元勇者提督   作:無し

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Trojan horse

離島鎮守府

教導担当 キタカミ

 

キタカミ「おー、帰んの?」

 

球磨「ま、流石に一旦休憩だクマ、攻略の為にわざわざみんな出張ってきたけど、慣れない場所で一日中気が休まらないんじゃ辛いクマ」

 

川内「何より私たちが出てから日本海の深海棲艦が急増してるらしくて、早く戻ってきてほしいってさ」

 

キタカミ「舞鶴も稼働し始めたって聞いたけど」

 

川内「練度低い子達しか居ないからねぇ…元々舞鶴にいた連中はアメリカとの共同の輸送任務であっち行ったらこっち行ったりだし」

 

球磨「それより、川内、神通の事言ったかクマ」

 

キタカミ「なに、神通何かあったの?」

 

両手が使えないのは知ってるけど

 

川内「あー…いや、どっか消えちゃったんだよね、神通…多分神通なら上手くやるだろうけど、ほら、怪我してるじゃん」

 

キタカミ「マジで?居ないの?」

 

川内「…昔から勝手なことするタイプだったけどね、家出はこれで…2回目…いや、3回目かな?」

 

球磨「もし見つけたら連れて帰って欲しいクマ」

 

キタカミ「おけ、言っとくよ」

 

川内「……次は一気にヨーロッパまで行くかな」

 

球磨「途中で退路なりを断たれて終わりクマ、じっくり殲滅するしかないクマ…軍艦がちゃんと役に立てばここまで梃子摺る事もないクマが…」

 

キタカミ「ま、同じ速度や馬力出せて、火力も同等…しかも使うのは最新鋭の誘導ミサイルじゃなくてただの砲弾、防ぐにも防げないだろうし仕方ないんじゃない?」

 

川内「的当てするにも的はいやに小さいしね、向こうのマトは大きいのに」

 

キタカミ「当てれば関係ないよ」

 

川内「流石キタカミ、周りが自分並みに当てられると思ってるんだ」

 

キタカミ「当てられる様にはなるよ、そうじゃないと生き残れない…みんなを生かせない」

 

球磨「キタカミなりの誓いってとこかクマ」

 

キタカミ「…まあね」

 

川内「んー…でも、神通はどこに行ったんだろう、兵糧丸はあるから餓死はしないだろうけど…」

 

キタカミ「鼻が効けば捜してあげれるんだけどねえ…お?」

 

那珂が川内の背後に現れる

 

川内「あ、見つけた?」

 

那珂「…えっと…書き置き、食堂のテーブルの裏にあったって」

 

[己を鍛える為、Linkに行ってきます。

               神通より]

 

川内「…は?」

 

那珂「ええと…」

 

キタカミ「おやおやおや?見つかったは良いけど面倒な事になってるねえ」

 

球磨「Linkはヤバい奴らの温床だって話クマ」

 

川内「…迷惑かけないでよ、神通…」

 

川内の祈る様な声が響く

 

 

 

 

 

Link基地

駆逐艦 朧

 

朧「…なんで神通さんがこんなところに?」

 

神通「迷惑はかけません、仕事をさせてください」

 

狭霧「…他所の方をそのまま受け入れるのはちょっと…」

 

神通「…そうですか」

 

神通さんが踵を返して去っていく

 

朧「な、なんだったの…?」

 

狭霧「…ずいぶん雰囲気が悪くなっていました…やはり両腕を失ったのは…精神的に辛かったのでしょう」

 

朧「…それより、狭霧、データの解析は済んだ?」

 

狭霧「それ自体は終わってるんです、でも、今問題なのはそのデータをどう使っていたかがわからない…あれは一体何なのか…」  

 

朧「川内さんのいう通り、本当に…あれは記憶を再生してる様なものなら?」

 

狭霧「無限に湧いてきますよ、それこそ、みんなが戦うほどに」

 

朧「……どうする?」

 

狭霧「…さあ、まだ考えてる途中ですので」

 

グラーフ「おい!狭霧!」

 

狭霧「どうしました?」

 

