元勇者提督   作:無し

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記録 変化

The・World R:1

Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域

グリーマ・レーヴ大聖堂

重槍士 青葉

 

青葉「ええと、連絡がつかなかった理由は…はい、本当に申し訳ないと思ってて…」

 

フリューゲル『いや別にそこまで畏まる事ないんだけどさ、オレとしても無事なら良いわけよ、だって青葉ちゃんの事国から預かってるわけだしさ、なんか、こう…ヤラレチャッタかな〜って』

 

青葉「え、ええと…何度か」

 

フリューゲル『何度か?誰に』

 

青葉「い、色々ですね…騎士団の残党や例の謎のPC……あ!そうだ、あのPCについてなんですけど…リアルデジタライズしたPCなんじゃないかと…」

 

フリューゲル『あー、やっぱそう思う?オレ達もそう思ってたからさあ、できれば生捕にしてくんない?リアルに返さなきゃいけないだろうしさ、あ、でもあんまり無理しないでね?』

 

青葉「も、もちろんです」

 

青葉(注文多いなぁ……)

 

自分が微妙な立ち位置なのはわかってる

団長からしても面倒で扱いづらい位置なんだろうな…

 

青葉(それよりも、向こうは話を聞く気ゼロだったし…どうしよう)

 

私があの人を元の世界…つまりリアルに戻すのは…無理

戻せと言われてもどうすれば良いかわからない

 

だから有無を言わせずリアルに戻すなんてことは当然できなくて、一度捕らえる必要がある

 

青葉(戦いになるとして…毎回わたしは1人で向こうは複数、これは良くない…まず人数不利をなんとかするために他の方と合流しなきゃ)

 

青葉「確か、トロンメルさん…この時代にきてるはずなんだけど」

 

 

 

 

Δサーバー 水の都 マク・アヌ

双剣士 カイト

 

カイト「あ、トキオ!」

 

トキオ「え、か、カイト!?」

 

トキオ(しかも暫定ニセモノの方…!)

 

カイト「よかった、急に居なくなっちゃったから…でもまた会えてよかったよ」

 

トキオ「えー…と、あーうん、そうだね」

 

カイト(…トキオ、僕を何か怪しんでるような…そういえば、過去の僕と青葉が戦ったって言ってたし、誰彼構わず襲いかかってるのかな…)

 

カイト「よければパーティを組まない?調べたい事があるんだ、司ってキャラについてなんだけど…」

 

トキオ「司?なんでカイトが司を調べてるの?」

 

カイト「うーん…事情は色々あるけど、ざっくり言えば僕の仲間を助けるためかな」

 

きっと、The・Worldの謎を追えばみんなを助けられるから

 

トキオ「どうしよう…うん…」

 

カイト(誰かと話してる?)

 

トキオ「わかった、こっちこそよろしく!」

 

カイト「よかった、じゃあ行こうか」

 

司を見つけてもすぐに何があるわけじゃないけど

きっと手がかりを掴めるはずだ

その為には司と親しくなる必要がある

 

トキオ「…わかった…カイト、Δサーバー、隠されし禁断の聖域に行こう!そこに居るらしいんだ」

 

カイト(やっぱり、見えない誰かがいる)

 

 

 

Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域 

グリーマ・レーヴ大聖堂

重槍士 青葉

 

青葉「…あれ」

 

聖堂の奥、何もない台座の上に腰掛けた呪癒士を見つめる

 

青葉「貴方は、司さん…?」

 

確か、紅衣の騎士団に敷波さん同様捕まってた人だ…

 

司「…誰だっけ、キミ」

 

青葉「ええと、青葉です…何してるんですか?」

 

司「……良いもの、見せてあげよっか」

 

青葉「いいもの?」

 

空間が歪み、半透明の鉄アレイのようなモンスターが現れる

 

青葉(あのモンスターは…!)

 

司「怖がらないで」

 

それは柔らかいのか、硬いのか、丸い膨らみの先から触手を伸ばし、まるで犬の芸の"お手"のように司の手に触手を乗せる

 

青葉「…お、おお…?」

 

司「すごいでしょ」

 

青葉「…モンスターを使役する人なんて初めて見ました…」

 

背後の、聖堂の扉が大きな音を立てて開く

 

青葉(誰?)

 

司「来た!」

 

司さんは人を待っていたのか、明るい表情で入り口の方を見る

 

青葉「貴方は…」

 

司「…っ…」

 

入り口にいたのは

 

ベア「やあ…悪いな、これでもミミルの正式な代理人だ」

 

司「あの子は来ないの?」

 

ベア「キミと喧嘩したくないそうだ」

 

青葉(司さんの待人はミミルさんだった…という事ですか)

 

司「ボク、嫌われた?」

 

ベア「そう思ってるのは、彼女の方かもしれん」

 

司「そっか…やっぱりまだ怒ってるんだ…もう大丈夫なのに」

 

ベア「……大丈夫だと?」

 

司「見たい?」

 

モンスターが司さんの周りを回ってみせる

 

