元勇者提督 作:無し
The・World R:1
Δサーバー 隠されし 禁断の 聖域
グリーマ・レーヴ大聖堂
重槍士 青葉
青葉「どうしてここが…!」
楚良「どうして?…どうしてだったかなぁ」
数分前
秘密の部屋
楚良「おばちゃーん、アイツらどこ?」
『……』
楚良「ふー、無視するつもり?後でどうなっても知らないよん?アイツらの居場所、知ってるよね?」
『…把握しています』
楚良「じゃ、教えろ」
『貴方は約束を守れますか?』
楚良「ぷッくく〜内容によるよん」
『…曖昧な返事、曖昧な態度…イエスとノーの狭間のグレーゾーン…人間を人間たらしめるその不確かさが、私は嫌いです』
楚良「んー…おばちゃ〜ん、何者?」
『私は、The・Worldです』
楚良「なんでだったかな〜」
青葉「なんで裏切る様な真似…お友達じゃなかったんですか!」
楚良「べっつに〜?オレ、あんたらに協力するって言った事ないし…それより」
私を無視して、背後の赤い重槍士へ目線が向く
楚良「決着つけよーぜ、クリム」
クリム「貴様!」
お互いに飛びかかり、空中で一撃
楚良「…バカを相手にしてる暇はない…今、そう思ったでしょ」
クリム「ちょっと違うな…!バカじゃなくて、大バカだ!!」
2人が斬り合いながら飛び上がり、聖堂の屋根に着地する
クリム「…お前は自分で思ってるほど強くない」
楚良「んふ…思い込み、って言いたいなら、そっちだって」
クリム「違うな」
楚良「どこがよー?」
クリム「…強さは!レベルの差でも装備の差でもない!レベルなんざ99で頭打ちだ!装備もパラメーターの上限は決まってる…わかるか!」
楚良「ハッ!わかるかよ!」
クリム「故に…お前は、弱い!」
楚良「んふー、全然負ける気しね〜」
クリム「負けてから気付くのも悪くない」
クリムさんが槍を構える
クリム「気づければな!!」
そう言ってクリムさんが斬りかかる
青葉(圧倒、とはいかないけど…手数有利なはずの双剣士を力で防戦一方まで追い詰めてる…!)
確実に押し続け、楚良さんを追い詰めるクリムさん
優位は間違いない…
振り下ろす様な一撃を楚良さんが刃を交差させ受け止め、鍔迫り合いの形になる
楚良「ちょいちょい…!オレにかまってて大丈夫?中、大変なことになってるよ…!」
クリム「前にも、同じ様なセリフを聞いた事がある…!苦しくなるとお前は問題を他にすり替えようとする…弱いからだ…!もっと言うなら…ガキンチョだからだ…!」
楚良「…お前、まじムカつく…」
クリム「図星だもんなぁ…反論できまい…!」
楚良「けッ」
クリム「いいか…!パラメーターが同じ場合…勝つのはどっちか…!」
楚良「あァん…!?」
クリム「…熱い方だ!!」
クリムさんが槍を振り抜き、弾き飛ばす
楚良「チッ…つくづく…アナクロ!!」
クリム「そうとも!俺は時代の流れとかに迎合するの、大嫌いだからな!!」
再び打ち合う
楚良「っ…!」
クリム「でえぇぇぇぇい!」
空中で互いの武器がぶつかり合う…
吹き飛べば、そのまま落下しする様な場所で…
そして、武器を振り抜いた勝者は…
より、熱い方だった
落ちていく楚良さんが途中で転送され、間一髪デスを免れる
クリム「…よし」
青葉(クリムさんがやられた時に備えてたけど、必要なかったかな…)
クリム「…む」
聖堂の扉が開く
青葉「司さん…」
司さん、昴さん、ミミルさん、トキオさん…
みんな無事な様だ…
クリム「すまんな、楚良が出てきたもんで、そっちにいく余裕はなかった」
ベア「気にするな、それよりも場所を…」
青葉「あ」
手を、引かれた
リコリスさんが、4人の方に歩く…
司「えっ」
昴「な、なに?」
リコリスさんが司さんに触れるほど近づいた途端、どこかへと転送される
???
青葉「…ここは」
どこまでも広がる、掃き溜めの様な世界
ポツポツと点在する壊れたオブジェクトのデータ、それ以外は何もない世界…
司「アウラ」
司さんが見上げて言う
それに釣られ、みんなが空を見上げる
逆さに立っている、女の子…
澱んだ色に染まってしまった彼女が…女神アウラ…
まるで色覚の設定が反転しているかの様な
司「ねえ、聞こえる?僕の声がわかる?」
アウラは、何か、確かに反応し、ゆっくりと司さんの前に降りてくる
今度は逆さまではなく、横たわる様にして
司さんがアウラの頬に手を触れる
『司!その子に触れるのをやめなさい!』
ミミル「誰…!?」
この声が、モルガナの…!?
