元勇者提督   作:無し

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真の価値

横須賀鎮守府

提督 火野拓海

 

アオバ「と言うことで、監禁してます」

 

…出鱈目な報告を受け、頭を抱える

 

大淀「何やってるんですか貴方」

 

アオバ「まあ、客人への対応としては些か手荒ですが」

 

大淀「そうじゃありません、相手はあの綾波ですよ」

 

アオバ「この世界で最高の能力を持った存在です」

 

大淀「私たちもその恩恵には肖ってはいます、しかしそれはそれ、これはこれ、あの人を私たちで制御できるわけがない」

 

アオバ「制御はしません」 

 

火野「…考えがある様だな、聞かせてもらおう」

 

アオバ「司令官は勿論ココの評判はご存知ですよね?非人道的施設なんて呼ばれてます、見た目年端も行かない少女達が化け物と戦い続けてるのですから仕方ありません」

 

火野「それで」

 

アオバ「今の綾波さんは誰よりも人道的だと思います、少なくとも…私よりは」

 

大淀「アオバさん、まさか忘れたんですか…?貴方の腕は…」

 

アオバ「そう言う問題じゃありません、実を取るという話です、綾波さんはただ私達のそばに居るだけで、勝手に世の中にとって良いと思う事をします…いわゆる大義です、そこからは外れません」

 

火野「…好き勝手やらせていれば、名声が手に入る、評判を立て直す、と?」

 

アオバ「それだけではありません、綾波さんが正しい行いをし続けるのは一人では難しいことです、綾波さんは…敵になったとしたらもうそれは恐ろしいですけど、味方であるなら頼もしい…」

 

大淀「味方であるために、コントロールする?」

 

アオバ「いいえ、コントロールは必要ありません…綾波さんは自身で判断するくらいできます、善悪を間違えることは…少なくとも、私達の思ってる形では無いと思います」

 

火野「…まるで、暴走を放っておく、という様な話だな」

 

アオバ「それで良いんです」

 

火野「本人はどう言っている」

 

大淀「提督!正気ですか!?」

 

火野「…私の考えでは、そもそもここに留まることすらしようとしないだろう、私もLinkについては多少聞いている、本人が活動拠点とする場所を捨てたと言うのに、ここにとどまることを選ぶとは思えない」

 

アオバ「それは…」

 

火野「…今の彼女は、我々でとどめて置ける様な存在ではないだろう…もとより、そうだが」

 

アオバ「……味方につけたかったんだけどなあ」

 

大淀「…何故、貴方がそんなに綾波さんに入れ込むんですか」

 

アオバ「だって…あんなに辛そうな目をしてる人…私は…」

 

大淀「…辛そうな目、ですか、それが演技でない確証は?」

 

アオバ「大淀さん、貴方から見たら確かに私はアマちゃんですよ、だけど、いろいろな人を取材してきて、その人が嘘をついてるかくらいは見抜く力をつけるつもりです」

 

大淀「…提督」

 

火野「綾波は災害と何も変わらない、それを止めるのはもはや人にとっては至難の業だ、無理にここに留めることは…首を絞めることに他ならない」

 

アオバ「つまり…綾波さんが望めば、良いんですね」

 

大淀「本当にいいんですか」

 

火野「…一番近くで見張れるのだとしたら、それが一番マシだろう」

 

 

 

 

 

工廠

実験軽巡 夕張

 

東雲「…ええと、これは?」

 

夕張「何も食べてないんでしょ?私秘蔵のカップ麺、好きなの食べて良いから、後で感想聞かせてね!」

 

東雲(す、すごい種類…)

 

夕張「ちなみに私のおすすめはこの飲み干す一杯シリーズ、結構クオリティが…ああ、でも、味噌ラーメンはこっちのカップヌードルの方が美味しいかも、あ!サッポロ一番もあるけど!」

 

東雲「…ええと、私、カップ麺はあんまり食べたことなくて…」

 

夕張「なら、やっぱりカップヌードルから入るのはどう?王道で美味しいし!」

 

綾波にカップヌードルの醤油を押し付ける

 

