元勇者提督   作:無し

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Pacific Devil

ハワイ

綾波

 

綾波「…にしても、ははは、これは」

 

神通「まさか、貴方が笑うしかないなんてことがあるなんて」

 

綾波「いいえ?私の本命の予想と真反対ではありましたが、これも想定内…しかし、面白いのは…ふふっ…受け入れてるみたいですね?支配を」

 

私たちがハワイに来て見た光景は、深海棲艦に支配された世界だった

 

このハワイは完全に深海棲艦の手に落ちている

 

しかし、見ている限りその支配は穏やか、完全に深海棲艦に屈している環境でありながら、人々に暗い様子はない

 

綾波「まるでユートピアのようですね」

 

夕立「本当にユートピアなのかしら?」

 

神通「どうします」

 

綾波「どうも?向こうが接触してくるのを待つだけです……ああ、あそこなんて良さそうだ」

 

屋外に席のあるカフェ、そのテーブルの一つを占領し、店員に軽く注文する

 

綾波「あ、アレルギーや苦手なものは?」

 

神通「…サラダ菜のような葉物でえぐみのある物は苦手です」

 

夕立「トマトは嫌いっぽい、血っぽいから戦う時を思い出しちゃう」

 

答えない瑞鶴さんは無視して注文を確認し直し、先に金を渡す

 

神通「…お金持ってるんですね」

 

綾波「いい財布が手に入りましたから」

 

女帝から大金をせしめている、金銭のことを心配する必要はまるでない

 

まあ、ふつうにしてる限りはだが

 

綾波「…さて、ロコモコにガーリックシュリンプ、今時日本でも食べられますけど、本場は風味が違いますねえ」

  

提供された食事をゆったりと楽しむ

 

夕立「瑞鶴さんは、食べないの?」

 

神通「…綾波さん」

 

綾波「食べなさい」

 

その声を聞いてようやく瑞鶴さんが食事を始める

 

夕立(…完全にコントロール下に置かれてる…)

 

綾波「しかし、ふふ…面白い物だ、この島は元々観光業で成り立っているのに、深海棲艦に支配されてもそれが続いている、海を見ればサーフィンをする人もいる、さらにはパラシュート、スカイダイビングでしょうか」

 

神通「空挺降下では」

 

綾波「だったら撃ち落とされてますよ、何にせよ、ここは深海棲艦の本拠地と言うことになりますね」

 

夕立「……わかってて乗り込んだんじゃなくて?」

 

綾波「わかってて乗り込みましたよ?しかし、どうやら私の思っていたほどバカではないようでよかった、良い仕事相手になりそうです」

 

神通「というと」

 

綾波「ここは核が落とせない」

 

夕立「…確かに、こんなに民間人がいたら…」

 

神通「…しかし、そんなこと無視してでも落とした方が…」

 

綾波「140万人、ハワイの人口はそのくらいのはずです……が、まあここを制圧するまでに下手すれば半数は死んでるでしょう…でも、70万人と仮定して、この狭い島々の深海棲艦を殲滅するとして、全員死んだとして……批判は酷いものでしょうね」

 

神通「しかし…」

 

綾波「さて、真面目な話、いつ占領されたのかな、このハワイは……少なくとも離島のアメリカ人たちが来た後でしょう、彼女達がハワイを離れたのは確か4ヶ月以上前…」

 

となると、思っている以上にやり手の可能性がある

飲食店をはじめとした経済が停滞していないこと

人々が娯楽に興じる余裕があること

 

半数の人口が消えたと思ったが、そもそも犠牲はほとんど出ていないのかもしれない

 

神通「何故、アメリカの人たちが離島に行った後だと?」

 

綾波「彼女達言ってましたから、「ハワイは大丈夫」だって、それに私が調べてた限りハワイからの救援要請は罠でした…少なくともあの時に発信されていた信号はね」

 

神通「本当に助けを求めていたんじゃ…」

 

綾波「その可能性はゼロではありません…が、たくさんの通信履歴から、日本の艦娘を捕まえる、という単語が何度も何度も確認できました、心配しなくても、罠だった事には間違い無いでしょう」

 

もし罠でなくても、今更どうにもなるまい

 

夕立「それで、何を待ってるのかしら?」

 

綾波「…さあ?」

 

食後のコーヒーを口に含む

 

綾波「…マズ……はぁ…水みたいに薄いコーヒーなんてよく客に出しますね、下手くそばかりか」

 

カップを置いて空を眺める

 

夕立「…苦い…」

 

神通(お砂糖もミルクもない…どうしましょう、飲めません…)

 

綾波「…はあ……」

 

最悪の気分だ

食事を邪魔された、最後の余韻で台無しにされた

今の機嫌は最悪…

 

綾波「…おや、深海棲艦のウエイトレスか…珍しいものだ」

 

ル級「綾波様デヨロシイデショウカ」

 

額に拳銃を突きつける

 

神通「な…」

 

夕立「深海棲艦とはいえいきなり…」

 

綾波「二つに一つです、案内するか、死ぬか」

 

そう言って引き金を引き、ル級を撃ち殺す

あたりに悲鳴が響き渡る、民間人が騒ぎ出し、逃げ出す

 

神通「…何故殺したのですか、今の深海棲艦は人の生き方に馴染んでいました」

 

綾波「あれ?…まさか貴方達、気づいてないんですか?今のル級が殺気を出したので撃ったんですよ?」

 

夕立(そんな正論みたいな言い方で無茶苦茶な理論…)

 

