元勇者提督   作:無し

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蒼炎の勇者

海上

カイト

 

やっぱり海水はあんまり美味しくないかなぁ…

 

気づけば口の中は海水だらけで、目の前がチカチカしたり真っ暗になったりする

 

なんでこうなったんだろう

ああ、そうか…僕がAIDAに呑まれたから

でも、今なら…探せるかもしれない…

君たちなら、大丈夫だ…

だから僕は…

少しだけ体を手放す

 

 

 

 

重巡 摩耶

 

「北上!どうなってる!?」

 

「無理!抑えられないからさっさと撃って!」

 

AIDAと蒼い炎が吹き出し、形を作って襲ってくる

恐ろしい痛みと、焦燥感に駆られる

 

私たちはどうなるんだ?と

 

ふと横目に虚ろな目をした朝潮が映る

 

「朝潮!どうした!止まるな!」

 

声をかけたのも束の間、自分の体が宙に浮き、体制を崩して水面を滑る

 

「クソッ!何が起きてる!」

 

『こちら曙!目視しました!戦艦の射程まで30秒!』

 

「もっと早くしろ!クソが!でぇぇぇぇあ!」

 

見えない速さじゃない、だけどこっちが扱いに慣れてないせいで、大振りな動きが全て読まれてる

北上の魚雷も、初回以降大きな動きで射程から逃れ、朝潮の攻撃も擦れど致命打にはならない

というより、その朝潮の様子もおかしくなり始めた、いよいよもって、不味いと言うほかない

 

「摩耶!ネットに落とせない!?」

 

「そんな余裕ねぇ!せめてもっと頭数がいる!」

 

「じゃあもう少し引きつけて!」

 

北上の魚雷発射感がパージされてる

つまり狙いはそっちか

 

「クソがぁ!」

 

横薙ぎをバックステップでかわされる

 

「いいとこ来たねぇ…!」

 

単装砲からの確実な一撃

 

僅か30mの距離、初速は850m/s

勢いは殆ど最大、外れることもないこの一撃を

 

「クソが…!」

 

いとも簡単に焼き払ってくれたわけだ

 

「動きを封じなきゃ、ダメージは与えられないか…」

 

剣を突き立て、データドレインを喰らわせてやれば…何か変わるのか?

さっきのような迷い等なく、殺すつもりでやれば何か変わるのか?

 

「摩耶!後ろ!」

 

北上の声より先に、悍ましい殺気に襲われ、その場を離れた

振り返れば朝潮がこちらに砲を向けている

つまりそういうことだろう、敵になった

 

「冗談キツイよな…」

 

それだけならまだマシだ、朝潮の足元から深海棲艦のなり損ないが顔を出してくるんだから

魚とのキメラなんかじゃなく、本物のなり損ない

それが2人も

死んだ目と爛れた黒い外皮の中から見える元の姿の成れの果て

 

「……朝潮型の…制服」

 

「これで、4対2か?」

 

「あの化け物が手を出してきたら、5対100でも勝てないけどね」

 

「間違い無いな…」

 

2人揃ってジリジリと下がるしかない

 

「……まて、おかしい」

 

「分かってる、第二波どころか…砲撃すら来ない、通信も」

 

「………やられたのか?」

 

援軍は、どうなってる?

 

 

 

 

連合艦隊

駆逐艦 曙(青)

 

「なんでこんな時に濃霧なのよ!」

 

「ただの濃霧じゃありません、通信が妨害されてます」

 

「………惑乱の蜃気楼」

 

「…それは倒したんじゃなかったの?」

 

「わからない、とりあえず全員離れないで……」

 

「……前!影…敵…?」

 

「撃たないで、味方かもしれない」

 

「……提督…?」

 

蒼い炎に体を包まれ、ゆらゆらと迫る姿は

 

「……あのオバケ、ね…まるで」

 

「………待て!…AIDA!砲撃用意!」

 

AIDAが節々から噴き出してる

 

「……違う!頭がやられてる!」

 

「何!?何言ってんの!?」

 

「あぁぁぁぁぁ!気持ち悪い!頭が…おかしくなる…!」

 

「曙!?曙!落ち着いて!しっかりしなさい!」

 

