元勇者提督   作:無し

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エノコロ草のお礼

The・World R:1

データ潜航艦 グラン・ホエール

トキオ

 

トキオ「…あ、ベアからメールだ」

 

[差出人:ベア

  件名:逆さまの男について

 

おれたちが遭遇した逆さまの男は、

このゲームの制作者、ハロルド・ヒューイックの残留思念のようなものなんじゃないかと思う。

 

ハロルドはThe・Worldのベータ版である"fragment"を単独で作り上げた天才プログラマーなんだが、そのシステムデータをタダ同然でCC社に売りつけた後、

謎の失踪を遂げている。

 

噂では、ゲーム世界への愛が強すぎて魂すらデータ化してしまったと言われていたが…。

 

それも全くの出鱈目ではないのかもしれない、と思えてきたよ。]

 

トキオ「ハロルド…このゲーム、The・Worldの…産みの親か」

 

…なんで、ハロルドが出てきたんだろう

オレには見えてない何かがある気がする…

 

トキオ(もしあれが残留思念なら、たったあれだけの言葉しか残さないなんて事、あるのか…?)

 

…きっと、もっと別な何か…いや、最期に遺したい物なんて人それぞれ、ハロルドはアウラという女の子を残したかったのかもしれない

 

トキオ「でも…アウラって、どんな子なんだ?」

 

…調べるにも、尋ねるにも…手詰まりか

 

彩花『何珍しく頭捻ってんのよ』

 

トキオ「あ!彩花ちゃん!どこ行ってたの!?用があったのに…」

 

彩花『なに?クロノコアを回収できたの?』

 

トキオ「そうじゃなくて…オレの他に誰かをこの世界に引き込んだ?」

 

彩花『どういう意味よそれ』

 

トキオ「カルミナ・ガデリカでリアルから入ってきちゃったって女の子に会ったんだ」

 

彩花『…はー、そいつアイタタタね、そういうロールに決まってるじゃない』

 

トキオ「…本当にそう思う?オレは、違うと思う」

 

彩花ちゃんと目を合わせる

 

彩花『……少なくとも!アタシは知らないから!』

 

正直言って、彩花ちゃんが犯人だとは思っていない

だってあの子は2009年にいる

2009年に誰かに引き込まれた事になる…

彩花ちゃんには不可能だろうから

 

トキオ「わかったよ、それで…その子を、ここで保護して良い?」

 

彩花『なんでそこまで面倒見るのよ!』

 

トキオ「同じ境遇の子を放ってはおけないよ!」

 

彩花『…それがシックザール達の罠って可能性は?』

 

トキオ「そんな事わかんないけど、そんなの気にしてたらあの子はどうなるんだよ…」

 

彩花『…とりあえず、会いに行きなさい、後ろから見てるから』

 

 

 

 

Σサーバー 文明都市 カルミナ・ガデリカ

 

トキオ「いたいた!おーい!」

 

電「貴方は…何かわかったのですか?」

 

トキオ「うーん、こっちはあんまり…そういえば名前、聞いてなかったんだけど」

 

電「電なのです」

 

トキオ「オレはトキオ、電って珍しい名前だね!ライトニング、カッケー!」

 

電「電というのは、艦娘としての名前でもあるのです」

 

トキオ「艦娘?…あー、アレなんだ、深海棲艦と戦うっていう…」

 

彩花『待ちなさいトキオ!今、この子なんて言ったの!?』

 

トキオ「…艦娘?」

 

彩花『深海棲艦が出たのは、本当にここ数年の最近よ?10年以上前に艦娘なんて…!』

 

トキオ「え、つまり…い、電ちゃん、今年って何なんだっけ…」

 

電「2020年なのです」

 

トキオ(現代から来てる!?)