綾波「案内しないなら殺す、それだけです…しかし、この感じ、どうやら…アハ、私の真似をするのがよほど好きとみえる、ここの深海棲艦の基地は海中ですね…さて、少し遊びましょうか」

 

街のいろいろなところから深海棲艦が溢れ出してくる

 

神通「……はあ…」

 

綾波「見えてるだけで…200…300か、神通さん、どうしますか?」

 

神通「私が行きます…」

 

綾波「そうですか」

 

神通「……」

 

丁度、太陽が雲に隠れる

 

薄暗く、湿った空気があたりを包む

 

神通「……私は、やはり闇の住人か…私は陽の当たる道を歩けない」

 

夕立(な、なんか始まった…)

 

神通「…どうせ、私なんか」

 

ぐちゃ、ばき、ぐちゃ

 

蹴り砕き、踏み潰されていく

湧いて出た深海棲艦が徹底的に、とことん殲滅されていく

 

夕立「強…」

 

綾波「艦娘のほとんどが出払った後に来た、という考えは正しいらしい、どうやら実戦経験がほとんどないようだ」

 

拳銃を他所に向け、撃つ

弾が当たった深海棲艦が弾け飛ぶ

 

夕立「それ、何?」

 

綾波「対深海棲艦用の特殊弾です、私のオリジナルですが、今の日本で出回ってる銃弾はほとんどこれに置き換わり始めています」

 

夕立「提供したの?」

 

綾波「売ったんですよ、日本政府に…私の才能の一端としてね?…技術は公開しなくては全体の進歩に繋がりませんから…しかし、かといってタダで配れば歩みは遅くなる」

 

夕立「…すごい効果…頭に当たった敵が吹き飛んでる…」

 

綾波「よく効くでしょう?」

 

そうこうしている間に深海棲艦の増援が途切れ始める

 

神通「…これだけ、か」

 

残った深海棲艦の死体が一通り地面に転がったあたりで戦闘音が止む

 

こちらの消費は神通さんの体力と特殊弾7発のみ

神通さんも無傷

 

綾波「まあ、実力の証明になりましたね」

 

夕立「…何か来る」

 

綾波「敵型の総大将、と言ったところですか」

 

椅子に腰掛け、ゆったりと眺める

 

宙に浮いた白い鯨のような巨大な深海棲艦を従えた、大槍を持った深海棲艦…

 

綾波「初めまして?太平洋棲姫サン」

 

太平洋棲姫「名乗ッタ覚エハナイケド?」

 

綾波「名乗りは必要ありませんよ、私は仕事相手についてはよーく調べることにしてるんです」

 

太平洋棲姫「ソレデ?」

 

綾波「あー、代理の人間が来ると聞いていたのに、原初の深海棲艦直々に来てくださるとは恐悦至極、今後ともよろしくお願いします?」

 

太平洋棲姫「……」

 

綾波「…やる気なさそうな顔してますねえ」

 

太平洋棲姫「…貴様ヲ信用シテイナイ」

 

綾波「当然でしょう、あって1.2分の相手を誰が信用できましょうか」

 

太平洋棲姫「…貴様ハ私ニ何ヲ提供スル」

 

綾波「…そうですねえ、貴方達にとって目障りな敵を消す機会を差し上げましょう」

 

太平洋棲姫「ナンダト?」

 

綾波「用意はしましょう、しかし進行はしません、そこまでやる義理はありませんから」

 

太平洋棲姫「……具体的ニ言エ」

 

綾波「基地の指揮官を1人ここに連れてきて、それを餌にそこの艦娘たちを殺せばいい…簡単だ、実に簡単だ」

 

太平洋棲姫「…ドウヤッテ連レテクル」

 

綾波「はい」

 

すぐ隣にブラックホールが現れる

 

そしてそれが一瞬消え、次の瞬間そこには朝潮さん…

 

朝潮「……へ…?」

 

綾波「これが餌ですよ、これを使って大物を釣る」

 

夕立「…!」

 

神通「…へえ」

 

太平洋棲姫「…本当ニソレガ来ルノカ」

 

綾波「来なければ私は約束を破ったとみなしてくれて構いませんよ、連絡だけは…今済ませましたので、指揮官と2人の艦娘を連れてここに来い、と…それ以上の人間が来た場合、殺す、と」

 

太平洋棲姫「……イイダロウ、信用シテヤル」

 

綾波「それじゃあ私たちは帰りますか」

 

太平洋棲姫「ナニ?帰ルダト?」

 

綾波「御膳立てはしました、あとは貴方たちの努力次第ってことで…私はそれ以上はやりませんよ」

 

太平洋棲姫「…イイダロウ、結果ハ追ッテ連絡スル」

 

綾波「瑞鶴さん」

 

私たちを蜃気楼が包む

 

神通「…これは」

 

綾波「本当に帰るのはつまらないでしょう?この状態なら、一方的に見てられる…見物しましょうよ、せっかくですから」

 

夕立「何を?」

 

綾波「ショーですよ、あの朝潮さんは離島鎮守府の人です、さて…離島鎮守府の艦娘が誘拐され、そこの指揮官と2人の供回りのみがハワイまで来ることを許可された…ふふっ…楽しみでしょう?」

 

夕立「…なるほど」

 

神通「2人、というと…来るのは」

 

綾波「間違いなく、アケボノさんとキタカミさんです」

 

目の前で朝潮さんが縛り上げられ、深海棲艦に連行されていく

 

綾波「ああ、哀れですね…なんと可哀想なのか、私が居場所を把握できてしまったが故に…」

 

朝潮さんは殺されはしないだろう

だが…不幸だった、朝潮さんには、オリジンの残滓がある

 

ただでは済まない

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