「うっ…うぇっ……おぇぇぇ…っ…!……ダメ……これは現実じゃないのに……!」

 

「何言ってんのあんた!?これは現実よ!落ち着きなさい!」

 

「アオボノも落ち着くべきです…どうやら、本当にこれは現実ではないかもしれません……頭が……」

 

「加賀!?…どういう事…?」

 

「アオボノ、聞きなさい……これは…現実じゃない……」

 

「幻覚…みんなで…変な世界に……うぐっ…!」

 

「幻覚…?…待って!………来るな!」

 

クソ提督の姿をした何かは歩みを止めてない

 

「来るなって言ってんのよ!」

 

腕輪を展開しようとして気づく

 

「な…い……なんで……?…うっ……気持ち…わる、い…」

 

みんながやられてるのはこれか…

現実とのギャップに気づいたから……

 

脳が変な反応を起こしてるんだ

 

「もう……どうなっても知らないわ…!消えろ!!」

 

展開できているであろう腕輪を信じてデータドレインを明後日の方向に放つ

 

「…出た感覚はある……敵の位置さえわかれば…やれる……でも……気持ち悪い…!」

 

「……おぇっ……だめ…もう……無理」

 

「……まともに、戦えない……」

 

 

 

 

 

第三艦隊

軽巡洋艦 阿武隈

 

「…なんですかあれ……!」

 

「連合艦隊のみんなやな……グロッキーなっとる」

 

「助けないと…!」

 

「近づかないでください!まだ危険です!ミイラ取りがミイラになるだけです!」

 

「高雄さん、愛宕さん、鳥海さん、電探を!龍驤さんは艦載機で北上さん達を探してください!青葉さん…は…何かありませんか…?」

 

「……その…青葉には…何も……」

 

緊急で作ったこの編成だけど

きっと何かみんなができることがあるはず

 

考えて私…

 

「電探反応あり!10時の方向!」

 

「…どこ……?」

 

「見えないけど……確かに反応してます!」

 

「………青葉さん、ビデオカメラ持ってますよね、それで見てもらえませんか?」

 

「えっと…はい………何あれ」

 

「見せてください…え……人?」

 

白の衣装に身を包んだ、人のよう

蒼いエフェクトがその人を包み込んでいて

そしてその姿はどこかで見ていて……

 

「………スケィスの時…見た……」

 

「……あ…アレを使ってるわけ…?」

 

「………倒すんですか?」

 

「…勝てるならそうしたいけど……」

 

バケモノを使われたら勝ち目はないに等しい

ならここは無理せず回収だけするのがベター

 

「待って!アオボノさんの様子が変!」

 

「……腕輪…ちょっどこ向けて…」

 

「うわぁっ!?どこ狙っとんねん!!」

 

「……もしかして、こっちが見えてないんじゃ……」

 

「………電探は連合艦隊を捉えてますか?」

 

「はい、一応…」

 

「………賭けるしかないですね、3人で突っ込んで回収してください!龍驤さんはここで待機、可能なら位置を示してあげてください!私と青葉さんは先に進みます!」

 

「2人で!?無茶です!」

 

「阿保!救出の方が無茶や!でもここで別れなどっちかは失う可能性がある!さっさと行けや阿武隈!」

 

「無事を祈ります!行きますよ!」

 

「は、はい!」

 

 

 

 

 

呉鎮守府

提督 三崎亮

 

「本当か?」

 

『ああ、一ノ瀬君も、中西君も、意識不明だった、第五相、第六相、ともにだ……そして共通点として、The・Worldのキャラをコンバートしている、イニスの保持者、日下君も含めて、この3人は全員』

 

「……コンバートしたから、意識ごとやられた?」

 

『していなくても碑文は使えなくなっただろうがね……既に私のフィドヘルは抑えられている』

 

「………じゃあ、ネットにいるのか?」

 

『断定はできない』

 

「ネットにいるなら、見つけ出して……助ける、リアルにいても……」

 

『……難しい戦いになるぞ』

 

「覚悟はもうできてる」

 

 

 

 

 

 

海上

雷巡 北上

 

「……ちょっと…限界かもね」

 

「ちょっとだと?もう無理だ……」

 