グラーフ「大湊が救援を求めている!急いで出たい!」

 

朧「例の敵?」

 

グラーフ「わからん…とにかく、行こう」

 

 

 

 

 

 

海上

軽巡洋艦 神通

 

…冷たい潮風が私の肌を撫でる

立っているだけで、冷静になれる、落ち着く、だから、カッとなりやすい私に冬は相性が良い

 

神通「…成る程」

 

ゆっくりと歩きながら近づく

戦っている、確かに戦っているが…

 

これは、幻覚の様な何かだ

 

私に気づいた深海棲艦が砲撃を放ってくる

 

神通「……」

 

当たりもしない砲撃、無駄な攻撃…

 

何発撃っても、私を捉えてすらいない

 

私の眼には全てが()えている

 

神通「成る程、ようやくわかりました……かつての舞鶴か、ここは」

 

あの檻の中だと言うことだ

ここは、リアルであってリアルではない

 

ようやく私を捉えた砲弾が飛んでくる

それを蹴り、前方の交戦中の艦娘へと吹き飛ばす

 

神通「…何と言うのか、擬態とでもいうか」

 

あれは大湊の子…に、見える

でも、違う

 

神通(…これは、罠だ…そしてこの檻は、目に見えない異質な空間は…どうやって顕現しているのか…)

 

神通「あれか」

 

一体、何か変な機械を持った戦艦級がいる

 

神通「……潰せば、解決するでしょうか」

 

歩き、近寄る

擬態の艦娘も、深海棲艦も、その戦艦級を守ろうと私に立ち向かうが…

 

神通「邪魔です」

 

両手は使えない

ならば脚を使え

 

蹴ればいい

一度で倒せないなら二度でも、三度でも

 

前蹴りを何度も叩き込み、徹底的に叩き潰しながら進む

 

深海棲艦の表情はわからないが、擬態の艦娘には顔がある、表情はよくわかる

 

神通「…貴方達には、恐怖という感情があるのですね」

 

背後から忍び寄ってくる擬態を回し蹴りで打ち砕く

 

神通「……良いですね、貴方達は…私は、もう…何もかもを失った気分です…恐怖さえも」

 

蹴る、蹴る、蹴り砕く

 

神通「…終わりです」

 

軽く跳び、全体重を乗せた、振り下ろす様な縦回転の回し蹴りを戦艦級に叩き込む

 

機械ごと呆気なく、爆発し、死ぬ

 

神通「……」

 

周囲の空気が戻る、やはり…この機械を壊せばよかったのだろう

簡単だ、こうでなくてはならない

 

今頃Linkの人たちも来た様だが、私には関係のないことだ

 

朧「神通さん…これは」

 

神通「代わりに仕事をしたまでです」

 

グラーフ「救難信号を出していた連中は、何処にいる」

 

神通「…居ませんよ、そんなもの、最初から」

 

グラーフ「何?」

 

神通「騙されてるんですよ、貴方達」

 

脚部艤装を足元に振り下ろす

一瞬にして海が荒れる

 

朧「ッ!!」

 

グラーフ「な…この、波でバランスが…!」

 

気絶した魚に混じって幾らかの深海棲艦が浮上してくる

 

神通「これが答えです」

 

朧(…どうなって…あの艤装、アタシのと…よく似てる…)

 

朧「その艤装…綾波の…?」

 

神通「いいえ、貴方の想像している綾波さんには会っていません…ただ、強いて言えば、もう1人には会いました、それに多少手を借りましたよ」

 

朧(…だから、あんな艤装…)

 

そう、これはアヤナミさんの作った物

これは朧さんの艤装をベースに作られた、改良品

威力のみに注力して作られた代物

 

神通「……何ですか、そんなに私を見つめて」

 

朧「神通さんは、何のためにそれを…」

 

神通「戦う為」

 

朧「…何の為に」

 

神通「私の為に、私が戦いたいから戦う…」

 

朧(…今の神通さんは危うい…危険すぎる気がする…)

 

朧「グラーフ、帰ろう」

 

グラーフ「……ああ」

 

