元勇者提督   作:無し

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記録 失態

Link基地

青葉

 

青葉「ん……んぅ…っ…?」

 

頭がガンガンする

何が起きたのか覚えてないけど…机から転がり落ちて倒れたみたいな感じで…寝てた?

 

青葉「……あ、れ…?」

 

すぐそばに落ちてるのは…コントローラーと、装着型のディスプレイデバイス…でも、このデバイス、こんなところまで持って来れたっけ……

 

青葉「あ!…ああ!?こ、コードが千切れてる!!」

 

なんと最悪なことか、接続用のケーブルが切れている

最新式のワイヤレスタイプならこうはならなかったのに

 

青葉「だ、どうしよう、すごく大事なもの…なの、に……」

 

あれ…?なんで大切にしてたんだっけ…

 

青葉「…あ、そうだ、新しいやつある…」

 

VRスキャナ、貰ったんだった…

焦る事はない、これなら仕事には支障は出ないし、特に問題は…

強いていうなら、愛着のあるものじゃないのは…まあ、思うところはあるけど…

 

青葉(多分、それくらいしか思いつかないし…大丈夫なはず)

 

立ち上がり、ちぎれたコードとデバイスを袋にまとめる

パソコンに繋がった方のコードはUSBポートを変形させていたため、かなりショックを受けた

 

青葉(ああ…もう…)

 

しかし、ゲームをしながら寝落ちなんて…なにしてたんだっけ…

 

思い出そうとする度に頭が痛む

内側から殴られてる様にガンガンと痛む

 

青葉「……今日は、やめておこう…」

 

点きっぱなしの電源を電源スイッチを直接押して切り、ゴミ箱に袋を入れてベッドに横になる

 

青葉(お腹減った…喉も乾いてる……でも、取り敢えず…動く元気がないや…)

 

 

 

 

翌々日

 

青葉「…ん……ぁえ…?」

 

体が自然と目覚める

デジタルタイプのカレンダーを見る、日付はふたつ進んでいた

 

青葉「…!」

 

叫びたいくらいの寝坊だ、だけど周りが明らかに暗いことから声を殺す

 

青葉(ヤ、ヤバ…丸2日寝てた…?いや、この時間なら、1日半……た、体調不良ということでセーフ…?)

 

まだ多少頭が痛いけど、そんな些事が全く気にならなくなるほど焦った

 

青葉(あ…お腹減ってる…)

 

ここには居候の身だし、勝手に冷蔵庫の中を漁る訳にもいかない

やむを得ずアウターを羽織り、財布だけ持ってコンビニへと向かう

 

 

 

青葉「寒っ!!」

 

冬真っ只中、深夜、暖かいわけがないのはわかっていたけど、手袋とかマフラーとか、その辺りを持って来なかった事を後悔した

まあ、そもそも欲しいのならば買い揃えなくてはならないのだが…

 

アウターのポケットに両手を突っ込み、縮こまりながらとぼとぼと歩く

すでに空腹の限界で動きたくない、が、温かいものを食べるためになんとかコンビニまで歩く

 

青葉(こ、ここのコンビニ徒歩で20分くらいかかるんですよね…うう……寒い…)

 

耳が冷え切ったせいで治っていた頭痛が再発する

体幹ではもうついている頃なのに、コンビニの看板は未だ見えない

 

青葉(寒い寒い…って言うか、よく見たら雪積もってるし…)

 

そう言えばここは青森だった、私が寝ている間に積もったのだろうか、雪とは無縁な暮らしが長かったせいで若干テンションが上がったものの…

 

青葉(今はダメージ床並に恨めしいですね………はあ…ゲーム脳になってる)

 

自己嫌悪と雪への憎悪に包まれながら歩く

 

 

 

コンビニ

 

青葉「やった、ついた……」

 

空腹が限界に達して腹の音が鳴る

 

青葉「う……き、聞かれてませんよね…」

 

辺りには当然人はいない

こんな時間に歩き回る変質者なんて私1人で十分だ

 

自動ドアが開いた途端、温かい空気が顔に吹き付ける

 

青葉「ん……生き返る…」

 

ビスマルク「いらっしゃ…あー…青葉、だったかしら?」

 

確か、滅多に会わないLinkのメンバーさん…

なんでコンビニで働いてるのかは知らないけど…

 

青葉「あ、こんばんは…遅番ですか?」

 