東雲「え、ええと…ありがとうございます…」

 

夕張「…ほんとなら栄養のあるものを用意しなきゃなんだけど、今日間宮さんいなくて…一応医官もやってるのに、情けないけど」

 

東雲「そんな、お気になさらず…」

 

綾波の身体には合計12の銃槍があり、自身で処置できる場所は全てガマという水辺に生える植物の花粉が塗られていた

なんでも止血効果のある、所謂薬草らしい

 

夕張「…どうせ、暫くは外に出られないんだし…」

 

東雲「いえ、その…言われた仕事を終えたら出て行きます…」

 

夕張「え!?だ、ダメ!普通死んでる様な怪我なのに…!」

 

東雲「生きてるなら、私は…私の命を使わなくては、時間が勿体無い…」

 

夕張「そんな…ほんとに死ぬつもり?」

 

東雲「元よりそのつもりです…私は、大人しく地獄に落ちるべきなんです」

 

夕張「……あなたに憧れてる人、たくさんいると思う」

 

東雲「それは…間違いです、目を覚ますべきですよ、私に憧れるなんて…冗談も休み休みにしてください」

 

綾波の手を取り、こちらを向かせる

 

夕張「少なくとも!……私は、技術者として…憧れてる……」

 

綾波は私の手を優しく握り、ゆっくりと離させる

 

東雲「…あなたは凄い人です、私なんかに惑わされちゃいけませんよ」

 

夕張「違う、惑わされてなんかいない…!私が憧れたのは、使い手の事を理解した装備を作れるところとか!私よりも色んなことしてるのに手先がすごく綺麗で気を遣ってるところとか!」

 

東雲「…そうでしょうか、ほら、今の私の手…汚いじゃないですか」

 

綾波の手は、確かに見る影もない

前に会った時、美しく、人形の様な姿だった

 

でも、今の綾波の肌は…カサカサだったり、シミがあったり

手も、爪先が割れていたり、指が傷だらけだったり…

 

でも…

 

綾波の手を両手で包み込む

 

夕張「…綺麗だと思う、私にはわかる、この手は…頑張ってる人の手だって…辛くても苦しくても諦めてないって、わかる」

 

東雲「……あなたは、優しい人ですね、相手の心を思いやれる、良い人です…」

 

夕張「…あ、あれ?どうかした?」

 

綾波の瞬きの回数が多くなり、その度に目を閉じている時間が長くなる

眠い?それとも…

 

夕張「よ、横になって!まさか失血がそんなに?いや、でも…そりゃそうよね、ああもう…!」

 

東雲「……すみません…少し、眠り、ます…」

 

そう言って綾波は目を閉じて寝息を立て始める

 

夕張(し、死ぬのかと思った…)

 

体力が尽きたのか、一瞬で深い眠りについたらしい

 

夕張(…私よりも、年下で、小さくて、なのにずっとずっと強くて、何度も間違えて、今もまだ…)

 

思えば、私もたくさん間違った

今が正しいとはとても言えない

 

正しいは存在しないのに、間違いはたくさんある…

 

夕張(…今なら、進めても良いかも)

 

 

 

 

 

 

数時間後

 

東雲「ん…んぅ…?」

 

夕張「あ、起きた?」

 

東雲「……すみません、毛布までお借りしてしまい…今の私は、1日の連続活動時間に限界があって…」

 

夕張「大丈夫大丈夫…それより、一ついい?」

 

東雲「なんでしょうか…」

 

夕張「横須賀に、留まるつもりはない?横須賀は貴方のことを支援したいと考えてる、貴方が大義のために戦うと言うのなら、目的は同じだから」

 

東雲「…お断りします」

 

夕張「理由、聞いてもいい?」

 

東雲「……誰かを、巻き込むだけです、私は1人でいい」

 

夕張「…そう、それなら仕方ない、か…」

 

懐から、カートリッジを取り出して差し出す

 

東雲「そ、それは…最初に作った改二カートリッジ…」

 

夕張「それだけじゃない、勝手で悪いけど、これも使わせてもらったの」

 

