元勇者提督   作:無し

520 / 625
酒宴失態

離島鎮守府 執務室

駆逐艦 狭霧

 

狭霧「……急に来てすみません」

 

海斗「いや、気にしなくて良いよ、それより、そっちはどう?」

 

狭霧「ええと…まあ、その…なんとか」

 

海斗「…綾波も早く帰って来れば良いんだけどね」

 

狭霧「それより…すみませんが、一つ伺っても?」

 

…今、私はせっかく来たのだからと、挨拶に執務室まで訪れた

しかし、私の眼前の光景はなかなか…と言うか全くもって想像し難い光景で…

 

狭霧「何故、アケボノさんが倉持司令官の上に座って仕事をしてるんですか…?」

 

このアケボノさんは人とベタベタするのを苦手とするし、特に倉持司令官との距離感は一線を置いたものになっていたはずだ

好意を抱いていたとしても、このわずかな期間にどう言う変化があったのか…

 

アケボノ「気にしないでください、仕事をしているだけです」

 

海斗「…まあ…そう言うことらしいから…」

 

困ったように笑う倉持司令官から、言い出したのはアケボノさんか第三者である事がわかる

 

膝の上に座る事も、座らせる事もお互いに気を許していなければしない様な事だ、仲が良好なのは良いのだが

 

狭霧(こういうときくらいは降りるべきでは?)

 

アケボノ「…そう訝しまないでください、私が降りたら提督が自由に動けてしまいます、そうすると貴方との会話の最中に託けて書類を全て奪われます」

 

どうやら原因は倉持司令官の方にあったらしい

 

しかし、まあなんとも、仕事の取り合いとは珍しい事だ

 

狭霧「まあ、私は軽い挨拶に方だけですし…どうぞお気になさらず…暫くしたら帰ります」

 

アケボノ「スペースもありますし、泊まっても構いませんよ」

 

狭霧「だとしたらみんなできます、今回半分以上のメンバーは居残りですから」

 

今回来たのは朧さん、ガングートさん、グラーフさん、タシュケントさん、リシュリューさん、ビスマルクさんの6人と私だけ

それに…青葉さんも来たかっただろうし…

 

アケボノ「そうですか、帰り際にアヤナミさんを攫わないでくださいよ」

 

狭霧「……その保証はできません」

 

実際、ウチの人達は強い関心を持っていたし…

アヤナミさんを連れて帰りたいと好奇の目を向けているもの達もちらほら

 

海斗「敷波達が悲しむから、やめて欲しいかな…」

 

狭霧「ことを構えたくはないので、わかっています」

 

アケボノ「む…提督、漣からメールです…食堂が大惨事になっていると」

 

海斗「え」

 

狭霧「…ちなみに、原因などは」

 

アケボノ「当然、貴方達のところですよ」

 

狭霧「すぐに片付けて来ます!!」

 

 

 

 

食堂

 

狭霧「…なる、ほど…」

 

…どんちゃん騒ぎ、か…

しかも、この匂い、アルコール…

 

ガングート「お前!なかなか飲めるな!」

 

アイオワ「ひっさびさのビール!!染み込んでくるわ…!」

 

グラーフ「しかし、これだけの大所帯で酒が許されていないとは、辛いだろうな」

 

ワシントン「そうなの…!もう何ヶ月ぶりなのか…うう…うう…」

 

ガンビアベイ「泣き上戸…」

 

狭霧「あ…あぁ……なんて事…」

 

思わず頭に手を当て、項垂れる

 

この場に連れて来たのがこぞって酒飲みばかりなのが最悪だった

 

離島鎮守府は在籍艦娘のほとんどが未成年、その為にここは料理酒以外の酒は仕入れていないらしい…

ので、ここにある酒は全て二式大艇に積んでいたものと言うことになる

 

早霜「ジントニックです」

 

タシュケント「…美味しい…若いのにやるね…!」

 

狭霧(…あのバーテンに関しては離島鎮守府の人だと思うけど…)

 

イヨ「かーっ!もう一杯!」

 

狭霧(え?あの人未成年じゃ…ああ、と言うかどうしたら良いのこれ…朧さんは…)

 

朧「……くぅ…」

 

すでに酔い潰れて寝てる…

 

狭霧(肝心な時に使えない…!)