ベア「ッ…!!」

 

司「大丈夫…ほら、ね?」

 

さっきと同じように、お手をして見せる

 

ベア「……何が「大丈夫」で、何が「ね?」なのかオジサンにはわかんねえ」

 

司「…もうあんなことは起こらない、わかるでしょ?」

 

青葉(…モンスターに襲われ、意識を奪われる事件のこと…)

 

ベア「そんな事が言いたくて、ミミルに連絡したのか?」

 

司「だって、凄くない?」

 

自慢げな表情の司さんとは対極的に、ベアさんの目は哀しそうだった

 

ベア「だからなんなんだ?何が言いたいんだ、おれにはさっぱりわからん…それでいいのか?それで何かになったつもりか?」

 

司「……」

 

司さんは何も言わずに、転送を選んだ

 

ベア「……すまんな、君たちも話してたんだろうが」

 

青葉「いえ…それより…」

 

ベア「見ていたよ、前のことは…先に仕掛けたのはトキオだった、話す間もなく仕掛けたのは、何か理由があるのか…なんにせよ、キミを一方的なPKだとは思っていない」

 

青葉「それなら…良かったです」

 

ベア「…ん?」

 

青葉「あれ?な、何?」

 

カードが天井から散らばるように…

 

青葉「……わっ!?」

 

ベア「あー…そんなエディットだったかな…?」

 

べ、ベアさんが、大きなクマのぬいぐるみになってる…

 

青葉「だ、大丈夫ですかベアさん!」

 

ベア「おれよりも自分の心配をした方がいい」

 

青葉「へ?……ま、まさか」

 

視点を三人称に切り替える

 

青葉「な、なんですかこれ!!」

 

オオカミの着ぐるみ…

私も同じような目にあってるとは…

 

青葉「!…今上に誰かいた…!」

 

ベア「上?…いや、誰も見えない、というよりはこのゲームであんなに高いところに行く方法は…」

 

そう、無い

普通はあんなところには行けない

 

青葉「絶対に居ました…!趣味の悪い悪戯です…」

 

ベア「タウンに戻れば治るかも知れん、一度戻ろう」

 

青葉「そうですね…あれ?」

 

聖堂の扉がまた開く

 

カイト「…モンスター?」

 

トキオ「2体か…でも、なんか…違うような?」

 

青葉(司令官!…いや、トキオさんと組んでるなら…コビーの方だ!)

 

ベア「すまん、ちょっと良いか?」

 

ベアさんが歩いて2人に近づく

 

トキオ「うわあぁぁ!襲ってきた!」

 

青葉(声が聞こえてない?…不味い!!)

 

駆け寄り槍でトキオの手を押さえ込む

 

トキオ「う…!こ、この槍…シックザール!!」

 

カイト「え?この槍って…」

 

青葉「ちょっと待ってください!私の声が聞こえてるなら少し話を…」

 

トキオ「離せ!!この…!咬牙・嵐絶刃!!」

 

青葉「ぅ…!痛…こ、腰が…」

 

弾き飛ばされ、尻餅をつく

 

ベア「青葉!…どうやら話が通じないらしいな…」

 

青葉「声が聞こえてないんです…仕方ありません!一度倒します!」

 

ベア「手を貸そう!」

 

青葉「え!?や、やった!初めてソロじゃない!」

 

一歩退がり、槍を構え直す

 

トキオ「ふざけた格好で油断させて襲うなんて!卑怯だぞ!」

 

青葉(どうせ聞こえてないのなら、弁解は倒してからです!…私怨は入れない、私怨は入れない…よし!)

 

青葉「いきますよ!」

 

ベア「おれが合わせよう、好きに攻めると良い!」

 

青葉「助かります!!」

 

突きの構えで、踏み込む

 

カイト「!!」

 

カイトが双剣を交差させて突きを受け止める

 

青葉「フリーズ」

 

カイト「うわっ!…け、剣が…!」

 

カイトが石化した双剣を投げ棄てる

 

カイト(…違う、ヴォータンの効果はデリートだ、石化じゃない…つまりあの槍はヴォータンじゃない、だからあれは青葉じゃないのか…なら、倒すしかない)

 

青葉(後衛から落とし切る!!)

 

呪符を使いながら斬り込み、カイトを集中して狙う

 

ベア「トキオはおれが抑えよう!」

 

青葉「お願いします!」

 

横薙ぎをひとつ、跳んでかわされる

 

青葉(流石早さが売りの双剣士…なら、あなたが速さに自信を持って、私に勝てると確信しているなら!)

 

槍の先端部を持ち、横薙ぎに斬りつける

 

カイト(危なかった、直撃は避けたけど……あ…!)

 

わざと背を見せる、横薙ぎの勢いのまま回転し、背を見せる

 

カイト(今だ…!)

