元勇者提督 作:無し
横須賀鎮守府
軽巡洋艦 神通
神通「さて、仕事を始めましょうか」
綾波「ええ」
夕立「本当に正面から…?」
綾波「はい、神通さんと約束しました、次は正面から堂々と入る、と」
神通「…しましたっけ」
綾波「ええ、それに私嫌いなんです、約束破るの」
綾波の指示で私たちは霧に包まれる
綾波「瑞鶴さん、頼みましたよ」
虚ろな目のまま瑞鶴さんはコクリと頷き、正門へと進む
綾波「さて…と」
綾波が警備兵に近づく
顔に仮面をつける様な動作…
東雲「すみません、外出しておりました、東雲、その他2名、ただいま戻りました」
兵隊「え?外出……ああ、本当だ…どうぞ、戻ってください」
東雲「行きましょう」
神通(偽造書類…いつの間に?)
チラリと書類を視る
ハンコも署名も、しっかりと全て揃っている…
夕立(抜け目がないっぽい)
東雲「さて、さてさて、居るかな」
夕立「ここは…工廠?」
神通「……中にだれか居ますよ」
東雲「制圧します、神通さんは右の人の意識を奪って拘束してください、私は堂々と乗り込むので」
神通「……本当に?大丈夫ですか?」
東雲「はい、時間をかけるほど失敗率が上がりますよ」
神通(予知持ちか…!それに、"右の敵"…私ですら把握しきれていないのに何故居場所まで)
東雲「失礼します」
夕張「はーい…あれ?えーと…教育隊の子かな、何か用事?」
大淀(こんな人居たかな………あ、れ…予知?…視界暗転、気絶…まさか、襲撃犯…)
神通(中には2人、大淀さんと夕張さん、私のターゲットは大淀さんか……構えた!)
大淀さんが拳銃を向けたのを視認して、即座に侵入する
夕張「うやっ!?あ!実験品が!」
何かの爆発音、タイミングよく煙が全員の視界を潰す
大淀(見えな…)
銃声1発、それだけ鳴った後は何もない
東雲「ふー……まさか見えてもないのに撃つとは、危ない危ない、危うく夕張さんに当たるところでしたよ?」
夕張「ほんとにね、大淀ったら自分が決めたら絶対曲げないし突き通すし、それで犠牲者も出るかもしれないってわかってるのかなあ…」
2人が喋ってるのをよそに、大淀さんの目を布で覆う
夕立「…ずいぶん親しそうだけど」
東雲「ああ、言ってませんでした?こちら横須賀の協力者、夕張さんです」
神通「ここにも協力者が?」
東雲「全基地に居ますよ、少なくとも日本はね、呉と大湊は貴方達」
夕張「え?この二人誰?」
東雲「神通さんと夕立さんです」
夕張「うっそ……」
神通「…それより、さっきの銃声、どう誤魔化します」
東雲「任せてください、神通さん、夕立さん、大淀さんを介抱してるフリを、夕張さんは…そっちの機械を」
警備兵達がドアを開けて入ってくる
兵隊「…銃声が聞こえたとの連絡があり参りましたが」
夕張「えーと…見ての通りです、機械がショートして爆発しちゃって…」
東雲「その時出た煙で大淀さんがパニックになって…」
神通(こっち見られて…ええと…)
夕立「大丈夫〜?大淀さーん」
東雲「その…煙を吸いすぎたのか、倒れてしまったんです…医務室に運びたいんですけど…」
兵隊「そういう事でしたら私どもに、夕張さん、担架をお借りします」
夕張「ああ、はい、そっちのロッカーです、すみません、手を離せなくて」
大淀さんが運ばれていく
兵隊「では、失礼しました」
神通「……」
東雲「ま、こんなところでしょう」
夕立「よく通った…ぽい」
東雲「大淀さんの凶行は珍しくも何ともありませんから」
夕張「ほんとにね…」
神通「…どういう事ですか?」
東雲「大淀さんは自身が絶対、とは言いませんが…かなり自信があるタイプ、迷いなく人を撃つこともできる……そう、素晴らしい兵士だとは思います、しかし…本人は知将である事を望んでいる」
夕立(…知将…)
東雲「合ってないんですよ、適性が、それが故に、人を切り捨てることも躊躇わない…だから、ここは犠牲者が出やすい」
夕張「それは違う、今のところ出してない」
東雲「あなた達の踏ん張りでね、でも、このままでは潰れますよ」
夕張「……かもね」
…つまり、大淀さんは、戦果を最大化するために犠牲や無謀を躊躇わず実行する人…
神通「でも、それが今何の関係が?」
東雲「…私を敵として捉えていたんですよ、侵入者としてね」
夕立「…そんなのあり得る?」
東雲「あの人はデータ処理には長けています、私のこの蜃気楼で包み隠された、仮初の姿を見て、コイツは見覚えがない、と判断したんでしょう」
神通「それはおかしいです、警備兵に変装した時は…」
東雲「艦娘と警備兵では話が違う、艦娘となると同じ立場として関わりが深い者が居てもおかしくないし、何よりこの間侵入を許してるんですからそれは警戒しますよ、警備兵に化けたらアウトだったかも」
夕立「その割には簡単に入れたけど…」
夕張「だって私が書類偽造したし」
東雲「そういう事です、簡単でしょう?内部に協力者がいれば」
神通「……それで、ここに来た目的は」
東雲「夕張さん、これを」
東雲さんが紙袋を渡す
夕張「こ、これは…!…北海道限定のカップ麺…!」