 

狭霧「…グラーフさん、タシュケントさん、ガングートさん…」

 

グラーフ「おお!狭霧も飲むか!?」

 

タシュケント「この子の作るカクテルすごく美味しいよ!」

 

ガングート「カクテルなんぞ、そのまま飲んでこそだろう」

 

…頭が痛くなって来た

ポケットに手を突っ込み、カートリッジを取り出す

 

狭霧「……改二艤装、展開!」

 

タシュケント「あ」

 

 

 

 

ガングート「けほっ……ぐ…」

 

タシュケント「改二で殴る事ないじゃないか…いつつ…骨いってないよね…」

 

狭霧「加減はしましたよ」

 

グラーフ「アレが加減か…?」

 

グラーフさんの顔面を掴み、持ち上げる

 

グラーフ「あああ痛い痛い痛い!悪かった!許してくれ!」

 

狭霧「ここ、家じゃないんですよ、他所様のお宅で何やってるんですかこの、大うつけ!」

 

タシュケント(う、うつけ?)

 

狭霧「リシュリューさんとビスマルクさんは」

 

ガングート「…追加の酒を取りに行ったきりだな……逃げたか」

 

狭霧「そうですか、ここは絶海の孤島…逃げ場はありませんよ」

 

ガングート(死んだなアイツら)

 

チラリと他の艦娘達を見る

 

ワシントン「ひぃっ…」

 

ガンビアベイ「うう…」

 

手を出してないのに、この怖がられようか…

酔いもすっかり覚めたらしい

 

狭霧「お酒は節度を持って楽しんでくださいね?」

 

アイオワ「わ、わかった…」

 

狭霧「…なんで、みんな綾波さんがいなくなったら自制できないんですか…」

 

ガングート「そう言う狭霧もこの間飲んでたじゃないか」

 

狭霧「はい?」

 

ガングート「…なんでもありません」

 

狭霧「よろしい」

 

狭霧(まだ私で良かったと思って欲しい…これを止められるのなんてキタカミさんやアケボノさん…ああ、あの2人なら…)

 

狭霧「全身骨折…」

 

タシュケント(まだやる気!?それともリシュリュー達!?)

 

 

 

演習場

 

狭霧「…あら」

 

キタカミ「おー、借りてるよ、2人とも」

 

リシュリューさんとビスマルクさんはどうやらキタカミさんに捕まっていたらしく、延々とランニングをしていたらしい

そしてその2人の後ろには不知火さん…

 

リシュリュー「さ、狭霧!助けて!」

 

ビスマルク「もう走るの嫌!」

 

不知火「うるさいですよ、黙って走りなさい」

 

2人の足元を実弾が掠める

 

リシュリュー「ひいいい!」

 

ビスマルク「やめて!死んじゃう!」

 

狭霧「バカは一度死んできなさい」

 

リシュリュー「狭霧!?」

 

ビスマルク「化けて出てやるー!!」

 

狭霧「どのくらい走ってるんですか?」

 

キタカミ「んー…もうそろそろ20分かな、でもまだまだだよ、2時間は行こうか」

 

リシュリュー「にっ…」

 

ビスマルク「……謝るからぁ…」

 

狭霧「ガングートさん達を連れて来ます、良い見せ物です」

 

リシュリュー「が、ガングート達はどうなったの!?」

 

ビスマルク「アイツらまさかそのまま無罪放免!?なら一緒に走らせてよ!」

 

狭霧「心配しなくても…ボッコボコにしましたよ、改二で」

 

リシュリュー(あ、向こうも死んでるのね…)

 

狭霧(息抜きに連れて来られたはずが、胃に穴が空きそうです…)

 

狭霧「早く帰って寝よう…仕事をする気も失せちゃった…」

 

 

 

 

 

Link基地

青葉

 

青葉「…あれ、部屋、空いてる?」

 

私の部屋の扉が半開きになっている

侵入者か、掃除の時に開けっ放しになったか

 

基本この施設の掃除は持ち回り制で、誰がどの部屋に入っても問題ないことになっているので…まあ、警戒することはないはずだが

 

青葉「……」

 

中の様子をチラリと伺う

 

ザラ「これ、なんでしょうか」

 

ユー「…あんまり触らない方が、良いと思う」

 

アークロイヤル「このパソコン、どう起動するんだ」

 

掃除しているのかと思ったけど、パソコンを触っているとなると話は変わる

 

青葉「何やってるんですか」

 

ザラ「わっ!?」

 

ユー「えと……」

 

アークロイヤル「…掃除だ」

 

青葉「アークロイヤルさん、パソコンに触らないでください」

 

アークロイヤルさんが一歩パソコンから離れる

 

青葉「…何が目的なんですか…?掃除と言いましたが、何故私のものを引っ張り出して…いや、目的なんて明白か」

 

綾波さんの情報を持っていないか、調べたかったのだろう

 

青葉「私はもう綾波さんのこと、何も知りませんよ」

 