 

彩花『警戒しなさい!この子が敵である可能性、もしくは利用されたスパイの可能性もあるわ…!なんでグランホエールもなしに時間移動なんか…』

 

トキオ「オレが時代の壁を壊しちゃったせい…とか?」

 

彩花『…とにかく、グランホエールに乗せるのは危険すぎるわ…!』

 

トキオ「そんな…可哀想だよ!」

 

彩花『可愛いだの可哀想だので話してないの、もし敵にグランホエールの存在がバレたらあんたもアタシも終わり!とにかく今は慎重になりなさい!』

 

トキオ「……わかった」

 

今はとりあえず、引き下がる他ない

少なくともグランホエールの権限はオレにはないのだから

 

 

 

 

 

 

 

重槍士 青葉

 

青葉「…あ、司さん」

 

司「…青葉だっけ」

 

青葉「はい…その後、どうでしょうか」

 

司「……わかんないけど…でも、もう、どうでも良いや…」

 

司さんはクスリと自嘲気味に笑い、こちらを見る

 

司「…何で僕、この世界に閉じ込められてるんだろう」

 

淀んだ、感情の混ざり切った、濁った目

 

青葉「……貴方は、何者に囚われているのですか」

 

司「…さあね」

 

青葉「…リアルに帰りたいんですか」 

 

司「リアル…か……」

 

司さんはそれ以上は何も言わず、転送して消えた

 

青葉(…優先事項はトキオ、そして…現代の未帰還者……でも、司さんを助ける事で何かヒントが…)

 

青葉「…でも…今は、他にやることがある」

 

視界端に映ったメール

件名は、横須賀襲撃について…

 

青葉(司さんの事は昴さんにメールしておこう、私は私のやる事をやらなきゃ)

 

 

 

 

 

トキオ

 

トキオ「あ、昴、何の用事?」

 

昴「青葉さんが…メールで、このタウンに司が居た、と」

 

トキオ「カルミナ・ガデリカに?司が?……本当に?」

 

正直、疑わしい

シックザールの情報がオレにまで来るとなると…罠の可能性もある

 

でも、司の情報は他にない

 

トキオ(…タウンの中で仕掛けてくるような真似、しないか…)

 

おとなしく、その情報を使うしかない

 

 

 

 

トキオ「あ!あのネコ!」

 

ネコのPCが街の隅でぼーっと佇んでいるのを見つける

 

マハ「…!!」

 

トキオ(逃げられる!)

 

トキオ「待てよ!!お前!司の友達なんだろ!?」

 

ネコのPCが肩越しにこちらを見る

 

トキオ「オレたちもそうなんだ、司の事が心配なんだよ」

 

マハ「………」

 

トキオ「なあ、あいつがどこにいるか知らないか?」

 

マハ「………」

 

ネコのPCは何も言わない…

 

トキオ(…ダメか…)

 

トキオ「あ、そうだ、これ…」

 

エノコロ草を差し出す

 

マハ「…!」

 

ネコのPCはエノコロ草を受け取り、離れる

 

マハ「………」

 

[Σサーバー 凍てつく 北海の 秘境 のエリアワードを手に入れた]

 

トキオ「え?」

 

昴「司は、このエリアに?」

 

ネコのPCは答えることなく転送されていった

 

トキオ「………よし、昴!オレと一緒にこのエリアに行こう!!」

 

 

 

 

Σサーバー 凍てつく 北海の 秘境

 

トキオ「…寒っ」

 

昴「司が、ここに…」

 

トキオ「司ってどういうところが好きなんだろう…このエリアで司がいそうな場所は……」

 

2人でエリアを巡り、司を探す

 

昴「…あれは、モンスターの群れ?」

 

トキオ「何かを、襲ってるような…まさか…!」

 

昴「行きましょう!トキオ!」

 

 

 

 

こちらに気づいてないモンスターに背後から忍び寄り、大きく斬りかかる

 

トキオ「っりゃああ!!」

 

一匹を一刀両断し、こちらへとモンスターの注意を惹きつける

 