 

青葉「やああぁぁぁぁぁッ!!」

 

手の中で槍の柄が滑り、石突に近い部分を握る

全身の回転の勢いを乗せた斬撃、この誘いからの攻めで…

 

カイト「!!」

 

神速の槍

空間を切り裂いたような音が耳に残る

 

青葉「…あ、れ…?い、居ない?…後ろ!」

 

振り返った先に確かにカイトは居た、だけど…既に双剣を鞘に収めていた

 

カイト(今の技、青葉の技だ…直接受けるような位置で見たことは無かったけど…間違いなく、今のは青葉の攻撃…このモンスターがもし青葉なら、ならもう戦う理由はない…)

 

青葉「…司令官…?」

 

カイト「青葉、青葉なんだよね?今チャットか何かできる?」

 

青葉「え!?し、司令官なんですか!?ま、待ってください!す、すぐに…ああもう!なんでダメなんですか!?」

 

チャットは送信できない、ショートメールも…

 

カイト(この慌て様、僕の言葉は伝わってるみたいだけど…チャットが使えなくなってるのかな…いや、僕もテキストチャットが打てない、妨害されてる?)

 

青葉「ああもう、ええと……あ…?」

 

さっきまで司さんが居たところに、またあのモンスター…そして…帽子を被った猫の様な獣人のPC…

 

鉄アレイ型のモンスターが触手をカイトに向けて伸ばす

 

青葉「司令官!危ない!!」

 

カイト「うわっ!?」

 

カイトを突き飛ばし、間に割り込む

そのせいで触手に脇腹を貫かれる

 

青葉「か……っ…」

 

痛い、凄く痛い…熱くて、気が狂いそうな痛み

 

青葉「ああああああああああッ!!!」

 

頭が激しく揺さぶられる感覚

身体をめちゃくちゃに振り回されてる様な、おかしくなりそうな…

 

カイト「っ…あ、青葉!?これは…データドレイン…!?」

 

青葉(あ、これ…ダメ、かも…)

 

カイト(間に合え…)

 

カンッ

小さい、でもよく響く音が大聖堂に響く

それと同時に私は妙な浮遊感とともに地面に叩きつけられる

冷たい、大理石の床を全身で感じながら微睡に沈んで行く

 

カイト「青葉!…ちょっとだけ待ってて…!」

 

 

 

双剣士 カイト

 

この鉄アレイの様なモンスターの中心には、古びた金属の腕輪の様な何かがある

今さっき青葉を助ける為にそれを攻撃したら青葉は解放された

 

つまり、アレが弱点だ

 

カイト「ウルカヌス・ファ!!」

 

炎の精霊神を呼び出し、炎でモンスターを包み込む

 

トキオ「か、カイト!なにやって…うわっ!別なモンスター!?」

 

カイト「少し黙ってて!」

 

今使うべきスキルは?

今するべきことは?

 

徹底的に頭の中で分析し続ける

 

カイト「双邪鬼斬!!」

 

闇属性の斬撃を叩き込む

 

モンスターは不定形なのか、それとも不死身なのか

まったく効いている様子はない

 

カイト「なら!雷独楽!」

 

武器を変え、属性を変え、攻撃のために伸ばした触手を全て斬り落としながら徹底的に攻撃する

 

カイト(似た様なモンスターは過去に見た事がある、でもこれはそれとも違う、異質だ…!)

 

カイト「百花繚乱!!」

 

斬る、隙を与えずに、徹底して斬り続ける

 

カイト(まだか…まだプロテクトを破壊できない…データドレインが使えない…!)

 

…一度考えを改めよう

 

大きく飛び下がり、猫の様なPCを見る

左を紫、右を白の2色で半分ずつ塗られた様な猫

 

まるで人の様に行儀のいい服ととんがり帽子、そして左目を包む様に紫色の星のマーク

 

これが例の猫のPC…確かにエディットできない、非正規のPCだ

 

カイト(この猫を倒せば、或いは…!)

 

猫はこちらを見てニタリと笑い、手を掲げる

 

それに従う様にモンスターが空間に溶け込んで消える

 

カイト「……!」

 

そしてその掲げた手をゆっくりとおろしながら一礼し、その猫も空間に溶け込む

 

カイト「…今のは…なんだろう、この感じ…何かを、僕は感じてる…」 

 

あの猫は…なんだ…

 

カイト「!」

 

パラパラと音を立て、カードがあたりに散らばる

 

トキオ「うわっ!べ、ベア!?」

 

ベア「おお…ようやく元に戻ったか…危うくPKされるところだったな」

 

カイト「これは…」

 

カイト(あの猫が悪意を以って僕らを同士討ちさせようとした?…いや、でもそれなら退いた理由がわからない…わからない…!)

 

ベア「なあ、お前さん…」

 

カイト「…青葉…青葉は!?…居ない…PCが消えてる…」

 

蘇生できない、通常倒されたキャラクターは半透明のお化けになる

なのにそのお化けすらいない…それはログアウトした、もしくは…

 

カイト(まさか、意識不明になったんじゃ…!)

 

カイト「すみません!ログアウトします!」

 

即座にログアウトを選ぶ

 

トキオ「え!?か、カイト!?」

 

ベア「忙しないな」

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