東雲「遊んでる場合ですか」
紙袋から東雲さんが機械を取り出す
夕立「それがカップ麺?」
東雲「…あなたもバカですか?…これは、そうですね……
夕張「略してLSFD!これがあれば次元を融合させる様な超常現象を起こせるの!」
神通「……はあ」
東雲「これの実験をお願いします、出力は僅かですので、おそらく半径20メートル30秒が限界かと」
夕張「ここからエネルギーが出るなら…うーん、半円形になるのかな、この形なら…OK、あとで感想送るわね!」
東雲「お願いします」
夕張「試したら!試したら解体していい!?」
東雲「ええ、でも造らないでくださいね、まだ実験段階、敵に利用されるのは最悪ですし」
夕張「オッケー!」
神通「私たちは何も理解できていないのですが」
東雲「仮面の敵、イミテーション、奴らの衣装には意味があります」
夕立「……あの、真っ白な防護服?」
東雲「ええ、あの中にはデータが詰まっているんです、コピー元の戦闘データがたっぷりと…ね」
夕立「データ?」
東雲「ええ、それは無形のものです、ですが、だから…そのデータを閉じ込めておく容器が要る」
神通「それがあの衣装だ、と」
東雲「ええ、あの衣装の中身は全て水だと考えてください、破けたら外に出てしまうんです、だから、完全に遮断できる様な装備でなくてはならない」
夕立「……それで?」
東雲「この装置で展開したフィールド内では、イミテーションはあの服がなくても活動できます、現実と切り離された様な空間になるので、データが流出しないんです」
神通「……なるほど」
東雲「これを私はCC社に売り込みます」
神通(…事はそう単純ではないはず)
東雲さんは単純な裏切り者ではないのだから
神通「…誰か来ますよ」
東雲「気にすることはありません、私たちの正体に気づける人はいませんから」
浜風「失礼します、夕張さん、来月の予算について…あ、今忙しかったですか?」
夕張「いや、別に」
東雲(予算か…)
東雲「カップラーメン代とか請求してませんよね?」
夕張「ぶっ!?す、するわけないでしょ!流石に!」
神通(してますね…)
浜風「……あの」
夕張「ん?なに?」
浜風「この人達、誰ですか?」
東雲「私は…」
夕張「離島の子達!ね」
東雲(余計な事を…)
東雲「え、ええ、そうですね」
浜風「離島鎮守府か…成る程、強そうなわけです」
東雲「そうでしょうか」
浜風「…ええ、すごく…」
そう言って浜風が書類を置いて出ていく
夕張「…何しに来たのかしら」
東雲「異様に鋭い人でしたね」
夕張「生存本能かなぁ…電ちゃんに危険人物のみ分け方叩き込まれてるらしいし…あ、そうだ、電ちゃんどうなったか知らない?」
東雲「前言った通り、リアルデジタライズの説が最有力ですよ」
夕張「了解…うーん…とりあえず用件は終わり?」
東雲「はい、次に行きます」
神通「次?」
東雲「もう一組、会う相手がいまして」
夕立「こ、ここって…」
神通「司令室…火野提督に、か」
東雲「失礼します、東雲、ほか2名参りました、入ってもよろしいでしょうか」
火野「入りたまえ」
ドアが開く
アケボノ「……チッ…」
神通「…!…貴方達は…」
離島のアケボノと倉持司令官…何故ここに
アケボノ「東雲、か…嫌な名前をしていますね」
東雲「そうでしょうか」
海斗「拓海、この子達は?」
火野「1度、会っておくべきだと判断した」
アケボノ「……まさか」
東雲「ええ、そのまさかです、ご無沙汰しております、アケボノさん、倉持司令官」
海斗「綾波…!」
アケボノ「!」
一瞬でアケボノさんが綾波さんを壁に追いやり、首を締め上げ、銃を突きつける
アケボノ「…何をしに来た」
綾波「お話ですよ」
アケボノ「巫山戯るな」
綾波「ふざけてなどいません、あなた達が持っているオリジンの断片をいただきに来ました」
アケボノさんが発砲…する前に、立ち位置が入れ替わる
アケボノ「なッ…!?」
綾波「倉持司令官も火野提督も居られるのに発砲など…失礼ですよ」
火野「…話と違うようだ」
綾波「あれ?どう違いましたっけ?」
火野「今後についての話し合い、と聞いていたが」
綾波「今まさにやってるじゃないですか、オリジンがないと計画破綻なんです、大人しく渡してくれませんか」
海斗「綾波」
綾波「…なんです?」
海斗「…君が、東雲なんだね」
綾波「ええ、そう名乗りました、偽名としてはちょうどいい…」
海斗「アケボノを離してほしい」
綾波「…オリジンを渡すのなら、アケボノさんを返しますよ」
海斗「僕たちはもう持ってないんだよ、オリジンなんて」
綾波「……仕方ありませんねぇ」
アケボノさんがすてられる
綾波「また朝潮さんを拐いましょうか?それとも、勇者様は自らオリジンを取りに行ってくれますか?……オリジンさえ渡せば貴方達の安全を保障します、約束です」
海斗「僕たちは本当に持ってない」
綾波「…とりあえず目的だけ伝えました、私は約束を破られることも嫌いですが、破るのも嫌いです、信用してくれていいですよ」
海斗「……」
綾波「それではご機嫌よう」
東雲「さて、どうなるか」