元勇者提督 作:無し
横須賀鎮守府
駆逐艦 東雲
東雲「……遅いですよ、神通さん」
神通「2人を見つからない場所に隠してきたものですから……しかし、本当に?」
私が抱えた瑞鶴さんを怪訝そうに見つめる
東雲「拠点に帰りましょうか、もっと近づけますか?」
神通「ええ」
神通さんの腰に手を回し、カートリッジを起動する
東雲「……また来ましょう、次は真正面から、堂々と」
神通の家
東雲「おや…もう来ていましたか」
神通「……来客の予定があるなら、先に教えて欲しかったのですが」
夕立「言われてたもの、持ってきたっぽい」
東雲「どうも」
夕立さんからパッケージを受け取る
東雲「さて、これからよろしくお願いします」
夕立「……本当に、夕立の望む通りになるのかしら?」
東雲「ええ、神通さん、ついてあげてください」
神通「……引き入れたんですか?」
東雲「ええ、大湊の方達は小回りのきく優秀な方達です、メンバーとしては申し分ない」
神通「…犠牲を出したくないから、巻き込みたくないからと私を選んだんじゃ…」
東雲「あなたも死なせない為に、ですよ……今のあなたはあまりにも危うい」
神通「……そうですか」
東雲「夕立さんのファイトスタイルは朧さんに近い、しかし…神通さん、泥臭く鍛え上げてください」
神通「…わかりました…私なんかで良ければ」
夕立「…お願いします」
東雲「さて、これでいい」
パッケージの中身を確認する
たった一つのUSBメモリしかないが、これが重要
これには大湊の全員の戦闘データが記録されている
これをカートリッジに取り込む
東雲(……よし、まだまだ足りないけど…)
瑞鶴さんが持っていた分の……佐世保全員分のデータも取り込めば、そこそこだろう
東雲「…改善点はまだ見えては来ないか」
机に頬杖をつき、物思いに耽る
今頃横須賀は大騒ぎだろう
電さんの消滅、あれはネットの世界に飛ばされたと言うことだろう
あの閃光は神通さんが私から受けた光と同じ、リアルデジタライズさせる為の光
横須賀は主力の1人の電さんを失った
そして佐世保、瑞鶴さんを失った……
今から大騒ぎになるだろう
東雲(それよりも問題なのは、離島にも協力者が欲しい、アヤナミとは関わりたくない、アケボノさんもだ……)
黒い森について知られたくないこともある、とにかく今は知られたくない相手が多い
東雲「……はぁ」
…Linkに帰りたい
そう言う気持ちが私を邪魔している
Linkのデータも取られている
つまり、私がLinkを離れたのは大正解だ、Linkも監視されている…あのままあそこにいれば私の弱点が露呈する
目下の標的にLinkは含まれないだろうが、いつか女帝の障害になったとき、私に始末させようとするはずだ
…その時にはみんな、成長しているのだろうか
東雲「さて」
パッケージは夕立さんと瑞鶴さんからだけではない
横須賀にも協力者はいる
夕張さんから受け取ったパッケージを開封する
東雲「……凄いな…夕張さんはもうここまで組んでいたのか」
特殊なフィールドを展開するあの機械、これの存在が確信に変わったのはつい最近のことだ
でも、確信に変わる前から夕張さんは制作を開始していた
それがおそらく存在するだろうと言う仮定のもとに造られた
完全な想像を具現化する為に、造られた…雲を掴むような話が完成した形と言える物だ、これは…
東雲(…データを顕現させる空間を一時的に作る……最高の代物ですね)
起動スイッチを押し、起動する
東雲「……ん?」
ジジジジジジッ
嫌な音と共に火花が散る
東雲(防御姿勢………と…?)