ビスマルク「そうなの、でも帰りの事考えるともうここで暮らしたいわ、バックヤードも広いし、店内は暖かいし」

 

青葉(コンビニの労働環境ってかなり劣悪って聞いてたけど…それよりお腹減ったなー…)

 

ビスマルク「それに今は帰っても綾波が居ないし、自分でラーメンを作らないといけないでしょ?お腹が減ってるのに動くのも嫌だから…」

 

青葉「気持ちはわかります(お腹減ったなー…)」

 

ビスマルク「でも明日の朝一にゴミ出しもしなきゃいけないのよ、ここじゃなくて基地の方ね、アークロイヤルは昼まで寝てるし、神鷹達にそんな事させるのも可哀想だからって」

 

青葉「お腹減った…(そうなんですね)…はっ」

 

ビスマルク「…ごめん、話長かった?と言うかお腹減ってるの?寒かっただろうし、何か奢りましょうか?」

 

青葉「い、いえ!悪いですよ!…あ、肉まん売り切れてる…」

 

ビスマルク「この時間帯は人が来ないから…」

 

青葉(温かい肉まんを持って暖をとりながらハフハフしたかったな…)

 

ビスマルク「…あ、そっちのラーメンの棚、ちょっと待っててね」

 

ビスマルクさんがカップ麺を持ってくる

 

青葉「あ、それは…」

 

ビスマルク「これ、すごく温まるらしいんだけど、良かったらどう?」

 

青葉(ほ、北極ラーメン…これ、確かすごく辛いんじゃ…赤城さんや加賀さんなら好きそうだけど…)

 

青葉「え、遠慮しておきます…私辛いものダメで…」

 

ビスマルク「え?辛いの?アークロイヤルが普通に食べてたから…」

 

青葉(アークロイヤルさんって空母の艤装持ってるの見たことあるし…もしかして空母は辛いものが好きになるのかな…翔鶴さんも赤城さん達と同じもの食べてた時期あるし…)

 

青葉「…あ、これは?」

 

ビスマルク「冷凍食品コーナーね、レンジもあるから好きなものを選んでいいのよ?」

 

青葉(お腹いっぱい温かいものが食べたい…ここはできるだけ一番好きなものを…)

 

ビスマルク「あ、このソーセージは結構イケるわよ」

 

青葉「う…お肉…」

 

ビスマルク「後は狭霧が絶賛してたのはこのサバの味噌煮ね」

 

青葉「うあ…しょ、商売が上手いですね…!」

 

ビスマルク(普通に勧めてるだけなんだけど)

 

青葉(お腹が減ってるからこそ一番食べたいものが食べたい…)

 

青葉「あ…こ、これください!」

 

ビスマルク「え?あ、わかったけど」

 

 

 

 

レンジの音が店内に響く

 

ビスマルク「イートインは好きに使って」

 

青葉「あ、ありがとうございます…では、早速…」

 

紙皿に出したハンバーグに食らいつく

 

青葉(美味しい…お肉美味しい…)

 

ビスマルク「幸せそうに食べるわね」

 

青葉「お腹減ってて…ん、このおにぎりも美味しい……エビマヨは外れないですね…」

 

ビスマルク「日本人の食のセンスはやっぱり難解ね、えびマヨネーズなんて…」

 

お茶でおにぎりを流し込む

 

青葉「はー…すごく、幸せです…」

 

ビスマルク「ちなみに、肉まん温まったけど」

 

青葉「いただきます!」

 

ビスマルク「…これ、良かったら飲んで、オススメだから」

 

ジュースの缶をビスマルクさんから受け取る

 

青葉「つめたっ!…レモンジュース…?」

 

ビスマルク「熱いもの食べてる時にこれで流し込むと最高よ、私の奢り」

 

目の前にレンジで温められて皮が弾けたソーセージが置かれる

…ゴクリ

 

青葉「い、頂きます!」

 

ソーセージを喰らい、流し込む

 

 

 

 

青葉「いやー!美味しいですね!これ!」

 

ビスマルク「でしょ!?案外青葉もイケる口じゃない!」

 

青葉「えー?なんの話ですかー!?」

 

ポワポワと楽しい気分で食事をする

いつのまにかビスマルクさんも食べ始めてるけど、まあいいや

 

青葉「あ…そろそろ帰んないとなー…」

 

ビスマルク「えー?でもよく見なさい?外は雪が降ってるわ、止むまで良いんじゃない?ほら、吹雪だったって言えば大丈夫!」

 