肩で息をして、傷を庇いながら、撤退戦を初めてどれくらい経ったか

 

「ねぇ…霰……大潮…やめない?」

 

無駄と分かっていても、声をかけずにはいられない

 

「頼む……て言うかきっつい……」

 

「はは…余裕あるね」

 

「お互い様だろ……」

 

どうするかな…AIDAを使い続けたからか、身体が鉄に戻ったみたいに重くて、動けなくて

 

「……そのAIDAってさ…何ができるんだ?」

 

「……何?」

 

「………データドレインとかは…できないのか?」

 

「…無理に決まって……」

 

AIDA、これも確かにバケモノだ

化け物がデータドレインを使えるなら、自分だって使えてもいいではないか

 

「……物は試し…か!」

 

ぐぐぐっと右手にAIDAが集まる

腕輪をイメージし、同じことをイメージする

 

私だって一度貫かれた、やれる?……やって

 

出たのはイメージとは違うビーム砲だったのだが

 

「……今の局面それは違うんじゃねぇのか…?」

 

「だね……だけど…威嚇にはなったみたいだねぇ……ふふふ…次は、当たるよ」

 

「……いいじゃねぇか…これなら防げねぇかもなぁ……!」

 

「あとひと頑張りだけ…」

 

『北上さぁぁぁぁぁん!』

 

「え……?阿武隈…?あ、居た…提督の方」

 

「ようやく援軍…つっても青葉と阿武隈だけ…か?」

 

「ないよりマシ!行くよ!」

 

「おう!」

 

「阿武隈!提督も敵!朝潮も敵!全員敵だから!」

 

『ぴぃっ!?全然OKじゃないんですけどぉ!?』

 

「青葉!とりあえず上空に撃ちまくって!今すぐ!」

 

『は、はい!』

 

「摩耶、私あんま動けないからよろしくね」

 

「構わねぇけどよ!巻き込むなよ!?」

 

「ごめん保証しない」

 

魚雷をとことん、とことん沈めた、今度は、当ててやる

 

「……見せちゃうよ、私の最終兵器!」  

 

 

 

軽巡 阿武隈

 

「……ここ…」

 

距離、角度を正確に測れば

風の流れを読めば

 

「当たる」

 

確実に捉えた

朝潮ちゃんに被弾

 

「機銃装填します」

 

「次弾行きます!」

 

続け様に撃ち込む、当たる

確実に、外したのならその理由を突き詰めながら狙う

 

『阿武隈!そっちに提督が行く、容赦無く撃って!』

 

「…………」

 

目で追える速度

だけど撃ってもかわされる…?

それとも防がれる…?

 

ダメだ、ダメージを与えられるイメージができない

 

「青葉さん!機銃提督に向けて!」

 

「はい!」

 

進路限定、両手、腰の砲を向ける

二連射

両手から、二発ずつ

全く同じルートを二発の弾が通る

 

「ヒット」

 

片方はかわされ、一発は防がれたけど

最後の一発は捉えた

 

『やるねぇ!!行くよ!』

 

提督の周りに魚雷が浮き上がってくる

 

『阿武隈!』

 

「はい!」

 

魚雷を貫く

連鎖爆発を起こし、確実にダメージを与えた

 

『パージした魚雷発射管からのコレは…予想外でしょ?』

 

2人で練習した奥の手

ダメージはあるはずだけど、そのまま提督は詰め寄ってくる

 

「全然効いてないんですけど!?」

 

『そのまま撃ち続けて!手を止めたら死ぬよ!』

 

『でぇぇぇぇい!クソッ!こいつらマジで強え!』

 

「もうすぐ最初の弾薬が降ります!気をつけてください!」

 

「来ます!!」

 

『くらえー!レーザー!』

 

「ひぃぃっ!?」

 

「ジュッって!ジュッって言いましたよ!?」

 

「司令官モロに行きましたよね!?え!?死んじゃいました…!?」

 

『曳航用のワイヤー用意!ふん縛って連れて帰るよ!』

 

『その前に朝潮達だろ!?』

 

『大丈夫、其方は其方でやるから』

 

「あぁぁぁぁ!クソ!クソクソクソクソ提督!ようやく!……ようやく着いた!」

 