2人がゆっくりと後退するのを確認し、浮かび上がった動かない深海棲艦を一つずつ、潰していく

 

神通「……どうせ、私なんか…深海棲艦と戦う事でしか価値を見出せない…」

 

 

 

 

 

サイバーコネクトサンディエゴ社 会長室

駆逐艦 東雲

 

東雲「貴方の協力者に合わせてください」

 

ヴェロニカ「…何処までお見通しなの?」

 

東雲「全てです、私を利用すると言うことは、破滅を取り込むという事です、はらわたに毒を持ちなさい、あなたが確実に死ぬ様な毒を」

 

ヴェロニカ「…彼女には会えないわ、協力関係だけど、お互いに会わないのよ、お互いに代理を立ててる」

 

東雲「なら私をその代理に会わせてください」

 

ヴェロニカ「構わないけど」

 

東雲「…私を利用するすべての者は、等しく私を恐れなくてはならない、私に喰らわれる事を理解しておかなくてはならない」

 

ヴェロニカ「貴方のはらわたには、どんな毒が仕込まれているのかしら」

 

東雲「世界を滅ぼす毒ですよ、その気になれば、この地球すらも一瞬で消し去れる」

 

カートリッジの力と、私の全能力を持ってすれば…太陽系ごといけるかもしれない

 

ヴェロニカ「それは危険ね」

 

東雲「…さて、貴方が私に提供できる全てを、私はあなたから奪いますよ」

 

ヴェロニカ「奪う?」

 

東雲「欲しいものは奪え、何を賭しても手に入れろ…素敵でしょう?」

 

ヴェロニカ「…貴方のデータが欲しいわ、貴方の思考回路を読んでみたい」

 

東雲「1世紀かけても1秒分の思考すら読めませんよ」

 

東雲(…しかし、でも、今なら、とは思ってしまう)

 

敵と組むことができた

これで、私のはらわたは…護れるのかもしれない

 

本当にそうか?この関係性が露呈すれば世界中からLinkは狙われる、Linkそのものから私が狙われることになるかも知れない

 

…帰れるかもしれない、そんな甘い考えは…要らない

 

ヴェロニカ「貴方のはらわた、私に預けてくれるのかしら?」

 

東雲「何ですって?」

 

ヴェロニカ「…貴方と私が組んだ、それを広めても良いのかしら?」

 

東雲「…私は大犯罪者ですよ」

 

ヴェロニカ「私はこの役職に興味はないのよ」

 

東雲「ならば、好きにすれば良い……その代わり、私の居城を用意してください、できるだけ良い場所に、それと運転手とか、身の回りの世話をする人もつける様にお願いします」

 

ヴェロニカ「あら、必要だったかしら?」

 

東雲「それすらなく、魔王と名乗れと?」

 

ヴェロニカ「てっきり、貴方には不要なのかと思ってたわ、Linkって場所があるのだから」

 

東雲「…あそこは捨てました」

 

ヴェロニカ「…私には、貴方のはらわたに見える」

 

何がはらわたか、あそこは急所中の急所ではないか

 

ヴェロニカ「衛星兵器って知ってるかしら?」

 

東雲「それ以上言葉を紡ぐと、殺しますよ、衛星兵器とその乗組員、それと捜査してる人たち全員」

 

ヴェロニカ「…どうやって?」

 

東雲「……」

 

窓の外を指さす

海が見える…

 

東雲「良い海ですね、深海棲艦も少ないからか騒がしくなくて…」

 

でも、今、この瞬間それは変わる

 

空間が歪む音が3度鳴る

衛星が海に落下し、爆発する

会長室には悲鳴が木霊する

 

東雲「言葉を紡げば、どうなるか言いましたよね、特別に殺しはしませんでしたが」

 

ヴェロニカ「…まさか」

 

東雲「乗組員全員と、基地から5人、重要そうな人間をピックアップして連れてきました」

 

…今ここで殺しても良いのだが

 

ヴェロニカ「…やっぱり、はらわたの様ね」

 

東雲「一つ」

 

1人、ブラックホールに呑み込まれる

また悲鳴が…騒がしい

 