小さな、半透明の電磁膜が展開される
東雲「…焦った、爆発するかと……いや、爆発はするだろうな、このまま稼働していたらショートするだろうし…起動テストはよし、しばらくは改良に専念し、安全性を上げたら組み上げ始めよう」
電源を切り、装置を片付ける
東雲「神通さん」
神通「……もうそんな時間ですか」
夕立さんとの戦闘訓練の様子を見にきたのに…
神通さんは汗ひとつかいていない、それに対して半死状態の夕立さん
東雲「そこまで実力差があるとは」
神通「艤装に頼りすぎですね、夕立さんは闘い方を知らない、戦争の方法を知っていて、身を捨てて戦う事を知っている、チームとしての戦い、部隊の動きを知っている……しかし、闘いを知らない」
夕立「…意味、わからないっぽい……」
東雲「今はまだ分からなくていいんですよ、そのうちわかります、さあ、神通さん、あなたも特訓頑張りましょう」
神通「…憂鬱です」
夕立(今から特訓…?しかも、あの神通ですら、嫌がる…)
東雲「そうです、このサイズが適切ですね、口に含みやすいし、舌の裏に収まるような小さなサイズ、これくらいが良いんです」
神通「…成る程」
神通さんのすぐ側について調理の補助を続ける
東雲「いいですか、よく見ておいてください、動きのコピーはしなくて構いません、あなたが覚えるのは考え方です、例えばこれ、この大根を煮物にするとして…」
夕立(何で、料理教室が始まってるのかしら…?)
東雲「神通さんの生活力が皆無なんですよ、川内さん達に勝手に借りている以上、真っ当にして返すのが義務かと」
夕立「……心が読めるの?」
東雲「顔に書いてありますよ」
神通「あの…指が」
東雲「えっ…見せてください……なんだ、薄皮一枚です、セーフですよ」
しかし、目を離せば指を切るし、切り方も見ていないと食材は木っ端微塵
東雲(どうしたものかな)
瑞鶴「………」
夕立「瑞鶴さんも?」
東雲「ええ、おはようございます」
瑞鶴さんは物言わぬ人形、しかし栄養は取る必要がある
東雲「さ、御食事をどうぞ?」
そう声をかけると勝手に座り、勝手に食事を摂り始める
夕立「……この煮物、少し薄いっぽい」
神通「そうですか?…適切な味付けだと思いますが」
東雲「大湊は徳岡司令でしたか、彼はファストフードでの生活で濃い味に慣れていると伺っていますが、あなた達も?」
夕立「ポテトとハンバーガーは大好きっぽい、でも最近は食べてないっぽい」
東雲「……何故?」
夕立「みんなで作るようになったからかしら」
神通「…これを食べやたら休んでもいいですか」
東雲「ダメです、掃除と食器洗いがあります、掃除は毎日しないと後が辛くなりますよ」
神通「……」
東雲「掃除は綺麗にすると言うより綺麗を維持するもので…」
神通「ここから長いですよ」
夕立「話長い人は嫌われるっぽい」
離島鎮守府
秘書艦 アケボノ
アケボノ「畑が荒らされているということでしたが」
山雲「うーん……畑というか、山全体かしら〜…山葡萄やアケビが勝手にとられてるの〜…あと、火を使った痕もあったわ〜」
アケボノ「…畑に被害は?」
山雲「ほとんどないけど〜、落石で一部の野菜がダメになっちゃって〜…この時期だから、あんまり育ててなかったけど〜」
アケボノ「落石ですか、被害は……大根4本、カボチャ一つ、落ちてきた石は拳大からスイカはどの大きさまでが10個ほど、怪我人は?」
山雲「居ないけど〜」
アケボノ「けど?」
山雲「私の心は傷心です〜」
アケボノ「…とりあえず、この原因はおそらく山登りのトレーニング、もしくは敷波さんのクマが暴れた、だと思います、この島には大型野生生物は確認されていませんので」
山雲「…そうですか〜」
アケボノ「とりあえず、報告書はあげておきますが…まあ必要ない事ですけど……ちなみに他に何かあるなど…」
山雲「んー…そうですね〜……あ!ひとつありました〜」
アケボノ「なんですか」
山雲「私も提督の膝の上に座ってみたいです〜」
アケボノ「ぶほっ!?……だ、誰からそれを…!」
山雲「キタカミさんです、みんな知ってますよ〜?」
アケボノ(後で殺す…!)