「アオボノさん!?連合艦隊が到着しました!」

 

「待たせたわね!ぶちのめしてあげるわ!!」

 

『あ、マジ?じゃあ私もう戦力外だから宜しく……』

 

『北上!?何言ってんだよ!お前抜けたら戦えねぇって!』

 

『こっちにも事情があるんだよぉ…流石に全員に知られるわけにはいかないの』

 

「ごちゃごちゃ言ってる暇があったら撃ちなさい!」

 

「数で押します!全員広がってください!」

 

「みつけた…この丸焼きが提督ですか…?」

 

「早く縛りなさい!」

 

「……待って、様子が変…AIDAが焼かれてる?」

 

「青い炎でAIDAが焼かれてる……」

 

 

 

 

カイト

 

ああ、強烈なのをもらっちゃったみたいだ

全部吹っ飛んじゃった

 

もうすぐ目が覚める

 

起きたらなんて言おうか、迷惑をかけてごめん?助けてくれてありがとう?

どっちもだね、言わなきゃどやされちゃうから

 

「……よし、動ける」

 

顔をあげて周りを見る

みんなが武器を向けてるから、取り敢えず両手を上げて立ち上がる

 

「みんな、迷惑かけてごめんね、助けてくれてありがとう!」

 

毒気を抜かれた顔でこちらを呆然と見られる

まあ、そりゃ当然だよね

 

「……AIDAが消えたんですかぁ…?」

 

「その様ですね……」

 

「後で覚えときなさいよ!?このクソ提督!」

 

手厳しいな…

 

「うん、だから今は先に、戦う、帰ったら好きなだけ怒られるから!」

 

戦場をもう一度見る

スケィスはもう居ない

おそらくモルガナももう応えないだろう

 

調べなきゃいけない事がたくさんある

 

早く終わらせなくちゃいけない

 

「よし!行くよ!」

 

この命は、まだ散るには早い

 

「摩耶!ガードに専念してて!こっちから援護する!」

 

『提督か…待ってたぜ…!こいつらを殺すなよ!?』

 

「勿論!みんなを助けて帰るよ!」

 

 

見た瞬間にわかる、大潮と、霰…

僕が沈めた子だ

 

ならば僕が責任を取るべきだ

 

「アオボノは朝潮を狙って!曙、全体の指揮は君に任せた!」

 

「「了解!」」

 

「第一艦隊は朝潮を優先して狙うこと、第二艦隊はなり損ないを優先して叩いてください、第三艦隊はそれぞれ必要だと思ったところに自分の判断で、指示はその都度出します」

 

なり損ない、か

なら、半分くらいはまだ…

 

もし声が届くのなら今すぐに謝りたい

 

だけど、先にみんなで帰らなきゃいけない

 

「艦載機のみんな!お仕事お仕事!」

 

「鎧袖一触です」

 

朝潮に向かって艦載機が飛んでいく

速い、流石にアレに追いつくのは無理だけど、全力で足元を蹴る

走るたびにデータの破片が散る

 

「漣!もっと近づいて撃ちなさい!」

 

「あいあいさー!徹底的にやっちまうのね!」

 

「摩耶!あんた邪魔よ!?」

 

「うるせぇ!この摩耶様に…命令すんなぁぁ!」

 

「うおおっ…派手だねぇ…」

 

「被弾!被弾!霞中破!」

 

「退かせて!無理に攻めないで!」

 

人数が多すぎて前衛との連携が取れてないか

 

「摩耶!引いて後方から攻撃して!僕がやる!」

 

大潮とか霰に斬りかかる

できるだけ手数を多くし、意識をこちらに向ける

 

「ごめん…!絶対元に戻すから…!」

 

だけど、2人はそれを望んでるのかな

 

コレは僕のエゴだ

 

2人は、僕を強く恨み、ここで殺したいのかもしれない

 

「話は、元に戻ってから聞く…!」

 

だから、もう一度だけ、声を聞かせてほしい

 

「だから…帰ってきて…!」

 

ガラスの割れる様な音

2人の周りの緑のエフェクトが砕ける

 

「行くよ!ドレインアーク!」

 

データドレインを複数に向けて放つ、データドレインの派生技

それで大潮と霰を貫く

 

怨嗟

 

確実に、存在してるのが…嫌でもわかる

 

「………本当に…ごめん…」

 

それでも、元の姿に戻すことくらいしか、僕にはできない

 

 

 

 

 

駆逐艦 大潮

 

「……」

 

目の前で自分と同じ姿のナニカが倒れる

 

複雑な気持ち、そして、霰と…もう1人の私…

 

どうしたらいいんだろう?