ヴェロニカ「……わかった、黙るわ、だから勘弁してあげてちょうだい」

 

東雲「わかりました」

 

全員がブラックホールに呑み込まれ、何処かへと転移させられる

 

ヴェロニカ「何処にやったの?」

 

東雲「正面玄関です」

 

ヴェロニカ「ずいぶんと力を見せびらかすのね」

 

東雲「あなたを脅しても価値は無いでしょうが…何もしないのは好きじゃない……もはや、立場は入れ替わった」

 

…脅さなくてはならない

脅されているから

 

ヴェロニカ「やはり頭の回転は誰よりも速いのね、嫌いじゃ無いわ」

 

東雲「もう一度だけ告げておきましょう、Linkに手を出したのなら、あなたは全てを失う」

 

ヴェロニカ「…さあ?どうかしら」

 

東雲「あなたが良き協力者でなくなった時が、あなたの死に時です」

 

ヴェロニカ「そうなればLinkも死ぬわ」

 

東雲「……舐めるな」

 

ヴェロニカ「守り切れると?」

 

東雲「できないと思っているのですか」

 

ヴェロニカ「ええ、勿論」

 

東雲「…その時が楽しみだ」

 

ヴェロニカ「そうね、お互いに…ね?」

 

 

 

 

 

砂浜

 

東雲「あの様子では、本当に何か手があるのかもしれない」

 

警戒しない手はない…だが…

どうすれば良いのか、掴みきれない

 

東雲「…おや」

 

姿勢を低くし、砂を掴む

手から砂がこぼれ落ち、何かの破片を手にする

 

東雲(…これは…刃物のかけら?)

 

神通「それは私の魂の一部でした」

 

東雲「…神通さん?」

 

神通「…私の槍だったものです」

 

東雲「……それで」

 

神通「今の貴方は…何が残っていますか?」

 

東雲「…護らなくてはならないものがあります」

 

神通「羨ましいことだ…私は、守りたいものも守らなくてはならないものも無い」

 

東雲「…わざわざそれを言いにアメリカまで?」

 

神通「まさか」

 

跳び膝蹴りをくりだしてくる

両手を交差させ、膝をガードする

 

神通「目的はこっちですよ…!」

 

東雲「なんのために…」

 

神通「答える必要はありません」

 

蹴りに執拗にこだわったスタイル

ハイキックのみの蹴りを防ぎ続ける

 

東雲(槍は失ったと言っていたが、関節技も何も狙ってこない?)

 

神通(ガードを固めたのは、間違いでしたね)

 

神通さんが膝を自身の胸まで引く

 

東雲(これは…!)

 

神通「はっ!」

 

突くような蹴りがガードを打ち破る

 

東雲「かはっ…!……昔を、思い出しますね…」

 

神通「あの時は貴方が全てを失っていた…」

 

東雲「…あなたの目的は、なんなんですか」

 

神通「…貴方の部下にしてください」

 

東雲「…はい…?」

 

神通「貴方の部下にしてください」

 

東雲「いや、ちょっ……ええ…と?」

 

流石に、読みきれなかった…

 

神通「離島鎮守府で貴方を見かけました、見窄らしく山を探索していた貴方を」

 

東雲「…見られていましたか」

 

私が一つ前に転移したあの山や森のある場所、あそこは離島鎮守府だった…

最後に私は鎮守府の建物を見つけて、位置を理解し、離れる事を決意したのだが…

 

東雲「それで?何故私の部下になろうと?」

 

神通「Linkの人たちは貴方が居ないことをひた隠しにしていました、何故なのかを知りたい」

 

東雲「恥だからでしょう」

 

神通「そうではない、離れて尚慕われる貴方の事を知りたいのです」

 

東雲「……部下は要りません、それに私は住む場所も何もありませんが」

 

神通「用意します」

 

東雲「利用されるだけですよ」

 

神通「私が利用するんです」

 

東雲「……それと、今の私は、東雲です」

 

神通「…その名前は…」

 

東雲「ええ、そうですね…そういう事です」

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