アークロイヤル「…信用できるか」

 

青葉「それはどうぞ、私は信用されるつもりはありません…」

 

ザラ「…どうして黙っていたんですか?」

 

青葉「もう言いましたよ、本人が望んだからです…綾波さんは貴方達との関係を断つことを望んでいた」

 

ユー「ウソ…」

 

青葉「本当です」

 

アークロイヤル「…本当に何も知らないのか、なあ、何か知ってるんじゃないのか」

 

青葉「知りません…だから、それに触れようとしないでください」

 

机の上のFMDにアークロイヤルさんの手が伸びる

 

アークロイヤル「大事なものなんだろう……教えろ、お前の知ってること、全て」

 

青葉「……出会いは神の御業、別れは人の仕業、か」

 

アークロイヤル「なに?」

 

青葉「…ここを去るべきなのかもしれませんね…どのみち、ここにいてもお互いのためにならないでしょうから」

 

ザラ「……」

 

青葉「…私は、何も知りません、もし信じないのなら好きにすれば良い…でも、私の大事なものを壊すなら…私は貴方を許さない」

 

アークロイヤル「ッ…」

 

ザラ(…流石に、このプレッシャー…実力者という話も嘘ではないようですね)

 

ユー(怖い…)

 

青葉「……」

 

無言で睨み合う

 

ザラ「…別に悪意があるわけじゃなかったんです」

 

青葉「それは理解していますし、貴方達の気持ちもわかる、でも、私は力になれません」

 

アークロイヤル「何故だ」

 

青葉「知らないからです、本当に……それと、私は貴方を力で押さえつける事もできる」

 

壁に立てかけてある槍をチラリと見る

 

青葉「…でも、そうするのは不義理ですし、完全に関係を壊すことになる…お互い、やめませんか」

 

アークロイヤル「それは、脅しだろう」

 

青葉「貴方も脅してるじゃないですか…」

 

ザラ「アーク、やめましょう、私たちが悪かったわ、通らせてくれる?」

 

青葉「はい…」

 

3人を部屋から追い出す

 

青葉(…やっぱり、ここは私には合わないんだろうな)

 

その後、The・Worldにログインし、トキオを見つけたものの、どうしても気分が乗らなかった

…今の私は、すごく弱い…

 

心が、弱ってる

 

青葉「…みんなに会いたいよ…」

 

…でも、ダメだ

 

私はあそこを抜けたのは未帰還者を助ける為だ

 

私は…

 

青葉(未帰還者を助けてから、胸を張って帰るんだ…)

 

そう決めているから、まだ、帰れない

 

青葉「…あれ?電話だ…な、なつめさん!」

 

慌てて電話を受ける

 

青葉「も、もしもし!」

 

大黒『あ、青葉さん、良かったー、お元気ですか?』

 

青葉「は、はい!な、なんでしょうか?」

 

大黒『…もしかして、今忙しかったですか!?ごめんなさい!ちょっと用事があって…』

 

青葉「大丈夫!大丈夫ですから!」

 

大黒『あ、よかったー……ええと、実は私も青葉さんのお手伝いをしようと思って』

 

青葉「…へ?」

 

大黒『今度、一緒にログインしませんか?』

 

青葉「…あ、あの、過去に行くんですよ?」

 

大黒『はい』

 

青葉「めちゃくちゃ危険ですよ…?」

 

大黒『わかってます、でも大丈夫、なんて言ったって….hackersですから』

 

青葉「おお……えと…ちょっと待ってください」

 

…やっぱりThe・Worldのプレイヤーはみんな頭のネジが飛んでいるのだろう

この危険な戦いに身を投じようという神経はわからないが…

 

青葉「…なつめさんって、強いんですか?」

 

大黒『カイトさん達には到底敵いませんけどね』

 

青葉「…ええと」

 

パソコンになつめと打ち込み、検索をかける

 

[カオティックPK エッジマニア なつめ 超危険!]

 

青葉「Oh……」

 

この記事の題名だけでわかる、この人実はかなりやばい

 

青葉「…なつめさん、凄く強いんですね…あ、あはは…」

 

記事を流し読みしてる限り、死の恐怖以外のPKKを何度も返り討ちにしてるとか…見ては限りでも…この強さはやばそう

死の恐怖もそこそこの痛手を負ったとか…

 

ネット記事なんて信用しちゃダメだけど、こんなのが書いてるってことは…相当やばい

 

青葉「や、やるときは連絡します」

 

大黒『待ってますからね!いつでも誘ってください!』

 

青葉(なんとも思ってなかったけど……あの死の恐怖と良い勝負って…相当やばい人だ…)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。