元勇者提督 作:無し
The・World R:1
Θサーバー 高山都市 ドゥナ・ロリヤック
トキオ
トキオ「ベアに呼び出されて来てみたけど…ええと…ベアは…あ、いたいた、他のみんなもいるな…」
ベア「トキオ、来たか、これで全員揃ったようだな」
ミミル「つっても、BTにクリムに昴だけだけどね、青葉もカイトも連絡がつかないし」
トキオ(…そういえば、カイトとは連絡が取れなくなってる…砂嵐三十郎もログインしてないみたいだし、アルビレオは…何というか、怖いし…)
ベア「悪いが、早速本題に入らせてもらう、おれはヘルバに会ってきた」
昴「…あの、ハッカーのですか」
BT「ヘルバといえば極悪なハッカーとして悪名名高いハッカーだ、大丈夫だったのか?」
ベア「ああ、それで、ヘルバはThe・Worldに起きていると言われる一連の現象…意識不明や、バグモンスターを独自に調査していたようだ…それで、結論から言うと、司はその原因に巻き込まれている可能性がある」
ミミル「原因?それってどういうこと?」
ベア「ヘルバは、すでに何かを掴んでいるようだった…が、詳しくは教えてくれなかった…だが、代わりにエリアワードをもらったよ」
[Σサーバー 虚なる 哀情の 逆さ男]
トキオ(これがエリアワードか…Σ…まだ行ってないサーバーだ)
ベア「ここに行けば何かがわかるらしい、だが…何が待ち受けているかもわからない、だから、全員で行きたいと思う、どうだ?」
ミミル「おっけー、意義なし!こういうのは考えるよりも行動だよ!」
ベアが近づいて来て、肩に手を置く
ベア「…無理をする必要はない、昴からこの間の話は聞いた、不安を感じたらその場で抜けてくれていい」
トキオ「抜けるって…」
ベア「最悪、回線を引っこ抜けばあんな目には合わないだろう」
トキオ(そ、それができたら苦労しないよ…)
ミミル「よーし、Σって事は敵もそこそこ強いし、一回カルミナ・ガデリカで装備整えて再集合しよ?」
クリム「依存ない、じゃあまた向こうで、だな」
Σサーバー 文明都市 カルミナ・ガデリカ
トキオ「…ここも、The・World…」
ミミル「ね、なんか雰囲気違うよねえ…まるでここだけ…未来都市みたいで」
…確かに、ここは凄く、明るくて、不思議な場所だ
ミミル「じゃ、装備整えてくるから、またね」
トキオ「あ、うん、また…」
ミミルを見送り、
ここは、マク・アヌともドル・ドナとも違う
静かな町ではなく、賑やかな街だ
トキオ「…あれ」
この世界に、もしこの世界に居てはいけない存在が居るとしたら、それはオレ自身だ
でも、彼女も…オレと同じに見える
この世界で浮いている、何か、おかしいというか、違う存在
まるで途方に暮れたようにベンチで座り、俯いている少女…
少し、訝しみながら近づく
…オレよりも歳下のようだけど、似つかわしくない物々しい装備…
何となく、気になって仕方なくて、だから声をかけた
トキオ「あの…」
電「…はい…?」
トキオ「…キミ、もしかして…手、だせる?」
ネットゲームに取り込まれましたか?なんて…聞けるわけがない
だから、手を差し出して、相手にもそれを求めて
電「……」
無言のまま、返された手を、握る
トキオ「…暖かい?」
電「…暖かいのです」
トキオ(やっぱり…まさか、リアルから取り込まれたのがオレだけじゃないなんて…!)
トキオ「キミもゲームに取り込まれたんだよね、オレもそうなんだ!」
電「やはり、ここはゲームの中でしたか……どうやって帰れば…」
トキオ「えっと…お、オレもそれを探してるんだ!良かったら一緒に来ない!?」
電「…本当なのですか?」
トキオ「ああ!今、オレと同じでこのゲームに取り込まれてる司ってやつを助ける為に色々調べてるんだ」
電「……何か、わかったら…教えて欲しいのです」
トキオ「わかった、絶対力になるよ!」
…まさかオレ以外にも取り込まれた人がいるなんてな…
でも、彩花ちゃんが引き込んだのか…?
