鱈目な砲撃
川内(…あの感覚は何?私はこれを危険視…いや、ここで慢心するな!!)
神通「姉さん!気をつけて!」
川内「え?」
急に砲撃ではなく、銃撃に切り替わる
一斉に切り替わり、制圧射撃…
川内(ッ…かわしきれない!!)
曙「川内!!」
川内「大丈夫ッ…!」
右手の指輪に触れる
目の前に現れた金属片か銃弾を弾く
川内「っ〜……痛い…やって、くれたね…」
金属片がどんどん大きく、形を作っていく
柄の形を作った部分を握り、振り向き、金属片を背中に押し当てる
神通「姉さん!大丈夫ですか!!」
川内「安心して、神通……肉を切らせて、骨を断つから!!」
金属片がとうとう大剣を形造る
銃弾を全て大剣で受け止める
川内(ようやくわかった、恐ろしさは…人間と同じだ)
要するに、この敵は対応することを知っている
深海棲艦は同じ行動で倒せる、なのにコイツらは違う
私を人間だと判断して、1発頭に当てれば殺せると判断して機銃に切り替えた
遠距離ではなく近距離戦闘を得意としていると判断して弾幕を張り、近づかせない事を優先した
川内(指示する役割がいて初めて深海棲艦にできる動きを自分達でやってる…だから、怖いんだ)
大剣に身を隠したままポケットに手を突っ込む
川内「えっと………ああ、あった」
紙切れを取り出す
川内「本当に役に立つかはわからないけど…」
紙切れを海面に叩きつける
川内「行け!!」
何かが真下を走る感覚
顔をチラリと覗かせて様子を伺う
川内「うわっ」
噴き上げた水に一体が切り裂かれる
川内「本当に使えるんだ、この鉄崩水の呪符……冗談だと思ってたけど、なんでもできるんだ…前の世界みたいに」
急な遠距離攻撃に敵の銃撃が止む
回避行動を優先しているのか、移動している
川内(自分の命を優先することも知ってるんだ…やっぱりただの深海棲艦とは違う)
川内「…あと4つ、いくよ」
大剣を一度振り下ろし、背中まで振り上げる
曙「いくわよ川内!!」
川内「思いっきりよろしく!!」
背中のすぐそばで爆発が起きる
爆風を大剣が受け、吹き飛ばされる
そしてその吹き飛ばされた勢いのまま…
川内「また近づけた…!」
振り下ろす
一体を両断する、そして大剣をその場に捨て、再び指輪に触れる
大剣を足場に飛び、空を掴むように構える
手には 大鎌が現れ、一体の首を狩る
川内「あと2つ!!」
大鎌を捨て、短刀を2本投げる
一体にまとめて2本突き刺さる
川内「ラスト…!」
主砲を手に取り、お互いに構えて撃つ
外した…
曙「何やってんのよ!!」
残りの一体に火がつき、のたうち回る
川内「…ふー…7対2で良かった…助かったよ曙」
曙「こいつら、本当になんなの?…アンタが斬った奴ら、血を流してないし…いや、艤装以外消滅してる」
川内「うん、人間じゃない」
…まだ、賢くない
まだ怖くない…
"まだ"
私の頭にそう語りかけるような気がした
これは序章だ、まだなんだ
怖いのはこの先だ
そう言ってる気がした
川内「……一旦全滅かな、インドまで進むよ」