わからない…気持ちがどこかに消えちゃったみたいに…わからない

 

「大潮姉さん!」

 

「はうっ!?み、満潮!?」

 

「しっかりして!今は朝潮姉さんを元に戻すの!退いた霞のことも考えて!」

 

そっか…まずは…納得しなきゃいけない

 

「もっちろん!…大潮!まだ!大丈夫だから!」

 

姉妹のことを気にしてたのに、まだいる姉妹を蔑ろにしてては…いけない

 

「じゃあ行くわよ!馬鹿な姉を叩き起こす!」

 

「それっ!てぇーーー!」

 

 

 

 

 

駆逐艦 朝潮

 

「助けて!」

 

暗闇に声が吸われる

誰かに届いてるの?この声は、私は誰かに助けてもらえるの?

 

『あなたを、助けてあげましょう』

 

そう、この言葉だ

私は、1人が怖くて、この言葉に乗ってしまった

 

『あなたが私と共に歩む限り…』

 

そう、この、恐ろしい言葉は、いつから私の頭に響いていた?

 

大潮が司令官を殺そうとした時か

それとも、あの騎士が私の前に現れた時か

 

 

暗闇からヌッと腕が現れる

つぎはぎの革手袋が、私の前に差し出される

まるで、私の手を取るために、私の動きを待つために

 

ああ、遅い、遅すぎる

一体どこで何をしていたのか、この騎士は

 

『その手を取れば不幸になりますよ』

 

「もっと不幸な人も居るでしょう」

 

『災いが降り注ぐ』

 

「あなたと会った事が災いです…私の中から出ていけ!」

 

騎士の手を取る

 

瞬間、暗闇は音を立てて崩れた

 

ああ…やっぱり、あんなのに助けを求めた私が愚かだったのだろう

 

私を助けてくれた蒼炎の騎士に一瞥し

目を見開く

 

眼前にまで迫った砲弾は騎士が弾いてくれた

どうやらいつの間にか、私は妹達と戦っていたらしい

 

「……ふぅ…」

 

一息大きくつく

 

戦場が完全に停止した

 

 

 

 

 

駆逐艦 曙

 

提督そっくりの、オバケ

そしてそれが朝潮を守ってる

敵となったのか、それとも戦いが終わったのか

全員が硬直する

 

「…みなさん、私はもう正気です」

 

朝潮が口を開く

 

「………証明の手段は?そして、そのオバケは?」

 

「オバケではありません、司令官のコピーであり、私の騎士です」

 

先の質問をすっ飛ばしてそういう

よほど大事なことだと認識してる様だ

 

「…じゃあ、その騎士も含めて味方だと証明してください」

 

「……」

 

オバケと顔を見合わせ、首を捻る様は全く敵意を感じない

この時点でだいたいokなのだが、確証が欲しい気持ちはまだあった

 

「…そうですね…ないので、帰っていいですか?」

 

ふざけてるのだろうか

 

「……正直それも手っ取り早いですね」

 

確かにそれもそうか

だけど他所に被害が出ても困る

 

「大丈夫、朝潮はもう元に戻ってるよ」

 

「提督、なぜ言い切れるんですか」

 

「トライエッジが朝潮を守ってるからだよ、トライエッジは対AIDAとして作られた存在、もし朝潮が暴走してるなら攻撃を仕掛けてると思うよ」

 

なんとも言えない

そんなことで断定…するほかないのも歯痒い

 

「…満足されたでしょうか」

 

「…はい、警戒解除、帰投しましょう」

 

重い、重い足取りで私たちは、鎮守府へと帰った

 

 

 

 

 

 

 

離島鎮守府 食堂

 