青葉「吹雪かー…吹雪なら仕方ありませんね!」

 

ビスマルク「それより、これ飲んで…エビスってヤツなんだけど」

 

青葉「ええー?…これビールじゃないですかー!ダメですよ!」

 

ビスマルク「ドイツなら合法よ!」

 

青葉「なら良いかもしれません!」

 

ビールを流し込む

 

ビスマルク「んあ?なんか、駐車場に車が止まったわ、この吹雪の中わざわざ来たのかしら?」

 

青葉「ホントですなー、どうしたんでしょう」

 

自動ドアが開き、眼鏡をかけた男性が入ってくる

 

ビスマルク「あれ、店長じゃない」

 

佐藤「ビスマルクさん、何やってるんですか」

 

ビスマルク「えー…?」

 

佐藤「……ビスマルクさん、飲み会の代金は置いておいて、未成年にお酒を飲ませるのは犯罪ですよ」

 

ビスマルク「何言ってんのー、青葉は成人でしょー?」

 

青葉「えー、見えますかねー、17なんですよー」

 

ビスマルク「え?ホントに?」

 

ビスマルクさんの顔が一気に青ざめる

 

佐藤「ヘルバ様に言われて監視カメラを確認してみれば……なんでこんな事に…外部の人に見られてなくて本当によかった…」

 

ビスマルク「青葉って18くらいじゃないの?」

 

青葉「えー…まだ17になったばっかりですよー…うーん……眠…」

 

ビスマルク「えっちょっと!寝ないで!?待って!起きて!18ですって言って!!」

 

佐藤「そもそもこの国は20からしか飲酒喫煙はできません」

 

ビスマルク「ま、まって!蒸留酒は飲ませてないから!」

 

佐藤「日本ではリキュールもビールもアウトです」

 

ビスマルク「そ、そんな…どうかクビだけは…」

 

佐藤(普通なら即刻クビですけど、できないんですよね、上が仲良いから)

 

佐藤「取り敢えず、青葉さんを連れて帰ってください…後、未払いの代金は天引きします」

 

ビスマルク「そんなあ…」

 

 

 

 

 

Link基地

 

青葉「ん……痛っ…頭痛い…」

 

ゆっくりと身体を起こす

 

青葉「…うう…気持ち悪い…ガンガンする……なんでこんな事に…?」

 

…なんか、やばい事をしてしまった気がする…

もう時計はお昼回ってるし…

 

青葉「はあ……ん…?」

 

ため息が、なんか…鼻につく匂いを混じらせて…

 

青葉「……そういえば、昨日何か…」

 

蘇る記憶、失態…

 

青葉「お、お酒飲んじゃった!?」

 

まさかビールいっぱいで潰れて寝るとは…いや、それ以前からテンションがおかしかったけど、あれ以外お酒は飲んでないはず!

 

青葉「何が「なら良いかもしれませんね」なの…ああもう…最悪…」

 

ベッドから起き出して、あたりを見る

中途半端に片付けられた部屋

机の上のVRスキャナを見て何か、引っかかる

 

青葉(あれ…?FMDは?)

 

…そうだ、私、記憶が混濁してて…

 

と、とにかく、捨てたんだ!!」

 

慌ててゴミ箱を確認する

空っぽ…

 

青葉(そういえば昨日ゴミ捨てって…!)

 

部屋を脱兎のごとく抜け出し、ゴミ捨て場へと走る

 

青葉「…な、何もない…」

 

力無く、崩れ落ちる

 

青葉「す、捨てちゃった…ああ…もう、捨てちゃダメなのに…捨てちゃった……!」

 

あろう事か、一番捨ててはいけないものを捨ててしまった…

私の持ってるパソコン周辺機器で一番価値が高いと言っても良い

なのに、それをなんの躊躇いもなく捨てた…

 

青葉「…ごめんなさい、司令官…」

 

どうしよう…もう、戻ってこない…

 

ビスマルク「あ、青葉!」

 

青葉「あ…ビスマルクさん…」

 

ビスマルク「昨日はごめんなさい、まさか未成年だとは思ってなくて…いや、それを抜きにしてもハメを外しすぎたけど…」

 

青葉「いえ…私もちょっとおかしかったので…」

 

ビスマルク「普通チューハイを進める前に聞くべきだったけど…ああ、本当にごめんなさい」

 

青葉「チューハイ?……あのジュース…まさか、お酒だったんですか?」

 