東雲「…私が持っていた方の、改二カートリッジ…」

 

アオバから大体の話は聞いてる

 

夕張「両方、データをもらったから…そして、これ」

 

東雲「……このカートリッジは…?」

 

夕張「二つのカートリッジの力をそのまま組み込んだ…そうするとできあがったのは、全く安定性の無い、凶暴としか言えない、破壊のカートリッジ…」

 

このカートリッジは、何よりも危険だった

 

夕張「だから、それを…抑え込むために、色んなカートリッジを使ってチューニングしたんだけど、まだ不完全なの」

 

東雲(…このカートリッジ、改二と同等の出力でありながら…危険度が跳ね上がってる、でも…)

 

綾波がカートリッジを手に取る

 

東雲(…そうか、無理やり押さえ込んでいるから改二と同等の出力しか出せない…でも、このカートリッジ…)

 

夕張「制御装置というか、枷だらけだから、使いづらいかもだけど…」

 

東雲「…いえ、これ、身体への負担が大きく軽減されています…!そんな、あり得るんですか、こんなこと…改二のリスクが、無い?」

 

表情を見ている限り、どうやら満足いくレベルまでは押し上げられたみたい

 

東雲(カートリッジ其の物が長時間の使用に耐えられないけど、その代わり使用者への負荷が一切ない…あり得ない、私じゃ絶対にできなかった…)

 

東雲「…夕張さん、あなた、凄いですよ…!」

 

夕張「え?そ、そお?いやー…あはは」

 

憧れの対象にそんな事を言われるなんて、つい頬も緩む

 

東雲(でも、これを使うのは控えたほうがいい、カートリッジ自体が長時間の戦闘に耐えられない、となると、本当に必要な時まで使えない…複製するにも、改二カートリッジ2本の力を流用することになる…)

 

開発の手間は途方もない

そうなると無駄遣いはできない

それこそ死にかける様な戦い以外では、使えない

 

東雲(…でも、この力をどう扱うのが正しいのか、測り間違えそうで、怖い…もっとおびえて、力の使い所を間違えない様にしないと)

 

夕張「…綾波は、自分の戦いが終わったら、どうするの?」

 

東雲「自分の戦い、か……私は特定の敵を持っていません、強いていうなら敵は悪意そのものです、なので…そこそこ平和になったら赤坂におしゃれなカフェでも開いて隠居しようかと」

 

夕張「そっか、そんな夢があるんだ」

 

東雲「…今適当に考えて言っただけです、私の夢は、地獄に落ちる事ただ一つですから」

 

夕張「ううん、今さっきのカフェの話、きっと綾波の夢なんだよ、ずっとそうしたいと思ってるんだよ」

 

東雲「……そんな事」

 

夕張「絶対そうだって!じゃないとそんなにすらすら出てこないし…」

 

東雲「あーあー、そうだ、忘れてたことが一つありました」

 

無理矢理話を流される

 

東雲「その指輪についてです、重要な機能を一つ伝え忘れてました」

 

夕張「機能?」

 

東雲「…その指輪は、より強くなるために役に立ちます、具体的にはその指輪が思考の補助や動作補助をしてくれるんです、実質的に今の限界を突破できます」

 

夕張「そんな機能あったの!?」

 

東雲「ええ、でも機能していませんでした」

 

夕張「機能してなかった?」

 

東雲「ある一定ラインの強さを変えないと、意味がないんですよ…機械の補助がつくのある強さになってからです」

 

夕張「それって、具体的にわかるものなの?」

 

東雲「今の艤装には練度を識別するシステムがあります、そのシステムと指輪は繋がってるんですが、そのシステムが練度99以上と認めて初めて効果を発揮するんです」

 

夕張「99…該当者はいるの?」

 

東雲「3名います」

 

夕張「三名…」

 

東雲「アケボノさん、キタカミさん、川内さんです…」

 

夕張「3人とも指輪なしでも超のつく実力者…」

 

東雲「…これから、もっと強くなるはずです」

 

底を知らないというか、なんというか

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