『お前なんかもういらない……司!…司!…その子から手を離しなさい!』
青葉「…!」
ミミルさんと私で司さんの両脇を固め、周囲を警戒する
司さんは声に耳を傾けることなく、アウラに手をあて、微笑みかける
『…わかりました、お前なんか、もうどこかへ行ってしまいなさい!』
司「……僕は、もうあんたの言うことなんか聞かない」
青葉「…あれは…!」
遠くのオブジェクトの影に楚良さんを視認する
青葉(何故隠れて…不意打ちを狙っている!?…来るのなら、迎え撃つまで…)
司「僕は、あんたが誰か知らない、どうして僕にこんなことをしたのかもわかんない、でも、今は一つだけ理解してることがある…あんたは、この子に目覚めてほしくないんだ」
『お前はお前の役割を全うすれば良かったのだ、だが、もうお前に全うすべき役割、ロールプレイは、ない』
司「違う、僕にはまだやるべきことがある」
『何…?』
司「この子を目覚めさせる」
…アウラの色が、少しだけ澄んだような気がした
司「あのね、僕はあんたに感謝してるんだ」
『ならば私に従え…!』
司「それはできない…でも、あんたのおかげで、僕は昴、ミミル、ベア達みんなと出会うことができた…」
昴「司…」
司さんが呪杖を棄てる
司「分かったんだ、何かを見たくないなら、目を開けばいいって…それは大切なものの一部だって気づく…昴も、ミミルも…見ることが、どんなに痛いことだとしても」
『お前の戯言などわからない、わかりたくもない』
ミミル「戯言なんかじゃない!あたしあんま頭良くないけど司の言ってることわかるもん!正しいって思うもん!」
『それでお前たちは英雄にでもなったつもりか?』
昴「いいえ、私たちは自由でありたいのだ、そう思います…何故こんなことに関わるのか、こんなことに関わるのは間違っている…そう言う人もいるでしょう、でも、私は間違ってるとは思わない、自分の気持ちを縛りたくない、ただ、それだけの気持ちでここにいるのです」
ミミル「そーだそーだぁ!」
『お前らなど…』
青葉「どうするつもりですか、怖くありませんよ…怖がってるのは、貴方の方だ…!」
『バカな!私が何を恐れる!』
トキオ「アウラが目覚めることだ…!」
『そんなこと…』
司「そして、それができる僕のことも」
『っ…!』
司「あんたは…あんたも、同じだ…力だけで、僕を、この子を押さえつけようとする、でもそれは、怖くてしょうがなくて、不安でしょうがなくて…」
『従っていれば、力を使う必要もない…!私に力を使わせるな!私の力の大きさ、知っていよう…!』
司「僕はもう、あんたも父さんも怖くない、だから僕は帰るよ、僕のいるべき場所へ…!」
そう司さんが言うと同時に、アウラが光を放つ
眩い光に視界が潰される…
司「あ…」
…覚醒した
白い髪、白いワンピース
そして、ガラス玉のような目、陶器のような肌
真に覚醒したアウラが、司さんの前に降り立つ
…何も、言葉が出なかった
誰も
司さんは片手のひらを見せ、笑う
それにアウラも随い、同じようにして、笑った
ミミル「…どうなってるの?」
トキオ「やったんだよ!司はアウラを覚醒させたんだ!」
突如激しいノイズがあたりを包む
『お前らなどみんな要らない…!アウラと共にここで朽ちろ!!』
青葉(何をするつもり…)
楚良「ちゅっばっ……ばみょん!」
楚良さんが私たちの中心に降り立つ
ミミル「楚良!?あんたまた…」
楚良「ちょびっとだけど、いいモン見せてもらったよん…ネットスラムでみんな待ってる、そいつ連れて先行きナ」
『楚良!何を言っている!』
楚良「ほら、早く行けって!お前、そう言う力持ってるだろ?」
司「…アンタも、来る?」
楚良「モッチ行っくすぐ行くモッチ〜ン…司クン、お友達になろうね」
司「うん…!」
司さん達が転送される
楚良「…あれ、アンタら残るの?」
トキオ「…ああ」
青葉「念のために…!」
楚良「ま、いいや……テッハ!おばちゃん、悪いけど、オレ、裏切るね」
『なんと思慮のない…!』
楚良「だってアンタ胡散臭くって、ぼくちん、アンタとお友達になりたくにゃ〜い…ちゅーわけで?ごめんなら〜…あれ!?」
楚良さんの転送エフェクトがかき消される
『遊びが過ぎましたね、楚良』
青葉(何か来る…!)
つい、得体の知れないものに対する恐怖心から、キュッと目を瞑った…
青葉(…あ、れ…見える…たくさんの、ガーディアン達が…)
でも、私の視界、こんなに低かったっけ…
トキオ「何が、くるんだ…!」
トキオさんには、見えてない…?
体を進め、前方のガーディアンに槍を振り抜く
…視点は動かなかった
青葉「あ、あれ!?な、なにこれ…」
こんな大事な局面でバグった…いや、違う…
青葉(リコリスさんの目…!)
私の目を、代わりにした?
でも、もしかしてこれ…
『何故見える…!』
青葉「見えないものが見えている、と言うことですか…醜い貴方の姿まではっきり見える!!」
実体のない、エネルギー体のような存在、それがモルガナの正体なら…!
青葉(見えてるなら、やれる!!)
ガーディアンを斬りながら迫る
『…その槍…!』
青葉「え…?!」
槍が、ガーディアンを仕留めきれない
貫けない、刺さりすらしない
ダメージを与えられない…
『神の槍で神に楯突くとは!』
青葉「…そんな…」
槍の力を、奪われて…
また、この槍が無力に…
『…貴方も、お遊びが過ぎましたね、まとめて、死ぬより辛いことがあると教えてあげましょう』
青葉「っ!」
距離を取り、攻撃を交わし続ける
楚良「えっ」
トキオ「楚良!」
青葉「しまった…」
楚良「あ、だめ、嘘、やだ、やめてええええぇぇッ!!」
楚良さんか巨大な赤い十字架に磔になる
青葉(アレは…!)
トキオ「えっ!?」
青葉「っ…!」
…結末を見届ける前に、リコリスさんの自動転送が発動した