「戦果は、イニス、メイガスの撃破、ただし、イニスの撃破については不明瞭な点が多く、曙達の交戦などから別個体、またはそれに準ずる何かがあり、まだ攻撃してくる恐れがある、そしてスケィスは撃退にとどまり、大潮、霰を迎え入れた…と」

 

「うん、といっても2人ともまだ目を覚まさない…」

 

「提督、あなたはやれる事をやりました、スケィスを追ったのも本当に仕方がなかったんですよね?」

 

「…あの場に他の八相までけしかけられたら、流石に誰かが死ぬと思ったんだ」

 

「でも今度はクソ提督に北上と摩耶と朝潮がボロボロにされたんでしょ?変わらないわよ」

 

「まさかAIDAに呑まれるなんて」

 

「…ごめん、3人を見たら安心しちゃってさ…戦う事になっても、きっと倒してくれるって」

 

「…結果はボロボロ、阿武隈達が来なければ負けだったけどねぇ…」

 

「北上は本調子じゃなかったんじゃない?」

 

「まあな、半分あたり」

 

「アタシもまだあの体に慣れてないんだ…なかなか辛いぜ、でも次こそやってやる!」

 

「次があったら期待しておくよ」

 

「私は次があってもパスかなぁ…アレって実は消耗激しいのにあんな戦いしたら…間宮さーん、日替わり5人前!」

 

「…今日の日替わりって誰?」

 

「一航戦の2人だね…」

 

「ごめんやっぱ間宮定食で!………え!?もうできてんの!?……嫌だなぁ…一航戦スペシャル…」

 

「うわぁ…」

 

「相変わらずの見た目してるね…」

 

「…………話し続けよっか」

 

「そうですね」 

 

「それで?何が言いたいんだ、つまり」

 

「…敵に目的はないと言ってもいいと思ってるんだ、いや、正確にはあるんだけど、代わりは作り出せない」

 

「どういう意味だ?」

 

「前の戦いで僕と仲間が倒したモルガナというAIそれが今の敵の親玉、そしてその目標は復讐…僕を、とことん苦しめるためだけに戦うつもりらしい」

 

「なんの意味があってそんな事を…」

 

「意味なんかないよ、だから向こうは悪戯に傷つけるつもりだし、それを黙って受け入れるつもりはないんだ、だけどコレは君たちに強要する戦いでもないのは間違いない事だよ」

 

「なんだ?まさか巻き込みたくないってか?」

 

「残念だけどそうは言えない…もう深く関わりすぎた、君たちも狙いに入ってる」

 

「だろうな、それで?」

 

「改めて、力を借りたいんだ、この戦いには、どうやっても1人じゃ勝ち目はない…だからみんなの力が要る、協力して欲しい」

 

「…私たちの戦争が、いつの間にか提督1人の間になったと?」

 

「なりようがないわね、元々深海棲艦との戦いは私たちの仕事な訳だし」

 

「話は早そうだね…はぁ…」

 

「みんな、ありがとう…そして、ここからも大事な話だよ、AIDAにやられた時、少し色々探ってみたんだ…例えば北上、君のは本物だ」

 

「ん」

 

「なんの話でしょうか」

 

「…全員知ってるわけではないのか?」

 

「この場にいるメンバーなら曙だけかな…曙、北上って実はAIDAを扱えるんだよ」

 

「……食堂でそれいうんですか」

 

「誰もいないしね」

 

「みんなそれぞれのお見舞いで大忙しだし」

 

「結論から言うと、北上のAIDAは本物で、僕が呑まれたのはコピー、偽物のAIDA、つまり、AIDAを複製されてるわけだ」

 

「そんな感じはしてたんだよねー…」

 

「それともう一つ悪い事がある、今後あんまり、腕輪、AIDAを使って欲しくない、摩耶も、必要ない時はブラックローズにならないで欲しい」

 

「それは…何か理由があるんですか?」

 

「境界線が、揺らいでる」

 

「境界線…?」

 

「ネットと現実が…ひとつになりかけてるんだ」

 

 

 

 

 

ああ、まさか…こうなるなんて、何時迄も

そう、何時迄も、私は此処に、この椅子に

 

 

 

元勇者提督

vol.2 悪性変異

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