アケボノ「あれは事故のようなもので…!第一提督の迷惑になるような行為は…」
山雲「秘書艦の特権って聞きましたよ〜?」
アケボノ「そんな特権ありません!」
山雲「じゃあ頼めば誰だもできるんですか〜?」
アケボノ「知りませんし私は望んだわけではありません!」
山雲「そうなんですか〜」
アケボノ「…なので、提督の迷惑になるようなことはしないように」
山雲「…はーい」
食堂
アケボノ「キタカミさん」
キタカミ「おー、そんな殺気振り撒いてどしたのさ」
アケボノ「余計なことを触れ回るのはやめてください、迷惑この上ない上に提督にまで被害が及びます」
キタカミ「いやー、いいじゃんいいじゃん、スキンシップはストレス軽減につながるって聞いた事ない?」
アケボノ「関係ありません、提督の仕事の邪魔でしょう…!」
キタカミ「提督のストレスを取れば仕事が捗るかもよ?」
アケボノ(ああ言えばこう言うなこの人は!!)
キタカミ「それとも、まさか独り占めしたくて黙ってて欲しかった、とか?」
アケボノ「違います!!」
キタカミ「あー、よかったよかった、じゃあいいや」
アケボノ「…じゃあって何ですか」
キタカミ「漣と朝潮がしてもらいに行くってさー」
アケボノ(…止めた方がいいのか?いや、もう勤務時間外だけど…)
キタカミ「…妬いてる?」
アケボノ「いや、提督の邪魔にならないなら……しかし、この時間帯、提督はThe・Worldに…一応見に行くか」
執務室
アケボノ「…おや」
漣「かー……くー…」
朝潮「………」
アケボノ「…この部屋、暖かいですものね」
寝ることを想定したかのように2人とも毛布がかけられている…か
海斗「…あれ?やあ、アケボノ」
アケボノ「お疲れ様です、聞き取り調査などの書類、こちらに提出させていただきます…」
海斗「ありがとう」
アケボノ「…2人も乗せて重くないのですか」
海斗「…回答は差し控えさせてもらおうかな」
まあ、重いのだろう
アケボノ「提督、その…どうですか、そちらは」
海斗「…掴めたことはあったよ、未帰還者についてではないけど、近いうちに大きな戦いが起きる…備えるように伝えておいて、それとよければ明石にメールチェックは怠らないように言っておいてほしい」
アケボノ「かしこまりました」
アケボノ(明石さんがメールチェック……よく分からないことだが、何か無視しているメールでもあるのだろうか)
海斗「それが終わったらもう好きにしていいからね」
アケボノ「提督は」
海斗「……2人が起きたらかな」
アケボノ「…提督、失礼します」
朝潮と漣の膝の上に片足ずつ乗せ、提督と向かい合うように座り、提督の両耳を抑える
海斗「あ、アケボノ?別に僕は気にしてな…」
アケボノ「起きろ!!」
朝潮「ひっ!?」
漣「いひゃぁっ!?」
2人が跳ね起きる
海斗「いっ…たた………す、脛が…」
どうやら2人が起きた際、2人の踵が提督の脛を直撃したらしい
アケボノ「…も、申し訳ありません提督…余計な真似を…」
海斗「…えーと…無理に起こす必要はなかったかな」
アケボノ「大変申し訳ありません…ほら、2人とも、ちゃんと立ちなさい」
漣「ボーノ…トイレ」
朝潮「…私も行きます」
アケボノ「幼稚園児か…!自分で行け!」
2人を怒鳴りつけて追い払う
アケボノ「…はぁ……提督、私の所為でご迷惑をおかけして申し訳有りません」
海斗「いや、大丈夫、気にしなくていいよ、別に座られるくらいなら…見られて困るものを見られてるわけでも無いし」
アケボノ「…そうですか」
海斗「まあ、あんまり怒らないであげて」
アケボノ「かしこまりました」