わからない、後で聞いてみよう
トキオ「そろそろ出発できるかな…みんなのところに戻ろう」
ミミル「トキオが最後かー、よし、一緒に行こう?」
トキオ「え?他のみんなは?」
ミミル「もう行っちゃったよ」
トキオ(再集合のはずが置いてかれてる…)
秘密の部屋
No side
この空間は、今はとても、寂しい
虚ろな世界に取り残された司と、それを不安げに見つめるマハ
それしか居ない
今の司には、誰かの声が届く事はない
ただ居るだけ、深い絶望の中にあるだけ…
マハが手元のエノコロ草を見る
司に貰った、宝物
司を此処に導いたら、司はマハにこのエノコロ草をくれた
決して何かになる物でも無い
人が雑草と呼ぶそれは、このゲームにおいても等しく雑草であり、価値は無いに等しい
しかし…マハにとっては、これが何物にも代えがたかった
マハ「……!」
周囲にノイズが走る
『マハ、何をしているのです……』
マハの手元にノイズが集まる
そして、エノコロ草が光となって消える
マハ「…!」
『そのようなゴミ、棄てておしまいなさいっ』
マハは項垂れたまま、司を見る
そして、その場を後にした
Σサーバー 虚なる 哀情の 逆さ男
トキオ
BT「何の変哲もないエリアのようだが…?」
ベア「いや、そんなはずはない、エリアをくまなく探索してみよう」
トキオ「わ、わかったけど…先に行かないで…はあ…お、追いつくのも一苦労だよ…」
ミミル「別にそんなに焦るような事じゃないのに」
エリアを進みながらモンスターを倒す
トキオ「こ、ここの、モンスター…強い…」
ミミル「Σサーバーだからね、ΔやΘより手強い敵が多いから」
トキオ「…そっか、じゃあここで戦えるようになれば、オレももっと強く!」
ミミル「行くよトキオ!」
トキオ「オーケー!ミミル!」
合わせて敵を斬り伏せる
ベア「元気はいいが、あんまり突っ走ると怪我をするぞ」
BT「良いんじゃないか?優秀な罠探知機として見れば」
クリム「なるほど、自分の体で地雷を探すわけか、これはいいな」
ミミル「なんですとー!?」
トキオ「オレ達、そんな扱い…?」
トキオ「あれ?あそこに居るのは…」
エリアの中ほど、猫のキャラ…
トキオ(司と一緒にいるって噂の猫PC!捕まえれば何か話が聞けるかも!)
ミミル「ああー!!!ネコォォォ!!」
マハ「!」
こちらに気づいたネコPCがどこかへと逃げる
トキオ「あ…あー……」
ミミル「くっそー!逃げられたか…」
トキオ「そりゃ逃げるよ…あんな大きな声出したら…」
ミミル「なによー…びっくりしちゃったんだからしょうがないじゃない…でも、アイツ地面ばっかり見ててこっちに気づかなかったよね?」
トキオ「何か探してたのかな?」
ミミル「…探し物なんてするようなの……あ」
トキオ「これは…」
視線の先にあったであろう草束から、一本、摘む
トキオ「…草…っていうか、猫じゃらし?」
ミミル「うん、エノコロ草っていう、一応アイテムなんだけど……」
トキオ「これが欲しかったのかな」
ミミル「…そうかも」
トキオ(ネコだから?…いや、わからないな…)
トキオ「結構奥深くまで来たけど…」
ミミル「何もないね」
BT「…ベア、私が思うに……ヘルバにいっぱい食わされたのではないのか?」
ベア「いや、ヘルバがそんな事をするとは思えない…何か見落としたか?」
昴「あのネコPCそのものがこのエリアの価値ということも…」
クリム「…いや、待て!」
トキオ「へ?」
…何かを、踏んづけたような…
ガコン
何かが動き、転送される
トキオ「うわわわわわわわわわっ!?」
創造主の部屋
トキオ「な、なんだ?ここは…みんな転送されたのか…」
ベア「みんな、見ろ」
祖母が指し示した方向には宙に浮いた、座した女性と思われる赤い像と、それに取り込まれるように逆さに寝転がった男が居た
昴「これは…」
ベアが一歩近寄る
ベア「アンタは誰だ!」
ハロルド「……私は…キミを、愛している…」
ミミル「な、なんですと…!?」
ハロルド「……私は…君との愛を……形に残したかった……だが、私は…過ちを犯してしまった……私は…父親として…失格だった…」
トキオ「父親…?」
司が母さんと呼んでいた声と、関係があるのか…?
ハロルド「彼女は、私達の……希望…だから……私は、娘に"アウラ"と名付けよう」
トキオ「アウラ?どこかで聞いたぞ……そうだ!司が言っていた女の子の事だ!」
男の声にノイズが混じり始める
ハロルド「全ての罪は私にある……だが、アウラだけは……アウラは…近くにいる者の……影響を受けて、目覚める……」
さらにノイズが強くなる
ハロルド「ゆがんだアウラを目覚めさせてはいけない…」
像ごと、男が弾け飛ぶ
粉々に吹き飛び、カケラも当たりには残らない
ハロルド「…アウ……ラ…彼女……は…私…達の…希望……」
あたりがまばゆい閃光に包まれる
トキオ「あ…元の場所に戻った?」
ベア「みんな無事か!…問題はなさそうだな…」
クリム「今のは何だったんだ…?あの逆さまの男は…?」
昴「ベアさん、少し……」
ベア「…一度タウンに戻ろう」
Σサーバー 文明都市 カルミナ・ガデリカ
ベア「昴と話をまとめ、仮説を作った…一度聞いて欲しい…どうやら、司を利用するためにThe・Worldに閉じ込めた奴がいるようだ」
ミミル「利用?」
ベア「そいつは司のネガティブな感情を利用し、ゆがんだアウラとやらを目覚めさせようとしているんだ」
トキオ(利用してるやつって、まさか…あの、秘密の部屋の声…なのか…!?)
BT「となると、心配すべきは司の安否だな…」
クリム「昴、未だに司との連絡は取れないのか?」
昴「はい…どうやら返事は来ていません…」
トキオ「司…大丈夫かな……」
ベア「今日はこれまでにしよう……みんな、解散だ、何かわかったらまた伝える」
ベアの声を受けてそれぞれが転送されていく
トキオ「……オレをこの世界に引き込んだのは彩花ちゃんだけど、司は一体誰にこの世界に閉じ込められたんだ…?なんで母さんだなんて、そんな呼び方をしてるんだろう…」