ビスマルク「え、あ…気づいてなかったのね…」

 

青葉(今更だけど、初めて飲むお酒は良いレストランで赤ワインを優雅に飲みたかったなぁ…)

 

ビスマルク「…ところで…こんなところにいたら風邪をひいてしまうわ、戻らない?」

 

青葉「…はい」

 

 

 

 

アークロイヤル「おい、ビスマルク」

 

ビスマルク「…何よアーク」

 

アークロイヤル「何よじゃない!お前は分別も知らんのか!お前のせいで今から出勤が憂鬱だぞ…」

 

ビスマルク「ああ…うん、ごめん」

 

アークロイヤル「それと、ゴミ、返却されてたぞ…ゴミ出しの時に確認しなかったのか?」

 

ビスマルク「え?…ああ、これ?ダメなの?」

 

アークロイヤル「缶と一緒に機械を捨てるな!!」

 

青葉(缶と、機械…まさか)

 

青葉「ちょっと失礼します!!」

 

ゴミ袋を開けて漁る

 

青葉(無い!無い…!どこに…)

 

アークロイヤル「…もしかして、これを探してるのか?」

 

別の袋に入った…FMD

 

青葉「それです!!」

 

引ったくるようにFMDを手に取る

コードはちぎれてるけど、本体は壊れてない…

 

青葉「良かった…」

 

ビスマルク「…捨ててあったみたいだったけど…」

 

青葉「…ちょっとした、気の迷いというか、ミスだったんです…本当は捨てるはずがないもので…すごく大事なものなんです」

 

アークロイヤル「それ、随分古い型のFMDだな?今時M2D(マイクロモノラルディスプレイ)でも古いのに…」

 

青葉「頂き物なんです、それに…これでもThe・Worldはできますから」

 

ビスマルク「The・Worldをプレイしてるの?」

 

青葉「ええ…まあ」

 

アークロイヤル「…しかし、そのディスプレイはフレームレートも低いし、不利じゃないか?色々と」

 

青葉(意外と詳しい…)

 

青葉「そうなんですけど…私にThe・Worldを教えてくれた人がくれたもので…」

 

アークロイヤル「つまり、そのくれた人というのがよほど重要らしいな……ふむ、私が見るに…さては惚れてるな?」

 

青葉「ゔぇっ!?そ、そういうのじゃないですよ!!」

 

アークロイヤル「なに、隠すことはない、女と言うものは恋をするたび美しくなるものだ、爛れた面を見せず、自分の綺麗な姿を見て欲しくなるものだ」

 

青葉「だからそういうのじゃ…あ」

 

そういえば私、モンスターにキルされてから…

 

青葉「ちょっとすみません!」

 

自室に戻ってパソコンを起動し、携帯を確認する

 

青葉「じゃ、充電切れ…?」

 

充電切れの携帯を充電し、パソコンの起動を待つ

 

青葉「早く早く早く早く!!」

 

思いとは裏腹になぜか遅い

 

青葉「…アップデート…再起動が必要…?あああもう!!早くして!」

 

結局、5分後に携帯の電源が入るのが先だった

 

青葉(め、めちゃくちゃ不在着信が…司令官から…それと…うん、こっちは見なかった事にしよう)

 

司令官より自分が姉と呼ぶ存在からの着信の方が多かったのは少し残念だった

 

青葉「…あ、司令官ですか…?」

 

海斗『青葉!無事だったんだね、良かった…』

 

青葉「ほんとにご心配をおかけしました…」

 

海斗『無事で何よりだよ、でも、数日連絡がつかなかったのはもしかして…』

 

青葉「……意識を失っていたみたいですね、呆気なく、やられてしまいました…ほんとうに情けない事ですけど…」

 

海斗『…君は僕を庇ってやられたんだ…本当なら僕がそうなるはずだった、そうであるべきだった』

 

青葉「…司令官をお守りできて、良かったでさ」

 

海斗『…本当にありがとう…ところで青葉、ええと、横須賀の君の…お姉さんで良いのかな』

 

青葉(あ…)

 

海斗『僕がここを離れられないから、代わりに見てきてもらえないか頼んだんだけど…』

 

気の所為だろうが、玄関先が騒がしい気がする

 

青葉「司令官、ありがとうございます、少し会ってきますね」

 

海斗『うん、改めてありがとう、青葉』

 

丸々3日ほどの休暇明け、騒がしい一日のスタートを切る事になりそうです

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