トキオ「やっぱり!居た!」

 

モンスターの群れに襲われていたのはやはり司だった

 

昴「穿天衝!」

 

トキオ「連牙・昇旋風!」

 

ここにいるモンスターはΣサーバーの強力なモンスターばかり

一体倒すのにも時間がかかる

 

トキオ「昴!合わせるよ!」

 

昴「はい!」

 

2人がかりで一匹ずつ仕留め、倒す

 

トキオ「昴!」

 

攻撃で浮き上がらせた敵を昴に飛ばす

 

昴「穿天衝!」

 

そして、昴の攻撃で弾き返された敵を…

 

トキオ「ポテンダ!」

 

二本の剣で吹き飛ばし、地面に叩きつける

 

トキオ「…良し、全滅させた!」

 

昴「司!大丈夫ですか!?怪我はありませんか?」

 

司「…!」

 

トキオ「…司、オレたち司が心配でさ、あのネコのPCに教えてもらって…」

 

司「どうして…」

 

トキオ「え?」

 

司「どうして、僕に構うの…?もう放っておいて……」

 

昴「司…?」

 

司「この前、母さんに怒られてから、少しだけリアルのことを思い出したよ…僕はずっと誰かに怯えてた…ずっとあそこから逃げ出したかった…」

 

…司のリアルは、相当過酷なものだった…ということか

 

司「そしたら母さんがここに連れて来てくれて…僕はずっとここで静かに暮らしていたいんだ……」

 

昴「それは、ウソです…!」

 

昴がキッパリと司の言葉を否定する

 

昴「青葉さんに聞きました、あなたは、"この世界に閉じ込められている"、と言ったと……あなたは、本当はこの世界から、The・Worldから抜け出したいと思っているはずです…!」

 

司「……それは」

 

司が目を逸らし、俯く

 

司「…僕は、怖いんだ……ここから出るのが、たまらなく怖い…」

 

昴「司…あなたは決して独りじゃない………今、私はあなたのことを考えています…あなたと一緒にここにいます…トキオも、ミミルもベアも、みんなあなたのことを想っています」

 

司「………」

 

昴「だから、立ち上がって…!あなたを変えることができるのは、あなただけです…」

 

司「昴…」

 

トキオ(…ここは、昴に任せた方が良さそうだな)

 

昴と目が合う

 

昴「…司、一度、タウンに戻りましょう?」

 

司「……うん」

 

二人が転送されていったのを、見送る

 

トキオ「…オレも、タウンに戻るか………うわっ!?」

 

一息ついたところに、目の前に槍が刺さる

 

青葉「失礼します、少し、お話を、と思いまして」

 

崖の上から見下ろされる

 

トキオ「お前…青葉!やっぱり罠だったのか!?」

 

青葉「違いますよ…!罠なら司さんと会えてないでしょうし…というか、私がここに来たのは…」

 

青葉が自身の手元を見る

 

トキオ(…何を見てるんだ?)

 

青葉「……それより、貴方をリアルに帰すために、私についてきて欲しいんです」

 

トキオ「…もう断った筈だ!オレはこの世界を守る勇者になる!だから…こんなとこで諦めるか!」

 

青葉「交渉する気すら…無い、か…」

 

槍が消え、青葉の手元に戻る

 

青葉「……私も、ある意味…貴方と同じです」

 

空が曇り、辺りが薄暗くなる

…小さく、青葉の目が光った気がした

 

青と黄色の、連星の光…

 

青葉「次会う時、私は、貴方を倒し、無理矢理にでも連れて行きます」

 

トキオ「…良いんだな、今じゃなくて…!次会う時にはオレはもっと強くなってるぞ!」

 

青葉「それは私も同じです」

 

トキオ「……」

 

タウンへと自身を転送する

 

 

 

 

青葉「…リコリスさん、私に力を貸してください」

 

リコリス「………」

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